特級呪霊『真人』
『お前は俺と同じだよ、虎杖悠香‼︎』
術式「無為転変」、人への恐怖から産まれた呪霊。
かつて傀塚家の儀式に参加した呪霊の転生体だが、今となっては関係ない話。
最初からある程度術式の扱いが上手い以外はさして原作と変化がない。
人の悪意の化身らしく負け犬根性が滲み出ているが、生後間もない存在なので仕方ない面も。
幼いせいか時間を掛けて悪意を熟成させる手腕が未熟であり、どっちかと言えば挑発や煽り。
絶望ではなく怒りや悲しみの誘発に偏っている。
人格は凡夫。しかし今後の成長が期待出来る
短命の天才。
「私の役目は五条悟の露払い、キミは憂憂と一緒に兎に角生き延びろ」
のちに渋谷事変と呼ばれる事になる呪詛師が引き起こした一連の騒動で、虎杖悠香は一級術師冥冥の指示下で動いていた。
何故学生が動員されているかは言えば、東京高専一年生と一部二年生がこの日の渋谷で丁度一級術師に昇格する為の試験を受けていたからである。
「本来なら
本命は五条に任せて、端役に努めようって魂胆さ」
一級術師冥冥……試験は公平な視点の為に初対面の術師が立ち会う……としては、本来なら
人手不足な呪術界に漬け込んだ仕事だったのにと文句の一つや二つが漏らすが……言っても仕方のない話。
兎にも角にも生き残らなければならず、虎杖でさえこの状況では貴重な戦力。
少なくとも、憂憂が少しでも生き延びる機会を作れる肉盾くらいにはなる人材だ。
「試してみたけど
相手は最低でも一級上位の呪詛師だろう。私がギリ最低ラインの戦力になる鉄火場。基本私から離れず、もし私に何か有ったら即逃げな」
「だったら手伝える事は」
「今はない。本当の本当に、戦闘じゃキミらは足手纏いなんだ。
有るとすれば、五条が封印なりされた時くらいだろうね」
それから数十分後、この冥冥の冗談混じりの発言は現実の物となる。
「……嘘だろ、今回は
呪詛師が居ると思われる結界の中心地、渋谷駅に突入した五条の後ろを追わせた鴉と視界を共有した冥冥が観たのは、あの世の濁りが噴き出る地獄。
「二人とも仕事だ。今すぐ他の班に伝えてきな、"五条悟が封印された"ってね」
羂索の手によって現れたかつての術師と五条による果てしなき闘争と、封印される直前に羂索へ致命的な痛手を負わせた光景であった。
これを虎杖と憂憂は冥冥の指示に従い結界外郭に待機した日下部班と地上の呪霊を祓っていた七海班に伝達。
日下部を伝って程なくして上層部から最悪な事態の後詰めでもあった一級上位陣の突入が決定。
事態を重く見た一部の上層部の独断により、御三家から術師の緊急派遣も決定。
到着まで15分間、冥冥単独による渋谷駅封鎖任務が開始される。
ガァ ガァ ガァ。
「全く、貧乏くじを引くなんて私らしくない。
この結界から逃げ出せれば良かったんだが…ね!」
冥冥、憂憂、虎杖の冥冥班。
七海、猪野、伏黒の七海班。
日下部、釘崎、禪院の日下部班。
以上三班はそれまで非術師の被害をなるべく出さないよう努力する現場対応が要求される事とになった。
「冥冥さんの援護に向かいます。私達で倒せる範疇の呪霊は私達でやるべきです」
そんな中、虎杖は七海班へ報告ついでにそのまま同行を要求。
伏黒の反対はあれど単独で冥冥の元に帰す危険性を
「なっ──」
「…急ごう」
道中降霊術とあべこべの術式持ちの呪詛師との戦闘はあれど、降霊された禪院甚爾が何処かに行った事で冥冥任務開始から13分で無事渋谷駅へ到着。
「日下部!」
「ダメだ。このまま待機しろ」
「…ッチ。なら私だけで行く」
「なら地上の呪霊だけにしろ。渋谷駅に行っても俺らが」
「ッ──!」
「……前言撤回。今すぐ行くぞ。このままじゃ何も出来ずに殺されるだけだ」
日下部班、七海班に変わり地上警邏を開始。
結界外郭に集まる市民を守る方針を決定……する直前に方針を転換し、渋谷駅に向かう。
「ふぅ…思ったより暴れさせてしまったな。だが、これで全ての障害は断たれた。
これより── "一億総呪霊の儀"を執り仕切る」
渋谷駅地下5階。
東京で澱む呪力が巡る流れの交流地。
東京幽界に最も近い、あの世とこの世の境目の上。
『ならオレは術師で遊んでこよーっと』
冥冥の任務開始から5分後より30分に渡る儀式が幕を開ける。
それに伴い羂索は五条戦後の在庫処分ついでに特級呪霊を20体解放、真人を筆頭とした21体の護衛が渋谷駅を徘徊開始。
『やっほ、来ちゃった』
「……あーやだやだ。久々の死地だね」
冥冥、儀式開始による悪寒と目前に現れた真人が率いる7体の特級呪霊に状況の変化を確認。
任務開始から10分後、呪霊を引き連れた決死の撤退戦を開始。
「──"黒閃"‼︎」
撤退戦敗北直前、先駆けを行っていた虎杖の黒閃と同時に七海班が冥冥を救出。
『あ、キミらはアイツら追っといて。コイツはオレの獲物だから』
「ッ‼︎」
「こっちは大丈夫だ‼︎ お前は目の前の相手に集中しろ‼︎」
「……分かった、任せる」
真人は虎杖との戦闘を決定。残り7体の特級呪霊は七海班を追い掛ける様指示。
虎杖もまた伏黒の言葉により真人との戦闘に集中する事を決定。
真人に対し魂に触れれば中に居る宿儺の不快を買う虎杖はある種、特効を持つ。
しかし虎杖に干渉出来ずとも真人は肉体を自在に変え、魂を予め改造した人間を利用して雑兵を増やせる。
進退転々とした戦いは膠着を生み、それは援軍に来た呪術師の一人が場に介入するまで継続した。
「助けはいるか、
「東堂‼︎」
東堂の援護もあり戦闘は虎杖チームが優勢に。
真人による東堂の片腕破壊、三者同時の黒閃、全員のボルテージが一段上がると共に、戦場となっていた駅地下ホームの天井が真人の技により崩壊。
『アゲてけよ虎杖!!! 俺とお前‼︎ 最後の呪い合いだ‼︎』
地上に出た真人が叫び、互いの最大の一撃が構えられたその瞬間──。
「"動くな"」
呪言と共に、戦場に新たな影が現れる。
「──"裂魂"」
過程も因縁も何ら意味を見出さず、真人を切り裂いたのは──羂索との因縁より外れた"眠れる獅子"。
羂索が複数ある霊地、呪術的価値のある土地から渋谷を舞台に選んだが故の因果応報。
「ふん、相手を知るならやはりこれか──お前の好みのタイプはなんだ?」
「……たいぷってなに? タイプライターのこと?」
「────ふぅ」
そして新たな存在に虎杖と宿儺が話し合っている最中、事故は起きた。
東堂の初対面の人に決まって繰り出される質問に対し、新手……一族列伝当主は、致命的に人を小馬鹿にしかした……少なくとも東堂はそう感じる返答を行った。
それは東堂が初めに目にした時から感じた
「そんな女児趣味でリアルネカマやってる奴が惚けてんじゃねぇ‼︎ リアバ美肉クソチン野郎!」
即ち、生理的に無理な存在を殺す理由の捏造。
謂れのない罵倒が当代に投げ掛けられたのは、そんな選り好みの結果で……この場にいる誰もが知るはずの無い事実ではあるが、傀塚家による歴史の変化で、東堂が推していた
しかし世は並べて事もなし。
因果的に見れば
残念ながら高田ちゃん…もといネズミが一族列伝という力を得る対価としては、これら全ては安い方と言える。
「離せ‼︎ 兎に角一度、特にあの花を殴らねば俺の気が済まない‼︎」
「落…ち…着…け‼︎」
結局、当代と虎杖はその場で別れ各自この事態を収集する事になった。
そこで戦力的に頼もしそうな当代は七海達の方へ。
「……わ、甚爾くんがいる」
「暴走してますね。特級呪霊を片っ端から祓い終わり、今から術師に手を出すって所ですか」
「二人、そっちは些事です。
──魔虚羅が来ます」
ガコン
二桁に及ぶ特級呪霊に対し展開され適応した伏黒の奥の手と、蘇った禪院甚爾。
当代と渋谷事変の2大戦力との戦いが始まり──。
「いいか悠香、俺達がやるのは五条の救出。何を見ようと寄り道は無しだ」
「ああ」
虎杖達は五条救出の為、渋谷駅地下5階を駆け出した。
夥しい死体、死体、死体。
五条への肉盾として押し出された人々の血で辺りは真っ赤に染まった真っ暗な駅。
辛うじて生きている明かりでさえチカチカと点滅し、火花をポツポツと落としている。
思わずえづきたくのを堪え、二人は一心不乱に五条先生が遺した残穢を追う。
目標は──羂索の懐。
「──!」
儀式をしている羂索が二人に気付くも、今更儀式を止めれば死ぬのは自分だ。
手を出すにしても今、五条との戦闘の影響で傀塚式のアレコレは使えない。
封印された五条は手元にあり、仮にコレを取られて仕舞えば一巻の終わり。
天才である五条のことだ。追加の細工で呪具の封印を高めてはいるが、羂索の手元から離れれば忽ち封印から抜け出す事だろう。
(だが──君達が到達する事はない‼︎)
確かに不利な条件だ。
だが……それは全て、"この数千万の呪霊の波を乗り越えられたらの話"で。
"そんな障害は、五条の昔話でとっくに分かっている"。
虎杖達も無策で突入した訳ではない。
ここまでは読み通り。皮肉にも傀塚式が秘匿事項で東堂と虎杖の両者が知らないのが、傀塚式が封印された羂索の動きを的中させるのに役立つ結果となった。
「やれ‼︎」
「──イッケェェェ‼︎」
ここから術式の使えない術師2名で突破する方法はただ一つ。
呪霊の波で全てが覆う前に、羂索の元に辿り着き五条救出を成し遂げること。
その為に取った技。東堂が殴るのに合わせて虎杖が東堂の拳から飛ぶ吹っ飛び移動。
「‼︎」
呪術師の体術でゴリ押された一連の行為は、以外にも羂索の予想を上回り一瞬の隙を齎した。
後は虎杖が羂索の反応より早く懐から獄門疆を取り出すのみ。
しかしそんな技術、虎杖には……。
「──"納刀"」
"ある"。
かつての交流会、三輪の呪具を持った事で肉体に
呪具とは使い込む事で術師の術師を覚えて出来上がる。
ならば、"呪具に使われれば術師はその力の一端を知れる"。
「先生の箱、確かに返して貰ったよ」
脊髄に刻まれた反射神経、超高速の抜刀術を応用した盗み。
交流会から虎杖が少しでも託された物を自分の力にしようとした努力が、虎杖の手に希望を持たせる。
「──虎杖悠香ァ‼︎」
羂索が怒りと笑いを同時に抱かなければ出来ない顔で虎杖の名を叫ぶ。
それは儀式を自ら破綻させる行いであり。
「起きてんだろ? 先生」
「チョーバッチリ」
自力で封印を解き復活した五条に先手を取る為の最適解であり。
「"領域"」
「"見た"」
"そんな小細工は、五条には何の役にも立たない"。
「────────」
「はい終わり。
傀塚式が使えなくなった時点で、僕の封印が解かれたら詰むに決まってるよね」
傀塚式という足切りと妨害に特化した戦法が無い呪術戦に置いて、相手を見るだけで必中させる常時発動型の領域「空眼」は無類の強さを誇る。
しかも、羂索に対し行使したのは今が初。
詠唱や掌印を結ぶ一瞬の隙すらない以上残る防御は呪力強化のみ。
「それすら儀式にかまけた反動でボロボロなら……ま、こうなるってワケ」
羂索を……夏油の頭を握り潰して五条は言う。
かの有名有害な羂索はこうして呆気ない最後を迎えた。
面白さを追い求める彼に相応な面白みのない一方的な屠殺。
十握一投の呪霊と何ら変わりなく、壮大な陰謀と運命の流れはここで途切れる事となる。
「「先生‼︎」」
「……お疲れ、悠香、東堂。
君達のお陰だ。ありがとう」
五条は二人を暫く抱きしめる。
自分が教育し、師匠の教えを継いだ者と協力して彼を助けた。
その事実が何とも……これまでの苦労が、犠牲が報われた気がしたから。
抱きしめるなんて彼に似合わない事をしたのはきっとそのせいだろう。
「"契闊"」
だから……彼らしくもなくこんな不意打ちを受けたのだ。
Q.火山が食べさせた筈の宿儺の指は?
A.五条封印を強化するブースターに11本を獄門疆に張り付けてます。
つまり今、11本虎杖の手元です。
学校1+五条腕試し1+上層部6=8本
交流会と渋谷の間で一本追加で9本。
全部合わせると完全体両面宿儺の完成。