宮沢賢治
「ああいい気持ちだ ああいい気持ちだ」
1896年-1933年。
銀河鉄道の夜、雨ニモマケズなどの代表作を持つ文学人。
今作では術師として、術式を持って産まれた。
その名を「
術式効果は「これまで辿った己の魂の履歴参照」
謂わば何代もの前世まで遡る走馬灯であり、刹那の時間逆行。
単体ならば死ぬ直前に面白い夢を見ただけに過ぎない術式。
事態が難解となったのは最初の記憶、名も無き女が降霊術を持って産まれて死んだこと。
それに憐れみを宮沢賢治が覚え、呪霊として些細な干渉を行ったこと。
7級呪霊とは、術師として産まれた宮沢賢治が自然死し産まれた怨霊、それが過去に渡った際に極限まで削れ、名も無き女の呪力と混ざった姿である。
彼に一連の出来事の発端の自覚はない。本人としてはただの死に際の夢に見た事。
されど事実として歴史は変わり……或いは新たな分岐が生まれ、その歴史では彼の存在は墨の一粒も存在しなかった。
列車はとうの昔に終着点に辿り着いた。
多くの花が集まるだろう。これは
──"サウイフモノニ ワタシハナリタカッタ"・枯花
ガコン
「……どうしようか」
身も蓋もない事を言えば、当代に勝ち目など最初から無かった。
そうなったのも幾つかの要因がある。
真人が七海班を追わせた7体は途中、新たに4体が合流していたこと。
それに対し伏黒が
現れた方向が七海班が逃げた方面であった事。
恐らく術師は甚爾に、確実に呪霊は両者の手によってやられ、双方が争い、その時点で魔虚羅の法陣は九回も廻っていたこと。
つまりは。
『ギィィィィィ──』
"出会った時点で既に当代へ存在の適応を始めていた事"。
術師という存在其の物に対する適応。
あまりにも長時間調伏の儀が続き、乱入者が注がれ過ぎた。
魔虚羅に対し法陣を廻させる実力ある特級呪霊が存在し、火力…殲滅力に欠ける甚爾では魔虚羅を倒す事は叶わない。
(……最低でも打撃、熱、身代わり、捕食、斬撃、光、水圧、過重力に適応済みなのは確認した。
そして私達との戦いで魂への攻撃も克服された。もう一度術師を範囲外に持っていくにも……肉体は既に魔虚羅が自身の体内へと収納した。私達の前に誰か試してしくったか)
真人との戦闘、当代との会話。それら併せて約17分。
それは魔虚羅が完全体となるには十分過ぎる顕現時間だった。
既に伏黒は魔虚羅の手によって仮死状態で体内に収納されている。
調伏中は儀式に参加した全員が死なない限り、如何なる手段でも本体の術師は死なない。
幾らでも乱暴に取り出せようと、離すには魔虚羅を倒すまでは必要なくとも、巨体のどこかに居る本体を見つけ取り出す必要がある……。
「……堂々巡りだ。魔虚羅が倒せないのに、抜け道の術師との切り離しは魔虚羅を倒せる火力と方法がいる」
故にこそ、"詰み"。
範囲外まで逃げ降霊術で伏黒の魂を引き寄せれば、その魂に術式があれば話は解決したのだが……それは既に試し、その賭けに葬花と偽乙骨の両者を、オマケに禪院甚爾を犠牲にして失敗した。
今は丁度、その結果を噛み締めている
「……二択、か」
こうなっては当代に取れる手段は二つしかない。
"もう一度一縷の望みに賭けて足掻く" か "死んで儀式を終わらせる" か。
助けは来ないだろう。
当代は浮浪の孤児だ。術師の当てはなく、仮に七海班が生きてても儀式に参加してまで彼を助けるメリットはない。そもそもが公的機関に所属していない呪詛師、死んだ方がいい人種だ。
一族列伝で高専がある事を知っていたのに入らなかったのは紛れもなく当代の選択。
現状の変化を恐れ、最悪だが死んではいない現状を維持して来た彼の選択にある。
『───』
「……"起きろ"」
ニィと歯茎を晒して笑う魔虚羅に、苦し紛れにこれまで死んだ特級呪霊や術師を蘇らせては足止めに使う。
既に適応された存在に勝ち目はないが、考える時間を作るのには役に立った。
「…"起きろ"」
今までと変わりなく、現状のまま先送りにする選択で。
彼に選んだつもりは無くとも。
「"起きろ"」
それは一縷の望みに賭けた足掻きだった。
『なんだ キサ……ッ‼︎』
気付けば彼は虎杖達が向かった渋谷駅に逃げ込んでいた。
理性的に選んだ訳ではない。本能的に、この厄介な敵を擦りつけられそうな知人を選んだに過ぎない。
例えそこに居たのが虎杖の身体を乗っ取った宿儺であろうとも。
羂索と五条の死体があろうと、東堂が既に逃げ去っていても。
「"起きろ"──"羂索 五条悟"」
愚者の教えは一つだけ。
"何でも使って生き延びろ"。
『
八握剣異戒神将魔虚羅 調伏の儀
参加者
伏黒恵 禪院甚爾
特級呪霊『陰陽妓』『七支龍』『山猪』『遷仏』『四季壷』『陀艮』『トイレの花子さん』『スレンダーマン』『藉盲』『九頭瘤』『陌物語』
乱入者
一族列伝当代 両面宿儺
『
『やってくれたな 傀塚ァ‼︎』
顕現から30分経過時点にて。
完全体となった両面宿儺と呪力へ適応した魔虚羅。
蘇った直後でふらついている五条と羂索。
その全てを呑み込む宿儺の即断。
「───あ」
………。
渋谷事変にて切って落とされた最後の戦いの火蓋は両面宿儺の手によって落とされた。
付近に居た者を領域内に閉じ込め、極限高めた火力で焼き尽くす一手。
既に魔虚羅刹は熱に適応していると踏んだ上での判断。
ではその対象は誰か── "一族列伝当代"。
五条と羂索の魂を使役し、本体の呪力が枯渇した姿は、両面宿儺にとって敵か味方か分からない存在を殺す最大の機会。いや、魔虚羅を連れて来た以上確実に敵。
故に地獄の竈を
儀式に参加しようと先ずは二回戦の火蓋を切らせないのが優勢された結果、当代はなす術もなく死ぬ事となった。
当代に対抗策は無かったのか。
無い。
時間稼ぎに術式を連続行使し、呪具に貯めた呪力も全て使い切った術師に残されるのは体術一つ。
如何に弱者の技であろうと、浮浪孤児の痩せ細った身体で初代の体術を再現するのは不可能。
行使すれば死ぬ技を使う程の度胸もないが故に、当代はここで野垂れ死ぬ事となる。
『な 』
「……直接会ったのはこれが始めてだな、宿儺」
しかし……それは当代の命に限った末路。
その死をトリガーに一族列伝内部で療養されていた天元は、猶予が足りず消えゆく一族列伝をその場で消費。
「幼子へのせめてもの葬いだ──手向の花にしてやろう」
特級呪具を引き換えとした"生前の肉体の再現"を行う事で擬似的に蘇った天元は領域後で術式が焼き切れていた宿儺の隙を付き封印。
儀式的に死亡した判定の取れる状態にし、自らも一時の避難に東京幽界へと潜伏。
『───…』
あの世に潜伏すれば、それは呪術的に死んだも同然。
乱入者が消えた魔虚羅は、こうして戦わずしてその姿を消す事となった。
……同時に、損傷を気にせず魔虚羅内部でバラバラに砕けていた伏黒が魔虚羅の消滅と共に死亡。
「"起きな"」
「…あれ? 俺は…」
「急な話で済まないが虎杖悠香、その時が来た。
今日が、君が処刑される命日だ」
その後、結界で自らを保護しあの世に潜伏していた天元が浮上。
両面宿儺の封印解除と共に虎杖の魂を強制覚醒。
領域展開を行うと共に虎杖悠香にこれ迄の経緯を説明。
「俺が…先生を…?」
「残念ながらね。
だがまだ選択肢がある。
五条が死んでも腐り切った上層部…いや、"元上層部"が存在する現状、結界の要である私以外の強大な抑止力が必要だ。
両面宿儺の力は危険だが、丁度ここには結界術に長けた私がいる。
制御を取り付ければ今後死ぬまで宿儺が表に出る事はないだろう」
そこで提案されたのは、呪術界の抑止力である五条悟の死の隠蔽。
虎杖が処刑を免れる活路の提案。
恩師をその手で死なせた対価……。
「……俺に五条先生の変わりをしろって事ですか」
「今後性別も何もかも偽って代用品となるか、このまま私に殺されるか。
どっちにしろ、「虎杖悠香」はここで死んで貰う」
天元にとってこうして現世で活動出来る期間は貴重だ。
今はまだ保っていても、このまま現世に留まれば忽ち結界の維持は出来なくなる。
また引き篭もるまでに東京幽界を筆頭とした特級呪物を回収する気ではあるが、それでも元上層部の暴走は危険であり、五条が消える影響は計り知れない。
「………………」
「外と比べこの結界内部の時の進みは早い。しっかり悩み決めろ」
天元が上層部を殺せたらそれで良かったが、それは現世への干渉の最たる例。
忽ち結界が壊れる事に比べれば、今を生きる者に委ねるのが最善と天元は判断した。
例え混乱に陥ろうと、それは現世の者がものだと。
そうして極力縛りに……現世に干渉しないよう、天元は虎杖に選択を委ねた。
「俺は──」
「…そうか。相分かった」
その結果は……我々には預かり知らぬこと。
記録が納められた一族列伝が記してないのだから、きっとこれ以上は無粋というものだ。
「その後身をもって体感した事実は、死者として佇んでいた東京幽界が破壊されたこと。
それから幾年か経て、混沌が調和する力の流れを目撃したこと」
最後に、沢山の白い彼岸花が、天の川がよく見える大きな河原から別れた、小さな支流に沿って咲いていること。
それを観れば、私達の歩みがどれほど愚かしく、救う以上に殺したか分かろうというものだ。
「全て観て、この身は後悔に満たされた。
されど、もう一度歩むのはよした方が良いだろう。
呪いを身に宿す限り、私達の挑戦は必ず死が傍らに寄りかかる」
善い人生を、最善を尽くそうと努力した。
だが足掻く程この花は増えて、終ぞ犠牲なく救う事は叶わなかった。
そして気付いたが、死んだ私達が生者に思い馳せる程、それは生者の足を引く事であるらしい。
「もう、また会おうとは言いません。
善い人になろうとも思いません。
花畑は私の罪であると認めます。
"赤い花を受け入れると誓います"」
言葉が増えると共に石は熱を帯び、ぽつぽつと赤い血が降り注ぐ。
白い花は血をめいいっぱい浴びて、この世の未練を切り捨てた。
汽車が近付く音が、段々と大きくなっていた。
「きっと地獄に行くのだとしても、どれだけ辛くとも受け入れなければならない。
出なければ、幾度も巡った生の全ての業が己の意思一つに降り掛かる。
なにより、善を成そうと悪を遂げてしまって己を追い詰める」
背後に汽車が停り、内から漏れた綺羅星の光が私達を照らす。
私の横を通り過ぎる人々は誰もが観たことある顔で、私を変なものを観るように茫然と眺め。
脚を止めずに粛々と汽車の中へと収まっていった。
「あの世で私の滑稽な姿を観たのなら、どうか笑ってください」
汽車の扉が開き、ガタゴトと赤く燃える河原から旅立ち、銀河へと向かう。
置いて行かれたのは、乗らないのを選んだのは、私一人。
帽子を深く被り、寒さに震えるようにコートを羽織り直し目深に礼をする。
「自分のままなりたい自分に成れると自惚れた阿呆を。
この間抜けがと、戒めとして笑ってください。
そうすれば、阿呆はきっと無様ったらしく笑う事でしょう。
それでいい それでいいと」
地獄に堕ちた馬鹿野郎は、そんなものでいい。
葬いに花は要らない。
それだけ命が摘まれるのだから。
ただ一つ、言葉一つで良かった筈なのだから。
「なら、残った私達も自分の勝手か」
「…! 葬花」
「結局、何処までも追い縋るのが呪いだ。一族の業は、一族全員で雪がねば」
「墓守…!
……阿呆が」
……馬鹿3人。
地獄に堕ちるというのに残ったのは甚だ愚かしいが……背負う者が居るのは、なんとも心強く感じるものだった。
「後悔しても、もう知らんぞ」
南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼仏
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩
………ん? あれは。
よく見れば7つの人影が…。
魂の通り道「7つの影」
__ .___ .___ .___ _ _ _ 。
行き止まり ↘︎
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仏ではない。悪鬼でもない。
ただなる様になるだけの終着点。
遺品「何処にでもある書き損じ」
呪いの巡礼はこれで終わりです。
悪い結果に見えますが、非術師の犠牲は間違いなく減り、原爆も阻止されたのでトントンだと思います。インドは……その後一語一民族で統一されカーストも消えて平和になったのでトントンでしょうか。
これで確信したのですが、私は歴史モノと馬が合わない。
独白「███今シリーズ最後なので色々言います。 色々と下手。実はゲェム辺りからやってた苦手克服の為の引き継ぎチート(システム的に能力の一部を引き継ぐ)シリーズの終わりでもあったので、終盤モチベが死んで苦労しました。強いと初手で終わるのばっかや。やりごたえがない。そのせいで描写が雑。最後に今シリーズの歴代主人公7人とのバトルもやりましたが、処理だけでもうきつかった。でも楽しかった。でも独りよがり。だめだね。本編に出すのは不粋過ぎるのでカット。反省点は多い。 次回は前書き後書き感想返し基本禁止で。章終わりとかに少し? 本編の描写一本でどれだけ行けるかですかね。おっそろしく長くなりそうで、そうならない気もする。ワクワクするね。███」
次は……変わったお店の店員になった子の話でも。
では、またのお越しをお待ちしております。