呪具:一族列伝   作:何処にでもある

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 術式「構築術式」
 原作では万、真衣が使用していた術式。
 呪力を消費して物質を構築する。生成可能範囲は術者の解釈、熟達度、理解度次第。
 一度構築した物質は呪力を通して操作する事が出来る。
 長男は長女に植え付けられた十種以外に、これを元から持っていた。




975年 傀塚家相伝儀式・下

 

 

 975年。

 

『‭─‬‭─‭─‬‭─ガコン』

 

 600年早く「八握剣異戒神将魔虚羅」が召喚された日。

 

「……剣の刀身を一瞬伸ばせるように適応したか。反省が早くて困ってしまうな」

(さてどうする……他の式神を呼び出し投げ飛ばして貰う事で生きながらえたが、あの対魔の剣は厄介だぞ。この呪霊の身体でまともに当たれば一瞬で屠られてしまう)

 

 時間を少し遡って長男が領域内に閉じ込められていた頃。

 母親から式神の事を習ったのが幸いし、2対の式神「玉犬」の召喚に成功。

 左腕を斬られ落とされはしたものの、長男はなんとか生きながらえていた。

 

「……イヤに適応速度が早い。猶予1〜2秒といった所か」

(幸いと言うべきか、奴は僕を舐めている。3級術師程度の呪力もさることながら、既に片腕を飛ばしてしまったからだ。そのおかげか、基本受けの姿勢を取る戦闘スタイルなのも相待って考える余裕を与えてくれている……非才にとっては助かるな、こういう姿勢の相手は)

 

 思考を回し、解決策がないかと本能が記憶を辿る。

 走馬灯が過ぎ去っていく。

 

『‭─‬‭─‭─‬』

 

「一先ず、打開策がてら僕の術式を教えようじゃないか。どうやら君は考えて動くタイプみたいだからね」

(僕を放って辺りを見渡すか。調伏の最中なのに術者の僕に眼中に無いという事は、それだけ確立した自我があるということ。さては術式の再現率を上げる過程で得たか?……脳に刻まれる感覚からして既にこの術式は領域が消えようと僕の中から消えない。完全に定着してしまっている。時間経過で領域が解除され、調伏を乗り切る作戦は使えない)

 

 産まれてからずっと崖際に立っていた。

 ある程度厳選されている姉妹と比べて、僕は完成までの過程を確認する為に造られた試作品だ。

 

「僕の術式は構築術式と言ってね。呪力を消費して1日で物質を生成する術式だ。僕の呪力量と効率だと1日16匁(60g)程度。形状は自由に出来る」

 

 そこら辺で拾われた4級呪霊「魚腕」の肉体、最初に呪霊を乗っ取れた精神。

 親の術式が全て陰に隠れた、口寄せられた人の魂が元々持っていた「構築術式」。

 3級程度の呪力。領域にも辿り着けないセンス、反転術式も出来ない操作。

 黒閃に触れ続けても解放されるような潜在能力もない、非才。

 

「一度作った物質は消える事なく、呪力を流せば操作する事も出来る。しかし、これらがモノを言うのは物質生成を積み重ねてから。用意が少なければ大した事は出来ない」

 

 与えられた黒閃に触れ続けても尚"こう"なのだから、とことん呪術師の才能が欠落しているのだろう。才能が全ての世界では生まれきっての負け犬だ。

 僕としては呪いさえ祓えるなら他はどうでもいいと思うが……この儀式を初めに、世界は力が無ければ生きる事も許されないものだ。

 たった今式神の生得術式が新たに刻まれたとはいえ、この場を乗り越えなければ何も意味がない品物。それさえもさっき盾にして使ったから、存在しないも同然だ。

 

『……………』

 

「それが僕の術式だ。君には勝てない」

(領域が解除されたな。この式神も依然そこにいる……確定か。今の僕は、2つの術式を持った術師だ。なるほど……)

 

 もう死んだと判断されたのか領域が解除され、澄んだ青空と浅い海の領域に変わる。

 

 それを見て必要な話を聞き終えたと判断したか、魔虚羅が長男へと歩み寄っていく。

 殺すのに走る必要も剣も必要ないと判じたが故の余裕。

 領域を解除されても存在出来るように適応し自我をより濃くしたが故の慢心。

 生存欲求の欠点である、慢心。

 

「だから僕は君を殺す事は出来ない。手段がない。しかしね‭─‬‭─」

 

 掌印の内側に何かが構築された。

 同時に魔虚羅が気づく。

 

 "既に目の前の呪霊は、自身の術者ではない"。

 

「君に自由を与えてやることは、容易く出来るのだよ」

 

 魔虚羅は既に縛りに適応し、無効化している。

 しかしそれは魔虚羅単体の話であり、十種影法術全体の話ではない。

 例え十種影法術其の物が魔虚羅から派生したある種の拡張術式であるとしても、適応が術式まで波及する事はない。別個の物。

 

 術式を呪物として構築すれば、自身の術式と他者間の縛りが成立する。

 2つの術式を持ち、その上片方が構築術式だからこそ出来る妙技。

 

「縛りだ、十種影法術。"お前の所有者を「この式神」に固定する代わりに、所有者が僕に連なる傀塚の一族と所有物を傷付けようとしたら、故意に関わらず新たな八握剣異戒神将魔虚羅を出せ。強制的な調伏の儀を開始しろ。"」

 

『‭─‬‭─‭─‬!?』

 

 術式其の物の呪物化、更に縛りによる契約。

 黒色の黄金で出来た鈴として抽出したそれと縛りを交わすと、長男は魔虚羅に投げ渡した。

 

「そら、お前が顕現し続けるのに必要な核である術式が納められた呪物だ。壊れたが最後、如何に適応しようとお前は死ぬ。‭─‬‭─お前がお前である限り、それは弱点で有り続けるのだよ」

 

 魔虚羅という存在には、如何に適応しようと変えられない要素が土台にある。

 

 術者という存在、式神であるという立場、調伏の儀という環境。

 

 それら全てが揃って初めて成り立つ存在であり、無理難題として立ち塞がる存在だからこそこの世に在る事を許されていた。

 しかし長男は術式を呪物に変えて調伏の儀を行う「術師」を「所有者」と再定義し、それを魔虚羅に置き換えた。

 

 術式を手放し誰にも制御が出来なくする事で、魔虚羅の行動に枷を設けてみせたのだ。

 

「さあどうする? 僕を殺そうとすれば自分同士で戦う事になるが、それに気を付けさえすればお前は自由だ‭。─‬‭─‭─‬何処に行こうと、何をしようと好きにするがいい!」

 

 式神に自由を与える。

 制御を手放し、その意思を尊重する。

 

(さて‭─‬‭─どうなるんだ? 式神は僕も扱ったことがあるから言えるが、自由意思を持った式神は存在しない。これまでの挙動から自我が強いのは分かるが、何を考えてるかはさっぱりだ。

 ……そもそも、既に術式はこの魔虚羅の調伏でいっぱいでもう一体出せるかは怪しい所がある。縛りこそ結んだが、いざそうなってももう一体を出せずに縛りが破綻。反動で呪物が壊れて術式も破綻。この魔虚羅も共に消えるのがオチだろう。どう動こうと、攻撃した時点でどの道コイツは終わる)

 

 それがどのような結果になるか、長男は一切考えて居なかった。

 仮に暴れられればそれまでだが、どの道このまま殺されるよりはマシなくらいの浅慮で自分の安全だけを確保し、様子を見る。

 唯一助かる道がそこに見えたから通っただけ。

 言える事は全て言った以上、後は黙って対峙する他ない。

 

『…………』

 

 一方、この状況に困惑しているのは魔虚羅も同様であった。

 現状、術式としては調伏をしている真っ最中。

 術者改め所有者が自分自身である以上攻撃する訳にもいかない。

 それは自殺と同義である。

 

 自殺するような事は儀式としてあってはならない。

 しかし、攻撃しなければ儀式にならない。

 

 矛盾。

 

 ここで取れる行動は3つ。

 1、式神として、調伏の儀のルールに従って自殺を決行する。

 2、所有者として、調伏の儀のルールに従って自殺を決行する。

 3、現状に適応し、解決策を定める。

 

『‭─‬‭─ガコン』

 

 故に、答えは3。

 問題はその上でどういう解決策を取るか。

 所有者は縛りによって固定された。無闇に破れば最後、呪物が壊れ消えかねない。

 それならば‭─‬‭─先程から様子を伺っていた呪霊達の方へ向かうべきだ。

 

 ダッ!!

 

「……矛盾した行動原理への適応か。所有者を固定した以上、式神の立場を押し付けるのだろうが……一体どうやって?」

(妹達の方へ跳んで行ったが、どうやって押し付けるつもりなんだ?)

 

 魔虚羅の取った行動は式神の立場の方を誰かに押し付けること。

 手を出せばどうなるか定かではない相手を無視し、適当な誰かを調伏の相手として探し求めることを決めた。

 

 ‭─‬‭─‭─‬‭─ズ…ン

 

『「!?」』

 

 選んだ相手は最も近くに居た術式の適合者‭─‬‭─3体。

 

(……いや、見落とした可能性を探るのは後。今はコレをどうにか殺さ‭─‬‭─は!!?)

 

 自分自身を創り上げた白い歯車の頭部を持った呪霊。

 

『ガコン』

 

 しかし、現状考えている手段でこの術者の能力では力不足。

 因縁こそあるが、現状を解決する手段足り得ない。

 乱入者として顔面を殴り、追撃に剣で斬って殺す。

 

(私にどうにかなる相手かな。魂を確認出来ない……ふふ、式神って私と相性最悪なんだよね。どうし……あ、こっち来た終わ)

 

 魂をあらゆる形に変える事が出来、式神の立場を容易に押し付けられそうなツギハギの呪霊。

 

『ガコン』

 

 しかし、式神に無力な術者でも力不足。

 生物や呪霊には無敵とはいえ、道具も同然な式神相手の戦力としては頼りない。

 必要なのは魂に触れられる様になる適応のみ。

 乱入者として敢えて手加減して襲い、発動してきた無為転変に適応してから殺した。

 

『ガコン』

 

 やはり‭─‬‭─狙うならばそこの()()()()()()()()

 生者の術師相手ならどんな存在も模倣可能な術式こそ相応しい。

 

 その対象になる為に人の肉体と魂を得る必要があるが‭─‬‭─丁度、肉体も魂もこの場に揃った。

 

『ガコン』

 

 

 

 ▲▽

 

 

 

 魔虚羅がやろうとしている事は成り変わりである。

 自分を斃せるだけの力を持つ術師の肉体と魂を奪い、術者としての立場を獲得。

 その後蓄積した情報が消えて初期化した魔虚羅、己自身を一撃で葬る事。

 

「漸く家に戻って来れた。死体を抱え乍らの旅も随分と長くなってしまったな」

 

 縛りの所有者定義が「魔虚羅」ではなく「この式神」である都合、文脈から考えて対象は常に今の考える自分……精神を対象に取っている。

 ならば精神と肉体を分離すれば、この矛盾は解消され調伏は無事に終えられる。

 

「…? 照尽の死体が儀式場に引き寄せられている……? 引力を発生……感覚からして呪力特性。考えられるのは雀の考歯か……ならばよし、お前の好きに使いなさい」

 

 そこで魔虚羅が選んだのは、丁度近くに運ばれた術師の肉体と呪具に納められた小石の魂。

 生きている術者ならば誰だろうと模倣可能な術式と「見せる/見る」ことに特化した術式。

 そして今、魔虚羅の居る領域は術式こそ付与されてないものの、「藤の一族」を経由して日本全土を対象にしている「招虎」の生得領域。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 以上の3つの要素を組み合わせた「この世全ての術師の再現」。

 それこそが魔虚羅が考案した調伏の儀の終わらせ方。

 

 既存の適応能力を超えた新たな適応手段である。

 

 

 

 ▲▽

 

 

 

 視点は戻り、戦場。

 

『‭─‬‭─‭─‬ガコン』

 

 2体の呪霊を除祓し七支刀の呪具を死体に飲み込ませ、適応を利用し所有者の対象となるこれまでの情報を魂への接触を行いアウトプット。この時点で縛りへのを含む全ての適応が消失。

 精神側が適応能力を無くすと共に、魔虚羅の身体も初期化された。

 

 死体であった照尽の肉体に小石の特徴が混ざり、魔虚羅の翼が生え乍ら立ち上がる。

 

(‭─‬‭─‭─縛り締結)

 

 元々魂と肉体に有った情報は成り変わる為の縛りとして削除し、自身の蓄積情報の記載を完了。

 この際小石の魂が蘇った事により傀塚の相伝儀式が魔虚羅入り照尽小石を相伝対象に認定。

 しかし既に死体を利用する事で受肉は成されている。儀式対象として不適格とし相伝権利を剥奪。

 この時点で生き残りは傀塚の長男のみとなり相伝儀式は終わりを迎えようとしていた。

 

 故に、「この世全ての術師の再現」が成立するのは今から「招虎」の生得領域が崩れる3秒間のみ。

 

「求:呪力出力上昇 出:魔虚羅の情報」

 

 1秒。全ての記憶を対価とすることで呪力出力を要求値まで底上げ。

 この一瞬の為に唯一己が魔虚羅であった証明、その全てを差し出した。

 

 2秒。可視化の術式反転により領域内に納められた全ての術師の情報を閲覧。

 その中から最も強力な術師を選定し、生霊術で情報を再現。

 歪な肉体が術式によって更に歪み、縛りで己が消され、最早何者かも分からぬ程肉体は白く漂白されていく。

 

「再現:天元」

 

 3秒。あらゆる領域、この世全ての結界の権限を獲得。

 この瞬間、日本全土に現界した結界に()()が発生。

 天元が観測していた全術師、全呪霊、全呪物、全結界の呪力の総量10%を剥奪し一点に集中。

 

 

「呪天臨界・載」

 

 

 バチッ‭─‬‭─。

 

 

 ……忘れてはならない。

 例え相伝権利を失おうと、参加者の魂を材料にした以上その内部に秘められた呪力は存在して続ける。

 

 "傀塚白が仕込んだ黒閃の呪力すらも出力に使用する事による黒閃の伝播。全呪力への黒閃化"。

 

 天変地異、青天霹靂、驚天動地。

 本来ならばエネルギーの逃げ場のない結界内であらゆる場所で掻き集めた呪力の圧縮と爆破を行う業。本物の天元が管理する結界内部の存在を対象にする事による(業の極み)

 極まったそれの2.5乗は魔虚羅を殺すのに飽き足らず閉じ込める結界すらも破壊……。

 

 生得領域内を順応無尽に蹂躙し、傀塚家全てを殺し壊し、相伝儀式を破綻させる事となる。

 

 

「……それだけやって、肝心の倒し方は爆発か。余りにお粗末な手口だな」

 

 

 ‭─‬‭─…する事を、家長への存続が定まった長男は許さない。

 

「構築術式は自分の呪力しか対象に取れないと言ったがね。母曰く、こと一卵性の双子であれば同一人物と看做され、その者の呪力も扱えるのだそうだ」

 

 今にも臨界せんとひび割れていく結界に触れた長男が術式を行使する。

 既に儀式を終えたのかその手には血肉が宿っており、内部の爆破で高熱化した結界に触れた部位は忽ち焼けていく。

 

「そして末妹曰く、肉体は魂の姿に依存するそうだ。ならば元は兄妹、見た目さえ変えればその条件を満たさない道理はないだろう?」

 

 蛹の縛り第二項。

 呪具「一族列伝」を取り込んだ者を勝者として産み、それ以外は呪具として再現される。

 

 特級呪具「魂触の糸」

 糸を結んだ自身と相手の魂に接触し、その形を自在に改造出来る。

 

 特級呪具「白歯車(はくはま)

 使用者の思考領域を拡大し、あらゆる呪力に関わる行いを補佐する。

 

 背に浮かぶ白色の歯車は廻り、長男の親指に結ばれた糸を伝ってその魂を改造していく。

 初めての魂の改造、通常ならば即刻死んでもなんら不思議ではない行いが、歯車の回転と共に砂丘の砂粒一つ程度の成功の未来へと導いた。

 

「構築術式」

 

 性別、容姿を女の物へと変えた長男の思惑は果たして、成功を納めた。

 術式対象となった溢れる呪力が次々と黄金へと変わっていく。

 既に術式を行使した元魔虚羅の女は記憶を無くし気絶した。

 儀式を終えた父母も縛りによって死に至り、領域も剥がれ落ちた。

 長男が死ねば最後、傀塚諸共領地は崩れ去る。

 

(……グっ…ダメだな。変換が追いつかない。空間も足りない。地中に埋めるよう再計算。今後元の姿に戻らない縛りで変換速度を上げる)

 

 ‭─‬‭─招虎とは、元来の意味は金運、魔除けの置物として親しまれている物である。

 恣意的な厳選なく創られた長男は何の因果か、金を創るのに特化した構築術式を持つ男児であった。

 

(……チ。まだ足りないか。ならば今後金以外創れない縛りを結ぶ。更に速度を上げろ)

 

 招かれた黄金、その化身。

 傀塚の両親は運命を感じ、この男児が儀式を勝ったのならばと一つの名前を考えた。

 

「‭─‬‭─‭─"‬我が人生、今後二度と構築を行えない縛りも結ぼう。故に無尽の呪いよ、我が黄金としてその身を変えよ"!」

 

 傀塚(かいづか)白金(しろがね)

 傀塚家三代目、その名である。

 

 パキ…バキバキ…!!

 

「……既に数千貫は変換したというのに、依然勢いが衰えない…! グゥ…ここまで…なのか…!」

 

 詠唱、掌印、縛り、呪具。その全てを使い、日本全ての一割を黄金へと変えていく。

 眼鼻から血が流れ、既に黒閃に触れて己の限界まで引き出された潜在能力を超え、術式はいつ焼き切れてもなんら不思議ではない。

 

「ア"…ア"ア"ア"!!!」

(眼が見えない…痛覚も消えた……死にたくない。死にたくないが、最早これまでだろう。されども、僕は傀塚の長男だ。この地を治める豪族で、力なき非術師を護らんとする術師だ。例えこの身が朽ちようと、僕達の我儘で殺してはならないのだよ)

 

 いや、既に術式は限界を迎えた。

 眼と脳の繋がりが途切れたのか既に暗闇に包まれ、気絶と覚醒を繰り返し、それでもと白歯車に組み立てた焼き付かせた構築術式を並列処理して変えている。

 魂も改造し続けて元に戻しては何度も焼いて、それを繰り返しているのだ。

 

(……いや、やっぱり死にたくない! 逃げたい! もう良いだろう、僕は頑張ったぞ! 体感半分は黄金に変えた! 魂を変えて地中に避難すれば僕は助かる! もうじき結界は破裂する! それまでに逃げ出せば‭─‬‭─‭─‬)

 

 何故そこまでして踏ん張るのか。

 正直な話、白金は自分の生存にしか興味が無かった。

 妹達を殺そうとしたのもそれが理由であったからだし、敢えて仲良くなる必要もないと好かれる様な事はしなかった。

 自分の平穏な日々が無事であればそれでいい。他者との関わりに興味はない。

 

 自己中心的な、典型的な呪術師。

 それが白金という魂の在り方であった。

 

(‭─‬‭─‭─‬いや、ダメだ。既に傀塚という家は僕の日常の一部だ。それが壊れるのを見過ごす事はあってはならない。あっては、ならないのだ)

 

 この元男は既に、一族列伝の呪具を取り込んでいる。

 初代から続く思いを、精神を乗っ取ろうとするそれを捩じ伏せてここに居る。

 捩じ伏せたが、背負うと決めて立っている。

 

 但し精神力だけで、呪術師は実力を覆す事は出来ない。

 

「ギ…ィ……!!」

(ダメだ…もう持たな‭─‬‭─)

 

 

「……がこん」

 

 されど此処には、もう一人の呪術師の卵が存在する。

 

 それは偶然ではあった。

 黄金に変えている最中、気絶していた女に黄金の欠片がぶつかっていた。

 それによって目覚めたその者は全ての記憶を無くしたが、何となく目の前の男が大事であるという考えに至っていた。

 

 "お前の所有者を「この式神」に固定する代わりに、所有者が僕に連なる傀塚の一族と所有物を傷付けようとしたら、故意に関わらず新たな八握剣異戒神将魔虚羅を出せ。強制的な調伏の儀を開始しろ。"

 

 白金が術式と交わした縛り。

 その縛りの詳細を思い出せなくなった女に残ったのは、漠然とした"大切にしないと"という感情だけ。

 目覚めて初めて見た相手である事、それが危機的な状況である事、容姿が同じである事……偶然と必然が混ざり合い、その結果として出力されたのが、「助ける」という行動。

 

「‭─‬‭─ッ!」

「っ!?………いや、今は何であれ助かる! ハァァァァァ!!!」

 

 一卵性の双子は、呪力としては同一人物として看做される。

 相反すればお互いの足を引っ張り合い、同じ方向に進めば二倍の力。

 二心同体の存在であれば、或いは元とはいえ適応に特化した式神であったならば、呪力操作を手伝う事は可能。

 

 ‭─‬‭─‬‭─‬‭─シュゥゥゥゥ……。

 

「はぁ…はぁ……はぁ……」

「…………が……こ…キュゥ…」

 

 果たして、どれだけの奇跡が重なったか。

 

 傀塚家の儀式が終わった跡に残ったのは双子と果てのない黄金の鉱脈。

 それから、何もかもが無事に終わった儀式場。

 

「……はぁ…はぁ……相伝の儀の終わりを……此処に…宣告する……"結"」

 

 

 こうして、傀塚家は新たな世代へと受け継がれる事となる。

 

 






 じゅじゅさんぽ。
 Q.傀塚をどう思ってますか?
天皇一族「いつの間にか部下って事になってた陰陽師」
藤原一族「便利。殺すのは最後にしてやる」
天元「とんでもない儀式を行った一族。全盛期の私の再現には度肝を抜かれた」
晴明「なんか特級術師に認定されたやつ。未来視の精度すごいね。顔見せろ」
蘆屋「なんか日本の北側を担当してる人。助かるけど一回顔見せろ」
他の平安呪術師「「「誰?」」」

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