「さぁー降りてきました!多分!最下層!」
「ん!!」
「最下層じゃないならまだおりればいいだけだ」
「それはそう」
エセアルラウネを始末したその後は、特に何事もなく行き詰まることもなく、今いる階層まで降りてきた。
多分最初に落ちた階層からここまで数えたら100層目じゃねぇかなぁ...そのため、最後の階層と思って最終準備をしております。と言っても全部ハジメのことなんだけどね。
ドンナーやったり前作った対物ライフルと俺の刀の調整。刀に関しては俺元々呪具化してたのメインで使ってたから全く知識ないんでハジメまかせ。一様呪力流して呪具を促してはいるけどね。
それはそれとしてユエさん、近いッス...俺、腐ったミカンどもに舐められてた時ハニトラとかあったけどさぁ、こういった純粋な好意には弱いの、ヤメテ.. スピキヲイジメヌンデ....おい、ハジメそんな目で見るんじゃねぇ!!仕方ねぇだろ!!あんな青春なんかできる環境なかったんだからさぁ!!それに周りに女性いたけど異性として見てねぇの!ただの仕事仲間としか見てなかったのッ!!
「ハジメ....リュウガ....いつもより慎重....」
「まぁそりゃ100層目が最後かもしれんしな、違っても備えといて損はない。」
「これで骨折り損だったら笑う。」ヤメロヨソウイウコトイウノ
はいっ!話戻す!という訳で現時点でハジメくんここに来るまででかなり強くなってます。それと体術を軽くここに来るまでの間の要所要所で叩き込みました、余りにも拙いのでね。ズブの素人とは言えね。見てられんかったから徹底的に叩き込んだよ、今必要な分だけね。対人技術はおいおい鍛えればいいしね。
ハジメ自身も俺が教えれない銃技、魔法、兵器んで錬成。いずれにも相当磨きが掛かってたからそう簡単には殺られんでしょ。
「お?終わったか?」
「あぁ、今終わったぞ。そっちは?」
「おう、準備万端。游雲とドンナー二世改めてウィンチェスター。どちらもOKだ。もお前が整えてくれたしな。」
「おう、そういうの得意分野だ。任せとけ」
「ん...頼もしい....」
さて、行こうかなぁ...ん?俺の準備はって?簡単さ、模倣した術式の練度を上げてただ真贋模造でひたすら呪具を贋作を作り上げてストックすんの。え?時間制限あるんじゃないのかだって?あ〜それね、縛りを結ばなかったらの話。まぁ、術式そのものの数時間使用禁止とかじゃないとすぐ霧散するけどね。それでも1、2回使うのが限界かな〜?
まぁ、そんなこんなで全部準備を終えて階段を降りていく俺たち。
その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。
天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。
なんか禪院家で似たようなとこあったなぁ...あっちとは比べるまでもなく綺麗だけどね。その光景に目をやっていると全ての柱が淡く輝き始めて俺たちを起点に奥の方へと輝いていく。
はしばらく戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。
「おー、でっか。」
「これはまた凄いな...もしかして」
「....反逆者の住処?」
これまたいかにもラスボスが居ますよって言ってる部屋が出てきたよ。実際、俺の体が疼いて来てるんだよなぁ...宿儺の時ほどではないにしてもだよ...クヒヒ...
「ハジメェ....ビビってねぇだろぉな?」
「な、訳ねぇだろ?もしこれが最後なら最高じゃねぇか。ようやくゴールってことだろ?」
「んっ...!」
ハジメが不敵な笑みを、ユエが覚悟を決めた顔をする。例え何が待ち受けていようとやるしかないのだ、上に上がるために。
そして3人揃って揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。
その瞬間、扉とリュウガ達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。
(おぉん?この魔法陣、見覚えが....確かベヒモスとかやら出てきたのと似てんなぁ...にてしてはデケェな...クヒヒ...あかん、疼いてきたわ....)
「おいおい、なんだこの大きさは?マジでラスボスかよ」
「ハッハァ!!いいねぇ!これよこれ!こうじゃなくちゃ!臆するなよ!ハジメ!臆せば死ぬぜぇ!!」
「大丈夫....私達、負けない....」
隣のハジメが流石にとってキツイのか引きつってる笑みが浮かべているので喝を入れておく。そうしてるとユエが俺の腕を掴みながら負けないと言ってくる。
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとユエ、そしてリュウガ。光が収まった時、そこに現れたのは.....
体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。
「「「「「「クルゥァァァァンッ!!!」」」」」」
不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がリュウガ達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気がリュウガ達に叩きつけられた。
同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。
「初撃は貰うぜぇ!!?グラニテッ!ブラストォ!!!」
ハジメとユエが左右に散り、リュウガがその場に残り、ウィンチェスターを引き抜き、グラニテブラストで炎諸共赤頭を消し飛ばす。
まずは1つと考えてると、白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。白頭は回復魔法を使えるらしい。
リュウガに遅れてユエの氷弾が緑の文様がある頭を吹き飛ばしたが、同じように白頭の叫びと共に回復してしまった。
ハジメがその光景を見て、舌打ちしつつ念話で伝えてくる。
"ユエ!リュウガ!白頭狙うぞ!キリがない!"
"んっ!"
"ほい来た!"
青い文様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを回避しながらハジメとユエが白頭を狙う。
ドパンッ!
「“緋槍"!」
閃光と燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。
そして淡く黄色に輝きハジメのレールガンもユエの"緋槍、も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいてハジメ達を睥睨している。
「ちっ!盾役か。攻撃に盾に回復にと実にバランスのいいことだな!」
ハジメは頭上に向かって"焼夷手弾、を投げる。同時にドンナーの最大出力で白頭に連射した。ユエも合わせて”緋槍、を連発する。ユエの"蒼天、なら黄頭を抜いて白頭に届くかもしれないが、最上級を使うと一発でユエは行動不能になる。吸血させれば直ぐに回復するが、その隙を他の頭が許してくれるとは思えなかった。
せめて半数は減らさないと最上級は使えない。
黄頭は、ハジメとユエの攻撃を尽く受け止める。だが、流石に今度は無傷とはいかなかったのかあちこち傷ついていた。
「クルウアン!」
すかさず白頭が黄頭を回復させる。全くもって優秀な回復役である。しかし、その直後、白頭の頭上で“焼夷手弾"が破裂した。摂氏三千度の燃え盛るタールが撒き散らされる。白頭にも降り注ぎ、その苦痛に悲鳴を上げながら悶えている。
「このぐらい溜めればええかねぇ...吹っ飛べ!!グラニテッブr「いやぁあああああ!!!」ッ!ユエ!?ハジメ、時間稼ぎ頼んだ!」
「おう、早く行け!」
咄嗟にユエに駆け寄ろうとするが、それを邪魔するように赤頭と緑頭が炎弾と風刃を無数に放ってくる。未だ絶叫を上げるユエに、歯噛みしながら一体何がと考える。そして、そういえば黒い文様の頭が攻撃らしい攻撃を未だ何もしていないことを思い出す。
(否ッ!んな手ぬるい訳がねぇ!もう俺たちはあの黒頭の攻撃を食らっているんだっ!)
「落ちろっ!カトンボ!グラニテブラストォ!!」
『投射呪法』で加速しつつ、空を蹴りながら攻撃を躱しつつウィンチェスターを黒頭に構えグラニテブラストを放ち消し飛ばす。
それと同時に、ユエがくたりと倒れ込んだ。その顔は遠目に青ざめているのがわかる。そのユエを喰らおうというのか青頭が大口を開けながら長い首を伸ばしユエに迫っていく。
「させん!『投射呪法』、極の番....『夜天』!」
極の番を使用し、限界まで瞬間的に加速。炎弾と風刃の嵐を紙一重で躱していく。それでも躱しつつ来たのがロスに繋がったのかギリギリで到着した。
「チッ!ギリギリかっ!...『シン・陰流』簡易領域、抜刀!」
即座に刀を影から出し、簡易領域を展開し一刀で青頭を切り落としすぐにユエを抱え、すぐの近くの柱の影に隠れる。
その間にハジメが閃光手榴弾と音響手榴弾でヒュドラを怯ませ時間を稼いでいる。
「ユエッ!しっかりしろ!」
「.....」
リュウガの呼びかけにも反応せず、青ざめた表情でガタガタと震えるユエ。ここまで酷いとなると大方精神干渉系かと当たりを付け、ペシペシとユエの頬を叩く。“念話、でも激しく呼びかけ、神水も飲ませる。しばらくすると虚ろだったユエの瞳に光が宿り始めた。
「ユエ?」
「リュウガ...?」
「おう、目が覚めたみたいだな。お姫様?」
パチパチと瞬きしながらユエはリュウガの存在を確認するように、その小さな手を伸ばしリュウガの顔に触れる。
それでようやくリュウガがそこにいると実感したのか安堵の吐息を漏らし目の端に涙を溜め始めた。
「....よかった....見捨てられたと....また暗闇に一人に....」
「ああ?そりゃ一体何の話だ?」
ユエの様子に困惑するリュウガ。ユエ曰く、突然、強烈な不安感に襲われ気がつけばリュウガに見捨てられて再び封印される光景が頭いっぱいに広がっていたという。そして、何も考えられなくなり恐怖に縛られて動けなくなったと。
(いやまぁ、封印する方法があるといえばあるんやがねぇ...)やっぱ精神干渉系かね?面倒だな、聞いた感じ多分人によって変わる効果ぽいっしな」
「....リュウガ」
黒頭の能力に健闘をつけているとユエは不安そうな瞳を向けてくる。よほど恐ろしい光景だったのだろう。リュウガに見捨てられるというのは。何せ自分を三百年の封印から命懸けで解き放ってくれた人物であり、吸血鬼と知っても変わらず接してくれるどころか、日々の吸血までさせてくれるのだ。心許してくるのも仕方ないだろう。
そして、ユエにとってはリュウガの隣が唯一の居場所だ。一緒にリュウガ達の故郷に行くという約束がどれほど嬉しかったか。再び一人になるなんて想像もしたくない。
そのため、植えつけられた悪夢はこびりついて離れず、ユエを蝕む。ヒュドラが混乱から回復した気配に流石にこれ以上ハジメだけに任せておけれないとリュウガは立ち上がるが、ユエは、そんなリュウガの服の裾を思わず掴んで引き止めてしまった。
「...私....」
泣きそうな不安そうな表情で震えるユエ。リュウガは何となくユエの見た悪夢から、今ユエが何を思っているのか感じ取った。そして、普段からの態度でユエの気持ちも察している。どちらにしる、日本に連れて行くとまで約束してしまったのだ。今更、知らないフリをしても意味がないだろう、するつもりもないが。
慰めの言葉でも掛けるべきなのだろうが、今は時間がない。それに生半可な言葉では、再度黒頭の餌食だろう。今度それをされると巻き添えでハジメがやられる可能性もあるのだから、その時はユエにフォローしてもらわねばならない。そんなことを一瞬のうちに、まるで言い訳のように考えると、リュウガは、ガリガリと頭を掻きながらユエの前にしゃがみ目線を合わせる。
「あ〜なんだ?ユエ、手出してくれ」
「ん?....!?」
首を傾げながら出してきたユエの手にキスを落とす。ほんの少し触れさせるだけのものだが、ユエの反応は劇的だった。マジマジとリュウガを見つめる。
「あ〜そのなんだ?今はそれで我慢してくれや。あいつ殺して地上に出てハジメと帰るぞ。一緒にな!」
「...っ!んっ!!」
ユエは未だ呆然とリュウガを見つめていたが、いつかのように無表情を崩しふんわりと綺麗な笑みを浮かべた。
リュウガはユエに作戦を伝え、ハジメにも伝えるように言う。
「ユエ、ハジメにシュラーゲンを使いように言っといてくれ。狙いは任せるってな?ユエはその間、ハジメのサポート任せた。」
「....任せて!」
いつもより断然やる気に溢れているユエ。静かな呟くような口調が崩れ覇気に溢れた応答だ。先程までの不安が根こそぎ吹き飛んだようである。
「?...リュウガは?」
「俺?俺はな....」
どうやら色々吹っ切れてしまったようだ。普段からのリュウガに対する甘えっぷりを思い出し、今後のことを思うと、ちょっと早まったかもしれないと頬が引き攣るリュウガ。そんな中、ユエがリュウガはどうするの聞いてくるがヒュドラはリア充爆発しろ!と言わんばかりに咆哮を上げ、リュウガ達のいる場所に炎弾やら風刃やら氷弾やらを撃ち込んできた。
二人は一気に柱の陰を飛び出し、ユエがハジメの元に駆け出す。そしてリュウガは...
「カチ込むッ!!仮とはいえうちの姫様泣かせてくれたんだ、代ぐらい払ってけぇやぁ!?」
そのままヒュドラ目掛け駆け出す。
「加減は抜きだ!オーバーヒート覚悟!出力最大ィ!!グラニテッ!ブラストォォ!!!」
ウィンチェスターを今までとは比べ物にはならない威力の呪力砲が放たれ攻撃直後の隙を狙われ死に体の赤頭、青頭、緑頭の前に黄頭が出ようとするが、白頭の方をハジメが狙っていると気がついたのかその場を動かず、代わりに咆哮を上げる。
「クルゥアン!!」
すると近くの柱が波打ち、変形して即席の盾となった。どうやらこの黄頭はサソリモドキと同様の技が使えるらしい。もっとも規模は幾分小さいけど。
呪力砲がその石壁にぶつかると瞬時に貫き、容赦なく3つの頭を消し飛ばす。
流石に焦ったのか黒頭が、魔法を使った直後のユエを再びその眼に捉え、恐慌の魔法を行使する。
ユエの中に再び不安が湧き上がってくる。しかし、ユエはその不安に押しつぶされる前に、先ほどのリュウガからのキスを思い出す。すると、体に熱が入ったように気持ちが高揚し、不安を押し流していった。
「.....もう効かない!」
ユエは、リュウガを援護すべく、更に威力よりも手数を重視した魔法を次々と構築し弾幕のごとく撃ち放つ。
回復を受けた赤頭、青頭、緑頭がそれぞれ攻撃を再開するが、ユエはたった一人でそれと渡り合った。尽く相殺し隙あらば魔法を打ち込む。
再びリュウガがつの首がユエに掛かり切りになっている間に、一気に接近する。万一外して対策を取られては困るので文字通り一撃必殺でいかなければならない。
黒頭がユエに恐慌の魔法が効かないと悟ったのか、今度はリュウガにその眼を向ける。
一瞬にして暗闇に堕ち新宿が写り五条達の死体が積み上げられ宿儺がその上に立っていた。
「あ〜なるほどね?....ハァァァ....舐められたもんだな。この程度で絶望するとでも?」
リュウガが死体を避けながら瓦礫の山を上がる。その速度が段々上がっていく。
「あとなぁ、おりゃな。アイツらが負けるとは微塵も思っちゃいねぇだよ。俺が、俺たちが鍛えた自慢の生徒達だぞ?...俺の生徒達と親友を舐めてくれてんじゃねぇぞ、この蛇野郎が!!」
駆け上がった先に居た宿儺に拳を叩き込む。すると即座に空間が砕け散り本来の空間に戻ってくる。
「いっぺん死んどけぇ!!!グラニテブラストッ!!」
冷却を終えたウィンチェスターを構え、グラニテブラストを放ち黒頭を消し飛ばす。
白頭がすかさず回復させようとするが、その前に待機していたハジメが
背負っていた対物ライフル...シュラーゲンを取り出し空中で脇に挟んで照準する。
黄頭が白頭を守るように立ち塞がるが、そんな事は想定済みだ、それを塞ぐようにリュウガが呪力を込めた拳を構え飛び上がってくる。
(確実に出るとは限らねぇ...でもここで出さなきゃ男が廃る!!)ブチカマス!!」
リュウガが拳を振るう。狙っているのは黒閃。呪力を纏った打撃において、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に空間が歪み呪力が黒い稲妻のように光る現象。威力は通常時の約2.5乗に跳ね上がる。
黒閃を経験した者とそうでない者とでは、呪力の核心との距離に天と地ほどの差があるという。尚、あくまで現象であり技ではないので、黒閃を狙って出せる術師などこの世に存在しない。
起きなければヒュドラにもまだ活路は残る。
「スゥゥー....」
それでも運の女神はヒュドラではなくリュウガに微笑んだ。
拳に纏った青いオーラが拳が当たる同時にヒュドラに当たると、その瞬間
"呪力は黒く光る"
「黒ッ閃ッ!!!」
黄頭に今までの何よりも強く重い衝撃が走る。今まで一切傷つくことはあっても消し飛ぶことがなかった黄頭が吹き飛ばされる。
その隙にリュウガが即座に離脱。
「ハジメェ!!」
「おう!纏めて砕く!」
ハジメが “纏雷"を使いシュラーゲンが紅いスパークを起こす。弾丸はタウル鉱石をサソリモドキの外殻であるシュタル鉱石でコーティングした地球で言うところのフルメタルジャケットだ。
シュタル鉱石は魔力との親和性が高く“雷"にもよく馴染む。通常弾の数倍の量を圧縮して詰められた燃焼粉が撃鉄の起こす火花に引火して大爆発を起こした。
ドガンッ!!
大砲でも撃ったかのような凄まじい炸裂音と共にフルメタルジャケットの赤い弾丸が、更に約一・五メートルのバレルにより電磁加速を加えられる。
その威力はドンナーの最大威力の更に十倍。単純計算で通常の対物ライフルの百倍の破壊力である。異世界の特殊な鉱石と固有魔法がなければ到底実現し得なかった怪物兵器だ。
発射の光景は正しく極太のレーザー兵器のよう。かつて、勇者の光輝がベヒモスに放った切り札が、まるで児戯に思える。射出された弾丸は真っ直ぐ周囲の空気を焼きながら黄頭に直撃した。
まるで何もなかったように弾丸は背後の白頭に到達し、そのままやはり何もなかったように貫通して背後の壁を爆砕した。階層全体が地震でも起こしたかのように激しく震動する。
後に残ったのは、頭部が綺麗さっぱり消滅しドロッと融解したように白熱化する断面が見える二つの頭と、周囲を四散させ、どこまで続いているかわからない深い穴の空いた壁だけだった。
一度に半数の頭を消滅させられた残り三つの頭が思わず、ユエの相手を忘れて呆然とハジメの方を見る。ハジメは煙を上げているシュラーゲンから排した。チンッと薬莢が地面に落ちる音で我に返る三つの頭。ハジメに憎悪を込めた眼光を向けるが、彼等が相対している敵は眼を離していい相手ではなかった。
「"天灼"」
かつての吸血姫。その天性の才能に同族までもが恐れをなし奈落に封印した存在。その力が、己と敵対した事への天罰だとでも言うかのように降り注ぐ。
三つの頭の周囲に六つの放電する雷球が取り囲む様に空中を漂ったかと思うと、次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばしてつながり、その中央に巨大な雷球を作り出した。
ズガガガガガガガガガッ!!
中央の雷球は弾けると六つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らした。三つの頭が逃げ出そうとするが、まるで壁でもあるかのように雷球で囲まれた範囲を抜け出せない。天より降り注ぐ神の怒りの如く、轟音と閃光が広大な空間を満たす。
そして、十秒以上続いた最上級魔法に為すすべもなく、三つの頭は断末魔の悲鳴を上げながら遂に消し炭となった。
いつもの如くユエがペタリと座り込む。魔力枯渇で荒い息を吐きながら、無表情ではあるが満足気な光を瞳に宿し、リュウガ達に向けてサムズアップした。リュウガ達も頬を緩めながらサムズアップで返す。ハジメがシュラーゲンを担ぎ直しヒュドラの僅かに残った胴体部分の残骸に背を向けユエの下へ行こうと歩みだした。
(...これで終わりか?本当に?大体こういうラスボスには第2形態があるってのが常設だが....)ん?まさか...」
リュウガが考えてるとヒュドラの残骸の方から視線を感じ振り返ると即座に
「リュウガ!!ハジメ!!」
ユエの切羽詰まった声が響き渡る。何事かと見開かれたユエの視線を辿ると、音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり、リュウガ達を睥睨していた。即座に離脱しようするリュウガだが思わず硬直してしまうハジメ。
だが、七つ目の銀色に輝く頭は、ハジメからスっと視線を逸らすとユエをその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。先ほどのハジメのシュラーゲンもかくやという極光は瞬く間にユエに迫る。ユエは魔力枯渇で動けない。
「チィ!ハジメ、シュラーゲン貸せ!壁!『シン・陰流』簡易領域!!」
「言われんでもぉ!!」
青頭の時の再現か、極光がユエを丸ごと消し飛ばす前に、壁を作りシュラーゲンを盾に再び立ち塞がることに成功したハジメとリュウガ。だが、その結果は全く違ったものだった。極光がリュウガを飲み込む。後ろのユエとハジメは直撃は受けなかったものの余波により体を強かに打ちぬかれ吹き飛ばされた。
極光が収まり、ユエが全身に走る痛みに申き声を上げながら体を起こす。極光に飲まれる前にリュウガが割って入った光景に焦りを浮かべながらその姿を探す。
リュウガは最初に立ち塞がった場所から動いていなかった。仁王立ちしたまま全身から煙を吹き上げている。地面には融解した壁とシュラーゲンの残骸が転がっていた。
「ゲホッゲホッ...ゴハッ....」
「!!...リュウガ!」
「んな!リュウガ!しっかりしろ!!」
リュウガが咳き込み血を吐きながら地面に倒れるのをハジメが支え阻止、ユエも続こうとするが魔力枯渇で力が入らず転倒してしまった。もどかしい気持ちを押し殺して神水を取り出すと一気に飲み干す。少し活力が戻り、立ち上がってリュウガの下へ今度こそ駆け寄った。
ハジメによって仰向けになっているリュウガの容態は酷いものだった。指、肩、脇腹が焼け爛れ一部骨が露出している。顔も右半分が焼けており右目から血を流していた。角度的に足への影響が少なかったのは不幸中の幸いだろう。
盾にしていたサソリの外殻を使ったシュラーゲン、申し訳程度に作った壁、そしてギリギリで展開が間に合ったシン・陰流簡易領域によって言葉は発せないが反転術式を回すだけの気力は残ってるようで煙が吹き上げている。
ユエは急いで神水を飲ませようとするが、そんな時間をヒュドラが待つはずもない。今度は直径十センチ程の光弾を無数に撃ちだしてきた。まるでガトリングの掃射のような激しさだ。
そこをハジメがリュウガと一緒にユエを抱えると即座にその場を離脱し柱の影に隠れる。柱を削るように光弾が次々と撃ち込まれていく。一分も持たないだろう。光弾の一つ一つに恐るしい程のエネルギーが込められている。
ユエは急いで神水をリュウガの傷口に降り掛け、もう一本も飲ませようとする。しかし、飲み込む力も残っていないのか、リュウガはむせて吐き出してしまう。ユエは自分の口に神水を含むと、そのままリュウガに口付けをし、むせるリュウガを押さえつけて無理やり飲ませた。
しかし、神水は止血の効果はあったものの、中々傷を修復してくれない。いつもなら直ぐに修復が始まるのに、何かに阻害されているかの様に遅々としている。
「どうして!?」
「落ち着け、ユエ!多分毒だ、毒が邪魔してやがる。」
ユエは半ばパニックになりながら、手持ちの神水をありったけ取り出すがハジメによって制される。
実は、ハジメの言う通りヒュドラのあの極光には肉体を溶かしていく一種の毒の効果も含まれていたのだ。普通は為す術もなく溶かされて終わりである。
しかし、神水の回復力が凄まじく、溶解速度を上回って修復しており、速度は遅いものの、リュウガの魔物の血肉を取り込んだ強靭な肉体と反転術式による中和に相まって時間をかければ治りそうである。もっとも、右目に関しては極光の光で蒸発してしまい、神水では欠損は再生できない以上治らず反転術式でしか治せないが。
柱はほとんど砕かれ、リュウガが目覚めるまで持ちそうにない。ハジメがドンナーに雷を疾らせ構えながら倒れているリュウガを見る。
「ちょっと待ってろ....お前が起きる頃には全部終わらせてやるよ。ユエ行くぞ」
「....ん....ちょっと待って....」
ユエが覚悟を決めた顔でリュウガを見つめるとそっと口付けをし、立ち上がった。
「....今度は私が助ける....」
魔力は僅か、神水は既に使い切り、頼れるのは身体強化を施した吸血鬼の肉体と、心もとない"自動再生'の固有魔法、そしてハジメが持つドンナーだけだ。
柱から飛び出たハジメとユエをヒュドラの銀頭は睥睨し光弾を連射する。ハジメがドンナーで魔法を撃ち落として行く中、ユエは、現在魔力が少ないため魔法で相殺するわけにも行かず、ハジメの様にドンナーで撃ち落とすこともできないので、ひたすら走ってかわしていく。だが、元来、体術を始めとした近接戦は不得意なユエ。直ぐに追い詰められていく。
そして、遂に光弾の一発がユエの肩に直撃した。
「あぐっ!?」
「チッ、ユエ!!」
痛みに呻き声を上げながら、吹き飛ぶ勢いそのままに立ち上がり再び駆ける。痛みで動きが止まった瞬間、たたみ込まれるとわかっているのだ。ユエの“自動再生"が始まるが、いつもより遅い。極光の付加効果は“自動再生"にも有効のようだ。魔力が更に削られる。このままでは身体強化に使う魔力も直になくなるだろう。
ハジメがカバーに走ろうとするがそれを許さないと言わんばかりに光弾がハジメを狙う。
ユエは何とか接近しようとするが弾幕の密度が高すぎて中々近づけない。近づかなければドンナーの射撃を当てることができるとはユエには思えなかった。そのため、どうにか隙を探って接近する必要がある。しかし、光弾は容赦なくユエを襲い、いよいよ追い詰められる。
その状況をどうにか打開しようと、ハジメが隙を見て最大の電磁加速を掛けたドンナーの引き金を引く。そして、狙い通り弾丸は弾幕の隙間を縫うように銀頭のこめかみ辺りに着弾した。
「なっ!?」
しかし、その弾は最大電磁加速したものであり並の魔物では受け切ることなぞ出来ずすぐさま屍と化すのだか、銀頭にはちょっと深く傷ついただけでありダメージを受けた様子がこれといってなかった。
ハジメ達の表情に絶望が陰る。しかし、自分らの敗北即ちリュウガの死であるため、引くつもりなんぞ毛頭なかった。
ハジメ達が歯を食いしばって再び回避に専念する。されど、そんなワンパターンがいつまでも続くはずがなかった。銀頭の眼がギラリと光ると二度目の極光が空間をませながら撃ち放たれた。光弾の影響で回避ルートが限られていたユエは、自ら光弾に飛び込み吹き飛ばされることで、どうにか極光のもたらす破滅から身を守る。
しかし、その代償に腹部に光弾をまともに喰らって地面に叩きつけられた。
また、ハジメも回避はできていたがどういう原理か通り過ぎってたはずの光弾が後ろから当たり、動きが止まる。その瞬間、ハジメに光弾が殺到する。なんとかリュウガに呪具を渡され教わっていた呪具から呪力を捻出し防御をするがリュウガならまだしもハジメは呪術に関してはズブの素人、雀の涙ほどの足しにならずリュウガ同様の体の惨状になってしまった。
ハジメがうつ伏せ倒れるのを確認した後、銀頭が体が動かないユエに狙いを定める。直ぐさま動かなければ光弾に蹂躙される。わかっていて必死にもがくユエだが、体は言うことを聞いてくれない。“自動再生"が遅いのだ。ユエはいつしか涙を流していた。悔しくて悔しくて仕方ないのだ。自分ではリュウガを、リュウガ達を守れないのかと。
銀頭が、倒れ伏すユエに勝利を確したように一度「クルゥアアン!」と叫ぶと光弾を撃ち放った。
光弾がユエに迫る。ユエは眼を閉じなかった。せめて心は負けるものかとキッと銀頭を睨みつけた。光弾が迫り視界が閃光に満たされる。直撃する。死ぬ。守れなかったこと、先に逝く事を、ユエはリュウガに対し心の中で謝罪しようとした。
その刹那、一閃の光が走る。
「ふぇ?」
気がつけば、ユエは、自分が抱き上げられ光弾が脇を通り過ぎていくのを見ていた。そして、自分を支える人物をじられない思いで見上げる。それは、紛れもなくリュウガだった。満身創痍のまま荒い息を吐き、片目をきつく閉じてユエを抱きしめている。
「泣くんじゃねぇよ、ユエ。お前らの粘り勝ちだぜ?」
「リュウガ!!」
ユエは感極まったようにリュウガに抱きつく。体の傷は反転術式で毒の中和を終えたのか完治している。
「たくっ、悟のやついくらそっち行くの早いからって蹴り飛ばすかねぇ...傑の野郎も混ざりやがってよ〜...今度あったらボコしてやる....さて」
誰かに悪態を付きながら文句を言い、銀頭を見やる。
周囲に光弾を浮かべながら余裕の表情で睥睨し、今更死にぞこないが何だと問答無用で光弾を放った。
銀頭の眼が細められ、無数の光弾が一気に襲ってきた。
「リュウガ、逃げて!」
「全て問題なし。馬鹿の一つ覚えか?出直してこい、俺に同じ技が2度も通用すると思うなよ?『極の番』砲天 グラニテッブラストォォォ!!!!」
それら全てを指先から放たれた極の番で呪力出力を底上げしたグラニテブラストれ消し飛ばし銀頭に直撃させる。
「クルゥゥアアン!?」
今までとは比較にならない威力に思わず銀頭が悲鳴を上げる。
ユエが目を丸くする。
「ユエ、血を吸え」
静かな目、静かな声でユエに促す。ユエはただでさえ血を失っているのにと躊躇う。ひらりひらりと光弾を交わしながら、リュウガはユエをきつく抱きしめ首元に持ち上げる。
「血なら問題ない。反転術式で生成済みだ。締めは任せるぜ?悪いが今の状態だとさっきのグラニテブラストで結構使ったから1回ぶっかますのが限界なんでな。」
「最後はお前の魔法が頼みの綱だ。....やるぞ、ユエ。俺達が勝つ!」
「...んっ!」
リュウガの強い意志の宿った言葉に、ユエもまた力強<頷いた。リュウガをじて首元に顔を理め牙を立てる。
リュウガの力が直接流れ込むかのようにユエの体を急速に癒していく。二人は光弾の嵐の中を抱き合いながらダンスを踊るようにくるくると動く。
(やっべぇなぁ...久しぶりにフルで反転回したからほぼガス欠や....あれ1回が限界かねぇ...取り敢えずハジメ起こすか)
光弾の嵐を掻い潜ながら倒れているハジメの元に駆ける。
着くとハジメの周りには血が池のように溜まっており、今にも死ぬのではないかと思わせるほどだっ。
「こりゃまた、派手にやられたなぁ?え〜と、あったあった『天の逆鉾』。」
影から出した天の逆鉾を分解し、ただの呪力の塊にし体に戻す。
それを元にハジメに反転術式を賭ける。
「さっさと起きろ〜、じゃねぇとメインに遅れるぜ〜?」
「ゲホッゲホッ....ゴホッ、うっせぇ、頭に響くわ。」
「ん?なんか変わったねぇ?」
「お前はなんも変わらねぇなリュウガ」
「そんなもんだろ、んな急激に変化するかってんだ。」
いくら呪力を還元したとはいえ、限りはあるのでほどほどに反転術式を掛けるのをやめ、ハジメの意識を起こす。すると、既に起きていたのか咽ながらも起き上がるその目には怒りが浮かんでいた。
ハジメの胸中には激しい怒りで満ちていた。自分は何をしている?いつまで寝ていれば気が済む?こんな所で友人たちを奪われる理不尽を許容するのか?あんな化物如きに屈するのか?
否!断じて否だ!自分の、自分達の生存を脅かすものは敵だ!敵は
「殺す!」
「どした急に!?」
リュウガが突然の殺害宣言に戸惑ったその瞬間、ハジメの頭のなかにスパークが走ったような気がし、ハジメは一つの技能に目覚めた。"天歩"の最終派生技能[+瞬光]。知覚機能を拡大し、合わせて"天歩"の各技能を格段に上昇させる。ハジメはまた一つ、“壁を超えた"のだ。
「ハジメ、ドンナーは?」
「あ?...悪い、壊れてるわ。貸してくれ」
「仕方ないにゃ〜ほれ。それまで壊すなよ」
「アホ抜かせ、それで?」
「締めユエ、味付け俺、下拵えお前。おけ?」
「よし、任せろ。あいつのタゲを取れば良いんだな?」
「That's Right」
「じゃあ言ってくる」
ハジメに作戦を告げると"縮地"で目の前から瞬時に消える。
リュウガ達からハジメが離れるとそちらに狙いを移し、光弾を差し向ける。
迫り来る光弾の弾幕を紙一重でかわしていくハジメは、"縮地"で場所を移動しながらドンナーを発砲する。銀頭は先ほどのハジメの銃撃で全くの無傷と行かなかったのが気に食わないのか、頭を振って回避した。銃弾は外れ明後日の方向へ飛んでいき天井に穴を開けるに終わる。
ハジメは気にした様子もなく次々と場所を変え銃撃するが、やはり弾丸は外れて虚しく天井に穴を開けるだけだった。銀頭の目に嘲りの色が宿る。
ハジメはドンナーを撃ち尽くすと"空力"で宙へ跳躍する。今までの比でないくらい細やかなステップが可能になっており、天井付近の空中を泳ぐように跳躍し光弾をかわす。
いい加減苛立ったのか銀頭が闇雲に極光を放った。
然あっさりかわしたハジメはニヤリと笑う。ハジメは看破していた。銀頭が極光を放っている間は硬直していることを。そして、リロードしたドンナーを再び六箇所に向かって狙い撃った。
すると、突然天井に強烈な爆発と衝撃が発生し、一瞬の静寂の後、一気に崩壊を始めた。その範囲は直径十メートル、重さ数+トン。大質量が崩落し直下の銀頭を押し潰した。
ハジメは天井にドンナーで穴を開け、空中で光弾をかわしながら手榴弾を仕込みつつ、錬成で天井の各部位を脆くしておいたのである。そして、六箇所をほぼ同時に撃ち抜き爆破した。
ハジメは攻撃の手を緩めない。ただの質量で倒せたら苦労しないのだ。“縮地"で押しつぶされ身動きが取れない銀頭に接近し、錬成で崩落した岩盤の上を駆け回りそのまま拘束具に変える。同時に、銀頭の周囲を囲み即席の溶鉱炉を作り出した。その場を離脱しながら焼夷手榴弾などが入ったポーチごと溶鉱炉の中に放り込み、叫ぶ。
「リュウガ!!」
「よし、下拵えご苦労。下がりや」
ハジメがリュウガの名を呼ぶとリュウガがハジメを下がらせ自らは1歩前へ出る。
(さて、出来るかどうか...違うな、できるできないじゃない、やるんだよ...!)『御厨子』....さぁ、見な。これが、これこそ呪術の極地!1つの到達点!!」
ここに万死の厨房が顕現する。
その瞬間、銀頭を含めた周囲全てが切り刻まれる。
縛っている拘束具、鱗、肉も何なかったのように一方的に切り刻まれていく。
本来リュウガに、紅神龍牙に御厨子の領域展開、即ち呪いの王の領域は使えないはずだった。あれは、呪いの王の類い稀なるセンスと才能の具現化というもの。いくら龍牙とは言えどかの王に比べれば凡人に等しい。
それ故にこの閉鎖空間を利用し、擬似的な結界に使用。更に本来使う呪力の数倍を支払う縛り、これにより一時的な領域展開が可能となった。
「チッ、持たんか。ユエ、仕上げだ。」
「ん、任せて...」
蒼天
リュウガによって切り刻まれた所をユエの蒼天による追撃。
これを光弾によって弾こうとするが発射口を斬撃によって潰され又はグチャグチャにされているため光弾が発射前に暴発、逆に更に苦しむ羽目になった。そのうちハジメが擬似的な溶鉱炉兼拘束具を再構成。
青白い太陽が即席の溶鉱炉の中に出現し、身動きの取れない銀頭を融解させていく。中に放り込まれた爆薬の類も連鎖して爆発し、防御力を突破して銀頭に少なくないダメージを与えていった。
なんとか撃てる発射口から何とか逃げ出そうと暴れ、光弾を乱れ撃ちにする。壁が撃ち崩されるが、ハジメが錬成で片っ端から修復していくので逃げ出せない。
極光も撃ったばかりなので直ぐには撃てず銀頭は為す術なく高熱に融かされていった。
魔力の反応が完全に途切れる。今度こそヒユドラの死を確言したハジメは、そのまま後ろにぶっ倒れた。
「ハジメ!」
「ありゃまぁ...たくっ締まらんやつやなぁ...w」
「流石に...もうムリ......」
思わずハジメに駆け寄ろうとして力が入らないユエを抱えるリュウガに肩で支えられる感覚を感じながら意識を落とすハジメを見て笑いが漏れ出てきたリュウガ。
to be continued.....
はい、蛇弟でございます。
ほんとは2話構成にしようとしてたんですけど、気づいたら1話になってました()。それはさておき、自分書くもの増やしすぎたので少しまた不定期更新になりますが気長にお待ちください。
ではサラダバー