それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。
にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているかららしい。
魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末にし、刻み込むなり染料として使うなりした場合と比較すると、その効果は三分の一程度にまで減退する。
要するに魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的ということだ。その他にも、日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われる。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのである。
ちなみに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。
俺達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。
「...ん〜術式試せんかったなぁ〜。出来れば穿血まで慣らしたかったがしゃーない。ぶっつけ本番やな。」
あ、俺の術式説明したっけ?してない?んじゃかるーく説明するわ。
俺の術式は『模倣』。乙骨君が同じの持ってるけどちょっと違うだよなぁ〜。俺は乙骨君みたいに相手の部位を取り込む必要がなく相手の術を見た瞬間からだいたい5分後から永久的にどんなタイミングでも使えるって感じなんだけど俺の場合、呪力の消費が激しいのと元々量が少ないのも相まってなかなか悲惨だったんだよねぇ...苦労したよ、呪力操作。どんだけやっても消費が減らないもん。ちなみにどんだけ減るかというとね、100MAXの呪力の容量だとしよう。そうしたら模倣が1秒に使う呪力が10なんね。"1秒"やからね。それにこれ例えやから宛にせんでな。まぁ、とんでもない勢いで減るし取り込まなくっていい代わりにか、脳への負担がでかいのよ。だから最大でも10分が限界。超えると物理的に脳にダメージ入る。しかもどこに入るか分からんから神経付近に入ったら大惨事になる。1
あー、乙骨君のと決定的な違いがあるとしたら見たもの物質の一時的な完全顕現かね?例えば天の逆鉾とかね。星漿体護衛に付き合ったから見たことあるしなんだったら獄門疆も行けるね。やらねぇけどあんなクソ呪物。あれ俺の中だと腐れメロンパンの代名詞みたいなってんだよなぁ...あ、話逸れた。話戻すけど術式と物質どっちかが楽か言ったら物質なんだよね。消費が少ないし、どっちかという構築術式の方が近いのかもね。
あ、術式によっては呪力の消費が少ないのあるから助かるだよね〜♪
さて...この話はこの辺にしてハジメのとこにでもお邪魔しようかね...なんかねぇかなぁ...
そうして部屋を出てハジメの部屋に行く途中檜山見たが何してんだあいつ?そうしてるうちに部屋の前に着く。開けようとすると...
「ん?話し声ぇ?...まさかねぇ...」(( ^^ ))ウキウキ
耳を澄ますと...
...くれないかな?」
「え?」
(まさか....脱兎!キュウ?中にこっそり入って視界共有してくれるか?キュ!サンキュ頼むわキュキュ!!)サッサッ
「白崎さんは〝治癒師〟だよね? 治癒系魔法に天性の才を示す天職。何があってもさ...たとえ、僕が大怪我することがあっても、白崎さんなら治せるよね。その力で守ってもらえるかな?それなら、絶対僕は大丈夫だよ」
脱兎は間に合ったらしく位置を整えてから視界を共有してくれたらしくハジメと白崎嬢が対面で座ってるのが見える。
しばらく、白崎嬢は、ジーとハジメを見つめる。ここは目を逸らしたらいけない場面だと羞恥に身悶えそうになりながらハジメは必死に耐える。
ハジメは、人が不安を感じる最大の原因は未知であると何かで聞いたことがあった。白崎嬢は今、ハジメを襲うかもしれない未知に不安を感じているのだろう。ならば、気休めかもしれないが、どんな未知が襲い来ても自分には対処する術があるのだと自信を持たせたかった。
しばらく見つめ合っていた香織とハジメだが、沈黙は白崎嬢の微笑と共に破られた。
「変わらないね。南雲くんは」
「?」
白崎嬢の言葉に訝しそうな表情になるハジメ。その様子に香織はくすくすと笑う。
「南雲くんは、私と会ったのは高校に入ってからだと思ってるよね? でもね、私は、中学二年の時から知ってたよ」
その意外な告白に、ハジメは目を丸くする。必死に記憶を探るが全く覚えていない。
う~んと唸るハジメに、白崎嬢は再びくすりと笑みを浮かべた。
「私が一方的に知ってるだけだよ。……私が最初に見た南雲くんは土下座してたから私のことが見えていたわけないしね」
「ど、土下座!?」
ハジメは、なんて格好悪い所を見られていたんだ! と今度は違う意味で身悶えしそうになる。そして、人目につくところで土下座っていつ、どこでだ!? と必死に記憶を探る。一人、百面相するハジメに香織が話を続ける。
あ〜あの時か?俺がトイレで外してて商店街にいたときの...
「うん。不良っぽい人達に囲まれて土下座してた。唾吐きかけられても、飲み物かけられても……踏まれても止めなかったね。その内、不良っぽい人達、呆れて帰っちゃった」
「そ、それはまたお見苦しいところを……」
ハジメからしたら軽く死にたい気分だな。厨二病を患っていた時の黒歴史とタメを張るくらい最悪のシーンを見られていたらしい。もう、乾いた笑みしか出てこない。隠しておいたエロ同人誌をかつての母親が綺麗に整理して本棚に並べ直していた時と同じくらい乾いた笑みだ。
しかし、白崎嬢は優しげな眼差しをしており、その表情には侮蔑も嘲笑もなかった。
「ううん。見苦しくなんてないよ。むしろ、私はあれを見て南雲くんのこと凄く強くて優しい人だって思ったもの」
「……は?」
ハジメは耳を疑った。そんなシーンを見て抱く感想ではない。もしや、白崎嬢には特殊な性癖が!? と途轍もなく失礼なことを想像してるであろうハジメ。
「だって、南雲くん。小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてたんだもの」
その言葉に、ハジメは、ようやく思い当たったらしく。確かに、中学生の頃、そんなことがあったと思い出してるぽいっな。
詳しくは知らんがチンピラがおばちゃんに難癖付けて恐喝してるところにこれでもかってくらい綺麗な土下座して相手が引いて行ったんだけ?
あーあ〜その時に俺がおったらなぁ...相手に敢えて殴らせてから殴り返してやれるのに...
「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし....でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。.....実際、あの時、私は怖くて....自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」
「白崎さん...」
「だから、私の中で一番強い人は南雲くんなんだ。高校に入って南雲くんを見つけたときは嬉しかった。...南雲くんみたいになりたくて、もっと知りたくて色々話し掛けたりしてたんだよ。南雲くん直ぐに寝ちゃうけど...」
「あはは...ごめんなさい...」
白崎嬢が自分を構う理由が分かったハジメは、白崎嬢の予想外の高評価に恥ずかしいやら照れくさいやらで苦笑いしている。
「だからかな、不安になったのかも。迷宮でも南雲くんが何か無茶するんじゃないかって。不良に立ち向かった時みたいに...でも、うん」
白崎嬢は決然とした眼差しでハジメを見つめた。
「私が南雲くんを守るよ」
ハジメはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。
「ありがとう」
それから直ぐハジメは苦笑いした。これでは役者が男女あべこべである。今夜のイケメン賞は間違いなく香織だ。だとすれば、さながら自分はヒロインかと、男としてはなんとも納得し難い気持ちに笑うしかなかったのだ。
それからしばらく雑談した後、白崎嬢は部屋に帰っていった。2
ハジメはベッドに横になりながら、思いを馳せる。なんとしても自分に出来ることを見つけ出し、無能の汚名を返上しなければならない。いつまでもヒロインポジなど、納得できるものではない。ハジメは決意を新たにし眠りについた。
(へぇ〜...強くなったやん...お嬢。会った時は泣き虫だったのによ...)
「...じゃあ、見させてもらうとするかねぇ...クヒヒ...脱兎戻れ」キュ!
(さて...あそこで酷く醜い念を発してるおバカはどう処理するかねぇ...)
それを考えながら満足したので部屋に邪魔する気にもなくなり自室に戻る際、窓から月光が入っているのでふと見上げる。
「変わんねぇのな。この世界の月も。綺麗なもんだ...あかん、酒飲みたくなってきた....」
欲求を抑え、自室に戻りベットに潜り眠りにつく。
現在、俺達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。
俺としてはゲームとかである薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着た姉ちゃんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。
なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。
入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。
サラッと飯を買い食いしているため、敢えて俺は最後方におるけどね。
浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。
俺達は、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。
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中は意外にも外の賑やかな雰囲気とは無縁の空気であった。
縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。
一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。
と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。
灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが....二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。
「うわ、きも。某夢の国のn」龍牙君!?それ以上はなんとなくだけどダメ気がするからやめとこ!?」へいへーい、あ、1本いるか?」
「あ、いいの?貰うよ」ングッ
「あ、意外においしい」「よな?」
最後方でほのぼのしている俺たちを尻目に前では、過剰火力を出し魔石を吹き飛ばし注意を受けて赤面してる後衛組からは特に問題なくは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。
そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。
現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。
俺達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。
もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。
この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。
従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
メルド団長のかけ声がよく響く。
ちな、俺はハジメと組んでいるため一緒にいるのだがまぁ、当然番が回ってくるため....
「次は...坊主2人か...補助なしで行けるか?」
「んー俺は問題ないっすよ。ハジメ、俺が体勢崩すから、片手着いた瞬間頼むわ」
「わかった、片手だね」
「おう、んじゃ頼むわ」「うん、任せて」
さて、軽く行くか〜....そう内心で言いながら槍を軽く構えながら魔物に近づく。
「グギャア!!」「はい、うるさい」バシッ!「グギャ!?」
魔物が飛びかかる前に軽くしゃがみ石突きの方で足を払う。
魔物が体勢を崩し片手を着いた瞬間...
「錬成!」「グギュオ!?」ズモモ....「ナイスタイミング。じゃこれで終わりね」ザシュ
後方にいたハジメが地面を錬成、魔物を片手を含めた両足を地面で包む。
抵抗できないのを分かった俺が首を刎ねる。
回想終了〜...ね?簡単でしょ?
それから、小休止に入り、ふと前方を見ると白崎嬢と目が合った。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。
昨夜の〝守る〟という宣言通りに見守られているようでなんとなく気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、白崎嬢が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた八重樫が苦笑いし、小声で話しかけた。
「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」
からかうような口調に思わず顔を赤らめる白崎嬢。怒ったように八重樫に反論する。
「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」
「それがラブコメしてるって事でしょ?」と、八重樫は思ったが、これ以上言うと本格的に拗ねそうなので口を閉じる。だが、目が笑っていることは隠せず、それを見た白崎嬢が「もうっ」と呟いてやはり拗ねてしまった。3
そんな様子を横目に見ていた俺は、ふと視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べ物にならないくらい深く重い。俺が対象ではなく、ハジメなのはハジメの反応でわかった。
その視線は今が初めてというわけではなかった。今日の朝から度々感じていたものだ。視線の主を探そうと視線を巡らせると途端に霧散する。朝から何度もそれを繰り返しており、ハジメはいい加減うんざりしているようだった。
なんとなく、推測は出来るが確証は無いため、なにもしないで留めているが確信した瞬間一発顔面に叩き込むつもりではある。
それからしばらくしたら視線が消え、音沙汰が無くなった後に、一行は二十階層を探索する。
迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。
現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。
二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。
そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。
すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
メルド団長の忠告が飛ぶ。
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
(ふーん、あんなのおるんやな。結構擬態細かいな、動くまで気配しか感じれんかったわ...)
メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と八重樫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。
龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
「んぐ!?」4
体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。
まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ白崎嬢達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が白崎嬢達へと迫る。
白崎嬢達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。
しかし、発動しようとした瞬間、白崎嬢達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。
なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて白崎嬢達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。白崎嬢も中村嬢も谷川嬢も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
慌ててメルド団長がダイブ中のロックマウントを切り捨てる。
白崎嬢達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。
そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
(あ...これ、やらかすわ。あいつ...)
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。
「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。
その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。
パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。白崎嬢達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
(うちのバカがらほんと、ご迷惑お掛けします....)
メルド団長のお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。白崎嬢達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。
その時、ふと白崎嬢が崩れた壁の方に視線を向けた。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
その言葉に、全員が白崎嬢の指差す方へ目を向けた。
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。白崎嬢を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
「おーなかなかに綺麗やんけ。削り取ってみるか?」
「素敵……」
白崎嬢が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、俺、八重樫ともう一人だけは気がついていたが....
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのは子悪党こと檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。
メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。
部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。
ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。
ハジメが尻の痛みに呻き声を上げながら、俺は即座に尻餅を着く前に体勢を立て直し槍を構えは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。
どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。
ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。
しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が.....
その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。
――まさか...ベヒモス....なのか......
橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。
小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。
しかし、数百体のガイコツ戦士より、反対の通路側の方がヤバイと俺は感覚で分かっていた。
十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が出現したからだ。もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが....
(図体だけで特級行くかね...恐らく、見た目同様タフやろうしな....現在の術師で対応できるとしたら悟や俺を除いてパンダか悠仁ぐらいか?)
メルド団長が呟いた〝ベヒモス〟という魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。
「ッ!?」
その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も...」
「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。
どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。
そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。
「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」
二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!
衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。
トラウムソルジャーは三十八階層に現れる魔物だ。今までの魔物とは一線を画す戦闘能力を持っている。前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に生徒達は半ばパニック状態だ。
隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。騎士団員の一人、アランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。
その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。
「あ」
そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。
死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーが横から吹き飛ばされた。そのまま勢いよく吹き飛ばされた勢いで横後ろに居たソルジャーを巻き込み橋の端から奈落に落ちていく。
助けられた女子生徒が視線を吹き飛ばした方向へ向けると...
「特級呪具-游雲....ふぅ....出し惜しみしてる場合じゃねぇな....『十種影』...『玉犬黒、白』」
「「グルゥ!」」
「生徒たち守りながら骨ども砕いてけ。あくまで補助でいいから無茶すんなよ」
「「ワウゥ!!」」「よしっGO!」「「!!」」ダッ!ダッ!
龍牙が赤い三節棍を持ち、影から黒と白の狼?出し他の生徒たちのサポートに回していた。
「さて、大丈夫...か!」ブゥン
三節棍を振り回しソルジャーどもを砕き女子生徒を庇いながらそう問いかけてくる。その背中をマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。
龍牙はとにかく近づいてくる骨どもを游雲で砕きながら周りを見渡す。
誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。
(あかんな...完全にパニックになってる...この調子だと死人出るな...どうしたものか...)
そう考えてる龍牙の元にハジメが走って寄ってくる。
「龍牙!ごめん!ちょっと着いてきて!!」
「!何か策あんだな!!」「うん、ごめんだけどだから着いてきて!ひとりじゃ無理だ!」「おーらい!遠慮すんな!お前と俺の仲やろ!」
「! ありがとう!行こう!」
俺とハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。
ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。
障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。
「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」
「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」
「くっ、こんな時にわがままを……」
メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。
この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。
しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。
その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。
まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。
「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」
八重樫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。
「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?付き合うぜ、光輝!」
「龍太郎……ありがとな」
しかし、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに八重樫は舌打ちする。
「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」
「雫ちゃん……」
苛立つ雫に心配そうな白崎嬢。
その時、二人の男子が光輝の前に飛び込んできた。
「天之河くん!」
「なっ、南雲!?」
「南雲くん!?それに龍牙まで!?」
驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。
「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」
「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は...」
「そんなこと言っている場合かっ!」
ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。
いつも苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。
「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」
光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。
その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。
訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。効率的に倒せていないから敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さが命を守っているが、それも時間の問題だろう。
「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」
呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。
「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」
「下がれぇーー!」
〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。
暴風のように荒れ狂う衝撃波がハジメ達を襲う。俺は咄嗟に玉犬黒、白を背後に出し顔に独特な模様ができ身体能力を上げる赤鱗躍動を使い、咄嗟にハジメが前に出て錬成により石壁を作り出すがあっさり砕かれ吹き飛ばされる。龍牙はギリギリ踏ん張れていたが....
舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。
そこには、倒れ伏し呻き声を上げる団長と騎士が三人。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。光輝達も倒れていたがすぐに起き上がる。メルド団長達の背後にいたことと、ハジメの石壁が功を奏したようだ。
「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」
光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。団長たちが倒れている以上自分達がなんとかする他ない。
「やるしかねぇだろ!」
「……なんとかしてみるわ!」
二人がベヒモスに突貫する。
「香織はメルドさん達の治癒を!」
「うん!」
光輝の指示で白崎嬢が走り出す。ハジメは既に団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。気休めだが無いよりマシだろう。
光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。
「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」
詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。
先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。
龍太郎と八重樫は、詠唱の終わりと同時に既に離脱している。ギリギリだったようで二人共ボロボロだ。この短い時間だけで相当ダメージを受けたようだ。
放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。光が辺りを満たし白く塗りつぶす。激震する橋に大きく亀裂が入っていく。
「これなら……はぁはぁ」
「はぁはぁ、流石にやったよな?」
「だといいけど……」
龍太郎と八重樫が光輝の傍に戻ってくる。光輝は莫大な魔力を使用したようで肩で息をしている。
先ほどの攻撃は文字通り、光輝の切り札だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた。背後では、治療が終わったのか、メルド団長が起き上がろうとしている。
そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。
その先には....無傷のベヒモスがいた。
低い唸り声を上げ、光輝を射殺さんばかりに睨んでいる。と、思ったら、直後、スッと頭を掲げた。頭の角がキィーーーという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。
そこに...
「悪いがそれ以上させる訳ねぇやろ」
水を刺すように低く重い声が光輝たちの耳に届く。
声が後ろから聞こえたので視線を向けると、中腰の状態で手を開き内側に向け赤黒い何かを溜めている龍牙の姿があった。
「派手にやろうとしてるとこ悪いがこれでも食っとけ...百斂...穿血!!!」
手の内に溜めていた赤黒い何か...己の血を百斂で限界まで圧縮し、それを手の内で挟み一点から解放する穿血を放つ。
それは熱をものともせずベヒモスの額を貫く。
「グギャアアァァ!?」
ベヒモスがあまりの痛みに悲鳴を上げる。
「お前等、動けるか!」
メルド団長が叫ぶように尋ねるも返事は呻き声だ。先ほどの団長達と同じく衝撃波で体が麻痺しているのだろう。内臓へのダメージも相当のようだ。
メルド団長が白崎嬢を呼ぼうと振り返る。その視界に、駆け込んでくるハジメの姿を捉えた。
「坊主! 香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」
ハジメにそう指示する団長。
光輝を、光輝だけを担いで下がれ。その指示は、すなわち、もう一人くらいしか逃げることも敵わないということなのだろう。
メルド団長は唇を噛み切るほど食いしばり盾を構えた。ここを死地と定め、命を賭けて食い止めるつもりだ。額を貫いた。たしかにそれはあるがそれでもそれだけ止まるなら最強などと呼べないだろう。恐らくすぐにでも動き出す。それを食い止めるために盾を構える。
そんな団長に、ハジメは必死の形相で、とある提案をする。それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。
メルドは逡巡するが、ベヒモスが痛みから復帰し既に戦闘態勢を整えている。再び頭部の兜が赤熱化を開始する。時間がない。
「……やれるんだな?」
「やります」
決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくるハジメに、メルド団長は「くっ」と笑みを浮かべる。
「まさか、お前さんらに命を預けることになるとはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」
「はい!」
メルド団長はそう言うとベヒモスの前に出た。そして、簡易の魔法を放ち挑発する。ベヒモスは、先ほど光輝を狙ったように自分に歯向かう者を標的にする習性があるようだ。しっかりとその視線がメルド団長に向いている。
そして、赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。メルド団長は、ギリギリまで引き付けるつもりなのか目を見開いて構えている。そして、小さく詠唱をした。
「吹き散らせ――〝風壁〟」
詠唱と共にバックステップで離脱する。
その直後、ベヒモスの頭部が一瞬前までメルド団長がいた場所に着弾した。発生した衝撃波や石礫は〝風壁〟でどうにか逸らす。大雑把な攻撃なので避けるだけならなんとかなる。倒れたままの光輝達を守りながらでは全滅していただろうが。
頭部をめり込ませるベヒモスに、龍牙とハジメが飛びついた。赤熱化の影響が残っており龍牙とハジメの肌を焼く。しかし、そんな痛みは無視して龍牙は手影絵を作りハジメも詠唱した。名称だけの詠唱。最も簡易で、唯一の魔法。
「ーー万象ー」
「――〝錬成〟!」
ベヒモスの上から勢い良く仔象ほどのサイズの巨大な象の式神が落ちてきてベヒモスの頭部がさらに埋まり、役目は果たしたと言わんばかりに鼻を鳴らし黒く溶け影に戻っていく。
そこに石中にさらに埋まっていた頭部を抜こうとしたベヒモスの動きが止まる。周囲の石を砕いて頭部を抜こうとしても、ハジメが錬成して直してしまうからだ。
「さらにもういっちょおまけだ!!」
さらに追い打ちをかけるように槍を中に投げ蹴り打つ。その槍は真っ直ぐベヒモスの目に突き刺さる。
そこからは抜け出した時に備え、即座に埋めれるように手影絵を組み何時でも呼び出せるように龍牙が構える。
ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとするが、今度はその足元が錬成される。ずぶりと一メートル以上沈み込む。更にダメ押しと、ハジメは、その埋まった足元を錬成して固める。
ベヒモスのパワーは凄まじく、油断すると直ぐ周囲の石畳に亀裂が入り抜け出そうとするが、その度に錬成をし直して抜け出すことを許さない。ベヒモスは頭部を地面に埋めたままもがいている。中々に間抜けな格好だ。
その間に、メルドは回復した騎士団員と白崎嬢を呼び集め、光輝達を担ぎ離脱しようとする。
トラウムソルジャーの方は、どうやら幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めているようだ。立ち直りの原因が、実は先ほど龍牙が助けた女子生徒だったりする。
「待って下さい! まだ、南雲くんと龍牙くんがっ」
撤退を促すメルド団長に白崎嬢が猛抗議した。
「坊主達の作戦だ! ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! もちろん坊主達がある程度離脱してからだ! 魔法で足止めしている間に坊主達が帰還したら、上階に撤退だ!」
「なら私も残ります!」
「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」
「でも!」
なお、言い募る白崎嬢にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる。
「坊主達の思いを無駄にする気か!」
「ッ――」
メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなく光輝である。少しでも早く治癒魔法を掛け回復させなければ、ベヒモスを足止めするには火力不足に陥るかもしれない。そんな事態を避けるには、白崎嬢が移動しながら光輝を回復させる必要があるのだ。ベヒモスはハジメの魔力が尽きて錬成ができなくなった時点で動き出す。
「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟」
白崎嬢は泣きそうな顔で、それでもしっかりと詠唱を紡ぐ。淡い光が光輝を包む。体の傷と同時に魔力をも回復させる治癒魔法だ。
メルド団長は、白崎嬢の肩をグッと掴み頷く。白崎嬢も頷き、もう一度、必死の形相で錬成を続けるハジメとそばにいる龍牙を振り返った。そして、光輝を担いだメルド団長と、八重樫と龍太郎を担いだ騎士団員達と共に撤退を開始した。
トラウムソルジャーは依然増加を続けていた。既にその数は二百体はいるだろう。階段側へと続く橋を埋め尽くしている。
だが、ある意味それでよかったのかもしれない。もし、もっと隙間だらけだったなら、突貫した生徒が包囲され惨殺されていただろう。実際、最初の百体くらいの時に、それで窮地に陥っていた生徒は結構な数いたのだ。
それでも、未だ死人が出ていないのは、ひとえに騎士団員達のおかげだろう。彼等の必死のカバーが生徒達を生かしていたといっても過言ではない。代償に、既に彼等は満身創痍だったが。
騎士団員達のサポートがなくなり、続々と増え続ける魔物にパニックを起こし、魔法を使いもせずに剣やら槍やら武器を振り回す生徒がほとんどである以上、もう数分もすれば完全に瓦解するだろう。
生徒達もそれをなんとなく悟っているのか表情には絶望が張り付いている。先ほど龍牙が助けた女子生徒の呼びかけで少ないながらも連携をとり奮戦していた者達も限界が近いようで泣きそうな表情だ。
誰もが、もうダメかもしれない、そう思ったとき……
「――〝天翔閃〟!」
純白の斬撃がトラウムソルジャー達のド真ん中を切り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。
橋の両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていく。斬撃の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。
「皆! 諦めるな! 道は俺が切り開く!」
そんなセリフと共に、再び〝天翔閃〟が敵を切り裂いていく。光輝が発するカリスマに生徒達が活気づく。
「お前達! 今まで何をやってきた! 訓練を思い出せ! さっさと連携をとらんか! 馬鹿者共が!」
皆の頼れる団長が〝天翔閃〟に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と打ち倒す。
いつも通りの頼もしい声に、沈んでいた気持ちが復活する。手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、白崎嬢の魔法の効果も加わっている。精神を鎮める魔法だ。リラックスできる程度の魔法だが、光輝達の活躍と相まって効果は抜群だ。
治癒魔法に適性のある者がこぞって負傷者を癒し、魔法適性の高い者が後衛に下がって強力な魔法の詠唱を開始する。前衛職はしっかり隊列を組み、倒すことより後衛の守りを重視し堅実な動きを心がける。
治癒が終わり復活した騎士団員達も加わり、反撃の狼煙が上がった。チートどもの強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。凄まじい速度で殲滅していき、その速度は、遂に魔法陣による魔物の召喚速度を超えた。
そして、階段への道が開ける。
「皆! 続け! 階段前を確保するぞ!」
光輝が掛け声と同時に走り出す。
ある程度回復した龍太郎と八重樫がそれに続き、バターを切り取るようにトラウムソルジャーの包囲網を切り裂いていく。
そうして、遂に全員が包囲網を突破した。背後で再び橋との通路が肉壁ならぬ骨壁により閉じようとするが、そうはさせじと光輝が魔法を放ち蹴散らす。
クラスメイトが訝しそうな表情をする。それもそうだろう。目の前に階段があるのだ。さっさと安全地帯に行きたいと思うのは当然である。
「皆、待って! 南雲くんと龍牙くんを助けなきゃ! 南雲くんと龍牙くんだけであの怪物を抑えてるの!」
白崎嬢のその言葉に何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。そう思うのも仕方ない。なにせ、ハジメは〝無能〟で通っているのだから。龍牙も龍牙で何もしてないサボり扱いである。
だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメと龍牙の姿があった。
「なんだよあれ、何してんだ?」
「あの魔物、上半身が埋まってる?」
次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。
「そうだ! 坊主たちがたった二人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主たちの魔力が尽きる。アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」
ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる。
無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。しかし、団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場へと戻った。
その中には檜山大介もいた。自分の仕出かした事とはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。
しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。
それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していたときのこと。
緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の白崎嬢を見かけたのだ。
初めて見る白崎嬢の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、白崎嬢は檜山に気がつかずに通り過ぎて行った。
気になって後を追うと、香織は、とある部屋の前で立ち止まりノックをした。その扉から出てきたのは……ハジメだった。
檜山は頭が真っ白になった。檜山は白崎嬢に好意を持っている。しかし、自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。
しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が白崎嬢の傍にいるのはおかしい。それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫? と言われそうな考えを檜山は本気で持っていた。
ただでさえ溜まっていた不満は、すでに憎悪にまで膨れ上がっていた。白崎嬢が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだろう。
その時のことを思い出した檜山は、たった一人でベヒモスを抑えるハジメを見て、今も祈るようにハジメを案じる白崎嬢を視界に捉え……
ほの暗い笑みを浮かべた。
その頃、ハジメはもう直ぐ自分の魔力が尽きるのを感じていた。既に回復薬はない。チラリと後ろを見るとどうやら全員撤退できたようである。隊列を組んで詠唱の準備に入っているのがわかる。背後にいる龍牙に目で合図を送る。それに頷く龍牙。
ベヒモスは相変わらずもがいているが、この分なら錬成を止めても数秒は時間を稼げるだろう。その間に少しでも距離を取らなければならない。
額の汗が目に入る。極度の緊張で心臓がバクバクと今まで聞いたことがないくらい大きな音を立てているのがわかる。
ハジメはタイミングを見計らった。
そして、数十度目の亀裂が走ると同時に最後の錬成でベヒモスを拘束する。その瞬間に
「ハジメェ!!乗れェ!!」「頼んだァ!!」ガシッ!!
龍牙がハジメをおぶり、一気に駆け出した。
龍牙が猛然と逃げ出した五秒後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。その眼に、憤怒の色が宿っていると感じるのは勘違いではないだろう。鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵共を探し……
龍牙とハジメを捉えた。
再度、怒りの咆哮を上げるベヒモス。龍牙とハジメを追いかけようと四肢に力を溜めた。
だが、次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。
夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。
いける!と確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走る龍牙とおぶられるハジメ。すぐ頭上を致死性の魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がそんなミスをするはずないと信じて駆ける。ベヒモスとの距離は既に三十メートルは広がった。
思わず、頬が緩む。
しかし、その直後、龍牙とハジメの表情は凍りついた。
無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。
……龍牙とハジメの方に向かって。
明らかに龍牙とハジメを狙い誘導されたものだ。
(はぁ!?)(なんで!?)
疑問や困惑、驚愕が一瞬で脳内を駆け巡り、龍牙は驚愕、ハジメは愕然とする。
なんとか回避しようとするが下手に回避すると他のに被弾しかねないため、仕方なくその場で咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑る龍牙とハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。直撃は避けたし、内臓などへのダメージもないが、三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまった。
フラフラしながら少しでも前に進もうと立ち上がるが……
ベヒモスも、いつまでも一方的にやられっぱなしではなかった。龍牙とハジメが立ち上がった直後、背後で咆哮が鳴り響く。思わず振り返ると三度目の赤熱化をしたベヒモスの眼光がしっかり龍牙とハジメを捉えていた。
そして、赤熱化した頭部を盾のようにかざしながら龍牙とハジメに向かって突進する!
フラつく頭、霞む視界、迫り来るベヒモス、遠くで焦りの表情を浮かべ悲鳴と怒号を上げるクラスメイト達。
「チィッ!!『赤鱗躍動・載』!!」
龍牙が最大出力の赤鱗躍動を使いハジメを腕で抱え、なけなしの力を振り絞り、必死にその場を離脱しようとする。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。
そして遂に……橋が崩壊を始めた。
度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。
「グウァアアア!?」
悲鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。ベヒモスの断末魔が木霊する。
だがタイミングが悪く術式を使いすぎた為、龍牙の脳に痛みが走り思わず赤鱗躍動が解け、バランスを崩し体を倒し、ハジメを腕から放り出してしまう。
龍牙とハジメもなんとか脱出しようと這いずるが、しがみつく場所も次々と崩壊していく。
(ああ...クソが....また死ぬのかよ...)
(ああ、ダメだ……)
そう思いながら対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、香織が飛び出そうとして雫や光輝に羽交い締めにされているのが見えた。他のクラスメイトは青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情でハジメを見ていた。
その中でひとつ醜い顔浮かべてるやつを龍牙が見つけ思わずそいつの名を叫ぶ。
『ヒィヤァマァーーー!!!!』
そして、龍牙とハジメの足場も完全に崩壊し、龍牙とハジメは仰向けになりながら奈落へと落ちていった。徐々に小さくなる光に手を伸ばしながら……
to be continued...
はい。蛇弟です。
今回は奈落落ちです。龍牙のヒロインどうしましょ...
誤字脱字ありましたら遠慮なく言ってください。
ではまた次回で。サラダバー
ハジメくんのヒロインから2人引き抜こうとおもってます。ユエちゃんと雫嬢です。
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2人まとめて引き抜き
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ユエのみ
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雫のみ
-
どっちもダメ