【倦怠期鎮守府】   作:湯タンポ

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昨日、凄い献身的なお嫁さんになった榛名を曇らせよとの天啓が突如として舞い降りため、その使命を全うしました。

やはり嫁にするなら榛名ですね。


榛名は大丈夫です

 

 

 

私は金剛型戦艦三番艦、榛名です。

 

唐突ではありますが、私は中国地方及び四国を管轄とする呉鎮守府、その最高司令官たる提督と四年前より"ケッコンカッコカリ"をしております。

 

ケッコンと申しましても、カッコカリと付いている通り通常の結婚とは異なる制度でして、まず当然ながら法的な婚姻ではありませんので法的拘束力は皆無ですし、練度上限の解放といった恩恵が見込まれる以外は、書類上法律上は特に変わった事はありません。

 

…ですが、これらはあくまでお役所手続きであったりとか、外聞的なお話です。

 

実態としては通常の結婚と何ら変わりなく、ケッコンカッコカリをした提督と艦娘は、基本的には私を含め夫婦として、公私に渡って関係性が変わります。

 

特に顕著なのはやはり-…その…、私達艦娘は純粋な人類ではありませんが、体の構造の99パーセント程は普通の人間と同一であり、今のところ観測はされていませんが、海軍技術研究所と国立医科大学の合同研究によれば、理論上人間と艦娘による生殖は可能であると結論づけられておりまして……。

 

……つ、つまるところ、提督とケッコンカッコカリをした艦娘は、夫である提督とそういった行為に及ぶようになるのです。

 

正確には、行為をしてもなんの問題も無くなると言うだけで、ケッコンカッコカリをしていなくても、そう言った関係をもつ艦娘は多いようですが……それはそれ、これはこれと言うものでしょう。

 

…コホン、長くなりましたが、ここまでの事を踏まえた上で話を戻しましょう。

 

つまり私は、既に幾度か提督とそういった行為を行っているという訳です。

 

無論、そう言った行為が嫌という様な話ではありません。

私は元々提督をお慕いしておりましたし、そんな愛しい方との身体の触れ合いは幸福なものですし、私も最初こそ緊張もしましたが、今となっては寧ろ、その……とても幸せな時間であったと感じております。

 

 

 

そう……幸せな時間、でした。

 

 

……もう2年ほど前からでしょうか。

週二、三回ほど夜を共にしていた提督のお部屋に、誘われる事が無くなったのは。

 

 

始めは提督が多忙に追われていらっしゃるのだと思っていました。鎮守府の運営責任者として日々膨大な業務をこなし、時には深夜まで執務室の灯りが消えない日もありましたから。

 

しかし次第にそれが単なる忙しさだけではないように思えてきたのです。

 

例えば……、夜勤明けでお疲れの提督を労おうと思い、朝食前にハーブティーをお持ちした時のことです。

 

ノックをして入室すると、提督は机に向かい何かの資料を片手に、頭を抱えていらした姿がありました。

 

「失礼致します、提督。

少し休憩なさってはいかがですか?」

 

私の声に振り向いた提督は一瞬驚かれたような表情でしたが、すぐに柔和な笑みを見せられました。

 

「ああ……榛名か。ありがとう。ちょうど疲れていたところだよ」

 

そう言いながらもどこか上の空で、ハーブティーを受け取ると形式的に一口飲むだけでした。以前なら私が淹れた一杯に対して必ず「美味しい」「ありがとう」と言ってくださっていたのに。

 

 

あるいは別の日、夕食後のお茶会で遠回しに私から夜のお誘いを匂わせた時。

 

 

 

「今日も一日お疲れ様でした、提督。

……あの…もしよろしければ、その……」

 

手を忙しなく動かしながら言葉を探す私を見て、提督はほんのわずかに目を見開き、そして申し訳なさそうな表情を浮かべました。

 

「すまない榛名。今日は少し調べなければならないことがあるんだ。明日の作戦計画について最終調整しなければならない」

 

嘘だと直感しました。その時作成していた作戦計画は先週からほぼ完成していて、あとは細かな調整のみだったはずですから。

 

…でも、それを指摘することはできませんでした。

 

「……わ…わかりました。お仕事頑張ってください」

 

私が引き下がると、提督は安堵したような複雑な表情を見せました。

 

このような出来事が積もり積もるうちに、一つの疑念が芽生え始めたのです。

 

「もしかしたら、提督は私のことを疎ましく思い始めていらっしゃるのではないか」と。

 

 

 

…そんな筈は無いと、頭では必死に否定します。

提督は毎朝欠かさずに私の健康状態を確認されますし、演習や出撃後の労いの言葉もかけてくださります。普段通りの優しい態度が崩れたことはありません。

 

だけど――

 

「おやすみなさいませ、提督」

「ああ、お休み。良い夢を」

 

職務以外での会話が、扉越しに交わされる挨拶だけになってから、どれくらい経つのでしょうか。

 

自分の胸の中で静かに育っていく寂しさと不安を自覚しないわけにはいきませんでした。あれほど親密だった私たちの間に生まれた目に見えない距離。かつて提督の腕の中に包まれていた温もりを思い出すたびに、今はただ切なさが込み上げてくるのです。

 

 

…提督が忙しくても私を避ける理由はないはずです。

本当に多忙なら素直にそう言われる方ですもの。ですが近頃のような反応は……

 

(まさか……私に飽きてしまわれたのかしら……)

 

その考えが脳裏を掠めるたびに、心臓が締め付けられるような痛みを感じます。

 

私自身に何か落ち度があるならば……もっと可愛げのある振る舞いや気配りができれば良かったのでしょうか。

あるいは、加賀さんや瑞鶴さんのように、提督と等身大で対等にお話しできる方が……?

 

答えの出ない問いばかりが、頭の中をぐるぐる巡っています。

 

それでも私は提督の部下であり妻として、この悩みを誰にも打ち明けられないでいるのです。

 

そして、姉妹たちや同僚の前ではいつも通りの明るい榛名でいなければなりません。

 

だから……

 

 

「榛名は……大丈夫です!」

 

 

そう自分に言い聞かせるしかないのです。

 

……ただ一縷の望みを込めて。

 

 

いつか、あの温かい時間が戻ることを祈りながら。

 

 

 

 






気が向いたら続くよ

ちなみに榛名の一人称は地の文だとどちらが良い?

  • 榛名
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