時は少し戻り数日前……横須賀鎮守府
シュパッ!シュバッ!シュバッ!
朝早くから大日本帝國海軍所属の主力艦、薩摩型戦艦1番艦薩摩の甲板では乾いた空気をきり裂く音が響いていた。音の主はこの艦の艦長、そして日本國海軍の象徴、聯合艦隊司令長官の倉本結城中将だ。そして彼は華族である倉本家の一族であり、倉本流抜刀術の免許皆伝を許された者だった
「ふぅ......」
朝はこれだね...素振りに限る...
「兄上〜朝食できたってよ〜」
そう言って呼びにきたのは柚希だった
「あい了解〜すぐ行くわ〜」
さてと...今日の朝ごはんはなんでしょうかね?
食堂へ行くとそこにはもうみんな集まって食べていた
「あ、艦長!おはようございます!」
夏美が声をかけてくる
「あぁ。おはよう。よく寝れたかい?」
「ええ。それはもちろん。そうそう、明日って横女の入学式でしょ?明日は姪っ子が入るのよ〜」
「横須賀女子海洋学校か...そう言えば柚希は18期生だっけ?今年は...21期生か...?」
「ええ。そのはずよ。懐かしいわねぇ...宗谷艦長も今はブルーマーメイド安全監督室情報調査室長か〜。そう言えば宗谷艦長の妹も入学するんだっけ?」
「真冬の妹か?かなり苦労の多い人だったと思うが...口癖は“ついてない”だったか...」
「懐かしいものですね。あ、そうそう、兄上、軍令部より入電がありました。しばらく聯合艦隊旗艦としての任務もないので外洋で演習を行っておいてくれ…とのことです」
「あいわかった。んじゃ朝食を取り次第でますか」
「「「了解!」」」
そういって結城は炊事員から朝食をもらう。白米、けんちん汁、鯖の味噌煮だった
「艦長!総員配置よーし!」
「よし。出港よーい。前部員錨鎖詰め方。戦艦薩摩、出港する!」
「錨揚げろー!」
パララー♪パララー♪パッパラッラー♪
ラッパが鳴り響き錨が揚がる。航海艦橋から覗くと旗が上がるのが見えた
「各部配置よし、艦内警戒閉鎖よし、一つ甲板近錨!」
「よし、前進微速!出港せよ!」
「前進微速!!」
さて久々の演習だ
「両舷前進強速赤黒無し。進路150度宜候、航海長操艦」
「頂きました航海長。両舷強速赤黒無し。進路150度」
佳代が答える。さてと...演習海域までは約2日か...
「そう言えば今回新しい兵装あったよね?」
「あーあれですか。あれも試験しておかないとですね」
「んだな。片木に演習海域で飛行試験するから用意するように伝えておいて」
「承知致しました」
「にしてもまさか演習なのに駆逐艦で護衛されるとはね」
「まぁ3隻だけですけどね」
「演習で3隻もいれば十分じゃないか?」
そう言って前方、右舷、左舷を航行する駆逐艦を見る。
島風型駆逐艦の島風、秋月型防空駆逐艦の秋月、宵月だ。島風型は陽炎型駆逐艦の天津風、晴風で試験していた高温高圧缶を乗せた駆逐艦だが、結局1隻のみに終わった悲しい艦である。ま、そもそももう高温高圧缶実証艦の2隻は横須賀女子海洋学校にいるのだが()
「さてと…うちは仮眠をとるけん、柚希何かあったら呼んでな」
「了解しました兄上」
そういって結城は艦長私室へもどる。その後夜間の当直前もあってぐっすり寝た結城は艦長公室の机にあった山積みの書類を1時間で片付けてしまい、柚希含め皆をびっくりさせていた
「ンニャ〜」
夜の当直を艦橋でしていた結城は足元に来た猫を肩にのせた
「平八も夜の散歩か?」
「ンニャ〜」
どうやら正解らしい。ゴールはここだったようでそのまま肩から離れない。マンチカンの子猫である平八はとにかくすばしっこいのだ。逃げたら面倒だなと思いつつそのままにする。ラムネを飲みながらこの先の様子を見ていた
翌日、艦内の体操を済ませた結城たち艦橋メンバーは海図室でこの先の航海図を見ていた
「順調だな」
「ですね。にしてもまさか機体が変わるとはなぁ…」
そう。今まで乗せていたあの機体…ヘリコプターはSH-60だったのだ。今回、聯合艦隊旗艦ということもあり、ヘリコプターがアメリカで作られたステルス機のライセンス生産版、RSH-70“シーガル”に変わっていた。まあ今まで通りSH-60“シーホーク”もあるわけだが
「ステルス機は始めてですね」
「当たり前だろ。アメリカでも苦労して作っていたんだ。それをライセンス生産させてもらってるだけありがたいよ」
「そうですね」
「それじゃまた訓練海域までこのままやね」
そう言うと艦橋へ戻っていった
ー翌朝
「これより本艦隊は対潜訓練を行う!全艦に通達、対潜戦闘よーい!」
「対潜戦闘用意!」
「神風01より艦橋へ。発艦準備完了。発艦許可を求めます」
「こちら艦橋発艦を許可します」
洗練された真っ直ぐな機体のヘリコプターが発艦していく。それを横目に新たな指示を飛ばす
「砲雷長!対潜豆爆雷投射用意!」
「了解!」
「護衛の秋月より報告!方位1-2-0、距離5000に注水音!」
「よし。秋月に通信、魚雷発射確認次第豆爆雷にて魚雷を破壊せよ」
とりあえずこれでいいか
「聴音室より入電!後方より魚雷2本!」
「面舵一杯!左舷側豆爆雷投射!」
「あいよ!行っけぇ!!」
次々と豆爆雷が投射される。そして魚雷直前で爆発し魚雷を無効化する
「今度はこちらのターン、秋月、宵月は発見した敵潜水艦へ!」
秋月と宵月から爆雷が投射される。両舷に投射でき、単射なら100mちょっとは飛ばせる代物だ。報告を待っていると
「艦長!敵役潜水艦より入電!『訓練終了』とのことです!」
「了解した。全艦対潜戦闘用具収め」
「対潜戦闘用具収め!」
「それじゃあ次の演習海域へ向かいますか」
懐中時計を取り出すと時刻はもう14時。そりゃお腹が空くわけか…食堂行こう
「各科必要人員を残し交代で昼食へ」
そう言って自分も艦橋を柚希に任せるとそのまま降りてった。そして降りながら『新型兵装試すの忘れた...』と思うのだった
ーその夜
艦橋で当直をしていた柚希はある広域航海通信を聞いた。そして受話器を落とし、大急ぎで艦長室へと向かっていった
「兄上!広域航海通信です!」
まだ寝るには早く、艦長公室で付近の海域データを見ていた結城はすぐに部屋を出た
「内容は?」
足早に艦橋へ向かいながら聞く
「海上安全整備局より横須賀女子海洋学校所属の航洋艦晴風が同校教員艦さるしまへ向け攻撃。さるしまは沈没し乗員は全員無事とのこと。海上安全整備局はこの件を受け、晴風を反乱艦としました」
「ちょっと待って。時間的に演習前よな?」
「おそらくそうかと」
「ならおかしい。魚雷は演習弾1発しか搭載していないし実弾は副長同意の上で離れた場所の鍵を指すしかない...」
「それと軍令部より暗号通信です」
暗号通信?機密か...これはあれか?
「航洋艦晴風を保護しろ...か?」
「さすが兄上。そのとおりです」
「分かった。とにかく艦橋へ」
艦橋へ着くとその他の艦橋メンバーもすでに集まっていた
「本艦隊の方針を伝える。本艦隊はこれより鳥島南方へ進路をとる」
「艦長、なんでや?」
機関室で話を聞いていた永田祐輔が質問する
「うちがもし晴風艦長なら、弁明のために次の演習地点へ向かうからや。それに次の演習予定地点は海軍省から全体連絡であったけんの。それに海上安全整備局の連中は信じられんから調べに行くというのも理由や」
「なるほど〜」
各艦長からも承諾を得て鳥島南方へと進路をとる
「みんな起こしてすまんかったな。明日もあるし当直以外は寝てくれや」
「了解〜」
そうして当直以外の人々は皆、眠りにつくのであった...
翌朝、艦橋では慌ただしく艦橋要員が行ったり来たりしていた
「ヘリコプター発艦用意!」
「神風01よりCIC、発艦用意完了!」
「こちらCIC、発艦を許可します」
「神風01発艦する!」
緊急とはいえ実戦訓練ができるのはある意味ありがたいことだった。
「見つかるかいな」
「どうでしょう?向こうもビーコンを切っているようですし...」
そのとき防空指揮所から情報が届いた
「前方15海里、大型艦1隻視認!」
「艦の形等分かるか?」
「艦影及びカラーリングから推測でアメリカアナポリス女子海洋学校所属大型直接教育艦モンタナと見られます」
「通信取れるか?」
「向こうから来ました。艦橋へつなぎますね」
一方その頃モンタナでは
「見えた艦の所属は!?」
「一番大きな艦の旗から日本海軍と見られます!大きさはおよそ400m!?」
「ハル、あの大きさの艦って日本海軍のデータベースにある?」
「多分戦艦薩摩じゃないかな」
「戦艦薩摩...?あの聯合艦隊旗艦か?」
「そうそう。主砲は51cm3連装砲を5基といわれているものだよ」
「日本海軍の象徴だな...よし、連絡をとる。繋いでくれ」
「承知致しました」
ルナが受話器を渡す。受け取って耳に当てると案外早くつながった
「こちらアメリカアナポリス女子海洋学校所属、直教艦モンタナ艦長、ユウカ・A・フカマチ・スミスです」
『私は日本國海軍所属、戦艦薩摩艦長の倉本結城中将です』
ハルの情報は正確だな...にしてもなぜ中将?戦艦の艦長でも基本は大佐のハズだが......そう思いつつ続ける
「私共は航洋艦晴風を探しています。もちろん艦のみんなの意見です」
『実は海軍もあの通信は怪しんでいましてね。合流できませんか?』
「こちらとしてもありがたい話です。ぜひお願いします」
『わかりました。それではまた合流後に』
そう言って通信は切れた。にしてもどこかで聞いたことのある声だったな
「合流準備急げ!」
甲板上では慌ただしく作業員が動いていた。学生なれど外国の方。失礼は無いようにしないと
「しっかしどこかで聞いたことのある声やったなぁ...ボソッ」
「?兄上?今なんて?」
「ん、ああ。気にせんでよかよ」
「わかりました」
そう言うと接舷用意のため艦橋を降りる柚希。憶測でものを言うことは止さないとね...
モンタナが薩摩の右舷に接舷し、ユウカ以下数名がタラップを歩いて薩摩甲板へと向かう。
「改めまして日本國海軍薩摩艦長、倉本結城中将です」
「同じく副長の倉本柚希少将です」
「アナポリス女子海洋学校直教艦モンタナ艦長、ユウカ・A・フカマチ・スミスです」
結城とユウカがお互いにお互いを凝視する
「はて、どこかでお会いしたことありましたかな?」
「私もそう思っていたのですが...思い出せませんね...」
甲板にいる誰もが頭に「?」を浮かべつつ2人の話を聞いている
「そしてスミスというのは......」
「ええ。そういうことです。でもできる限りこのことはださないででいただけると」
「わかりました」
そんな風に話していると柚希が時計をみて声をかける
「兄上、そろそろ」
「ああそうでした。これからどうしますか?」
「こちらとしては貴艦隊にこのまま合流させていただきたいと...」
「承知致しました。ではこのまま貴艦は本艦隊と行動ということで」
「はい。お願いします」
さて...どう探すものかな...
ついに出てきた結城艦長。ちなみに倉本結城は自分の別サイトのキャラとして居ます(何とは言いません。面倒くさいっていうのもあるし子供向けサイトなんで)
対潜豆爆雷のイメージは紺碧の艦隊のやつです。艦艇説明に書かなかったのはガチの秘匿兵器だったから...ということにしておいてください
次回、第5話、トラブルでピンチ(仮)
会話文の前後の行間を1行空けるかどうするか
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見にくいから空けるべき
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このままでいい