vs比叡…戦っている時には既にトラック諸島近海ということに驚いています
それでは第23話、どうぞ
カツカツカツ……コンコンコン
「失礼します」
ガチャ
横須賀女子海洋学校の廊下に革靴の音が響き、そして校長室に入る。そしてその姿を見た真雪はすぐに来賓との会話用の席へと移る
「貴方がここに来るということは…余程のことね?」
そう言って真雪は自分の娘でありブルーマーメイド安全監督室情報調査室長の真霜へと向く
「えぇ」
そう言って1冊の報告書を差し出す真霜
「これは?」
と真雪が開くと
「……!?実験艦が深度1,500mまで沈降、制御不能。サルベージは不可能…」
「のはずが海底火山の活動で押し上げられて浮上してしまった…」
「西ノ島新島…ここは今年の海洋実習の集合地点よ…教官艦さるしまに研究員を乗せる手配はしたわ…西ノ島新島付近で海洋生物の研究をしたいという依頼があって…」
報告書の地図を追った真雪はそのバツ印のついた場所を見て驚く
「それが実は実験艦からデータを回収してその後自沈させるためのチームだったんです」
そう言って真霜は14日の出来事を思い出す。薫の病室を出た真霜はその廊下でたまたまある言葉を聞いてしまう
「予想をはるかに超える感染力だ…さるしまだけでは済まないかもしれない」
「うちの研究員全員が行方不明…こんなことになるとは…上にどう報告すればいいんだ。我々の責任問題になるぞ!」
「それで私が独自に調査したんです」
「RATt?」
「海中プラントで群化した生物に彼らがつけた名称です。この生物が媒介するウイルスは生体電流に影響を及ぼします。そのため感染者同士は一つの意思に従い行動する」
「一つの意思…?まるで軍隊ね。蟻や蜜蜂みたいな」
真霜の報告に真雪はそう呟く
「ええ。だから記憶があるのに行動の理由が説明できない。付近の電子機器が狂う原因も、この生体電流の影響です」
「えっ……晴風から報告書が届いたわ。この生物が媒介するウイルスあり。試作した抗体を送るので増産されたし…と…」
思い出したように真雪が言いながらスマホの画面を見せる
「抗体を学生が…?」
「晴風には鏑木美波が乗っているのよ。それに薩摩には西宮紫先生が」
「え?あの海洋医大始まって以来の天才と日本の誇る秀才が…?」
真雪の報告に信じられないといったように言う真霜。そんな彼女に真雪は理由を説明する
「飛び級でまだ海上実習をしてなかったから、今年済ませたいと言われて…」
「変わり者とは聞いていたけれど…でも助かりましたね」
真霜は理由は何であれ安心したという表情になる
「感染後の経過時間が短ければ海水がウイルスに対し有効と推測される…しかし、時間経過と共にウイルスが全身に生き渡った場合、抗体の投与のみが効果的と思われる………」
ザッパーン!
横須賀ではそんな話がされている頃、晴風や薩摩、モンタナは比叡からの砲撃に対処していた
『いつまで一杯なんでい!そう長くは持たせらんねぇよ!』
『油も馬鹿食いしてるんだけど!』
機関室からは叫び声が届く
「もとより航続距離は向こうが上ですし…こちらは無理な動きを続けてますからねぇ…」
「次の手を打たんといずれ限界が来るぞ…」
「艦長…気持ちはわかるがこれ以上は…」
幸子やミーナ、ましろが次々と進言するが
「けど…私たちが諦めたら…」
と明乃はどこか諦めきれない様子
「ならば…比叡の足を止める以外に方法はないんじゃないか?例え沈めることになるとしても」
珍しくましろがそう言うような事をいうと
「えっ…!?」
明乃から驚きの声が漏れる
「比叡の舷側装甲は武蔵のおよそ半分…砲撃では無理ですが雷撃なら可能です」
「よっしゃキター!来たよ私の時代!西崎、謹んで沈めさせていただきます!」
雷撃という言葉に反応した芽依がガッツポーズを作り言うが
「誰も沈めろとは言っていない。仮定の話で方法がないというだけだ」
「比叡に乗っているのは私たちの同級生なんだよ…もしもの事があったら…」
「しかしこのままでは…距離を取りながらの追尾しかできないだろう!」
ましろの言葉に明乃は少し考え込むが
「なんとかして沈めずに比叡の足を止めよう」
と決意する
「シュペーの時と同じことを…!?しかし、あの時ですら無理だったんだぞ!」
とましろは反論し
「両舷に副砲7門ずつ、こちらの射程まで寄せる前に蜂の巣…ですね…」
と幸子もつけ足す。比叡はシュペーとは違い明確に戦艦と分類される等級。そして両舷には14cm単装砲が配備されており近づこうとすれば狙われるのは自明の理だった
『あぁ〜もう邪魔ぞな〜』
艦橋が暗い雰囲気になったその時、下の海図室から聡子の声が響いた
「ミャオ」
と言ってまずはスルリと多聞丸が顔を出して艦橋へと上がり
『あぁ〜もう〜お前も邪魔〜』
「ヌッヌッ!」
と五十六が続けて出てこようとしたその時、肥満体型が邪魔してか海図の受け渡し口に体が引っかかり、ジタバタし始める五十六。そして明乃は
「……はっ!?」
と何かを気づくと比叡を見た
「比叡を…止められるかも……!!」
ピリリリリ……ピッ
通信の音が横須賀女子海洋学校の校長室へと響き教頭が報告する
『校長、晴風より通信です…繋ぎます』
『こちら航洋艦晴風艦長、岬明乃です。現在、比叡監視の任務に就いていますが、比叡もさるしまや武蔵と同じ状態になっていると思われます。このままだと2時間以内にトラック諸島に到着する見通しなので、比叡の足を止める作戦実行の許可をください!』
『割り込み失礼。日本國海軍戦艦薩摩艦長、倉本結城です。お久しぶりです真雪校長。東舞校以来ですね。この件については薩摩並びに『私共モンタナの』賛同を得ています。晴風だけでなく我々も同行します。どうか実行の許可を』
明乃だけでなく、結城やユウカの実行許可の要請が入る
「晴風は航洋艦よ…?いくら戦艦が2隻いても危ないわ…!直ちに退避を!」
ピピピピ
真霜が反対の意を出したその時、真雪のパソコンにメールが届く。差出人は今現在通信している晴風の艦長、明乃であり、そして内容は「作戦計画書及び概要図」と書かれていた。それを即座に読み込んだ真雪は
「よく考えられているわ…確かにこれなら実行可能ね」
「そんな危険すぎるわ…!」
真雪と正反対の話をする真霜。しかしそのまま明乃は続ける
『今この海域に居るのは私たちだけです!やらせてください!』
真雪は少し考えたあと明乃へと質問した
「燃料は足りる?故障箇所は無い?」
『はい、大丈夫です』
「クラスの子達の体調は?」
『問題ありません』
そして回答を受け取った真雪は
「分かりました。作戦を許可します。ただしクラス全員とよく相談して」
『ありがとうございます!』
ガチャ
そうして通信は切れる
「いいの?母さん」
真霜は不安になり改めて確認する
「私が見たところ、作戦そのものは決して無謀なものでは無いわ。それに…」
そんな風に回答しながらパソコンの画面を真霜へと見せる
「猫…?」
「晴風からの報告でね。RATtを捕らえた猫にはウイルスが感染しなかったの。いい風が吹いているのかもしれないわね。あの艦には」
「やっぱり流石やの。あの一瞬で作戦計画を読み込んで承認までしていったわ…」
「兄上…?」
薩摩艦内での結城の反応に柚希は困惑していた
「知っとる者もおるやろうが、あの人は“来島の巴御前”と呼ばれたお方ぞ?作戦の立案などに対してはめっきり強い」
「なるほど…だから信頼しておられるのですね?」
柚希が確認するように聞くと
「あぁ。そういうこっちゃ」
と笑顔で結城は返す
「ほんじゃ、一仕事と参ろうか。総員に告ぐ。これより作戦行動を開始する。学生を救い出すため各員一層奮励努力せよ!」
「「「了解!」」」
艦橋要員や各部署から通信が入る。そして結城は柚希に向くとひと言指示を出した
「紫先生にいつでも抗体が使えるよう用意してほしい…とな」
「了解です。兄上」
そう言って柚希は医務室へ連絡を飛ばした。その時モンタナでは……
「ルナ、作戦行動が認可されたわ。これより本艦は晴風、薩摩と共に比叡救出のための作戦行動を開始する。全艦に通達、後輩を救う任務をこれより開始する。先輩として、何としてでも救い出すわよ!」
「了解!」
そう言うと着々と準備が進んでいくモンタナなのだった
「──以上が、作戦の概要です」
『そこまでして止めなきゃならないの?』
明乃の説明に不安の混じった疑問を投げる美海
「それは…」
と明乃が言い詰まると
「比叡はウイルスに感染している」
『え!?』
美波が艦橋で他のクラスメイトに説明し始める
「先日の砲術長の症状を思い出してくれ。さるしまも武蔵も同じウイルスに感染したと思われる。これに感染した者は自分の意思が制御できなくなる。しかし、私と紫大先生が抗体を開発した。データは学校に届けた。そして薩摩にも抗体は積んである。だから足止めさえすれば比叡の生徒は治療できるはずだ。しかし今比叡を放置すればトラックの住民に感染するかもしれん。となると自ずと世界中に感染が広がる」
「私はみんな助けたい。比叡の子達も。トラックの人達も。海の仲間は、家族だから!」
美波の言葉に明乃は自分の意思をしっかりと伝える
『で、また一人で飛び出すつもり?』
強い口調で洋美が聞く
「ううん。この作戦を成功させるには…みんなの力が必要なの。だけど、みんなにも危険が及ぶから私一人じゃ決められない。みんなの意見を聞かせて……!」
これまでの明乃の態度とは違った形にましろ達は驚く
『比叡クラスって優等生だよね…』
『私達じゃ無理くない…?』
『大型艦だもんねぇ…』
『武蔵の時も怖かったし…』
麗緒や瑠奈、鶫に慧がこれまでの行動から反対の意見を示す。しかし
「私、やります!頑張ります!!」
と涙声になりながらも一番逃げそうである鈴が宣言する
「引っ込み思案な知床さんが…」
「どーする?」
「うぃ!うぃ!」
「よし、やるか!」
「やるやる〜!」
「やぶさかではありません!」
「わしも手伝う。他人事ではないしな」
「「私達も!」」
鈴を筆頭に芽依、志摩、まゆみ、幸子、ミーナと理都子、果代子が次々と賛同する
「比叡の全長は222m。全幅は31m。いけそうじゃん?」
「でもバキュンて来たらやばくない?」
「ぐるぐる回ってれば平気だよ」
光、順子、美千留も高射装置の中から話し
「万里小路の名に賭けて、最善を尽くします」
水測室からも楓が宣言する
「私たちも…」
「やれるだけやってみる?」
消極的だった鶫や慧もやる気を出し
「ま、なんとかなるぞな!」
と海図室から聡子が言う。そして見張り台では
「波飛沫一滴さえも見逃さない!」
とマチコが比叡を睨みながら言い
「こうなったら覚悟を決めるッスよ」
「大変だけどねぇ…」
「マッチもやる気になってるみたいだし。頑張ろ♪」
百々に媛萌、美海も肩を組んで言う。炊事室でも
「私たちは…」
「どうすれば…」
「うーん…とにかく、ご飯炊こう!」
「「ご飯炊こう!」」
ほまれにあかね、美甘が気合いをいれる。そして残った機関室では
「でもやっぱり無茶よ!機関が持つかどうか…ねぇマロン?」
と洋美が尚も反対意見を続け、麻侖へと聞く。しかし当の本人は
「よーし。やってやろうってんでい!」
と言う
「うぇ…!?」
と言う洋美の反応は聞かなかった事にし
「艦長ってのは神輿よ!軽くて馬鹿でも神輿は担ぐのが江戸っ子の心意気でい!」
と言う
「いや、千葉出身でしょ?機関長殿」
と静かに空が突っ込む
「でもま、機関長が言うなら」
「やりますか!」
麻侖につられ麗緒や桜良も決意を固める
『宗谷さんは無理だと思うよね…?』
最後まで諦めきれない洋美はましろへと直接聞くが
「互いの艦の特性を考えれば不可能ではないと思う。そして…薩摩やモンタナもついている。だから…力を貸してくれないか…?」
『宗谷さん…分かった』
ましろにそう返されついに折れる。そして全員の承諾が得られたましろは明乃へと向き
「艦長、やるからには私も全力を尽くします」
そしてその言葉を聞いた明乃は艦橋にいる全員に向き
「みんな…ありがとう…!!」
という。そして
「ミャンミャ〜ン!」
と多聞丸が鳴いたのを合図に帽子を深く被り直すと
「戦闘よーい!」
と声高らかに言うのだった
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
これから段々とペース戻していく予定です。とりあえず頑張ります
次回、第24話、続トラック諸島近海海戦
明日へ向かって、ヨーソロー!