それでは24話、どうぞ
「戦闘よーい!」
明乃の声が晴風艦内へと響く。これが後に東京湾事件と呼ばれたRATt事件の解決へ向けた第一声だった
「艦長!見てください!」
そう言って幸子がタブレットを差し出す
「凄いね、これ」
明乃も思わず感嘆の声を漏らす
「データはより多く、より新しくがモットーでして、個人的に収集してます!」
「助かるよ。ありがとう!」
幸子の答えに嬉しそうな声で反応する明乃
「お主、やるではないか!」
ミーナも腕を組みながら幸子を褒める。そして
「この辺でええとこ見せんと、もう舞台は回って来ませんけぇ!」
「間尺に合わん仕事かも知れんのぉ」
と幸子とミーナは任侠風の会話をし、タブレットを見ながら相談を始める
「メイちゃんタマちゃん、準備を!」
今回の航海でスルースキルを覚えた明乃が綺麗に無視して芽依と志摩に指示をだす
「よしきた!」
「うい!」
と2人が反応すると同時に
「艦長!進路の候補、出ました!」
と幸子がタブレットを差し出す。そのタブレットには数種類の線が引かれていた
「………このルートで行こう。リンちゃん、お願い!」
「は、はい!」
ドンドン!
ルートを決める間にも比叡からの砲撃は続く。前部マストではマチコがその砲撃を観測していた
「右舷に着弾!」
「とーりかーじ!」
「とーりかーじ!!」
かの有名な陽炎型駆逐艦8番艦雪風の艦長、寺内正道の様に頭をだし指示を出す明乃。そしてましろが復唱する。そして船体が大きく揺れ左へと曲がる
「もどーせー!」
「もどーせー!!」
回避行動をとり、比叡の砲弾をギリギリのところで避ける晴風
「シロちゃん!砲雷撃の指示、お願い!」
「分かった!戦闘、右、砲雷同時戦。発射雷数二、比叡の左舷を狙え。当てるなよ!」
一時的に攻撃指示を委託されたましろが芽依へ向かってそう指示する
「難しいなぁ」
と言いながらもどこか嬉しそうな様子で答える芽依。そして今度は志摩へと向かい
「主砲、砲では抜けないから当てるつもりで撃っていい。ただし、左舷寄りに着弾させて少しでも右に誘導して!」
「うぃ!」
ましろは自分の指示に短く志摩が答えると頷き、正面を見る
「こーげき始め!」
ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!バシュウ!バシュウ!
ましろの指示に合わせ晴風の長10cm砲や61cm魚雷が発射される
「予定のコースをお進みください。海底に障害物はありません」
楓が聴音室から静かに伝達する
「勝負どころじゃ…狙うもんより狙われるもんの方が強いけぇ」
「あとがないんじゃぁ」
艦橋ではこんな時でも変わらずミーナと幸子が任侠風の会話をする
「あ、当たりそうぅ……」
鈴はそんなことよりも弾が当たることを危惧し涙声になる
「魚雷、左右に1発ずつ!」
パシュ!パシュ!
「頼むから通ってよぉ!」
ましろの指示に芽依が念を込めた魚雷が発射される。そして比叡は舵を切り2本の魚雷の間を通って進む
『比叡、第一ポイントへの誘導に乗りました!』
マチコから艦橋へ報告が入る
「ここで座礁させれば…沈めずに足を止められる…!!……………抜けられた!?」
比叡が速度変わらず航行し、主砲を撃つ
「撃ってきた!とーりかーじ!」
明乃が大急ぎで指示を飛ばすが艦橋を揺れが襲う
「至近弾!左舷後方に着弾!」
「損害は!?もう少しだけ頑張って!」
マチコの報告に明乃が身を乗り出して尋ねながら機関室に応援をいれる
バン!プシューー!!
「バルブ破損!」
「やばいって!これ以上出力維持できないよ!」
「わぁってる。まだか艦長!」
高負荷運転によってバルブが壊れ、蒸気が機関室に噴き出す。たまらず麻侖が艦橋へ聞く
「後10分だけ持たせて!」
『分かったけどよ。本当に10分でぶっ壊れるぞ!』
そんなトラブルもありつつ戦闘は続く。そして比叡の付近には大量の砲弾が着弾する
「撃って撃って撃ちまくれ!海軍の気概、見せてやれ!」
「ミケちゃんをしっかり援護するよ!砲術長、副砲も使って牽制射!」
薩摩やモンタナでも指示が飛び、主砲弾が放たれる
「比叡第二ポイント通過を確認!」
「艦長!座礁させるポイントを今度も抜けてこられたぞ!どうする!?」
マチコの報告にましろが焦ったように聞く
「まだだよ。まだ終わってない!」
「しかし艦長!もう…!!」
「越えられない嵐は無いんだよ!とーりかーじ!」
ましろへ向かってそういうと明乃は振り返り前を見て指示を飛ばす。その後ろでは比叡が副砲も使って晴風、薩摩、モンタナを砲撃していた
「……!?」
そして景色を見ていたましろはある事に気がつく
「さっきと同じところに戻ってきている!?ここじゃあ比叡は座礁しなかったぞ!」
ましろが驚きの声を上げるが
「ヒメちゃん、今!」
「機関室、今や!」
「応急員、お願い!」
「「「了解!バラスト排水!」」」
晴風、薩摩、モンタナのバラストが一気に排水される
「バラストを捨てたら安定性が…!」
ましろが悲鳴を上げるが
「リンちゃん、速度一杯で!」
と明乃が指示をだす
「ウソ…「お願い!」は、はいぃ!!」
3隻のバラストが排水され吃水線下が見え始める。また安定性が減るため薩摩やモンタナは主砲射撃ができなくなった
ドンドン!バシュウ!バシュウ!ドゴォーン!
長10cm砲や61cm魚雷、そして薩摩やモンタナの主砲が一斉に火を吹き比叡の付近へと向かう
「比叡先ほどと同じコースに入りましたぁ!」
魚雷の間を航行するコースで比叡が針路を取る
「速力下げてくれぇ!流石にもう無理だ!」
機関室からは悲鳴が届く。しかし明乃は反応せずに比叡を見つめていた
『艦長!まだか!』
痺れを切らした麻侖が叫ぶ。その時
ゴゴゴゴォ…ギィーン…
と鈍い音がして比叡の船体が持ち上がる
「比叡停止!」
「比叡の機関停止を確認しました!」
マチコや楓からも報告が上がる。そしてバラストを戻したモンタナのヘリ甲板から
「あれは何だ!?」
ユウカも驚いて目を見張る。その時通信で
『NV-22…名を桜鷹と言う輸送機だよ』
桜鷹と呼ばれたその輸送機は垂直で離陸したのち、プロペラの向きを変えて比叡上空へと行き、またプロペラの向きを変えてホバリングする。その光景に晴風だけでなくモンタナの乗員たちも驚いていた。そして薩摩、モンタナの乗員が比叡に突入した後、艦内からは
バババババ…ガンッ!カンッ!
と音が響いた。その音に
「薩摩とモンタナの乗員は比叡乗員に何をしているんだ!?」
とましろは驚き、最悪のケースを考えていたが、その後すぐに担架で運ばれ甲板に寝かされる比叡乗員を見て
「なんだ…一時的に制圧していただけなのか…」
と安堵の声を浮かべていた
「潮の満ち引きか?」
日も傾いてきて、辺りが黄金色に輝く頃、おにぎりを食べていたミーナは明乃へと作戦の成功理由を聞いていた
「ココちゃんのおかげだよ。オンラインの海図だったから水深の変化がリアルタイムで分かったし」
「なるほど。前に通った時より潮が引いて水位が下がっていると…」
「そこまで想定していたのか…」
明乃の解説に幸子やましろも感嘆の声を上げる
「私たちが助けんたんだよね…?」
「トラックの人たちと、比叡と、両方とも…!」
「うちの艦長っていける口なのかな…?」
鶫や美千留、瑠奈がおにぎりを頬張りながら言う
「その褒め方おかしいから」
と瑠奈に空は突っ込んでいた
「私今…艦長だったかな?」
明乃が比叡を見ながらましろへと尋ねる
「まぁ。らしかったです。幾分ですが」
そう言うとお互いに向き合う。そして遠くから汽笛と共に真っ黒に染められた改インディペンデンス級が航行してきた。それを見たましろは
「ま、まさか…」
と言い、結城や柚希は
「…嫌な予感がする」
「奇遇ですね兄上、私もです」
「ごめんちょっと晴風に行ってくる」
と何かを感じ取って内火艇格納庫へと急ぐのだった。そしてその時晴風では真っ黒の改インディペンデンス級から一人のマントを羽織った人物が飛び降りて来ていた。その飛び降りた場所へと明乃達は走る
「ブルーマーメイドの宗谷真冬だ。あとは任せろ」
そういった人物─真冬は明乃達の後ろにいた人物を見て声を上げる
「シロじゃねぇか。ひっさしぶりだな」
「ちょ、ちょっとねぇさん!やめてよ…!!」
肩を組みに行った真冬を避けようとするましろ
「なるほど〜苗字が同じですしね」
と幸子は納得する
「なんだぁ?縮こまりやがって…ねぇちゃんが根性注入やってやろうか?」
「根性注入…?」
真冬の言葉に明乃が反応する
「いらないわよ!」
とましろが真冬に抵抗するが
「お願いしてもいいですか?」
と明乃が言ってしまう
「ばか、やめっ」
「おお!任せとけ!覚悟はいいな?」
「はい。お願いします」
真冬は一度手を握ると
「よーし。まずは回れ右だ!」
「はい!」
「行くぜ!根性ちゅうにゅカチャん?」
手が出る直前、真冬の頭に何かが2つ当たる音がして真冬は動きを止める
「ほぉ。真冬、まだ辞めてなかったのか」
「やっぱり艦ちょ…いえ、真霜一等保安監督官に言うべきかしら?」
その声を聞いた真冬は顔が青ざめ、ゆっくりと顔を動かす
「うげ…結城兄さんに柚希姉さん……」
「どうやらもうあの時のことを忘れたらしいなぁ……よろしい。べんてん艦長宗谷真冬二等保安監督官、今度薩摩に来なさい」
「……はい」
「それじゃこの件は一度終わり、んでそっちも言う事あるんだろ?」
結城はそう言い本来の流れに戻そうとする
「あ、あぁ。比叡は三原の支援隊が後を見ることになった」
「よろしくお願いします」
「でだ、我々は引き続き武蔵以外の不明艦捜索を続ける。お前たちはどうする気だ?」
「どうしますか?艦長」
真冬の質問にましろが回答を促す
「学校からの指示は武蔵の捜索です。みんなの異存がなければそのまま続けたいと思います」
そう明乃が答えると真冬は笑って
「よーし、よく言った。ただ、無理はしないように。無理だと思ったら我々に連絡を入れて避難しろ。本来これは私たちブルーマーメイドの仕事だからな」
「はい!」
と明乃が答えたその時!
「艦長!広域通信に正体不明の大型艦目撃情報が入っています!」
「南方二百マイル、アドミラリティ諸島と北東三百マイル、トラック諸島方面か…」
その情報を見た真冬は即決する
「よし。我々はトラックへ向かう。すまんが近場のアドミラリティ諸島を確認してもらえるか?」
「わかりました!」
そしてべんてんと晴風らは別れる。まだ笑顔あふれる晴風の無事を真冬は願うのだった
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
来週土曜は…3話投稿したいなぁ
桜鷹ははい、オスプレイです
次回、第25話、(仮)
明日へ向かって、ヨーソロー!