それでは第31話、どうぞ
5月1日午前、呉鎮守府近海。アドミラリティ諸島から全速力で帰投してきた薩摩と途中の洋上補給に対応するために出動した補給艦ましゅう、それに護衛の為駆り出された第一駆逐隊が見え始めた
「接舷よーい!」
艦橋で結城が声を上げる。ここまでの経路で全速でかけながら晴風赤道祭向けのバンド撮影やパーシアス作戦へ向けた指揮案を考えていた結城の顔には疲れが見えているが構わないといった様子で毅然と指揮を執っていた
「兄上、お休みを取られては…?」
「いやいい。まだやることは残ってる」
柚希が結城の身を案じて聞くがすぐに結城が否定する
『接舷よし!舫い固定よし!』
甲板作業員からの無線が届く。その声を聞いた結城は
「柚希、艦は任せた。うちは作業をしてくる」
「賜りました」
そうして結城は艦を降りると呉の鎮守府司令室へと向かう
「失礼いたします。聯合艦隊司令長官倉本結城です」
『入れ』
扉の向こうから声がし、結城が扉を空けてはいる
「戦艦薩摩、只今帰投致しました。伊勢崎漣大将殿」
結城は扉を閉め、敬礼する
「お疲れさん。これからパーシアス作戦だったな。それまでここでしっかり休め」
漣はニカッと笑うと冷蔵庫から一本のエナドリを取り出す
「ほれ。休めとは言ったがこれからやることは残ってるだろ?とりあえずこれ飲め」
「ありがとうございます」
結城はもらって飲み干すと缶を持って扉へと向かう
「それでは行ってきますね。空母の整備、助かりました」
「おう。俺はこれぐらいしか出来ないからな。実際に戦闘する人のサポートがしっかり出来てるならいいんだよ。それじゃあ…もうパーシアス作戦終了まで会うことも無いだろうからな…御武運を」
「ありがとうございます。では失礼します」
そう言うと結城は扉の外へと出る。漣は閉まった扉を見つめて
「すまんな…本当はお前みたいな若いもんじゃなくて俺等見たいな奴が行くべきなんだろうが…」
その呟きは部屋の中で木霊するのだった
─その後呉鎮守府に停泊中の空母、大鳳に結城は訪れていた
「倉本司令!お疲れ様です!戻っておいででしたか」
その姿を見つけた大鳳艦長、鳳城結衣大佐が駆けてくる
「結衣艦長か。お疲れさん」
「倉本司令こそ。それで今日は何用が?」
「まだ会議では明かしてないのだが今度のパーシアス作戦で戦闘機を動員しようと思ってな」
「なんと…陛下へのご確認は?」
突然の申し出、しかも極秘技術の動員を聞いた結衣が驚いた様子で聞く
「予め聯合艦隊司令長官就任時に必要時には使って構わない旨賜ってる。問題はない」
「なら安心ですね。では…飛行長呼んでまいります!」
そう言って結衣は無線で飛行長を呼び出す。しばらくして荒鷲健太中佐が甲板へと上がり駆けてくる
「司令!お呼びですか!」
健太が目の前に立ち、敬礼する
「ああ。今度のパーシアス作戦についての概要を話しておこうと思ってな。今度の作戦時航空機を動員するがまだ噴式烈風と噴式流星は使わない。噴式零戦だけでいい。白鳳も使うから噴式零戦だけでも50機展開可能で十分だからな」
「わかりました。ではそちらの方の整備は万全にします」
「ではその直前訓練を済ませておきます」
結城の申し出に結衣、健太が敬礼する。それに答礼し、結城は大鳳を降りる。そして白鳳にも同じことを伝えた後薩摩へと戻る
「兄上おかえりなさいませ」
すぐに柚希が出迎る
「お昼はどうされますか?」
「済まないが明日横須賀に行くんだ。その資料を仕上げたいから自室に持ってきてくれ」
「承知致しました」
それを聞いた結城は自室へと戻りパソコンへと向く
(「これをこうして…んでここをこういう感じにして……真雪さんに提出する文なんて初めてだ…」)
そうして作業してしばらくすると
コンコンコン
『兄上、昼食をお持ちしました』
「あぁ。助かる」
その言葉を聞いて柚希は扉を開け、昼食を運び込む
「作業との事でしたので…主計科に頼んできつねうどんにしてもらいました
「そりゃありがたい。冷える前に食べよう」
そう言うと結城は椅子を移りうどんを食べる
「………ごちそうさまでした。有難うな」
「いえいえ。あ、でも兄上、主計科から夜ご飯は来てくれとのことです」
「了解。ありがとうと伝えてくれ」
「わかりました」
結城の言葉を聞くと柚希は艦長私室を出る。それを見た結城はパソコンへと向き返り資料作りを再開する。そして最後にその資料を印刷しファイルに纏める
(「最後にこのファイルに“パーシアス作戦海軍行動書”っと……これでよし」)
ふと結城が時計を見ると時刻はヒトハチマルマル。もう夕食の時間は始まっている。結城は急いで食堂へと向かう
「あっ艦長!やっときた!」
すぐに佳代が気づき食堂も喧騒に包まれる
「兄上、今日は何曜日か覚えていますか?」
「えっと…日曜日…!?そういうことか!」
直ぐに察した結城は杯を貰ってそれを掲げる
「皆の衆、近々パーシアス作戦が開始される。これは我が海軍も総力を尽くし協力する作戦である。しかしこれをするにも英気は大切だ。今宵はしっかり呑んで食べて英気を養え!今夜は無礼講だ!」
そう言うと食堂の騒がしさが増す。結城は小声で柚希に
「悪い。あとでパーシアス作戦の海軍行動計画書を読んでくれ」
と伝え夕飯を食べる。そしてその後…
「結局はこれが一番いいんだよね」
第三主砲の上に登った結城は一人で晩酌をしていた
「兄上!やっぱりここにおられましたか」
柚希が見つけて来る
「先ほど言われたもの、現状非公開にすべきものもちゃんと隠されておりましたしあれでよろしいかと。ところで誰に見せるんです?」
結城に言われたものを読んで思った疑問を言う
「真雪さんだよ。武蔵は横女所属だからね。許可は取らないと」
「艦長のお母様ですか。確かに大事ですね」
柚希は納得したように頷く
「それじゃあ晩酌もこれぐらいにせねばな。明日は始発で出なければならないから」
「そうですか。では…お休みなさい」
結城は風呂へ入り寝間着代わりの甚平を着ると布団に入り直ぐに眠りへと落ちるのだった
翌朝呉港5時ちょうど発、横須賀行高速船に乗り込んだ結城は50ノットの快速を誇る高速船で横須賀港に14時に到着、そこで真雪と海軍の移行を伝えたりとした簡単な会議をして20時ちょうど発の夜行高速船で呉へと帰る。鉄道好きとしては元々ある東海道新幹線や現在岡山まで来ている山陽新幹線を使ってみたかったがどうしても予定上そこまで悠長なことはしていられないので諦めて海路で行くこととなってしまった。そして翌5月2日の8時、夜行高速船が呉港へと到着し結城は呉鎮守府へと帰投する
「やっと着いた…」
「おかえりなさいませ兄上」
毎度のごとく柚希が出迎えるがそこにはもう一人いた
「ち、父上…どうしてここに?」
結城の父にして柚希の父、日本國海軍軍令部総長にしてこの国唯一の元帥、倉本征十郎が柚希の横に立っていたのだった
「漣君と会う予定があってな。薩摩が寄港していると聞いたので様子を見に来たまでよ」
そう言って笑う征十郎。やはり軍令部総長の貫禄はすごく周りも少し怖気けていた
「ちょうどいいや。父上、パーシアス作戦における海軍行動計画、もとい武蔵解放作戦、海鶴作戦の承認をお願いします」
結城は作戦行動計画書を渡し、征十郎はそれを受け取り無言で読み込む
「昔からお前の作戦能力には舌を巻いていたが…やはり実戦でも発揮されるか。宜しい。これを日本國海軍正式作戦として承認する。柚希も含めよく励むように」
「「はっ!」」
征十郎の言葉に結城と柚希が敬礼する。作戦決行の日は近いことがひしひしと伝わっていた
─翌5月3日、ブルーマーメイド安全監督室からの情報でブルーマーメイド艦艇が全艦配置に付いたことが知らされると薩摩以下聯合艦隊も出撃、一路宿毛湾泊地を目指し始めた。陣容は
旗艦:戦艦薩摩、以下第一戦隊大鳳、白鳳、第一駆逐隊島風、秋月、宵月、第一水雷戦隊大淀、(第二駆逐隊)照月、涼月、初月、(第三駆逐隊)新月、若月、霜月、第四駆逐隊冬月、春月、北風
の総計16隻。過去の帝國海軍に比べればだいぶ少ないがそれでも国防に回す分を回しきった分での最大派遣戦力であることにはかわりなかった
「それじゃあ、これより海鶴作戦を発令する!戦闘旗揚げ!全艦戦闘よーい!」
薩摩のマストに戦闘旗が数十年ぶりに飜えった瞬間だった
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
今回のこれで海軍の方は補完できた…はず
今回から突如登場した呉鎮守府司令長官、伊勢崎 漣(いせさき れん)大将。それにも空母の艦長等々…さて今後参加することはあるのでしょうか(少なくとも空母の艦長はありそう…?)
あとこれに合わせて28話少し変えました
新幹線建設に関しては現実よりとても遅く進行しているものとしています(かわりに車両は現代ですが)
次回、第32話、明乃ともえか(仮)
明日へ向かって、ヨーソロー!