それでは第33話、どうぞ
─時は5月5日、戦闘中へと移る
「艦長、ちょっと来てください」
「何?」
「うちの学校の艦です」
親子が呼び、もえかは双眼鏡を除く
「晴風…ミケちゃん!?」
「魚雷、無誘導に設定!第一戦そーく!面かーじ!零度よーそろー!」
TU-01隊に倫子の号令がかかる。そして改インディペンデンス級のハッチが開き、短魚雷発射管が回転し発射方向を向ける
「全艦艇、魚雷、攻撃始め!」
その指示に合わせ実弾頭の魚雷が放たれる。武蔵は主砲や左舷側の副砲で応戦する。その1弾が最後尾に当たる
『四番艦、被弾!』
晴風ではマチコから報告が入る
「ブルマーが!」
『ブルマー四番艦、速力低下!』
マチコは続けて報告を入れる
「弾着!ひと、ふた、さんよん!」
「四番艦、艦尾に直撃!」
「四番艦から報告!『我航行不能!戦闘の続行は不可能!』」
「通常魚雷、残弾ありません!」
みくらでは次々と報告が入る
「艦隊は目標右艦尾に回り込み突入要員の乗り込みを行う!各艦、無人機準備でき次第発艦!」
改インディペンデンス級の艦尾甲板からZ60S型戦術偵察飛行船が発艦する
「一、二、三番艦、無人機、発艦しました!」
「武蔵の状況は?」
「砲を無人機に向けています。警戒している模様」
「右180度一斉回頭と同時に無人機を接近させる」
「よーそろー!」
船体が右へと旋回する。武蔵の主砲もそれに合わせて旋回する
「艦長!無人機が!」
親子が言うように無人機が艦橋の周りを覆う。それにより照準ができなくなった砲は個別に動き出す
「無人機で目隠しを…?」
「さすがですね!」
そしてみくらでは
「全艦、射撃開始!」
典子の指示が出され、57mm速射砲が放たれる。その砲弾が4番副砲へとあたり衝撃が艦橋を襲う。その時、武蔵の機銃が旋回し飛行船を撃墜する
「速射砲!?」
突如とした射撃に典子は衝撃を受ける。そして武蔵上空を囲っていた飛行船は機銃により全て撃墜されてしまう
「面舵いっぱーい!全速退避!」
ここからの攻勢は不可能と察した典子は指示を飛ばす。しかしそこを武蔵が正確に狙い抜き、みやけやはちじょうが戦闘不能になってしまう。それを見た鈴は
「このままじゃ…」
と呟く
「知床さん、距離、もう少し取りましょう!」
「は、はぃ!」
幸子の提案に鈴はすぐに返す
「ブルマー、1隻だけになっちゃったんだけど…艦長も副長も、早く戻ってきてよ!」
芽依が悲痛な叫びを上げる。そしてその頃副長室で
「武蔵は止めなきゃいけない。ブルーマーメイドも、助けたい。武蔵に乗ってる、みんなも助けたい。でも、それで、もし晴風のみんなを…みんなに、何かあったらって思うと…怖いの…すごく怖いの!」
明乃の悩みが艦全体へと流れる。そしてその頃横女にて…
『平賀隊、あと1隻です!』
真霜が切羽詰まった声で報告する
「学校艦に総員退艦命令を」
「承知しました」
秘書が大急ぎで会議室を出る
「それから…国土保全委員会にホットラインを繋いでください」
そしてその頃、関東一帯ではサイレンが鳴り響き、避難命令が出されていた。市ヶ谷にある国土保全委員会では状況の確認が行われていた
「避難状況は?」
「東京湾内全域に警報を発令しました。しかし…間に合うかどうか…」
ビー!
『横須賀女子海洋学校からホットラインです!』
「何!?」
突如として繋がれたホットラインに驚く
『校長の宗谷真雪です。報告します。海上保安法第12条に基づき、横須賀女子海洋学校に“緊急事態”を宣言します』
「なん…だと…?」
『私はこれより艦橋に上がりますので、失礼します』
そう言って通話は切れる
「委ねるしか無いのか…“来島の巴御前”に…」
「なんですか?それ…」
重鎮がつぶやいた一言に秘書官が反応する
「15年前、領海内を荒らし回っていた武装船団を、単艦で殲滅したのが、あの校長だ」
「とーりかーじ!」
残された1隻となったみくらが水柱の立つ中を進む
『ブルマーから通信が入ってます!そのまま流します!』
鶫が報告を入れる
『こちらが武蔵を引きつける。その間に晴風は退避せよ!繰り返す、晴風は退避せよ!』
『通信、終了しました…』
典子からの指示を受け取るが艦橋には艦長も副長もいない
「私達…何もできないの…?」
芽依が呟く
「このまま武蔵を、浦賀水道に行かせちゃうの…?」
『主砲、いつでも撃てるけど』
『艦橋、速力このままでいいの?』
『艦長!おにぎりできてます!』
『カレーもあります!』
『おしるこも!』
『艦長!』
芽依の言葉に釣られたようにみんなが伝声管を通じて話しかける
「艦長…本艦の行動方針を…けっ…けつ…けつ…」
「けつけつ言ってんじゃねぇ!」
中々言い出せないましろに痺れを切らした麻侖が扉を開けて中にはいる
「違う!決断をと言いたいんだ!」
「決断なんて…できないよ!」
涙目になり明乃が叫ぶ
「だって、今まで助かってきたのだってモンタナや薩摩がいて偶々上手く言っていただけで私のおかげじゃないよ!みんなは私の…大切な家族だから!みんなを失ったらって思うと…怖いの…」
明乃の本心を聞いたましろは棒立ちしかできなかった
「そこまででぃ!艦長を艦橋に連れて行け!」
「はい!」
麻侖が明乃を止め、麗緒に指示を出す
「お前さんちょっと付き合ってもらうぜ」
そう言って麻侖はましろを機関室へと連れて行くのだった。そして機関室では伝声管に布が詰め込まれ、声が他のところに届かないようになっていた
「これで艦橋には聞こえねぇよ」
「こんな時に何を…」
「まぁ飲め!」
沈んだ顔をするましろに麻侖はお茶を差し出す
「おうおうおう。要するにだ。カツオの刺し身にマヨネーズってのは美味い食い方なんだよ!」
急に激しく動く機関長にましろは目を見開いて驚く
「つまり、私と機関長は全然違うけど違うものが合わさってこそ、独特でいい感じになるってことね」
「そうゆうことよ」
洋美が分かりやすいようにする中、麻侖は座り直して
「あと、祭の太鼓でも皮ばっかり叩かねぇだろ?縁もカカカッて鳴らさねぇと音が締まらねぇ。マロンとクロちゃんみたいなもんよぉ!な、そうだろ?クロちゃん!」
と明るく言う。洋美は組んでいた腕を下ろして
「足りないものは補い合うのが本当の仲間だってことを言ってるんだと思うわ。宗谷さん、艦長を助けられるの、貴方しかいないわ」
少し声色を落としながら言う
「どうでい。わかったか?」
麻侖の問いにましろは顔をぱっと明るくし
「ありがとう」
と言う。そして立ち上がって駆け出す。それを見た麻侖は
「一見落ちゃーく」
と歌舞伎のように言う
「機関長殿はそれがやりたかっただけですよね〜」
と空が後ろから突っ込むのだった…
機関室を出たましろは武蔵の砲弾が迫り揺れる艦内を走る
『感あり!主砲弾3、こちらに向かってきます!』
慧からの報告が艦全体へと響く
「回避して!」
「はい!」
艦橋では幸子が代理指揮をとり回避する。その時
「艦長!」
「副長!」
ましろが艦橋へと駆け込む。ましろは怯える明乃へと近づく
「私は…貴方の…」
そしてましろが明乃の肩を掴むと
「マヨネーズになる!」
「マヨネーズ…?あの…副長は何を言いたいので…」
幸子がましろの宣言に疑問符を浮かべる
「艦長の支えになりたい!艦長は今まで通り、決断して、行動して、運を引き寄せて。その代わり…ほかのことは私が─いや、晴風のみんながなんとかする!そう思っているのは、私だけじゃない!」
「そうだよ。私達もっとやれるよ!」
「うぃ!」
「わ、私だって…もう逃げてばかりじゃありません!何だってできます!」
『そうですとも』
『できるできる』
『為せば成る』
芽依を初めとして志摩、鈴、楓、慧、美波が声を上げる
「副長がマヨネーズなら、私はマスタードになります!」
幸子の宣言を聞いた明乃は目が潤む
「海の仲間に、越えられない嵐はないんでしょ?」
ましろが優しく諭す
「シロちゃん…みんな…」
『武蔵より発光信号。読み上げます!』
マチコから伝声管を通した報告が入る
『貴艦はそのまま、本艦から距離を開けられたし。接近は危険、主砲弾、今だ豊富』
「も、え、か…もかちゃん!無事だったんだ!」
発光信号の最後を読んだ明乃が目を見張る
「なら、なおさら助けるしかない!」
その言葉を待っていたように五十六が艦長帽を被ってくる
「五十六…ありがとう」
明乃は艦長帽を被り
「戦闘、左、砲雷同時戦。300度の武蔵!」
と指示を上げる。その声に合わせ主砲、魚雷発射管が旋回する
『目標、敵進30度、敵速18kt!』
「第五戦速、340度宜候!」
そしてこの行動は武蔵でも
「艦長!晴風から発光信号です!」
双眼鏡を覗いていた親子が直ぐ様報告を上げる
「読み上げて」
「はい。“我、貴艦ノ救出ニ向カウ。繰リ返ス、我、貴艦ノ救出ニ向カウ!”」
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
案外改インディペンデンス級の艦首って細いんだなぁって言う感想
あとましろの迷言があるけどあれ純粋が故の設定だよね…タブン
次回、第34話、ラストバトルでピンチ(Ⅰ)
明日へ向かって、ヨーソロー!