それでは第34話、どうぞ
5月5日11:40─武蔵、浦賀水道到達まで、後20分
武蔵を辛うじて追いかけるみくらでは応急処置が行われていた
「二番艦、三番艦、四番艦航行不能。一番艦発揮速力6kt」
『このままでは後20分で武蔵が浦賀水道に進入する!』
真霜は焦りを感じていた。一方その頃、横須賀女子海洋学校では
『繰り返します。全員直ちに退艦してください!繰り返します。全員直ちに退艦してください!』
退艦命令の放送と警報音が鳴り響く。真雪は一人艦橋へと入り作業をしていた
ピピピピピ……
『校長、晴風から通信です』
教頭が通信を入れる
『晴風艦長、岬です。武蔵への作戦行動を許可願います。クラス全員の許可は取れています。やらせてください』
真雪は少し悩む。そして、ふと見た画面には武蔵が表示されている
「武蔵への作戦行動を、横須賀女子海洋学校校長、宗谷真雪が許可します。ただし、攻撃は一回だけ。地上側でも武蔵への対応は準備しています。反復攻撃の必要はないわ。5分、いえ、3分時間を稼いでくれれば十分よ」
『はい』
『待ってください宗谷校長!武蔵は既にブルーマーメイド艦隊3隻を航行不能にしています。晴風単独ではあまりにも』
『後20分で武蔵が浦賀水道に着きます』
『姉さん、いえ、宗谷監督官。我々では武蔵を止めきれないかもしれません。でも、少しでも足を遅くして時間を稼ぐことはできます』
『それにもかちゃん─いえ、武蔵の艦長が艦橋に立て籠もって奮戦中なんです!』
『武蔵艦長と連絡が取れるの!?』
突然の報告に驚く真霜
『無線は通じませんが、発光信号での通信は可能です』
『岬艦長、武蔵への接近、及び作戦行動を了承します。頼むわね』
『はい』
そうして通信は切れる。晴風では明乃とましろが顔を見合わせ、猫たちが鳴き
「行こう、艦長!」
と鈴も微笑む
「狙われる方より、狙うほうが強いんです!」
幸子もガッツポーズをとる
「その通り!」
「うぃ、うぃ!」
芽依と志摩も親指を立てて腕を前に出す
「艦長、指示を」
ましろが仰ぐと明乃も自分を律する
「30度宜候!」
「30度宜候!」
「前進いっぱーい!」
『前進一杯でい!』
明乃の指示に鈴と麻侖が復唱する。晴風は速力を上げ、武蔵側面へと出るのだった
『武蔵まで、三〇』
マチコからの距離報告が届く
「タマちゃん、武蔵の主砲塔を狙って」
「うぃ」
「絶対に武蔵を止めよう」
「う〜い」
明乃の決意にピースで答える
「メイちゃん、武蔵の側面に来たら全魚雷、一斉射!」
「憧れの全射線発射…まじ!?」
「射撃のチャンスは多分一回だけ。一回で、何とか足を止めたい」
「集中的に艦尾を狙いましょう」
ましろの助言に明乃は頷く
「分かった。絶対に命中させる。りっちゃんかよちゃん、行くよ!」
『了解でーす!』
『はーい!』
理都子と果代子がすぐに発射管を旋回させる。そして晴風が武蔵の横へとしっかりつくと
「目標、武蔵艦尾。攻撃はじめ!」
明乃が指示を飛ばす
「照準点武蔵艦尾!全弾当てるよ!発射よーい!てー!」
芽依もすぐに伝声管に駆け寄り指示を出す
パシュウパシュウパシュウパシュウ パシュパシュパシュパシュ
2基の発射管から計8発の魚雷が飛び出す。それに合わせて志摩は
「発射!」
と主砲に攻撃指示を行なっていた。その指示に合わせ12.7cm連装高角砲弾が発射される
「流石海軍の新型砲…発射速度が桁違いです!」
幸子が興奮しながら話す。しかし
「駄目だろびくともしない」
という美千留の言葉通り、主砲弾は武蔵の装甲を前にして何の役にも立たなかったのだ。そして魚雷はというと主砲を旋回し始めた武蔵の艦尾に命中する
「よっしゃ!全弾命中!」
芽依は飛び跳ねて喜ぶ
『武蔵、速力低下!』
マチコも視認報告を飛ばす。しかし武蔵は主砲旋回を続け、晴風を狙う
「来るぞ!」
「衝撃に備えて!」
ましろと明乃がそれぞれ艦内に促す
ドドドドン!ドドドドン!
『武蔵、発砲!』
その報告から間を空けずに着弾する。水圧で艦は跳ね、後部は一度綺麗に水上へと出てから着水する。そして艦橋でも揺れに耐えられず明乃がこけかけ、ましろが支える
「大丈夫ですか?」
「ありがとう」
「艦長」
支えられた明乃に幸子が笑って落とした艦長帽を差し出す。そしてそのすぐ後、被害状況が入る
『後部、発煙機使用不能!』
『爆雷投射機、損傷!』
『第五運用科倉庫、火災発生!消火作業中!』
「い、一撃でここまで…」
損傷具合に鈴が驚く
「やっぱすごい…」
命中弾こそ無かったものの、夾叉を一撃で出す武蔵の砲撃に芽依は驚いていた
『無線機損傷!』
鶫からの報告に
「無線もだめか…」
とましろは悲痛な声を上げる。そして時計を見ると
「艦長、5分稼ぎました」
「リンちゃん、急いで武蔵から離れて!」
「任せて!」
そう言うと鈴は梶を切る。しかし
『武蔵発砲!』
『来ます!』
というように簡単には逃がしてくれない。そして水柱から来る海水で艦はびしょ濡れになっていた。その艦を見てもえかは
「ミケちゃん!」
と叫ぶ
『一番砲、揚弾装置故障!』
『烹炊室で火災発生!消火作業に入るね!』
「これが武蔵ですか…」
追加の損害報告にものを掴んでいた幸子が呟く
「進行方向を抑えられています!」
「逃げ場がないよ〜!」
ましろや鈴も叫ぶ。武蔵では
カラン、ドン
と音がしてバリケードをもえかが撤去し始めた
「艦長!?」
「どうなさったんですか?」
親子と夏美が声をかける
「砲撃をとめるの」
「無茶です!」
「艦長!」
「じゃないと晴風が!」
そう叫ぶもえかの腕に亜依子が手を添える
「落ち着いてください、艦長」
「…………ごめんなさい…」
その言葉でやっと落ち着いたもえかはバリケードから手を離す。そして晴風の機関室で
ガチャ
「機関長!水、水!」
瑠奈が指で下を指しながら言う
「んだとぉ!?今行く!」
『艦長、左舷機関室に進水!』
瑠奈の報告は洋美を通して艦橋へと伝わる
「機関室まで…」
「艦長、みんなに離艦準備させますか?」
「まじ?ここで逃げんの?」
「蛇は頭が食べられたら生き返るもんも生き返らないんですよ!」
「ごめんなさい!私がもっとうまく操舵できてたら…」
ましろの言葉に芽依、幸子、鈴がそれぞれ反応する。明乃が少し考え
「総員、離艦よー…」
と言いかけた時
キーン…バシュウバシュウ!
とどこからでもなく聞き慣れない音が聞こえる。そしてその直後、武蔵の第一副砲が破壊される。またその後から数々の砲弾が着弾する
「これは…?」
「リンちゃん、面舵いっぱーい!」
「面舵一杯!」
明乃はこれを好機と捉えて針路変針を指示する
『後方、艦影視認!』
「ブルーマーメイドか…?」
マチコからの報告にましろが疑問を呈する
「見てきます!」
幸子が艦橋後ろへと走る。そこに居たのは
「識別信号確認!比叡、舞風、浜風、アドミラル・シュペー、てんじん、それから、モンタナ、薩摩と…日本海軍の艦艇です!」
明乃は聞いた言葉に反応すると艦橋後ろへと移動し双眼鏡を覗く
「ユカ姐ちゃんに結城さん!?それにてんじん?」
「うちの学校の艦です!」
そして明乃の双眼鏡の先に見えたのは…
「古庄教官!」
「間に合って良かったわ…遅くなってごめんなさい。それにしても…日本海軍の秘匿兵器をみられるなんて」
そう言う薫の視線の先には
「な、なんだあれは!?」
ましろが叫ぶ。またモンタナやシュペーでは
「結城艦長、後でよく話を聞かせてもらいますよ」
「日本海軍はあんなものを隠し持っていたのか…」
とユウカやテアがそれぞれ別の感情を持っていた
「っと、それより。野間さん!無線機が使えなくなったことを伝えて!」
明乃の指示を聞いたマチコはマストに立つと手旗信号を送る。それを見た結城は
「無線機故障…か。よろしい。航海員!本艦からの晴風への通信は発光信号を使う!」
「了解!」
そしてシュペーでは
「ココ〜!みんな〜!」
とミーナが手を振る
「来てくれたんですね〜!」
幸子も手を振り返す。そしてシュペー艦橋でテアは腕を組みながら
「Jetzt ist es an der Zeit, meine Schuld zu begleichen!(今こそ借りを返すときだ!)」
と叫ぶ。そして晴風艦橋では
「艦長どうします?」
とましろが聞く
「みんなが来てくれたなら、まだやれる!」
「私に異存はありません」
明乃とましろは顔を合わせる
「作戦変更!これより武蔵に乗り込む!」
「よっしゃあ!」
「うぃ!」
「がんばります!」
「はい!」
「やりましょう!」
「やろうやろう!」
艦橋にも士気が戻る
『シュペーが作戦を訪ねています!』
マチコが報告すると
「武蔵に乗り込みます。晴風の援護を!」
と明乃は返す。そしてすぐに
『薩摩から発光信号!』
「読み上げて!」
突如とした信号に驚きつつも聞く
「『これより本艦隊の隠し戦力を使用する。しばしまたれよ』とのことです!」
「隠し戦力…?あれのことか?」
ましろが飛んでいるなにか─噴式零戦を指さす。その頃薩摩では
「副砲、武蔵の右舷高角砲、機銃をねらえ。モンタナは左舷側を。神風01、02とヴァイパー01は対空砲を破壊次第各主砲にレーザー誘導。行くぞ!」
「おう!」
そうして薩摩、モンタナの副砲が火を吹く。すぐに高角砲や機銃を破壊していった。そして薩摩所属の
「レーザー誘導よし。ヴァニタス01より各機へ。これよりミサイル発射、武蔵主砲を破壊する。セーフティ解除!」
『ヴァニタス02了解!セーフティ解除!』
『ヴァニタス03セーフティ解除!いつでもどうぞ!』
『ヴァニタス04並びに05、当該海域の航空援護を行う』
『同じく06、当該海域の航空援護を行う』
そうして噴式零戦は散開する。01が1番、02が2番、03が3番主砲にミサイルを発射する。もちろん弾頭は模擬弾である。そして1砲塔は破壊が完了した。2、3番砲塔は当たりどころの影響か跳ね返ってしまう。そして1基だけのこった副砲が対空攻撃を行おうとした為航空隊は撤退。そしてそれを確認した薫は
「これより我々は晴風の武蔵乗艦作戦に対してこれを援護します。てんじん、シュペー、舞風は武蔵右舷から、比叡、浜風、モンタナは左舷から攻撃し晴風を援護。各艦、突撃準備を為せ!目標、武蔵!」
と全体に指示を飛ばす。その光景を見たもえかは
「…風が吹いた……希望の風が」
と呟いたのだった
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
さて、久方ぶりの薩摩、モンタナ登場です。というか日本海軍にとっては設定上だと湾岸戦争以来、実に26ぶりの戦闘です()
テアのドイツ語はそれらしいものを選んでいるだけで多分間違ってます。すみません
次回、第35話、ラストバトルでピンチ(Ⅱ)
明日へ向かって、ヨーソロー!