それでは第35話、どうぞ
「全艦、突撃せよ!」
薫の声に合わせ、てんじんの57mm速射砲が放たれる。それに合わせ、シュペーの28.3cm3連装砲や比叡の35.6cm連装砲、モンタナの40.6cm3連装砲、浜風、舞風の12.7cm連装砲、61cm魚雷が放たれる。武蔵は残った主砲で応戦する。そしてその主砲弾がシュペー近くに着弾するが
「Hab keine Angst!(怯むな!)」
という言葉に合わせるかのように主砲弾で仕返しをする。また浜風や舞風が放った魚雷が武蔵へと命中する。さらにはてんじんの魚雷も放たれ、武蔵の速力はさらに落ちていく。砲弾による水圧で揺れるてんじん艦橋で薫は追加で指示を送る
「くれぐれも武蔵艦橋付近には当てないよう全艦に通達!」
「分かりました」
「晴風は?」
そうして見た視線の先には回避行動をとる晴風の姿が。その艦橋で、明乃が呟く
「なんとか隙を作らないと」
「艦長。これ、使えないですかね?」
幸子が明乃の呟きを聞いてタブレットの画面を見せる
「噴進弾?」
「役に立つかもって明石が搭載してくれたんですが…」
少し考え、明乃は指示をだす
「タマちゃん、メイちゃん!」
そして説明すると
「よっしゃ!分かった!」
「うぃ!」
と言ってどこかへと向かってしまう
「リンちゃん」
「はいっ!?」
「晴風を武蔵の前に出して」
「かか、艦首の前!?」
突然の指示にびっくりする鈴
「知床さん。前進、武蔵の前へ!」
ましろも頷き指示をだす
「よ、宜候!」
鈴も気持ちを切り替え舵を切るのだった
晴風が針路を変えた事はシュペーや薩摩からも見えていた
「武蔵の前に出るのか!?」
ミーナが先に反応する
「晴風を撃たせるな。武蔵の攻撃をこちらに引きつけろ!」
『テア艦長!こちらも行こう!』
「ありがたい。Feuer!」
シュペーと薩摩が主砲を斉射し武蔵を妨害する
「行きなさい、晴風」
薫もそれを見て呟く。そして艦橋を出た芽依と志摩は後部甲板へと走る。そして旧爆雷投射軌条のところに被せてあった布を取る
「タマ、時間がないから急ぐよ!」
「うぃ!」
2人は準備を続ける。その間にもほかの艦が武蔵の攻撃を引きつけていた。そして武蔵の最後の副砲を破壊する
「噴進弾、いつでも行けるよ!」
時を同じくして噴進弾の発射用意も完了する
「前進いっぱーい!面舵いっぱーい!艦尾を武蔵に向けて!」
「前進いっぱーい!面舵一杯!」
明乃が指示し鈴が復唱して舵をとる
「タマちゃん、発射準備!」
「タマ、魂で撃て!」
そうして艦尾が完全に武蔵を向くのを待つ
「この“タマ”で…チャンスを掴む!」
そう言うと志摩は発射ボタンを押す。勢いよく煙が噴き出し、回転しながら武蔵の方へと進んでいく。そしてそのまま武蔵の上空を通過し武蔵を煙で包み込む。芽依たちは少し咳き込むと
「艦長、今だー!」
と合図を送る
「リンちゃん、面舵いっぱーい!武蔵の右舷へ!」
「面舵いっぱーい!」
鈴が舵を切る。しかし途中で固まる
「だ、舵輪が回りません!」
「ええ!?」
『艦長!舵に被弾!操舵不能!』
その報告を聞いて明乃は瞬時に考える
「パラシュートあったよね?」
「えっ…あっ…うん!」
その反応を聞いた明乃は伝声管へと向かい
「ヒメちゃんモモちゃんパラシュートよーい!」
その指示を合わせてもやいをつけるところにパラシュートの紐をくくりつける
「パラシュート繋いだっすけどどうすんすか?」
百々が聞く
「右舷後方に投げこんで!」
「「え?」」
「早く!」
「「はい〜!」」
そうしてパラシュートが海の中へと入る。そしてパラシュートが開くと船体が右へと曲がり始める
「回った!」
「やりました!敵前大回頭!」
『罐はどうなってもいいから絶対止めんな!』
麻侖が機関室で声を張り上げる
「武蔵見えた!」
「パラシュート、切り離して!」
その指示ですぐに媛萌がロープを切断する
「激突するぞ!」
「備えて!」
明乃が叫び、艦内の全員が身構える。そして晴風は武蔵に激突しつつも強制接舷に成功する。そして武蔵はここで停船する
「やったぁ!突撃成功です!」
幸子がましろへと抱きつく
「救出部隊突入準備!」
『できておりますわ』
「へ?」
「行きますわよ…突入ー!」
薙刀を持った楓を筆頭に突入を開始する。そしてましろは後ろを向き、不安そうな顔をする明乃をみる
「艦長」
その声掛けにハッとした表情を浮かべる明乃
「艦長も突入してください」
「へぇっ!?私はここにいる。艦長だから…」
「行って!岬さん!」
唐突に苗字で呼ばれ驚く明乃
「分かってるんだから。行きたいって顔に書いてあるよ」
「シロちゃん…ありがとう!」
そう言うと明乃は駆け出す。そして武蔵では
「総員突入!」
「晴風乗員だけに負担かけるな!急げ!」
武蔵後部甲板に着艦したNV-22“桜鷹”から薩摩、モンタナの乗員が結城やユウカ指揮の下駆け出す。そして結城とユウカも明乃と同じところへと走る
「もかちゃーん!」
明乃は楓や媛萌、百々が作った道を駆け、ラッタルを上がる
「(もかちゃん…)」
そしてもえかの籠る扉の前につくと
ドン、ドン
と扉に体を打ち付ける
「もかちゃーん!」
そしてその声が聞こえたもえかはすぐに扉の方へと駆け出しバリケードを壊す
「もかちゃん!」
『みけちゃん!』
そして少しずつ扉が開く。そして中の親子達が大きなものをどかしていくと勢いよく扉が開き明乃はバランスを崩す
「わぁあ!」
そして明乃は誰かに支えられていることに気がつくと顔を上に上げ、その人物をみる
「やっと会えたね…ミケちゃん…!」
もえかの目が潤む。それを見た明乃も目が潤み
「もか…ちゃん……もかちゃん…もかちゃん…もかちゃん!!」
と叫んで抱きつく
「ミケちゃんってば…無茶するんだから…」
ともえかも抱きつきながら軽く咎める
「だって…」
「ほんとにもう…」
「ごめん…」
「でも…ありがとう」
ドタドタドタ
2人が抱き合っている中、ラッタルを駆け上がる音が響き、誰だ?と艦橋にいる全員がなる
「ミケちゃん!」
「明乃艦長!」
そうして飛び込んで来たのはユウカと結城。それを見た明乃は何処かで見たことある2人だと首を傾げる
「ユカ姐ちゃんに結城さん!」
明乃が振り返りそう叫んだことからもえかはハッとする
「えぇ!?」
「もかちゃん…元気そうでよかったわ」
「本当に。明乃艦長はずっともえか艦長のことを心配していたんですよ?」
そう言ったあと、結城はもえか、明乃、ユウカが抱き合うのを少し見守り、そして
「輸送機を用意しています。武蔵の4人には少し病院で診てもらう必要もあるかもしれませんので」
と復旧が完了したエレベーターを使って甲板の方へと下り、そして後部甲板へ向かう。そこに駐機されていたSH-60Lに武蔵の乗員を乗せると結城は祐介に向かって
「武蔵で孤軍奮闘した勇者や。しっかりと運んでや」
と言う。祐介も敬礼すると
「もちろんです。お任せください“司令官”」
と言って飛行準備を整える。もえかたちも
「ミケちゃん、また少し別れちゃうね」
「でも…今度はすぐに会えるよ」
と少しばかりの別れを告げる。SH-60Lの扉が閉まると結城が明乃たちに離れるよう合図する。そして飛んでいったヘリコプターを見たあと、結城は振り返り
「さぁ、帰ろう。横須賀に!」
と告げる。明乃やユウカも頷くと自艦へと戻っていく。そしてブルマー艦でも
『作戦終了。全艦横須賀に帰投せよ!』
真霜からの通信が入る。その通信を聞いた典子達は顔を合わせて微笑み合う。同じ頃横須賀の司令部では
「お母さん、伝説を作り損ねたね」
と椅子に腰掛けながら真霜が呟く。横女の艦橋で作業していた真雪は
「私の代わりに私の生徒たちがやってくれたわ」
と返すのだった
夕日に染まる横須賀。武蔵を曳航する薩摩と晴風を曳航するてんじんを中心に陣形を組んだ艦隊が姿を見せる。船着き場には救急隊や横女教員、ブルマー隊員が日本を救った英雄達の凱旋を待っていた。曳航索が切離された晴風がタグボートによって接舷される。先に接舷していた薩摩やモンタナの乗員もそこへと駆けつける。そしてラッタルを降りる
「帰ってきた…」
「
「帰ってこれた!」
「なんかまだ信じられません」
ましろを初めとして明乃、鈴、幸子がそれぞれの思っていることを話す
「夢じゃない!」
「うぃ!」
芽依や志摩は寝そべり地面を叩く。その時
ギギギギ…
と音が鳴り響く。段々と晴風の艦首が沈み始める
「晴風が…」
「だれか…とめて…」
「沈むなよぉ!」
美甘やほまれが震えながら言い、麻侖は晴風へと飛びつきそうな勢いで叫ぶ。悲痛な表情でみんなが見守る中、結城は
「英雄の艦としての名前は消えない。そして明乃艦長達を守ってくれた礼として、校歌で最後は送ってやらないか?」
と提案し音楽隊へ指示をだす。伴奏が流れ始めるとみんなも落ち着き、そして歌い始める
『開化の調べー 黎明の岬ー 海ーの学び舎にー リンと響く鐘 ここーに契りし魂 わーだつみの姉妹ー なーなつの青皆めざーして 錨ーをあげよー いざ進まん いざ進まん 真白き波あげ凛々ーしく いまうたーわん いまうたーわん 歴史ーと明日のーうーたーを 我らは進むー 蒼海の世紀ー あーすーの産声をー まもーり抜く誓いー せーんーの波打つあらーしも とーもに手をむすびー きたーえまなびし我ーらに 行けぬ海なーしー いざまもーらん いざまもーらん 万国海路ーの朝ー焼け いまうたーわん いまうたーわん 勇気ーと愛ーのうーたーをーー』
歌い終わると明乃、ユウカ、結城、柚希、テアが敬礼する。それを筆頭にして晴風乗員は晴風へと向き直り、モンタナや薩摩の乗員は敬礼をする。その様子を見ていた真雪や真霜も悲しい表情を戻し、晴風へと敬礼する。そして明乃の表情は少し笑顔が浮かんでいたのだった
今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を
安定のドイツ語。一応本編見ながらなんで近いはずです
本編とはだいぶことなる形になってしまいましたね。それはともかく、横須賀女子海洋学校校歌はhttps://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&opi=89978449&url=https://www.youtube.com/watch%3Fv%3D_yJkB2txMCU&ved=2ahUKEwjPk7yU5o2XAxV5kVYBHTtdKyUQFnoECD8QAQ&usg=AOvVaw2Oivf0qad-MLibj0k_tAx-よりお借りいたしました。山口A二郎(実写版へのへのもへじ)さんありがとうございました
次回、第36話、艦が消えてピンチ
明日へ向かって、ヨーソロー!