ハイスクール・フリート〜風の中の希望〜   作:翔鉄

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さて、今日は2話です。小説版が中々長くて漫画やOVAに行けない。でもOVAは6月の話、まだここは5月の話……

今回過去にない長さです

それでは第38話、どうぞ


#38 カフェでの会話でピンチ?

朝食の後、ましろ達は真雪と一緒に横須賀女子海洋学校へと向かった。多聞丸の方は真冬と共にお留守番。真冬は真冬手間明け方に帰っており、これから寝るとのことだったからだ

 

 

 

その後、横須賀女子海洋学校の会議室では事件の聴取が行われていた。聴取、とはいうがすでに提出された航海日誌をはじめとした晴風の記録についてその都度確認を行い、その時の様子を多少補足する程度のことだった。晴風からは明乃とましろが、武蔵からはもえかが、モンタナからはユウカが、そして海軍からは柚希が同席していた

 

 

 

「すごいよ、もかちゃん!ずっと艦橋に閉じこもってたはずなのに、どうやってあんなに細かいところまで記録できたの?」

 

聴取はお昼前に終わり、ランチを食べようということで明乃、ましろ、もえか、柚希の4人は横女近くのカフェに向かっていた

 

「艦橋からろくに動けなかったことは確かなんだけど、武蔵は大きいからね、いくつか抜け道があるの。例えば、艦橋にはミケちゃんが入ってきた入り口とは別にエレベーターがあったりね」

 

「エレベーター!?で、でも、あのネズミのせいで電子機器も使えなかったんじゃ……」

 

「操作パネルはね。元々は手動で操作していたものを改装したエレベーターだったから、配線を繋ぎ替えて昔の操作で扱えるようにしたの」

 

「ふわぁ、やっぱりすごいなぁ、もかちゃんは」

 

その話を聞いたましろは(格が違う……)と心の中で呟いていた

 

「シロちゃん?どうしたの?」

 

そんなように面食らってたましろをみて明乃が声をかける

 

「あっ、いえ、すみません。お二人には積もる話もあると思いますし、やっぱりわたしは遠慮させていただいて──」

 

「ええーっ!?そんなのダメだよ、シロちゃん!」

 

「しかし、艦長」

 

ましろが逃げ出すと思ったのか明乃がましろの頭を捕まえる

 

「宗谷さん、わたしも宗谷さんに一緒にいてほしいな。晴風でのお話、宗谷さんの目にはミケちゃんがどんな風に映っていたのか、是非教えてほしいの」

 

「艦長が、どんな風に映っていたか……」

 

「こればっかりは、ミケちゃんに聞くわけにはいかないからね」

 

そう言ってにっこり笑ったもえかにましろは無意識に背筋が伸びていた

 

「そ、そういうことであれば」

 

「やった!さっすがもかちゃん!」

 

「ふふっ。ましろちゃん一本取られちゃったわね。それにましろちゃんの理論だと私もいないほうが良いんだよ?」

 

「あっ……そういえば……」

 

柚希の言葉にましろは顔を赤くするのだった

 


 

「およ?あれ、うちの艦長と副長じゃない」

 

「ん、どこぞな?おお、ホントぞなりおーい──」

 

「ちょっと待ってサトちゃん」

 

「むぐっ」

 

聡子の口を秀子が慌てて塞ぐ。2人も同じカフェに来ていたのだ

 

「見て。もう二人いる」

 

「むぐ」

 

聡子は口を塞がれながらも頷く。秀子が塞いだ手を離して体勢を低くすると聡子もそれに倣って身を屈める

 

「あれ、一人は海軍の服装だし柚希さんだよね。そしてもう一人は武蔵艦長の制服……とするとあれが岬さんが助けに行った知名艦長ってことか……」

 

「ほほー、なかなか雰囲気があるぞな」

 

「みんな制服ってことは学校に行ってたってことだよね。やっぱりRATt(ラット)事件絡みなのかな」

 

「お疲れ様ぞな。それで、なんで話しかけたらいけんぞな?」

 

聡子の質問に秀子はさらに上体を沈ませる

 

「だってさ、気にならない?あの四人がどういう会話をしているのか」

 

「む……確かに気になるぞな」

 

明乃とましろ。この2人と言えば乗艦当初は折り合いがつかず晴風クラスの面々をハラハラさせたものだった。そして2人はもえかを助け出す時のましろの目を思い出す

 

「あれは、夫を送り出す正妻の目だった……」

 

「目だったぞな……」

 

「でも実際に知名艦長も交えての会話となったら副長はどうなってしまうのか」

 

「ごくり……。知名艦長の反応も気になるぞな」

 

「ね」

「んむ」

 

2人は頷き合う

 

「けんど、この席からじゃ流石に会話までは聞き取れんぞな」

 

「う〜ん、表情とか仕草を見るのが精一杯かぁ。近くの席に移動する……のは流石にバレバレだし」

 

「ふむ」

 

聡子は顎に手を当てると突拍子もないことを言い出す

 

「『あなたが副長の宗谷さんね。話は聞いているわ。私の明乃がどうもお世話になりました』」

 

「…………知名艦長ってそういうしゃべり方なの?」

 

「知らんぞな。そんなもん適当ぞな」

 

そんな風に話しながらましろ達の席を見るとましろは恐縮している様だった

 

「『わ、わたしの……って……艦長は誰の物ってわけでも……なくて……』」

 

「『なにかおっしゃって?よく聞こえなかったわ』」

 

聡子のなかではもえかがお嬢様設定になっている様子

 

「『だ、だから、艦長は──岬さんはわたしのっ』」

 

「おお、いい感じぞな。それじゃあ……『まあまあ二人とも落ち着いてよ。海の仲間は家族なんだから』」

 

「艦長の方に!?ううっ、二人で三人分の台詞は流石につらい……だけど……『ですが艦長、わたしにもマヨネーズとしてのプライドがあります!』」

 

「ぶふぉっ」

 

「しーっ、しーっ」

 

「す、すまんぞな。でも流石に今のはウケるぞな」

 

秀子によるましろのアテレコに聡子は吹き、秀子は内心ガッツポーズをとる。そしてバレないようにとヒソヒソしつつも盛り上がっていると

 

「あのー」

 

と声を掛けられ2人は背筋を伸ばす

 

「あ、驚かせてしまったみたいで申し訳ありません」

 

声をかけてきた人を見ると横女の制服を着た3人がいた。ましろ達の席とは反対方向にいたらしい

 

「ごめんなさい。ちょっとうるさかったですよね……」

 

「申し訳ないぞな」

 

2人がそろって頭を下げると声をかけてきた本人は慌てたように両手を広げた

 

「いえ、違うんです。というか向こうにバレたくないのはこちらも同じなので……」

 

「向こう?」

 

と3人の視線の先を辿るとましろ達4人がいる席だった

 

「私たちは武蔵クラスの生徒なんです。私は主計科給養員の小林亜依子」

 

「わ、私は機関科応急員の角田夏美、です」

 

「私は吉田親子、航海科航海員です」

 

「えっと……私は航海科の山下秀子です」

 

「同じく航海科の勝田聡子ぞな」

 

武蔵クラスの方に先に名乗られてしまったので恐縮しつつ2人も名乗る

 

「晴風の方々とは是非お話してみたくて。その節は本当にありがとうございました」

 

その言葉に聡子と秀子は慌てるが2人が何か言う前に亜依子が話を続ける

 

「ですが……あなたたちの知名艦長の解釈は間違っえています。うちの艦長なら、もっと完全に退路を断つ形で話を持っていきます。にっこり笑って追い詰めるあたりは中々いいところを突いていると思います。言葉遣いは普通に丁寧語でお嬢様言葉ではないですけど……」

 

「え、えーと……」

 

晴風の2人が首を傾げると亜依子はずいっと身を乗り出す

 

「私たちは岬艦長の人となりについて興味がある」

 

夏美と親子もその言葉にうんうんと頷く

 

「それに今の山下さんたちの会話から、俄然宗谷副長についても興味が湧いてきてしまいました」

 

夏美と親子はさらにブンブンと首を縦に振る

 

「私たちは知名艦長についてお話しすることができます。……どうです?」

 

「つまり、私たちに艦長と副長の情報を提供せよと」

 

亜依子が頷き、秀子と聡子も目と目を合わせて頷く。そして親指を立てる(サムズアップ)!

 

「店員さんに言って、席くっつけてもらいますか」

 

「そうしましょう♪」

 

結論、武蔵クラスの3人は気分を損ねていたわけではなく秀子達の会話に加わりたかったということだったよう。そういうことは晴風クラスのメンバーなら受ける他ないので秀子と聡子は晴風での明乃とましろの様子を話す。そして先程のアテレコも単なる噂話からの発展ということを伝える

 

「それで武蔵の艦長の方はどうなんです?」

 

秀子が今度はそちらのターンとばかりに尋ねる

 

「はっきり言って、うちの艦長はすごいですよ」

 

そう言って亜依子達はもえかがあの理不尽とも言える事態に如何に冷静に対処したか、影響を逃れた自分達を如何に護ったのかを話した

 

「だけど、そんな艦長もある時を境にちょっとだけ様子が変わったんです」

 

「変わった?」

「もったいぶらずに教えるぞな」

 

聡子の言葉に亜依子はクスッと笑う

 

「あなたたちの艦長、岬さんがスキッパーで武蔵に接近しようとした時のことです」

 

「武蔵とはじめて遭遇した時ぞな」

 

「それ以来、あまり自分のことは話さなかった艦長が岬艦長との思い出を話してくれるようになったんです」

 

「最初はきっと、あのスキッパーの人は自分の知り合いだっていう説明をするためだったと思うんですけど、そのうちわたしたちを励ますためにする話の時とかにそういう話をするようなって……」

 

「来ちゃダメだって言ってもきっと助けに来てしまうだろうか、そんな話もありましたね」

 

亜依子の話に夏美や親子も具体例を挙げていく

 

「それで、本当にその岬艦長が助けに来てくれたわけじゃないですか。あれには私たちも激しく感動しちゃって」

 

「自分たちが助かったんだってこと以上に、そのことで泣いちゃったりしてね……ね?」

 

「私たちの頼れるリーダーが、あの瞬間完全に、王子様に助け出された囚われのお姫様になっていましたから。ロマンスですよね、憧れます」

 

「そこで、宗谷副長の存在についてですよ」

 

ぐぐっと身を乗り出して亜依子が聞く

 

「先程は単なる噂話だとおっしゃっていましたけど、実際のところはどうなんです?本当になんにもなければ噂話にすらならないんじゃないかと思うんですよ。ズバリききたいのはうちの艦長に逆転のチャンスは……ある……のかないのか……と……か…………」

 

急に亜依子の言葉が途切れ、彼女の顔はサァーッと青ざめていく。秀子と聡子も妙な冷気を背中に感じて、恐る恐る後ろを振り返る

 

「ずいぶんと楽しそうね。私たちもご一緒させてもらってもいいかしら」

 

そこにはにっこりと優しげな微笑みを浮かべるもえかと笑いながら見ている明乃、ましろ、柚希の4人がいた

 


 

「まったく、山下さんも勝田さんもいったいなんの話をしているんだ」

 

「いやぁ、暇だったんで雑談ですよ、雑談」

 

「武蔵クラスとの交流ぞな。けんど、興味深い話が聞けたぞな」

 

しれっと秀子と聡子は後ろ頭をかく。対して武蔵クラスの方は何も言わずに微笑むもえかを前にして3人が3人とも恐縮していた

 

「やはり、晴風はちょっと緩いのでは……」

 

「そう?でも、わたしはすごく嬉しいな。しゅうちゃんもサトちゃんも小林さんたちとは初対面だったんでしょ?それなのにこんなに仲良くなってるんだもん」

 

ましろのぼやきに明乃は満面の笑みを浮かべる

 

「……まあ、仲が悪いよりは確かにいいですが」

 

「私もそう思うわ。小林さんたちが声をかけたのをみてすごいなって思ったし、山下さんたちがすぐに受け入れてくれて一緒に盛り上がりだした時には、『ああ、やっぱりミケちゃんの艦の人たちだな。嬉しいな』って」

 

もえかまでもが言い出すとましろも小言を引っ込めざる得なくなる

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいら艦長。いつから私たちにお気付きで?」

 

話を聞いていて不思議に思った亜依子がうわずった声をあげる

 

「もちろん、はじめからよ?横須賀女子の制服姿が、目につかないはずないじゃない。フフフフ」

 

「!?」

 

もえかの返答に3人はギョッと目を剥く。そして亜依子が小さく口をすぼめて

 

「それならそうと早く言ってください」

 

と言う

 

「んー、こっちもまずは三人でお話ししたかったし、そっちはそっちで晴風の人たちと交流を深めているみたいだったから邪魔したくなかったのよ」

 

「うんうん、あんまり盛りあがってるから羨ましくなっちゃって、交ぜてもらおっかって話になったんだよね」

 

もえかの言葉に明乃も同意する

 

「宗谷さん」

 

「なんでしょう、知名艦長」

 

「今日、あなたと話してみて私はね、あなたが晴風の副長で本当によかったって思ったの」

 

 

「……わたしで……よかった?」

 

「ミケちゃんが本当に信頼してるんだなってことがよくわかったの。例えばの話だけど、もし私が晴風に乗っていて、ミケちゃんの副長だったとしたら、あなたのようにはきっとできなかったと思う。結果はまったく違うものになっていた」

 

「いや、まさか。そんなことは……」

 

この言葉にはましろだけでなく武蔵クラスの3人も驚いた顔を見せる

 

「ミケちゃんはどう思う?」

 

「うん。わたしもそう思うかな」

 

「うんうん、やはり艦長もそう思うでしょう。そう……ん?」

 

「今回の事件はシロちゃんが副長だったから、武蔵のみんなを助けられて、晴風のみんかも無事に陸(おか)まで帰ってくることができたんだって思う」

 

「え……?いや、あの」

 

「もちろん、もかちゃんが副長をしてくれるならそれはそれで凄くやりやすいとは思うけど……。わたしは晴風の副長がシロちゃんでよかったって、心の底から思ってるよ」

 

「いったいどういうところがのかったって言うんです……?」

 

明乃の思いもよらない言葉にましろは拗ねたような言葉を発してしまう

 

「シロちゃんはわたしと違うところから考えてくれるから」

 

「違うところから?」

 

「もかちゃんだってわたしと違う解決方法はいくらでも出してくれると思うけど、小さい時から一緒だからね。きっとその考え方の根っこの部分は同じだと思うんだ」

 

明乃の言葉に同意するようにもえかも微笑む

 

「考え方は統一されていた方がいいのでは……」

 

「そんなことないんじゃないかな。違う考え方があった方がその中から選べると思う。例えば結果として最初の選択肢が選ばれるとしても、二つ目の選択肢が出てきて初めて一つ目の選択肢にあった問題点が浮き彫りになることもあるわ」

 

「うん。それでわたしも迷っちゃったりもしたけど……でも、その迷いも乗り越えた今から必要なことだったんだって気がするの。これもシロちゃんのおかげだよ」

 

「艦長……」

 

ましろは明乃の言葉に胸の奥からじんわりと熱いものがこみ上げてくる。しかし

 

「そうは言っても最初はギクシャクしちゃってしょうがなかったけどねぇ」

 

「ああいう雰囲気は苦手ぞな」

 

「くっ……それは、わたしも反省しているから……」

 

という秀子と聡子の言葉で冷やされてしまう

 

「フフフ」

 

もえかにも微笑まれ、恥ずかしさで顔が紅くなっていると

 

「例えばの話をするんだったら、わたしがシロちゃんの副長になるパターンはどうかな」

 

と明乃が言う。その言葉で素に戻ったましろは

 

「艦長に副長は無理です」

 

と言い、もえかも

 

「ミケちゃんに副長は向いていないと思う」

 

と否定する

 

「ええ〜!?なんで〜!?」

 

と明乃が不満そうに言いう

 

「そりゃ、明乃ちゃんは無理よ。あの奇想天外な作戦行動を見たらね……」

 

と柚希も言い、その場のみんなが頷く

 

「ところで…一ついいですか?」

 

亜依子が不思議そうに手を挙げる

 

「なんでゆ、柚希少将もいらっしゃるんです?」

 

柚希はその疑問に「あー」となりすぐに答える

 

「柚希さんでいいわよ。今非番だし。それとなぜいるかだったわね。聴取に海軍側の代表として出てたのと艦長……あ、宗谷一等保安監督官にましろちゃんをお願いと言われちゃってね。それでついてきたのよ」

 

「艦長……?」

 

亜依子が柚希の「艦長」と言う言葉に疑問を持つ

 

「ああ。明乃ちゃんだけに話してそのままだったわね。わたしも横須賀女子卒業生でその時乗艦してたのが武蔵で副長だったのよ。その時の艦長が今の宗谷真霜一等保安監督官。だから今でも『艦長』、『副長』と呼び合う仲ってわけ」

 

「「「「ええぇっ!?」」」」

 

これには武蔵クラスの三人だけでなく、もえかも驚いていた




今回もお読みくださりありがとうございました!
読んでくださる方に最大級の感謝を

晴風クラスのメンバーってどうしてこうも想像が得意なんでしょう。やっぱり航洋艦クラスはユニークな人が多いのか

やべっ…早く投稿しちゃった…

次回、第39話、昨日のましろと鈴の葛藤(仮)
明日へ向かって、ヨーソロー!
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