おいら、リカちゃん。   作:ガスチェフブラスター

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1 虐殺と転生

 むかしむかし、ある人間が地下へと落ちた。

 その地下には、かつて人間と戦い、そして封印された存在──モンスターがいた。

 

 人間はモンスターを、手当たり次第に殺していった。

 

 愛していた山羊が死んだ。

 

 説得しようとした弟が死んだ。

 

 立ちはだかった女戦士が死んだ。

 

 大人気だったアイドルが死んだ。

 

 そして──

 

「はぁ……こんなにしつこいなら、『スペシャルこうげき』を使うことになるぞ」

 

 ここは王城、審判の広間。

 普段は国王が儀礼用として使っていた場所だが、そこで一人戦っていたモンスターがいた。

 

 彼の名はサンズ。見ての通り、スケルトンである。

 彼は人間を止めるため──いや、「諦めさせるため」──に、今こうして戦っているのだ。

 

 重力を曲げ、ブラスターを放ち、人間を止めようとする。

 それでも、人間は歩みを止めない。

 

 それどころか、人間は──より一層しつこくなっているように見えた。

 

 もう、30分はたっただろうか。

 ──ついに、魔力が切れた。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 サンズは息をきらしながら、人間に歩みよった。

 まだ、話が聞くかもしれない──そんな希望を、胸にしながら。

 

 しかし──その希望は、嘲笑われるように打ち破られた。

 

 人間がナイフをふる。直撃する。

 胸から赤い液体が滴り落ち、それは止まる様子を見せない。

 

「……」

 

 彼は悟った。ここで死ぬのだ、と。

 

「はぁ……」

 

 死ぬのなら、いつもと同じように振る舞おうと。

 

「じゃあ、グリルビーズにでも行ってくるぜ……」

 

 彼はそう言うと、人間に道を譲った。

 最後に見えたのは──

 

「パピルス」

 

 彼の生きがいでもあった、最愛の弟の姿だった。

 

「……お前も、腹減ってるか?」

 

 触れようとした手は、空振りした。

 

 こうして、彼は死んだ。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 オレは生まれ変わった。それも女の子に、だ。

 それに気づいたのは、4歳ぐらいの頃だった。

 それまでは夢かと思っていた。

 最初の頃は──真っ暗闇が延々と続き、奇妙な音が無数に聞こえた。

 

 しばらくしてぼんやりと光が見え始めたが、ここでやはりオレは夢を見ているのだと思った。身体がまったく動かなかったからだ。

 

 景色がクッキリと見え始めると、だんだんと現実味を感じ始めたが、それも僅かばかりだった。

 身体はやはりうまく動かせず、時折驚くほど大きな人間が自分の身体を抱きかかえるのだ。

 

 直ぐ側には二人の男女がいたが、口から零れるのは意味不明な音の羅列だった。

 その男女が新しい両親で、話しているのが英語だとわかったのが、ちょうど4歳の誕生日だった。

 

「Happy Birthday, Rika」

 

 眼の前に置かれたバースデーケーキをみて、俺はその事実に気付いたのだ。

 英語で「ありがとう」と答えると、母親は感激して父親を呼びに行ってしまった。

 どうやら、4歳になっても言葉を話せないオレを、相当心配していたらしい。

 短く「パパ?」と声を掛けると、父親は大喜びした。

 

 まぁ──それからの生活は、特に語ることもない。

 これまでもっていた能力──重力を曲げたり、ブラスターを放ったり──はできるようだが、なにせこの世界はそういうのが普通じゃないらしい。

 

 まあ、騒ぎになるのもアレだし──ということで、オレは隠して生きることにした。

 どうせろくなことに使えないだろうし。

 

 オレの新しい母親であるソフィアは、知性に溢れた美しい女性だ──と、オレの新しい父親であるジェイコブは言っている。

 新しい両親はとってもお互いを愛していて、良く言えばオシドリ夫婦、悪く言えばバカップルと言った感じだ。

 

 それはともかく。

 オレの新しい名前は──リカ・アシュトン。

 酔狂な神のいたずらか、オレはこの名前を知っていた──ような気がした。

 

 まあいい、そういうこともあるのだろう。

 生まれ変わりが実在したのだ、名前に聞き覚えぐらいあってもおかしくないはずだ。

 

 というわけで、オレはちょっとしたことに能力を使いながら、普通に暮らしてきていた。

 

 ──そう、あの日までは。




ここまでお読みいただきありがとうございます。

冒頭のサンズ戦についてはうろ覚えで書きました。再現するにも、作者が戦闘シーン苦手すぎるんでね……

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