おいら、リカちゃん。 作:ガスチェフブラスター
無事お金を手に入れることができたオレとハリーは、ハグリッドに連れられてグリンゴッツを出た。
ハリーは眩しそうに眼を細めていたが、ハグリッドはそんなことなど気にしてらんないといった様子だった。
「――まずは制服だな」
ハグリッドは、遠くに見える看板を顎で差した。
「俺はちょっと漏れ鍋で元気薬をひっかけてくるぞ。さっきのトロッコにはまいった」
ハグリッドは青い顔のまま、漏れ鍋の方角へ引き返してしまった。
オレはつい気になり、ハリーに尋ねた。
「なあハリー、トロッコってなんだ?」
「グリンゴッツの金庫にはトロッコで行くんだ。ジェットコースターなんて比にならないぐらいのスピードだよ――多分、ハグリッドはただの乗り物酔いだと思う」
なるほど。
いつか乗ってみたい、と思ったが――まあ、いつか乗ることにはなるだろう。
それから、オレたちはハグリッドが示した看板の前まで移動した。
「マダム・マルキンの洋装店――ハグリッドが言ってたの、多分ここだよな」
「うん、そうだと思う」
オレが先に扉を開き、中を覗き込む。
店の中にはずんぐりした女性がおり、覗き込んだ瞬間彼女と目が合った。
「あら、いらっしゃい。お嬢ちゃんたちも今年からホグワーツ?」
おそらく、彼女こそがマダム・マルキンなのだろう。
「ああ――制服一式を頼む」
「わかりましたよ――では、早速採寸しましょうか」
マルキンはオレたち二人を店の中に引きずり込むと、踏み台の上に立たせる。
店の中には既に採寸を受けている少年が一人おり――彼の右にオレが、そしてオレの右にハリーが並んだ。
マルキンはオレたちの頭から長いローブを被せると、丈に合わせてピンを挿し始める。
「喋ってもいいけど、動かないでね」
マルキンにそう言われたので、目だけを動かしてあたりを観察した。
(ぱっとみは、普通の洋服店だな……)
少しばかり、がっかりした。
もっと、こう――少しぐらい虹色に光る布とか、宙に浮かぶローブとかがあっても良かったのに……
しばらく採寸を受けていると、先に採寸をしていた少年に声をかけられた。
「やあ、君も今日からホグワーツ?」
その少年は、オレよりも明るいプラチナブロンドをした少年だった。
「まあ、そうだな」
「そうか。じゃあホグワーツで必要なものの買い出しってことだ」
少年はきだるげな、気取った声色で続けた。
「父上は隣で教科書を買ってるし、母上はどこかで杖を見てる。まあでも、僕が一番欲しいのは箒だね。1年生が箒を持ち込めないなんて、僕には関係ない。父上を脅して、こっそり持ち込んでやる――もちろん、競技用のニンバス2000だ」
(――典型的なドラ息子だな)
とはいえ、オレは「競技用」という言葉に興味が湧いた。
「競技用の箒?」
「そうさ。君、クィディッチはやらないの?」
「クィディッチ? ――魔法用語か?」
オレが聞き返すと、少年は驚いたように詰め寄った。
「クィディッチを知らないだって? もしかして、マグル生まれか?」
「マグルってなんだ?」
「魔法が使えない人間のことさ」
薄々気づいてはいたが、やはりマグルとは魔法使いじゃない人間のことをいうらしい。
オレが正直に答えると、少年は鼻で笑った。
「クィディッチというのは、魔法界の一大スポーツさ――知らないのは、それこそマグル生まれぐらいだよ」
彼の物言いからして、魔法界には「魔法使いから生まれた魔法使いのほうが優秀である」というジンクスでもあるのだろう。
純血主義、とでも言うべきだろうか。
「そうか――オイラはマグルの家で育ったから、魔法界には詳しくないんだ。いろいろ教えてくれると助かるぜ――その様子じゃ、どっか金持ちの生まれだろ?」
「金持ち――まあ、そうだな。よくわかったね」
少年は金持ちという言葉に不服そうだった。
「そんなオーラが出てるぜ」
高貴なオーラというよりかは、雰囲気が金持ちのボンボンだ。
これで「両親は田舎で牧場を~」なんて言われたら、逆に驚くぐらいである。
「まぁ、マルフォイ家の長男としてはそれぐらい……あっ、僕はドラコ。ドラコ・マルフォイだ」
「オイラはリカ・アシュトン。リカでいい」
オレはそう言うと、握手代わりに愛想笑いを浮かべた。
マルフォイは白い顔を少し赤くすると、軽く咳払いをした。
「リカか……ところで、そっちの少年は?」
マルフォイはオレ越しに、同じく(だがぎこちなく)採寸を受けていたハリーの方を見た。
「ああ、こいつか? どうやら、先生がたりないらしくてな――どうせ買うものは同じだから、一緒に買い出しをしようって計画だ」
オレはあえてハリーの名前を出さなかった。
また騒がれたら面倒だし、必要ならハリー自身が名乗るだろう。
「家族は?」
「家か、仕事だと思うぜ――今はホグワーツの先生に案内してもらってるからな」
「ふうん――って、君の案内ってアレか?」
マルフォイは窓の外を顎で指す。
そこには大きなアイスクリームのコーンを、器用に三つも持っているハグリッドの姿があった。
「まあ、彼だな」
「ふうん、ハグリッドが案内か……まあ荷物持ちぐらいにはなるだろうな」
「まあ力持ちではありそうだな」
ハグリッドは俺達の存在に気づくと、アイスをこぼさないようにゆっくり手を振る。
マルフォイはそんなハグリッドの様子を鼻で笑うと、そのまま言葉を続けた。
「野蛮人だって話だ。学校の領地内の掘っ立て小屋に住んでいて、たまに魔法を使おうとしてベッドを焦がすらしい」
「彼って──」
ハリーが割り込んできたが、オレは遮って反論した。
「あんた遅れてるな。最近はそういうの流行ってるらしいぜ? 自然に囲まれた生活を求め、都会から田舎に引っ越す人もいるらしい」
マルフォイは意外を通り越し、不思議そうな顔をしていた。
「田舎なんて不便だろうに、わざわざそれを求めるなんて……マグルのやることは分からないな」
「たしかにオイラも、わざわざお金をかけてまでやることではないと思――」
「終わりましたよ、おぼっちゃん」
どうやら、マルフォイの採寸が終わったようだ。
「じゃ、ホグワーツでまた会おう」
マルフォイはぴょんと踏み台から降りると、魔法によって一瞬で縫い終わったローブの入った袋を片手に、そのまま店を出ていった。
店の前にいた両親らしき二人と合流すると、そのままダイアゴン横丁を歩いていく。
「……ドラコ・マルフォイか」
オレは独り言のように、そう呟いた。
ハリーは何かを考えるように黙っていたが、どうやらハグリッドを馬鹿にされて相当機嫌が悪いようだった。
「あんたも面倒くさい生き方してるな――あ、もちろんオイラはハグリッドが野蛮人だなんて思ってないぜ?」
どうやらハリーは、ハグリッドをすごく慕っているようだ。
オレもハグリッドが悪人だとは思えないし、口出しするのはやめておこう。
それはハリーの自由だ。
3分程立って、オレとハリーの採寸が終わった。
オレは出来上がったローブを受け取ると、料金を支払い店を出た――
容姿について
金髪碧眼ロングヘア。白いシャツの上に、マグルの服屋で買った青いパーカーを羽織っている。
下は青ジーンズと白いスニーカー。
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