おいら、リカちゃん。   作:ガスチェフブラスター

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7 9と4分の3番線

 あれから1ヶ月。

 ついに9月1日、オレがホグワーツに行く日がやってきた。

 

 それまでの間、オレは普段と変わらない日々を送っていた。

 なにせダイアゴン横丁で買い物をした翌日、オレの家に手紙がやってきて、「入学まで、一切の魔法を使わないように」「ホグワーツや魔法のことは、絶対に口外しないように」と釘を差されたのだ。

 

 というわけで、オレは教科書を読みながら、9月1日を待っていた。

 

 フクロウについては、ヴィッキーと名付けた。

 別にオレが名付けたわけじゃない――ソフィアが「ヴィクトリアはどう? おばあちゃんの名前よ」といい、ジェイコブが「ソフィー、それは豪華すぎる。ヴィッキーでどうだ」と言ったのだ。

 オレは別の名前も考えていたが、どれもダサいものばかりだったし――ありがたく、ヴィッキーを採用するにした。

 由来の説明もしやすいだろうし。

 

 さて、当の9月1日である。

 オレはジェイコブの青い日本車に乗り、キングズ・クロス駅へとやってきた。

 

 車を降りたところで、ソフィアが言った。

 

「リカ、本当に申し訳ないけど、私たちは仕事があるから――ここからは、一人で行ってくれないかしら?」

「大丈夫だぜ」

 

 オレはそう言うと、ソフィアに別れのキスをされた――転生前じゃありえないことだが、今となっては慣れたもんだ。

 

 駅の構内に入ったオレは、早速ポケットから封筒を取り出し、中の切符を確認した。

 

『ホグワーツ特急 9と4分の3番線 11時発』

 

 この駅の地理はわからないが、それでも――分数のホームなんて、作る価値も意味もない。

 まあでも、ホグワーツは隠されてるんだ。

 こんなでっかい駅に、通学列車のホームを作るなら――そりゃあ、秘密のホームの一つや2つ必要だろう。

 それこそ、分数のホームみたいな。

 

 オレはそのままカートを押し、プラットホームを歩いた。

 

「この駅、9番線と10番線が同じなのか……」

 

(――じゃあ、9と4分の3番線はこのあたりだろうな)

 

 オレはそう推理すると、9番線と10番線の共通プラットホームへと入っていく。

 すると、見覚えのある後ろ姿が見えてきた。

 

「ん? ――よぉ、ハリーじゃねえか」

 

 オレが声を掛けると、彼は途端に笑顔になった。

 

「リカ! 君に会えてよかった!」

「へっ、口説き文句か? 三点だな」

 

 オレは嬉しがるハリーを、ゆっくりたしなめる。

 テンションが落ち着いたところで、彼は言った。

 

「それよりリカ、これなんだけど……」

 

 ハリーはポケットから、オレがもっているものと同じデザインをした切符を取り出した。

 

「”9と4分の3番線”――って、どこ?」

 

 どうやら、ハリーも同じことで悩んでいたようだ。

 

「ああ、オイラも同じことで悩んでたんだ――一緒に探そうぜ」

 

 ▽ ▽ ▽

 

 というわけで、ハリーと合流したオレは――早速改札を抜け、9番線と10番線の共同ホームに入った。

 ここに例の「9と4分の3番線」があるのは推察できるが、いかんせんその行き先がわからない。

 というわけで――オレとハリーは、そのホームのベンチに座って、様子を見ることにした。

 

「ねえリカ、探さないの?」ハリーが尋ねた。

「これは作戦だぜ、ハリー」

 

 それからオレは、ハリーにもわかるよう丁寧に説明した。

 

 まずホグワーツ特急には、オレたち以外の子供も乗る。見送りの家族だっているだろう。

 そしてダイアゴン横丁で見た通り――魔法使いはみんな総じて中世のようなファッションをしていて、ここ世紀末ロンドンではどうやっても浮く。

 つまり擬態は不可能。ここで待てば、必ず「9と4分の3番線」を知っている魔法使いと出会えるというわけだ。

 

「でも――じゃあ、もしこのホームじゃなかったら?」

「その可能性は低いな。だって9番線は、いまこの眼の前にあるんだ――本当に無関係なら、そもそもこの番号を選ばないはず」

 

 その時、遠くからおばさんの声が聞こえた。

 

「やっぱり、マグルが多いわね……」

 

 反射的に、オレは声のした方を向いた。

 そこには黒いローブを着て、オレたちと同じようなカートを押し、果にはフクロウまでつれた赤毛の一家がいた。

 こんなの、魔法使いじゃなかったらなんというんだ。

 

「――見つけた。行くぞ」

 

 オレたちは立ち上がり、こっそり彼らのあとを追った――

 

 ▽ ▽ ▽

 

 赤毛の一家が立ち止まったのは、ホームに4つある柱の1つだった。

 一人の女の子が半べそをかき、恰幅のいい母親に抱きつく。

 

「ママ、私も行きたい……」

「ジニー、あなたはまだちっちゃいからね」

 

 母親がその子をなだめ、その間に一番背の高い少年に指示を飛ばす。

 

「パーシー、先に行ってて」

「うん、わかった」

 

 少年は背筋を伸ばしたまま、プラットホームの真ん中に建てられている柱に向かってカートを押していく。

 激突する――と思ったが、少年は柱の中に消えていった。

 

 ――なるほど。

 どうやら、この柱が「9と4分の3番線」へ行く鍵のようだ。

 

 しかし、むやみに突っ込んで、壁に激突する気にはなれない。

 そう考えたオレは、女性に話しかけることにした。

 

「おい、ちょっとすまんが――」

「あら、貴方たちもホグワーツ? うちのロンもそうなのよ」

 

 これは自分語りになりそうだったので、単刀直入で質問することにした。

 

「いや、それより――9と4分の3番線には、どのようにしていけばいいんだ?」

 

 オレが尋ねると、女性は微笑みながら答えた。

 

「ああ――簡単よ。あの柱に向かって、まっすぐ歩くだけ。怖いなら、少し走るといいわよ」

 

 驚きのあまり、オレは言葉を失った。

 オレは合言葉とか、杖を使うとか――具体的な方法こそ思いつかなかったとはいえ、なんとなく頭を使うものだと思っていた。

「柱に突っ込む」なんて原始的な方法は、全く持って思いつかなかったのだ。

 

 オレは、ハリーと顔を見合わせる。

 どっちが先に行くか――ハリーの目は、そう語っていた。

 

「れ、レディーファーストってことにはできないかな?」

「都合のいい用法だな――まっ、いいぜ」

 

 オレはそういうと、カートを柱に向ける。

 そのまま足を踏み出し、柱に向け突進した――

 

 ▽ ▽ ▽

 

 激突する――と思い目を閉じたが、いつまで経っても衝撃がこない。

 恐る恐る目を開けると、そこには紅の蒸気機関車が止まり、フクロウの鳴き声飛び交うプラットフォームだった。

 

「すごい――機関車だ!」

 

 後ろからやってきたハリーは、機関車を見て目を輝かせた。

 オレも「現役の蒸気機関車」というものに興味は湧いたが、すぐに現実を見た。

 

「確かに、オイラも今すっごく感動しているところだが――あれを見て見ろ」

 

 オレは、停まっている汽車の窓を指さした。

 既に先頭から三両ほどは生徒でいっぱい――このペースなら、後ろの客室が埋まるのも時間の問題だろう。

 

「早くしないと、全部埋まっちまうぞ? ――そしたら、ホグワーツまで立って行くことになるぜ」

「確かに――それがいいね」




【あとがき】
 ここまでお読みいただきありがとうございます。
 ホグワーツ特急には届きませんでした……許してください!

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