TSエルフ、赤ん坊を拾う   作:面相ゆつ

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遊べるまでが長い……

 

 アリアが借りてきた服に着替え終わった後、とりあえず俺たちは館内を見て回ることにした。散策散策!ただスカートはひらひらして歩き難いのが難点である。

 

 ちなみに俺たちが今までいた宿泊部屋は別館である。特別招待券で入場した者が宿泊する場合はこちらになるらしい。おぉ……何という特別感……!ただ別館のせいで本館までは多少歩かないといけないのは疲れるかも!

 

 

 歩きながら周囲を観察してみると、館内の全体的な内装は割と落ち着いている。まぁリゾートだからかな。光り輝く金の像とか置かれても普通に困るし。癒されに来たのにそんなのが見えてしまえば目が痛くなっちゃう。

 それでもあからさまに豪奢には見えずとも、選りすぐりの物を置いている……多分。

 

 なんつーかあくまで外の湖や森などの自然と調和するように……を目指して建設されたって感じがする。そりゃあ近くに豊かな自然があるんなら使わなければ損だしな。そして皆が求めているのもそういった方向性の日常から離れた空間なのだろう。

 ………………………………ガイドブックにもそう書いてるし。行儀は非常に悪いがバレないように歩き読みだ。ふむふむ。あ、国営なんだここ。 

 

 

 

 「金持ちっぽい人が多いな」

 

本館へと移動しているとすれ違う人たちもそこそこいるのだが、その誰もに気品があるように思える。俺も負けないように澄ました顔でもしとこうか。

 

 「ここが国を代表する高級リゾートだから……でしょうね。『ここにいる』ということは、一定の水準を大幅に超えている方々なのは間違いないかと……そう思うと何だか緊張しちゃいます」

 

 俺がガーランジュにいた頃に鍛えられたお澄まし顔を披露している一方、アリアは少しだけ気後れした様子を見せる。むむむ、確かにな。自国他国問わない金持ちどころか、どこかの貴族がいる可能性も無きにしも非ず。

 

 まぁ俺たちもここにいる限りは同様に、アリアの言う『一定の水準を大幅に超えている方々』だと思われるような気もする。でもそれが緊張しないかどうかには関係ないか。よし!ここはいっちょ歳上の威厳をというか包容力を見せておくとしよう。

 

 「アリア、そんなに緊張するんなら手でも繋ぐ?俺はアリアより大人だから全然緊張しないけど?」

 

 「もう!緊張するものは緊張しちゃうんです!手はもちろん繋ぎますけど!」  

 

 俺が割と真剣に手を差し出すと、アリアは少しだけ口を尖らせながらも手を繋ぎ始めた。フフン!素直なのは良いことだ!俺としてもたまにはこうしてお兄さんぶっておかないと『レイさんって実は子どもなのでは?』と疑われても困るのでね。

 

 おや?普通のかと思いきやなんか複雑な繋ぎ方だな。手をそうやって?おお!鷲掴みにこうやって!絡み合わせて!?なるほどぉ!すげぇ!こんな繋ぎ方あるんだ! 

 

 「キース見て。ああやってしれーっと一番密着度の高い繋ぎ方を選択するのがアリアちゃんの可愛いところだよ。参考にしようね」

 

 「うん!きぃもぼくたちもいっしょにやろ!」

 

 「おぉ、見てから躊躇なく即実践とは……ご主人!キースの将来が楽しみですよ!これは立派な女たらしになるはず……」  

 

 どうやらキースとキィも手を繋ぎ始めたらしい。それを見たすれ違う人たちが微笑まし気に温かい視線を俺たちに向けてくる。しかし何も恥じることはない。俺たちの仲の良さ……ここにいる全員に見せつけてやろうぜ!

 

 

 「ん?アリアさん?」

 

 そうして本館に辿り着いたところで突然横から誰かがアリアの名前を呼んできた。あれ?アリアの知り合いでもいるのかな?なんか最近聞いたような男の声だ。

 

 不思議そうに呼ばれた方向へアリアが顔を向け、俺もつられて顔をそちらに向け……反射的に被っていたつばの広い帽子を深く被り直す。

 

 「やはりアリアさんじゃないか!こんなところで会うなんて偶然だね」

 

 ………………………………友好的に手を振ってそこにいたのは、この間の娼館で夫婦揃って楽しんでいた旦那さんの方だ。アリアも驚きこそすれど普通にしているのだが、俺は突然の事態に固まってしまった。おぉぉ!?おぉ!?

 

 「リードさま!ご無沙汰しています」

 

 「うんうん。元気そうで何よりだ」

 

 「あなたどうしたの……ってアリアさん!久し振りね!」

 

 世間話を始めちゃった!しかも奥さんも来ちゃった!……旦那さんだけなら俺の見間違いかも?と思ったが、奥さんも揃ったら確定したぞ。間違いなくあの娼館にいた夫婦だ。

 あっ!近くにいたら確実に面倒くさいと察知してキィがキースを連れて微妙に遠い場所にいる!ズルい!俺もそっちに連れてって!

  

 き、気まずい。すげぇ気まずい!一応薄暗い室内だったから向こうは多分気づかないと思うけど、こっちが一方的に娼館で楽しんでいた人たちだーと知っている状況が気まずい!声だけは出さないようにしとこう!親し気なアリアには悪いけど夫婦にはどこかに行って欲しい!

 

 ……アリアにぴったりとくっついておこう。そうしよう。相手の目線から離れることが大事である。アリアの手を繋いだ方の腕をぎゅっと抱き込み、さらにアリアに隠れるように身を縮ませる。これでよし!何がよし!なのかは俺も焦ってるからわからねぇ!

 

 しかし俺の奮闘むなしく、この場にいる視線は俯いている俺に集中する。おかしいな。ちらちらと帽子の陰から窺うと、何故か夫婦は優しい笑みを携えてほんわかとしている。アリアはとんでもなく動揺している。 

 

 「レイさん!?どうしたんですか!?」

 

 「あらあら。いいわねぇ」

 

 「可愛らしい友人との楽しい時間をこれ以上邪魔をしてはいけないね。それじゃあ僕たちは行くとするよ。あぁ、そうだ。アルムにもよろしく」 

 

 ………………………………ん?なんか上手くいったっぽいぞ?そう言って微笑んでいる夫婦は仲睦まじく腕を組んで去って行ってしまった。

 

 ふぅ、焦ったぜ。直近に迫った脅威が去り、心が落ち着く。いや、単に向こうも気づいたらお互いに気まずいしなぁってぐらいだけど。あれ?よく考えると気まずいどころじゃ済まないような……?

 

 「なぁ、アリア。あれはどちら様?」

 

 「え。あ、あぁ。レイさんはご存知ではありませんでしたね。あの方々は神父さまのご友人です。私たちの住む町から西に離れた地の貴族で、たまに教会にも寄ってくださるのです」 

 

 「………………………………………………………………そっかぁ」

 

 なんか色々気になることはあるんだけどさぁ。貴族が!気軽に!夫婦仲良く!娼館に行くなってば!緩いなぁ!

 

 

 

 ちょっとした出来事がありつつも、ふらふらと本館を散策していたのだが。うん。多分、俺たちは同じ考えに至ったのだと思う。

 

 「とりあえず湖の方に行くかぁ」

 

 せっかくだしな!皆、外に出たがってうずうずしてるんだよ!

 

 

 

 「でっかぁ」

 

 「おおきい……」

 

 俺とキースがあまりにも大きな湖に感嘆の声を上げる。すげぇ湖だ。俺たちの住んでいる町なんてすっぽり収まってしまいそうなくらいの広さである。キースなんてびっくりし過ぎて口をぽかんと開けてしまっている。可愛いなぁ。

 

 湖の所々には岩場というか、ちょっと歩き回るにはちょうど良さそうな小さな島?もあり、そこに向かって小舟を漕いでいく人たちもいる。

 いくつかの島は広く、無数の木が連なり森のようになっている場所もある。よく目を凝らしてみると、そこで魚釣りをしている人やのんびりと休んでいる人もいて、それぞれ気の赴くままに過ごしているようだな。

 

 あの森みたいになってる小さな島に上陸したら絶対面白いだろうなぁ。だって陸にある森よりもカッコ良い虫とか珍しい動物たちが住んでそうじゃないか?そんなのがいたら触れてみたい!

 

 湖以外にも陸地には整備された森もあるし。何でもあるじゃねぇか!

 

 ………………………………えへへ。楽しそう!俺の冒険心をくすぐるぜ!

 

 

 

 

 

 「じゃあ皆は何したい!?魚釣り?小舟に乗ってみる?あそこにある島に行って日向ぼっこでもする?それとも近くの森を冒険!?」

 

 「みんなであそぼー!」

 

 気分が最高潮にまで高まった俺はキースと一緒に小躍りする。キースと手を取り合い、ぐるぐると軽やかにその場を回ってしまう程度にはうきうきだ。 

 

 「レイさんがこんなにはしゃいでるのは久々に見ました……」

 

 若干アリアに引かれている気がしないでもないが、俺はぶっちゃけ興奮しまくりだ。誰であろうとでっかい湖を見たら興奮する。これは自明の理である。わくわくだ。

 実はこうやって仲の良い人と行楽地みたいな場所に来るのは初めてなんだ。それがこの高揚に繋がっているのは言うまでもない。

 

 あ!でもこの格好では激しく遊ぶのは難しいかもなぁ。ま、最悪スカートを折り込んでしまえばいいか!

 

 「ご主人?湖ですよ?大事な遊びを忘れてませんか?」

 

 キィが大きく首を横に振り『まだまだ甘いですねぇ』と笑う。キィもうっきうきだ。おいおい!何があるってんだよ!教えてくれ!

 

 「えー?何だろう!?教えて教えて!」

 

 「周りをぐるっと観察してください。誰も彼もみーんな泳いでるじゃないですか!もう!ご主人ったら一番大事な遊びを忘れっちゃってぇ!こんなに綺麗な湖だったらきっと気持ち良いですよ!」

 

 ………………………………………………………………そうだね。急激に萎えてきた。

 

 「………………………………水着持ってきてないからいいや」

 

 すぅっと顔を逸らし、燦燦と輝く日に目を向ける。いやぁ良い天気だ。釣り日和だと思う。多分泳ぐより釣りの方がいいかも?

 

 「惚けたこと言っちゃってぇ。貸し出しがあるに決まってるじゃないですか。小舟や釣り道具。その他多数!カルグリゾートが宿泊者向けに大体の物を貸し出ししてるんですから、水着だって当然ありますよ。そもそもその格好じゃ満足に遊べないでしょう?ほらあっち」

 

 キィが指し示す方向には自然には似つかわしくない店が並んでいる。料理店をはじめ、衣服のレンタル店、遊び道具のレンタル店、他多数……その全てがもちろん無料だ。水着を借りる店も……うん。まぁそりゃ普通にあるよなぁ。

 

 「結局水辺で遊ぶなら水着が都合が良いでは?どんなに気を付けていても濡れることも多いので、最初から水着なら気にせず遊べますし」

 

 アリアも何の気なしに追随する。うん。合理的だよなぁ……

 

 「ままーはやくあそーびーたーいー!」

  

 キースも俺の服を引っ張り、遊びたさ全開の様子を見せている。うん…………

 

 「じゃ、ご主人。何はなくともとりあえず水着を借りに行きましょうか。それから何して遊ぶかを考えたので十分間に合います。さっ!キースいこー!」

 

 「うん!!ままもありあおねえちゃんもはやくいこー!」

 

 

 キィはキースの手を引いてさっさと行ってしまう。キースも元気いっぱいだ。

 先に行った二人を見送り、アリアの服の袖をほんの少しだけ引っ張る。そしてアリアの耳元でコッソリと内緒話をするように小声で話しかける。

 

 「アリア、アリア」

 

 「レイさんどうしました?」

 

 「……俺、水着はちょっと恥ずかしいかも」

 

 「………………………………………………………………???」

 

 アリアは俺の発言を聞くと、心底意味がわからないと言わんばかりに大きく瞬きをする。

 

 「……今までローブの下にあんな際どいものを着ておいて?」

 

 「あれは服じゃん。そもそも肌はあまり出てないし、基本的に上からローブ羽織るし。それに水着ってあんなのだろ?」

 

 俺は一人の女性に目を向ける。その人の水着はなんか……布じゃなくて貝殻だ。何回も目を疑ったが貝殻だ。痛くないのかな?と思うけど貝殻だ。 

 

 「水着のことはあまりわからないんだけどさ。貝殻はちょっと恥ずかしいかも……」

 

 もしかするとこの国での水着はあれが通常なのかもしれない。元々水着自体多少抵抗はあるが、着れなくもない。何故ならこの間だって、サキに着せられた中にそのくらいの露出のものはあった。

 ただ……あの貝殻を着用するのは俺にとってはかなり難しい。あの水着を着るのなら服のまま濡れて遊ぶ方がいい………

 

 「………………………………大丈夫です。色んな種類の水着があるんです。あの貝殻は……割と特殊な部類のものですから」

 

 「じゃああれは?」

 

 ……ひ、紐だ。紐でぐるぐる巻きになってる。一応隠せているけど紐は紐だ。あれを水着と言っていいのかなぁ……

 

 「特殊です」

 

 アリアは冷静に答える。ひたすらに無表情だ。怖い。

 

 「あれは?」

 

 なんか……隠せているんだけど布がギリギリにしかない……ヤバそう……

 

 「特殊です。というかどうなってるんですか!ここの水着着用者たちは!開放的な気分になり過ぎてません!?レイさんもどうして特殊な水着ばかり見つけちゃうんですか!?ほら!レイさんあそこの人の水着を見てください!あれがオーソドックスなものですから!」

 

 アリアが促す方向を確認するお、俺が何となく想像していた通りの水着だ。よくよく見れば大体の人は俺が想像していた水着で遊んでいる。よ、よかった……!どうやら俺は奇抜な水着にばかり目を取られてしまっていたようだな。

 

 「あれならまぁ」

 

 「納得していただけたら幸いです。大丈夫です。あくまでたくさんある中のってだけですからね?この国ではあれが普通ってことは決してないので安心してください」

 

 圧を感じる訂正を受け、俺も安心だ。まぁ確かに色んな趣味の人がいるんだ。ああいう水着が好きな者もいるよな。納得!! 

 

 ただ一方で俺自身、どういった水着がいいかは全くわからない。ならばどうする?

 

 「そうだ!アリア、俺に似合う水着選んでくれない?アリアが選んでくれるのなら絶対に何でも着るからさ。アリアの好きなように着せてくれないか?」

 

 

 アリアが選んでくれるなら間違いないもんな!俺がそう言うとアリアは真剣な眼差しへと変わり始めて『好きなように……?ならペアルック……』と呟く。こんなに真面目に考えてくれるなんて頼りになるぜ!

 

 

 

 

 

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