TSエルフ、赤ん坊を拾う   作:面相ゆつ

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旅行の終わり

 

 少年……いや、ミールに別れを告げ…………たのにミールが戻ってきた。楽し気に走って向こうに去っていったのに、また走って戻ってきた。どうやら何かを手に持っているようだ。

 

 「ちょっと待って!これ受け取って!」

 

 「んー?」

 

 勢いそのまま手渡してきたものは、何らかの模様が刻まれた綺麗なシルバーイヤリングだ。うーん?目を凝らして見ると、刻まれている模様は恐らくだがミールのところの家紋が刻まれているのかな?そんな風に見える。

 

 「どうしてこれを?」

 

 俺はそれを受け取りつつも、当然の疑問をミールに投げ掛ける。何だか高価そうだし。

 

 「……………………えーっと。これは……再会できますように願いを込めたの贈り物。次に会う時まで持ってて欲しいなぁって。でも別にいらないなら……………………」

 

 そう言うとほんの少しだけ目が泳いでいるミールだ。いらないわけないだろ。つーかまた会うことをそんなに楽しみにしてくれるなんて……………………なんと嬉しいことを!俺も楽しみだぞ!

  

 「ミール、ありがとう。確かに受け取ったよ。大切にするね」

 

 「!」

 

 嬉しさのあまり思わず言葉尻が柔らかくなる。いやぁ、そこまでまた会いたいなぁとか思ってもらえるのは嬉しいもんだ。なら俺もミールに倣って何かを渡しておこうか。それが友情っぽい!

 

 俺は肩に下げた袋を探ったり、ローブを脱いでその内ポケットの中を探ったりするものの、ミールからの贈り物に見合うようなものは一つを除いてない。俺の今持っている中で、唯一見合いそうなエルフのペンダントは外して渡した瞬間に裸になっちゃうしな。

 

 少しの時間探すが見つからない。『じゃあ俺からも』と前置きをしたものの、まぁそもそも準備してないし。あーあ、そんな俺の姿を見てミールが目を点にしている。へへっ、無様である。

 

 「……すまん。俺も代わりに何か渡したいんだが、このイヤリングの価値に見合うものを持ってない」

 

 「……………………その格好すごーい……………………」

 

 「ミール?」

 

 「あ、いや……そうだ!そのスカーフ!そのスカーフを代わりに!」

 

 ちょっと慌てているミールが指差すのは、今回の旅行で後ろ髪を縛るのに使っている水色のスカーフだ。特に貴重でもない、町で買った何の変哲もないただの普通のスカーフである。え、これぇ?

 

 「でもこれ、普通のスカーフだぞ?」

 

 「ううん。それがいい」

 

 ……これでいいんだ。なんて欲のない子であろうか。そういうことならとスカーフで結んだ髪を解き、綺麗に畳んでそれを手渡す。

 

 「はい、どうぞ」

 

 「ありがとう!僕も大切にするから!」

 

 「ついでにこのカッコいい四つ角の虫もおまけで付けようか」

 

 「……………………虫はいらない」

 

 お!めちゃくちゃドン引きされちゃった!カッコいいのに……

 

 

 

 

 

 

 ミールに今度こそしっかり別れを告げ、皆のもとへと戻ると何とも言えない雰囲気に包まれている。

 

 「よし。お土産も買ったことだし、帰るぞー。皆、準備はいいかー?覚悟はいいかー?」

 

 「おー!」

 

 「……」

 

 「……」

 

 うむ。俺が勇ましく号令を掛けるのだが、元気なのはキィだけだ。そしてキィは楽しそうに巨大な黒猫へと姿を変える。ちなみに俺は覚悟を決めて高速移動に耐えることにした。

 

 『またあの移動かぁ』と多分思っているせいで、微妙に盛り上がりに欠ける俺たち一行である。サキを除いた俺たち全員がとぼとぼと罪人のように歩き、キィの背中へ向かう。

 

 だって何度考えてもこれがやっぱり早いんだもの。他の手段では時間かかるし。

 

 

 「……妙に早く到着したと思ったけれど、クロネコに乗って来たの?早いはずだわ」

 

 行きと同じようにキィに乗せてもらって帰ろうとすると、それを見たサキが感心したように言葉を零す。普通に行くよりもキィに乗る方が早いのは当然だ。だってキィだもの。

 

 「あのクロネコが背中に人を乗せて移動するなんてねぇ……」

 

 そうしてサキが巨大な黒猫状態のキィの尻尾に触れようとするが躱され、その尻尾で全身をほんのりと強めに締め上げられている。

 キィの綺麗な毛並みのふわふわしている尻尾に包まれてるのいいなぁ……ズルいズルい!ただそれを口に出さないのが俺の大人たる所以である。なんて大人っぽいんだ…………!

 

 「サキも一緒に乗って帰る?」

 

 当然サキも一緒に帰る方が効率良いよな。尻尾から解放され、ぜぇぜぇと息を切らし『この締め付けもなかなか』と呟くサキに問いかける

 

 「え゛。べ、別に気にしないでいいわよ?時間は少しかかるけど、私は自前の帰る手段があるから……!」

 

 「遠慮しないでいいんだぞ。それに……………………道連れは多い方がいいし」

 

 後退りしてどこかへ去ろうとするサキの手をがっしりと掴む。逃げんなよ?

 

 

 

 

 行きと同じようにキィは嵐のようなスピードで地を駆ける。二度目で慣れたのかアリアとキースは心を無にし、サキは俺に抱き着き『あわわ!やだ!怖い!死ぬ!』と耳元で叫ぶ。俺は魔力をキィに補充し、死ぬ気で制御する。

 

 ……………………うん。やっぱり普通に帰った方がよかった気がする!!!あとサキは俺の胸に触るのはやめろ!気が散っちゃう!あー!崖だぁ!

 

 

 

 「レイさんたちがいないと静かですねぇ。ん?」

 

 教会の前で伸びをしてのんびりしている神父目掛けて、キィが轟音を立てて到着する。俺たちはそのままよろよろとキィの背中から降り、崩れるように座り込んだ。つ、着いたぁ。

 

 「ふぅ!到着!ご主人!聞いてください!行きよりも早く到着しちゃいましたよ!自分で自分の記録を塗り替えてしまうのは気持ちがいいですね!最高!」

 

 キィは人型になって興奮冷めやらぬ状態で話しかけてきているが、今の俺にその言葉に応える気力はない。キィに乗っていた他の三人もふらふらしている。この場で元気いっぱいなのはキィだけだ。あと神父も。

 

 「……もう二度とクロネコの背中には乗らないわ」

 

 「生きてる……」

 

 「にかいめはけっこうたのしかった!」

 

 お。キースも元気だな。アリアとサキは死にそうな顔である。 

 そして俺はというとこの場の誰よりも死にそうだ。やっぱり魔力というより、事故したらどうしようとかの心労がすっごい。まぁ無事に辿り着いたので安心だが。

 

 「うわぁ、リゾート地まで行ってきたのに疲れ切ってるじゃないですか……………………まぁでも、とりあえずおかえりなさい?」

 

 「…………………………………………ただいまぁ」

 

 そんな惨状を観察していた神父が呆れた表情を浮かべつつも、存外楽しげである。神父のそんな顔を見て俺もようやく町に帰って来たのだなぁとしみじみ思うのであった。

 うっ!限界だ。後のことは皆に任せよう……神父の目の前でばたりと倒れ、俺の意識は闇の中へと消えていくのであった。

 

 「え!レイさんが気絶したんですけど!」

 

 「神父さま大丈夫です。カルグリゾートへ到着した時も同じことになったので。教会のベッドで寝かせてあげましょう」

 

 「心配になるから時間が掛かろうが、もう普通に帰ってきてくださいよ……」

 

 

 

 教会のベッドで目を覚ました俺は早速お土産を渡すことにした。教会の子どもたちにはカルグリゾート限定のクッキーや饅頭、あとめちゃくちゃカッコいい四つ角の虫をあげた。お菓子類は喜んでもらえたのだが、虫はかわいそうだからとすぐに逃がされた。確かに。

 

 「神父にはなーこれ!」

 

 「ありがとうございます……これは?」

 

 「カルグリゾートシャツ。あそこでしか売ってない限定物で、しかも真ん中のマークが可愛いぞ!それに何よりも生地がいい!丈夫!」

 

 「…………………………………………嬉しいです。とりあえずこのシャツは部屋着にしますね」

 

 何かを飲み込んで覆い隠すような優しい笑顔ではあるが、喜んでもらえたようだな!あとは細々としたお土産を教会の机の上に並べていく。あそこでしか売ってない調味料とか。なんかカッコイイ加工された小さな木の剣とか。向こうの森で採取した黄金に輝く花とか。

 

 「どうだ?」 

 

 「お土産のセンスがすごいですねぇ」

 

 「だろぉ!?あ、でもこの木の剣は家に持って帰るからあげられないんだ。すまない」

 

 木の剣は飾りたいからな……カッコイイし。代わりに黄金に輝く花はあげるぞ!こうしてお土産を並べていくのだが、ふと神父からの視線を感じた。なんだぁ?

 

 「ん?どうかしたか?」

 

 「あぁ、いえ。レイさんがイヤリングを着けるのは珍しいなと。行きでは着けてなかったからカルグリゾートで買ったものですか?」 

 

 あぁ、なるほど。ミールにもらってから耳に着けてたんだよな。耳に挟むだけだから簡単に着脱可能で俺にとってはすげぇ楽だ。俺はイヤリングを外し神父へと手渡す。

 

 「これは向こうで会った子どもにもらったんだよ。また会うことができるように贈り物ーって。はい、見ていいぞ」

 

 「へぇ~!それはなかなか青春してますねぇ……って家紋付きじゃないですかこれ」

 

 どれどれと目を凝らして見ていた神父がかなり驚いている。家紋付きは珍しいのかな?まぁ自分のところの家紋をアクセサリーに刻むくらいだし、結構高価そうではある。

 

 「へへっ、いいだろう?あげないぞ?」

 

 「…………………………………………何をしたらこれを。あと子どもって少年ですか?少女ですか?」 

 

 「少年だよ。カルグリゾートでその少年と一緒に誘拐された時に、ちらっと聞いたらどこかの貴族らしいんだけど」

 

 「聞き捨てならない言葉が聞こえましたけど、一旦置いときます。ただ少年、異性から受け取ったんですかぁ。貴族の家紋付きのアクセサリーを。でも子どもなら平気ですかねぇ」

 

 そう言うと神父は顎に手を当て考え込んでしまった。え、何。実は怖い意味が込められているとか? 

 

 「……何か意味があるやつ?」

 

 「レイさんはこの国出身ではないですからねぇ。言ってしまえば貴族の風習みたいなものです。家紋付きの、しかも常に身に着けるアクセサリー系を異性にあげる意味は……………………『あなたを必ず迎えに行きます』とかですよ」

 

 ……………………神父は思いの外真剣にそう答えるのだが、俺としてはあまりピンとこない。変な意味ではなくないか?またいつか再会しようぜ!って意味が存分に込められている。それくらいな感じだ。熱い友情みたいな?

 

 「ふぅん。そのくらいならまぁ普通じゃないか。すげぇ会いたいんだなぁ」

 

 「……………………まぁ相手が子どもならそこまで気にしなくても大丈夫……ですかねぇ。それにもらったものはもうどうしようもないんで、無くさないように大事にしとくといいですよ。もしもの時に役立ちますから」

 

 「もしもの時って?」

 

 「無一文になった時とか。そこの貴族に保護してもらえますよ」

 

 嫌なもしもの時だなぁ!そうやって神父とお土産を渡しつつ、お土産話をしつつ、ゆっくりと時間が過ぎていくのであった。

 

 ミールからもらったイヤリングは大事に大事に保管しておこうか。あとデザインが気にいったからたまーに着けることにしよう。せっかくだしな!!

 

 

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