TSエルフ、赤ん坊を拾う   作:面相ゆつ

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見つけた

 

 「これでよし。教会の分はいいかな。魔女にはまた来た時でいいとして……………………後は二人にお土産送らなきゃだなぁ」

 

 教会にて神父や子どもたちにカルグリゾートのお土産を渡し終えた後、鼻歌交じりに残りのお土産を二人用に袋へ包んでいく。二人に渡すお土産はやはりカルグリゾート限定のシャツだ。カルグリゾートマークの下にはでかでかと『自然豊かなカルグリゾート』と記されている。主張が激しい。

 

 フフン!でも二人がこんな風なシャツを着ているのを見たことがない。送ったら珍しさできっと驚くぞ~!喜んでくれると嬉しいなぁ。

 

 「ん?二人とは?」

 

 傍目に見ても俺がウキウキしていた様子だからか、机に並べていたお土産を一つにまとめていた神父が耳聡くその言葉に反応する。俺が神父の背中方向にいるため、少しだけ首を逸らし横目でこちらを窺っているようだ。お?気になっちゃう感じかぁ?

 

 「ん?ん?えー?なんだぁ?神父ー?誰か気になっちゃうんだ?ふぅん?」

 

 そうやって煽るように言いつつ、とりあえず神父の背中に全身で突撃する。うお!流石は神父だ。突撃したのに全く動かない。これは……………………壁!?とんでもない硬さだ。カチカチだ。その服の下には何が詰まってるんだよ……!

 

 そんな変なことを考えながら、拳で神父の背中をゆっくりとぺしぺしと叩く。む。反応がない。ちょっと強めに叩いてやろ。えいえい。ぺちぺちと何とも貧弱な音が周囲の響いていく。

 

 「……」 

 

 すると神父がくるりとこちらを向き、叩いていた拳をがっしりと掴まれる。なにぃ!?止められた拳はそのまま横に流され、明らかにげんなりしている神父が見下ろしてきた。

 

 「あーはいはい気になる気になる。気になるんで早く言ってもらってもいいですか」

 

 ……………………思った以上に面倒くさそうに対応されて俺は寂しいよ。しかし、これ以上面倒くさく神父に絡んで呆れられるのも何だかなぁと思うわけで。

 ま、実際俺が煽ってるのが悪いんだからいいんだけど。ここで『つまんない』とか不平不満を口に出すのは、余りにも器が小さい気もするし。俺は器も大きなエルフなのだ。

 

 「ごめんってば。えっとな、二人っていうのは親だよ、親。両親にお土産送るつもりなんだ」

 

 俺は神父を見上げて素直に答える。その通り。俺がお土産を送ろうとしている相手は両親である。前のように渡り鳥に頼んで、ガーランジュまで持って行ってもらおうと思っているのだ。あまり重い荷物は無理だろうから、シャツ二枚である。

 

 「あぁー!なるほど!それはいいことですねぇ……………………レイさん?予め言っておきますが、お土産と一緒に前回のような変な内容の手紙なんて書きませんよね?」

 

 俺の説明を聞いて合点のいった様子の神父だったが、後に続く言葉を何やら引きつった顔で言い始めた。

 ……………………むぅ。今、変な内容の手紙っつったか?まぁ感じ方は人それぞれであるのは重々承知だ。思い返すと、前の手紙を送った後に神父が落ち込んでしまっていた。ならば……

 

 「もー心配性だなぁ。ならさ、今から書くところ見るか?」

 

 んじゃあ、さらさらっと書くとするかなぁ。これなら神父も内容を事前に確認出来ていいだろうし。少しの間教会の机を借り、両親に向けた手紙を書くことにした。書き終わったらすぐに読んでもらうために、神父も横に立ちながらではあるが。

 

 

 

 『父さん、母さんへ 

 

  

  レイです。前回の手紙からそこまで日が経っていませんが、二人ともお元気ですか。俺はそこそこ元気です。これを書いているのが旅行からの帰宅直後なので倒れてしまっていましたが、それを含めても元気です。

 

  何故また手紙を送ったのかというと、旅行のお土産を渡したいからに他ありません。実は知り合いの夢魔のお姉さんの仕事を手伝ったお礼?口止め?(よく考えるとどちらでもあります)でリゾート地への招待券をもらい、数人で旅行に行ってきました。今俺が住んでいる国で一番大きな高級リゾート地だそうです。すごいですね。

 

  湖の近くにあるリゾート地なので泳いだり、そこは温泉も有名なので身体を癒すために入浴したりと伸び伸びと過ごすことができました。共に来た人たち、特に息子のキースも喜んでくれていたので、俺としてもとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

 

  初めての遊泳でもキースは立派に泳ぎ、なんと俺にまで泳ぎ方を教えてくれたのです。しかも教え方が上手で、もしかすると将来は学校の先生になるのかもしれません。やはりキースは多才です。とんでもなくすごいです。

  

  俺自身も泳ぐということにほとんど縁が無かったのは、二人は知っての通りです。一緒に来ていたシスターさんに似合うものを選んでもらい、水着も初めて着ました。最初は恥ずかしいかなぁとも思いましたが、周囲を見るともっとすごい水着を着ている人がいたので大したことありませんでした。例えば貝殻の水着を着ている人がいました。世界は広いです。

  

  あと旅行中、新しい出会いもありました。十代くらいの人間の少年です。貴族だそうで、貴族って意外と身近にいるんだなぁと単純なことを思ってしまったのは秘密です。

  リゾート地で偶然知り合ったその少年と意気投合し、一緒に遊び、一緒に攫われ、一緒に入浴もしました。安心してください。当然歳上のエルフとしての意地は見せられたはずです。頼りがいのあるエルフのお兄さんと、リゾート中で評判になったことでしょう。

  

  少年の反応的にも恐らく仲良くなれたので、再会の約束の意味を込めて、互いの持ち物の交換も行いました。少年からは家紋が刻まれたイヤリングを。俺からは髪を縛っていたスカーフを渡すことで、再会の約束としました。また会えるといいなと思います。

 

  

 さて、長々と書いてしまうと名残惜しい気持ちでいっぱいになってしまうので、ここまでにしておきます。お土産はそのリゾート限定のシャツです。二人でお揃いのデザインなのである意味ペアルックです。本当はたくさん送りたいところですが、遠くまで重い荷物を運んでもらうのは流石に悪いかなと。

 

 それでは体調に気を付けて過ごしてください。

 

   

  追伸

  

  前回の手紙で神父さんに対する著しい誤解が生じた可能性があるので、念を押して伝えておきます。神父さんは基本的に良い人です。ちょっと娼館に行くこともありますが、町の皆に慕われている良い人なので大丈夫です。決して変な人ではありません。ただ、娼館に行くだけです。

 

  ちなみに娼館は知り合いの夢魔のお姉さんが経営している娼館です。娼館、大きいです。作った薬を卸しに行くお得意様で、貴重な収入源です。夢魔のお姉さんは事あるごとに魔力を吸ってきますが、多分悪い人ではありません。個性的な人ではあります』

 

 

 ……………………よし!書き終わった!自分で思うのも何だが、なかなか良い文章だと自負している。その書き終えた手紙を横にいた神父に手渡し、すぐに読んでもらうことにする。まぁ書き直し部分はないだろうがな!

 

 手紙に目を通している神父は途中で固まりながらもうんうんと頷いて読んでいく。そしてそれ程時間を掛けずに読み終え、手紙が俺の手へと返された。どうだ?満点か?

 

 「…………………………………………えー、すみません。書き直しでお願いします。このレイさんが書いた内容では勘違いを誘発する恐れが非常に高い……高すぎる。仮に僕が親御さんの立場なら勘違いしますってこれ」

 

 神父は何か恐ろしいものを想像したかの如く、震えながらそう呟く。だめかぁ。あるがままを書くこと、それだけではどうにもならないのだなぁ。

 

 

 神父からの助言や手直しを受け書き直した手紙は、俺から見ると何ともまぁ味気ないものになってしまった。追伸部分はバッサリなくなったし。最終的には住んでる国のリゾート地に旅行へ行ったのでお土産です、くらいの内容しかなくなってしまった。

 

 …………………………………………今度手紙送る時はこっそり書いて送ろ。まぁ今回のはそのまま送るけど。それはそうと喜んでくれるかなぁ。楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 「はぁ」

 

 私はため息をつくことしかできない。レイは一体どこにいるのだろうか。

 

 ……あれからも捜索隊を各地へ派遣しているが、一向にレイの手掛かりが掴めない。レイに繋がる頼みの綱のあの嘘つき魔女も異様な逃げ足の早さで周辺各国を逃げ回っているようで、全く捕まる様子がない。何なのあの早さは。日頃から逃げ回っているとしか思えない程だ。

 

 正直に言って情報が少なすぎる。どうやら教会に保護されているのはわかっているけれど、どの国なのかも未だに見当もついていない。どこまで遠くにいるのか……しらみつぶしに探していくしかないのが現状だ。

 これでは何年かかってしまうのか……そう弱気になってしまう。こうしている間にも神父によって、辱めを受けているのかもしれない。

 

 夫は単身で捜索隊とは別ルートから探しに行っているが、満足な成果は得られていない。今は北側の諸国を回って捜索を続けているようだ。私も付いていきたかったが『また何か手紙が来るかもしれないから、待機して欲しい』と言われてしまった。

 

 

 夫もあの手紙を読んだ後、今までに類を見ない程に怒り狂っている。それもそうだろう。いつの間にか私たちの大切な子どもがとんでもないことになっているのだ。どういった経緯でそこに至ったのかまでは把握できていないために、レイに会ってからの確認にはなってしまうけれど、壮絶な何かがあったに違いない。

 

 

 せめてレイがいた場所がわかるような情報があれば……今の果てしない捜索にも希望の光が見えるだけど……ただ、今は少しでも早く見つかるように捜索を続けるしか方法もない。何とも歯がゆい状況だ。

 

 そうしてまた何度目かもわからないため息が出る。幸運は巡ってこないだろうか。住んでいる国、いや方向さえわかれば……

 

 無意味な願望が頭を過ったその時だった。ノックもせずに思い切り部屋の扉が開かれる。ひゃっ!びっくりした!そこには普段は冷静な執事長が必死な形相で、何かを抱えて私の近くへと走ってきた。その様子から察するに、かなりの差し迫った緊急事態らしい。

 

 「奥様!!!!!また渡り鳥が手紙と何かの包みを落として!!」

 

 「え!嘘!」

 

 前回と同じような送り方だ。これはきっとレイからの手紙。私は震え手で執事長から手紙を受け取り、すぐに読み始める…………………………………………どうしてあの子は住所や地名を書かないのだろうか……絶妙に固有名詞が書かれていない。わざと?わざとなの!?しかも内容が住んでいる国のリゾート地へ旅行に行ったのでお土産送りますと非常に簡素なものだ。

 

 渡り鳥が落としたという包みの中を見ると、シャツが二枚入っているだけだった。なかなかセンスの良いマークが真ん中に付いたシャツである。流石は私たちの子どもだ。良いものを選ぶ。そのマークの下には『自然豊かなカルグリゾート』と記されている。

 

 ……………………………………………………………………………………あ!!!!!

 

 私はすぐさまカルグリゾートなる場所がどこにあるのかを調べ始めたのであった。

 

 

 △△△

 

 

 カルグリゾートでの旅行から帰ってからしばらく経ったある日のこと。キースを連れて教会に行くと、何やら神父が何とも微妙な顔をして教会から出ていく直前であった。どうしたのだろうか。

  

 「どうしたんだよ浮かない顔をして」

 

 「うーん。何故か本部の方に呼ばれまして……今からそっちに行くんですよ」

 

 「ふぅん。呼び出しくらってやんの」

 

 神父を笑ってやると、深いため息をつくのでちょっと悪いことをしたのかもと思ってしまった。流石にかわいそうだなぁ。慰めてやろ。

 

 「まぁ変なことしてないんならすぐに帰れるって」

 

 「そうだといいんですけどね…………………………………………理由も言ってくれない教会全体に向けた緊急の呼び出しみたいなんですよねぇ。憂鬱ですよぉ」

 

 

 

 …………………………………………神父って大変なんだなぁ。この時の俺はそんな風に他人事のように思っていた。

 

 

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