TSエルフ、赤ん坊を拾う   作:面相ゆつ

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これで納得してくれ!

 

 いやいや。そんな書き方してないって。してないよね?だって自信満々に書いて覚えがあるもの!あの手紙を書く勢いはなかなかすごかったはずだ。

 そう思い、母さんが机に提示した俺直筆の手紙の該当部分を読む。そうそう、こんな感じで書いて……書いて……あぁ、確かに改めて読むとちょっと勢いがあり過ぎるかな……でも事実だもんなぁ……

 

 ………………………………………………………………あ。これ、読み方によっては何者かに孕まされて産んだとも読み取れるかも……?キースを引き取った経緯も『諸事情』で済ませてるし、最後の方とか読み手の判断に委ねる書き方してるし。

 

 うん。これは孕んで産んでるな。つーかそもそも子どもがいるってことは、自ずと孕んで産むに行きつくよなぁ。それが自然の摂理。いや、俺は産んでないが。

 

 

 さぁて、とんでもないことだぞ……!手紙を握りしめつつ、隣にいる神父の顔を恐る恐る覗き込む。笑顔だ。逆に怖いね。俺たちは母さんに背を向けながら小声で会話タイムだ。

 

 「レイさん……僕が手紙の内容を聞いて絶望してた理由、わかりました?わかりましたよねぇ?実はそこより恐れてる部分はあるんですけどね?」

 

 よく見ると神父が小刻みに震えてる!!すげぇ振動だ!そうだよな、今の神父の立場的に俺を孕ませた可能性のある一人みたいに扱われてるもんな!いや、俺は孕んでないが。

 

 「神父には申し訳ないことを……感情を生き生きと表現し、読む人の感受性を刺激する俺の文章がこんな事態を招くなんて……」

 

 「このお子様エルフはさぁ。感受性を刺激はしてるけどさぁ」

 

 いつもの口調が崩れ、これ以上ない清々しい笑顔で青筋を浮かべ始めている神父を横目にするが、俺は神父程焦らない。何故なら既に事態の収束をする策は我が手の中にあるのだ。

 

 「だがな、神父。これに関しては今、相対してるんだから普通に否定すれば良い話だぞ?」

 

 その通り。手紙では微妙なニュアンスが伝わらないことがある。だけど俺たちは実際に目の前にいるわけで。言葉での訂正、それが可能だ。

 

 「無理だと思いますけどぉ?」

 

 「できるってば!見てな!」

 

 神父が失礼なこと言ってくるんだけど。けれど俺はほとんど気にしないよ。この事態を引き起こしたのは俺の過失!そして何より優先すべきは誤解を解くこと!

 俺は椅子から立ち上がり、こほんこほんと喉を整える。姿勢を正して真っ直ぐに母さんを見据え、しっかりと俺自身の真剣さを見てもらおう。

 

 「母さん、誤解だ。キースは俺の子だけど、孕んでないし産んでない。俺の手紙がこう……読み手の想像に委ねている部分があるのは認める。勘違いを生んでしまう書き方だ。実際はキースは森で……言い方は悪いけど置いてけぼりにされていたのを拾ったんだ」

 

 そうして俺は母さんに向かってありのままの経緯を話す。数年前、自分が住んでいる森で見つけたキースを引き取って育てている、そのことをだ。脚色なし、事実のみで構成された俺の言葉を聞いてもらいたい。

 

 

 そうして一通り話終わり、後は母さんの反応を待つばかりである。ま、俺が話している最中も神妙な顔つきで頷きながら聞いてくれたし、内容に関しては多分問題ないと思う。つーかそのままを話しただけだもの。

 

 「……わかったわ。表向きには『そういう話』にすると、決めているのね?本当のことは私相手でも決して言えない……そうするしかないのよね」 

 

 「ん??」

 

 「レイさん……無理ですよ……こうなっちゃうんですって」

 

 むむむ?これはまずいかもしれないな?母さんは口元を抑えながら項垂れてしまった。嗚咽を隠すこともなくだ。

 

 「私が泣いてちゃダメなのに……レイはもっと辛かったでしょうに……」

 

 多分、いや絶対に……今まで話したキースを引き取った経緯が作り話だと思われてる!しかもめちゃくちゃ凄惨な出来事を隠してるとも思われてねぇか!やべぇ!

 

 「母さん待って待って!」

 

 「心のどこかでは『もしかすると何かの間違いかもしれない』と思っていたの。実際にキースを見るまではね?」

 

 涙ながらに語る母さんは悲壮感に溢れている。ぽろぽろと流れ落ちる涙は止まることを知らない。それもそのはず、母さんの中では今の俺は完全に誰かによって手籠めにされてるぞ。

 

 「でもね、『そういう話』で済ませられないのよ。親としてはその男を捕まえて罰を与えなければ気が済まない。大事な子を無理やり傷物にした罪あるケダモノには相応の罰が必要。それだけはわかって欲しいわ。初めは神父さんが……とも思ったけれど、キースとは髪色から何もかも似ていないし……」

 

 しかも手籠めにされたうえで捨てられてるぞ俺……あ、でも。神父に近づき耳打ちする。

 

 「神父、神父。とりあえず俺を孕ませたと思われる候補からは除外されてるぞ。よかったな」

 

 「今、言うことじゃないでしょう!?この状況は危機ですって!」

 

 はい……そうだと思います……どうしようかなぁ。ちょっと神父に手伝ってもらおう。神父もこの圧倒的にどうしようもない状況はまずいと思ってくれているようだし。俺は神父とお互いに頷き、目で合図を送り合う。協力体制の完成である。

 

 

 神父は深呼吸をし、母さんに向かって優しく話しかけ始める。まるで敬虔な神父みたいだぁ。ただ若干諦めているようにも見えるけど。 

 

 「……キールさん。レイさんの話は全て過不足なく、正しい情報です。キースくんは森で拾われた子です。僕の言葉に信用はないかもしれませんが」 

 

 いけー!そのまま押し込めー!神父のあまり見たことのない真面目な顔だー!頑張れー! 

 

 「……『そういう話』にすると決めているのですものね。それらを飲み込んだうえで、教会でもレイの子育てを真心を持って全面的に支援してくださっている……先程の歓談中の短い時間ではありますが、神父さんやアリアさんの人柄やキースの懐きようはその証明だと思います」

 

 …………まぁそうなるよなぁ。憩いの場での歓談は和気あいあいとした雰囲気だったし。神父やアリアの人となりを断片なりとも知れた時間だろうしなぁ。うんうん。俺の自慢の友人たちが褒められて嬉しい!

 

 そんな場合じゃない!やべぇ!神父たちの信用が上がったおかげで逆に首が締まってきてる!

 

 

 「どうしましょうかレイさん。最初の出会いの時と違って、僕たちの評価がかなり高いです。初めは僕、縛られてたのに」

 

 「あの時は申し訳ないことを……」

 

 「あ、いえ。違うんです。キールさんのお気持ちは重々承知してますので……」

 

 二人がお互いに頭を下げ合っている。おー何だか大人っぽい感じがする。あぁやって謝り合う姿ってちょっと憧れるかも。

 

 ただこのままでは俺はめちゃくちゃかわいそうな境遇になってしまう。俺ももう一度異議を唱えておくしかない!

 

 「母さん違うってば!本当の話なんだって!」

 

 「レイ?それならあなたは、キースは自分の子ではないって言えるの?他人の子だって言えるの?」

 

 「いいや、キースは俺の大事な子だ。それだけは何があっても確かだよ」

 

 「そうよね」

 

 ………………………………………………………………これはズルいでしょ。反射的に答えちゃうじゃん。だってキースは俺の子だもん。本当だもん。

 

 

 俺たちはこそこそと話し合うしかない。割と手詰まりである。 

 

 「レイさん……証拠でも出さない限り無理ですよ……」

 

 神父は首を横に振ってお手上げ状態だと表現する。生温い空気に包まれている応接室はもう『そういう話』が事実になってきているように思えてくる。もしかしたら俺は手籠めにされてキースを産んだのか……?冗談でも笑えないよ!  

 

 「でも証拠って言われてもなぁ。要は孕んでない証拠?ってやつだよな」

 

 「まぁそういった証拠とも言えますけど……」

 

 証拠、証拠かぁ。とても難しい問題だ。うぅむ。産んでない証拠……孕んでない証拠……孕まない証拠………………あるといえばある。考えてみればある……んだけど。

 

 あるといえばあるけど、実の親といえども言いたくはないなぁ。だけど言わなきゃどうにもこうにもだし……いや、言うしかない。

 

 「神父。あるにはある」

 

 「……え、あるんですか?キースくんを森で拾った証拠?」

 

 「そこは難しいからな。俺に関することだ。だけど信じてもらえなかったら、もう仕方ないと思う」

 

 

 

 「………………………………………………………………母さん。耳貸して」

 

 「?」

 

 母さんの傍に寄り、こそこそと内緒話をする体勢をとる。こういう話を親にするのやだなぁ。母さんの耳に手を添え、俺自身も躊躇いながらも小声で話し始めた。

 

 「そもそも……えっと。俺の身体は確かに女性に変わってるけど……まだそこまでの段階には至ってないっていうか。そのぉ、年齢的にはちょっと早いというか

 

 「……うん」

 

 ダメだ!恥ずかしさで顔が熱くなってくる!

 

 「個人差はあると思うよ?母さんがこの年齢の時には、もしかするとそうだったかもしれないけど。ただ俺はまだってだけで……少なくとも今の時点では多分俺に赤ちゃんはできないっていうか……

 

 「あぁ~……なるほど。確かにちょっと早いかもしれないわね……」

 

 母さんはあぁ~と納得したように頷く。俺はかなり恥を忍んで話したのが功を奏したみたいだ。恥ずかしい話になるが、一応出るとこは出ているが俺は未だに大人では決してない。要は身体の構造は人間などの大体の種族と似通っているのだ。それだけだ。

 

 俺が極限の恥ずかしさを隠すこともできず、真っ赤になりながらも母さんの反応を窺う。これでダメなら受け入れよう。しかし、母さんも俺がめちゃくちゃ恥ずかしがりながら話したことを理解してくれている。

 

 「………………………………………………………………ということは、さっきの話は本当なのね。キースを森で拾ったという話は」

 

 「そうそう!よかった!信じてくれた!?」

 

 「流石にレイがそこまで恥ずかしがりながら告白してくれたことを信じないわけにはいかないというか、ね?」

 

 母さんは申し訳なさそうにしてくれているが、元々の原因は俺だから……ただ微妙に納得いってないのは神父である。だって今までとは正反対なくらいに、スムーズに納得を引き出せたわけだからな……

 

 「え、レイさん?一体何を話せばそこまですんなりと…………?」

 

 「神父さん。いけません」

 

 「えっ」

 

 「いけません」

 

 「はい……」

 

 神父が詳細を聞きたがっているが、母さんによって完封された。神父も多分、何となくはそっち系の証拠かなぁとは感づくとは思うが。

 

 

 「えっと、じゃあキースは森で拾ったことは納得してもらえたということで!これで一件落着!」

 

 「………………………………………………………………その件に関してはそうね。あとでもう少し詳しく聞くけれど」

 

 母さんはまだ何かあるらしい。なんだろうな?もう他に問題点はなさそうだけど。

 

 「………………………………………………………………レイの手紙には神父さんと『裸の付き合い』をしていると書かれていたわ。これも何かの勘違いで良いのよね?」 

 

 「えっ、それは何もかも本当だよ」

 

 「あっ!!!おバカ!!!」

 

 神父が真っ青になっているが、まぁこれに関しても大丈夫だろうな!!!

 

 

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