TSエルフ、赤ん坊を拾う   作:面相ゆつ

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犯人捜しとかいる?俺が悪いんだしよくない?

 

 「はっきり言ってそれは不特定多数の前では着るべきものではないの。特に男性タイプの衣装を、今は女の子のレイが着るのはよくないわ……いえ、男女関係なく一般社会で日常的に着るにはちょっと開放的すぎるというか」

 

 ふるふると首を振る母さんは思ったより深刻そうだ。ただ安心して欲しい。俺も流石にこれを人前で晒すことは……そんなにない。

 

 「えー?確かにちょっと恥ずかしいかもしれないけど、慣れたら普通に楽だよこれ。それに上からローブ着るんだし」

 

 ほら!と母さんの膝から降りて、俺はお気に入りのローブをばっちりと着こなしてみせる。そしてその場でくるっと回って全身を見てもらうが、やはり着心地抜群である。このローブ着心地も良くて、カッコ良いとか最強か?つーかさ、結局ローブで下が見えないんなら何着てても平気では?いや、裸とかはダメだけどさ。

 

 「レイさんって服を見てもらう時、その場でくるくる回りますよね」

 

 「この子、昔からの癖なんです。自分を見てもらいたい時は、自信満々にニコニコしながらくるくる回って。でもそれが可愛くて」

 

 「おぉ!そういった親目線でのお話はいいですねぇ!」

 

 ん?なんか今、俺の恥ずかしい話が挿し込まれなかったか?絶対したよな。関係ない話を挿し込まれた俺は頬を膨らませ、少しだけ非難の目線を向けると二人は咳ばらいをして誤魔化してきた。だが俺は誤魔化されないぞ。 

 

 「……しかし、なるほど。合点がいきました。レイがこういうものを着てしまうから、手紙で書かれていたようにアリアさんもわざわざ色々と服を着せるのですね」

 

 「そういった観点もあるかもしれませんが、アリアのは半分趣味も入ってますから……まぁ贔屓目なしに似合ってはいますよ。この前も……」

 

 ……まーた二人が俺をそっちのけで話してるぞ。別にいいけどさぁ。この素晴らしくローブを着こなしている俺を見て欲しいんだが?俺は腰に手を当て不満気な様子をこれでもかと表に出す。

 

 「二人ともさぁ。そういうの良くないと思う。もっと俺を見るべきだ」

 

 「ふふふ、レイ安心して?ちゃんと見てるわ」 

 

 なんか微笑ましい感じじゃなくてさぁ!もう!

 

 

 

 「そうだそうだー!もっとしっかりとレイちゃんの可愛さを見ろー!」

 

 「ほらぁ!魔女だってこう言ってるぞ!でも可愛さじゃなくてカッコ良さなー!」

 

 俺の影からぬるぬるっと姿を現した魔女が大声を上げて俺に加勢してくれる。俺たち二人による徹底抗議である。あれ?魔女は普通に出てきていいのか?なんか出ない方がいいとか言ってた気がする。ただ魔女は俺の肩に手を乗せて楽しそうにしているし大丈夫かも。

 

 

 俺の疑問に答えるかのように和やかだった雰囲気は消えた。魔女の姿を見た瞬間、そこからの母さんの動きは早かった。

 

 「……」

 

 「冷たーい!」

 

 あっ!母さんの魔法で魔女の首から下が全部凍ったぁ!ガッチガチに凍ってる!ただ魔女だけをピンポイントに凍らせることで、近くの俺には一切被害がないのは流石は母さんだなぁと思う。

 

 俺はというと、すぐに神父に手を引かれて母さん側に引っ張られてしまった。神父の顔も真剣そのものである。こ、怖い……

 そういや魔女から来た手紙で追いかけられてるって書いてたし、しかもこの町では魔女は警戒されてるしで本当にマジで魔女は何したんだよ……

 

 「ようやく見つけた」

 

 「待って待ってー。私も今は変なことしないよー?だからこれ溶かしてー」

 

 「溶かしたら逃げるでしょう?」

 

 「逃げないってばー。逃げるつもりならこうやって出てこないしー?」

 

 思ったよりも余裕のあるのか魔女が笑ってる。すげぇなこの状況で笑えるの。あぁいやそうじゃなくて。止めよう!

 そうして俺は母さんのコートの裾をくいくい引っ張って止めようと試みるのだが……

 

 「母さん穏やかじゃないってば!」

 

 「止めないでレイ。この魔女はカスよ。レイがどこにいるか間違いなく知っていた癖に、嘘の情報をこちらに渡してきたの。そのせいで……!」

 

 めちゃくちゃ怒ってる!普段は見えないであろう魔力が怒りによって迸っているのがわかる。珍しい!しかし魔女の方はびっくりする程下手くそな口笛を吹きながら、にこにこ笑顔である。すげぇな魔女……

 

 「まぁまぁ落ち着いてよー。レイちゃんにはちゃんと会えてるんだから。それに私もねー?あくまでレイちゃんの意思を尊重しただけだもん。私が少し前に再会した時にあまり帰りたくはなさそうだったから、私が上手いことその通りにしただけだよー」

 

 魔女はちらっと俺の方を見る。そこには別に非難を向けているわけでもなく、ただ少しだけの憐憫を向けているように思える。何?どういう感情?つーか、魔女にガーランジュに帰りたくないって言ったっけ?

 

 いや!そんなことよりマジで止めとかないと魔女がヤバい!

 

 「で?言いたいことはそれだけ?ならこのまま罰を与えるけれど。吸血鬼だから死にはしないでしょう」

 

 「母さん!魔女は俺にとっての恩人だから!この国で住んでる家も魔女から借りてるし!」

 

 「……それはそれ。これはこれよ」

 

 ………………………………………………………………それはズルいだろ!

 ただ魔女は思いの外、というか想像以上に結構落ち着いている。凍らされてるのに。

 

 「……出てくるつもりはなかったよー?だってこうなるってことはわかってたからさー。レイちゃんの影の中で、ぬくぬくと面白そうなお話聞ければそれでよかったもん。だから気づかれないように隠れていたのに、こうしてわざわざ敵意バリバリのあなたの前に出てくる理由ってないでしょー?」

 

 「……」

 

 どうやら母さんもそこに引っ掛かりを感じているのは明白だ。一応話を聞いてやるか、と。その疑問のために首から下だけを凍らせたのだろうか。早く理由を言えと言わんばかりに眉間に皺を寄せ、無言で顎をしゃくりその続きを促している。こっわ……母さんのこんな怖い姿初めて見たかもしれん。

 

 

 「ねぇー?レイちゃん刺した犯人捕まえたくない?私、協力してもいいよ」

 

 「急に何を言って……」 

 

 「さっきの話聞いた感じでは、そいつを捕まえないとレイちゃんは故郷に帰れないから。だから協力してあげる」 

 

 さっきのさっきまでへらへらと笑っていた魔女がスンとした顔でそう答えた。母さんも同じことを思っていたのか、舌打ちをして黙り込む。

 

 ………………………………………………………………これについてはどうなんだろう。俺って刺してきた犯人が見つかれば安心するのか?正直、もうわからない。

 

 

 「言葉だけでは信頼はできないだろうし、してもらうつもりもないから。でもまた吸血鬼の血の契約をすれば安心でしょ。契約内容はまぁ後でってことで」

 

 「……私にはお前に利点がないように思えるのだけど」

 

 「利点、かぁ。簡単だよ?私にとってレイちゃんはお気に入りで、そのお気に入りが今も悪夢で飛び起きるような経験させた相手にムカついちゃった。それと長命種の『暇つぶし』ってこと。で、私にもやりたい暇つぶしとやりたくない暇つぶしがある。レイちゃんママも長命種ならわかるでしょ。これで納得してくれない?」 

 

 首を横にこてんと倒した魔女がそれだけを言うと、母さんの反応を待つかのようにじっと見つめている。まぁ首から下を凍らされているのだからそれ以上の動きはできないのだろうが。

 

 「………………………………………………………………わかったわ。犯人捜しに協力させてあげる」

 

 「やったー!」

 

 なんかすんなりと話がまとまってしまった。めちゃくちゃ怒っていたのが嘘のように、本当にすんなりとだ。

 

 「キールさん!?この魔女の言うことなんて信じちゃダメですって!過去にどれだけ周りに迷惑を……」

 

 「神父さんの言うこと理解できます。この魔女は嘘つきです。しかも恐らく、色々な場所で確実に迷惑を掛けてきたカスです。けれど、周囲に変なことができないようにこちらに相当有利な契約にするので。何より……長く生きた長命種にとっての『暇つぶし』は普通の暇つぶしとは訳が違うのです」

 

 「……そんなので納得なんて」

 

 ……これはあんまりよくない雰囲気だな!仕方ねぇ、俺がこの空気を変えてやるしかねぇか!俺はバチバチに話し合っている皆の真ん中にとりあえず割って入る。

 

 「まぁまぁ。ここは俺の顔に免じて」

 

 ………………………………………………………………ダメみたいだ。周囲の真剣さが違う。いやまぁ、俺についての話だもんな。俺自身が真面目にやらないとダメか。そもそもの前提の話からして、ちょっとズレてるというか。

 

 「えっと。正直に言えば、俺が刺されたのは俺自身のせいだから。それで死にかけて悪夢を見るのも同じ。だから気にしなくていいよ。ほら!こんなつまんない俺についての話はやめて楽しい話をしようぜ!」

 

 俺としての結論はやっぱりこれに落ち着く。ガーランジュに帰りたくない程怖いのも自分のせいで、それで異性の身体になったのも自分のせいだ。

 

 まぁ……うん。要は皆は気にしなくてもいいことなんだ。

 

 「……レイちゃんママも神父さんも聞いたよね?私は別に良い吸血鬼ではないけどさ、死にかけるくらい刺された子どもにここまで言わせるのは心苦しいよ……だからさっさと捕まえよう?」

 

 

 

 それから母さんは神父も交えて魔女と契約内容を決定したようだ。俺は……除け者かよ……!と思いつつも、結局のところ置いてけぼりである。母さんも神父も何とも言えない顔ではあったが。

 

 犯人捜しなんて、俺が原因で起こったことなんだから別に良いって言ったのに……

  

 ただこっそりと『この契約って強制力がある割に抜け道があるんだよねー。秘密だけど。レイちゃんも二人に言っちゃダメだよー?ま、今回は死ぬほどガチガチに条件固められたから、ほとんど無理だけど。仮にできても変なことはしないよー。レイちゃんが知って嫌がるようなことは特に』と魔女が教えくれたのだが……俺って魔女にそこまで気に入られるようなことをしたのか、記憶にないのが一番怖い。

 

 ………………………………………………………………あとで問題になってもダメだし、一応告げ口しとこ。

 

 「じゃあ今日のところはとりあえず、またレイちゃんの影の中に入っておくねー。町の人に見られると私捕まっちゃうからー。明日には行くねー」

 

 「えぇ……」

 

 魔女はそう言ってぬるっと俺の影の中に入り込む。捕まるって本当に何をしたんだろうか。聞かないつもりだったが、すげぇ気になってきちゃう。神父にでも聞いちゃおうか。

 

 「なぁ神父ー。魔女って結局何したんだ?」

 

 「……」

 

 神父が嫌そうな顔してるから聞くのやめとこ!まぁ本人がいる場面では言い難いよな!

 

 

 

 ………………………………………………………………まぁ何はともあれ、応接室は緊張感のある会話ばかりであったが、なんかこう上手いこと収束していった。特に神父の誤解が解けてよかったよかった!!

 

 

 

 

 「あっ!レイさん!長かったですね。応接室でのお話し合いはもういいんですか?」

 

 「あぁ。もう平気だ。何事もなく終わったよ……ってめちゃくちゃ人がいる」

 

 俺たちが応接室を出るとアリアが出迎えてくれたわけだが……教会の礼拝堂には人がたくさんいた。よくよく見ると魔法治安部隊の連中だ。

 

 「さ、流石に外で規律良く整列されてるのを見ると不憫でお茶を出していたんです……今はキースと遊んでくださっています」

 

 「本当だ……」 

 

 知らない大人たちに囲まれているのにキースは楽し気に遊んでいる。人見知りをしないとは流石だキース。おいおい見てみろよ、キースが皆の人気者だよ。ま、当然だけどぉ?

 

 だが彼らは母さんの姿を目にするとすぐに遊ぶのをやめ、ぞろぞろと外に行って整列をし始めた。それをキースが不思議そうに眺めている。よし、声を掛けるかな。

 

 「キース。お利口さんに待っててくれたんだな。えらいぞー!」

 

 「あ!ままー!でもねあそんでくれてたのにきゅうにみんなそとにでていっちゃった。どうしてかなー」

 

 俺はキースの頭を撫でながら苦笑する。まぁ……ここに来てるのも仕事みたいなもんだしな。

 

 「……私は別に直属の上司ってわけではないのよ?一応ちょっと権限借り受けてるだけで……任務自体は無事に達成したから今は自由時間でいいのよー!決められた宿で休んでもいいからー!」

 

 さらに彼らのその姿を見た母さんが俺たちに言い訳をし、走って指示をしに行っている。何も文句とか言わないから。『あぁ、結構厳しい感じなんだ』とかも思ってないから。つーか権限借り受けてるんなら、実質上司みたいなもんだろとは思うけど。

 

 「護衛とかじゃないんですねぇ」

 

 神父がボソッとそんな言葉を零している。フフン!母さんに護衛はいらないぞ!だってガーランジュの魔法使いの中でも、トップだもの!

 

 「母さんは無敵だから必要ないよ。父さんももちろん無敵だ」

 

 「レイさんはご両親が大好きなんですねぇ。良いことです」

 

 ……なんか神父が微笑ましいもの見る感じでちょっと嫌!

 

  

 そうして少ししてから、母さんが指示を終えて戻って来たのだが……何をしようか。時間もあるしこれからは母さんに町の案内でもしようかな。

 

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