二回戦の桜ブロッサムは、那須与一の渾身の一撃である弓矢を、俺の奇跡的な槍投げで撃ち落したことにより、弁慶のお仕置きタイムが始まり勝利へと終わった。
ちなみに今も尚、控え室でお仕置きは継続されており、源義経が慌てているのだが、それは俺にとっては関係のない話である。
それよりも働かなくていいといった弁慶さん。きっかりと矢を撃ち落すという仕事をさせたのはどうなんでしょうね。
とまぁ、心の中で文句をいいつつ。やることのないボッチの俺は、バトンを回すがごとく自分の武器である槍をくるくると回す。
この行為は意味はないのだが、何故か不思議と魅力がある。男ならば小学生や中学生時代にはやったことはある行為のひとつではないだろうか。
「おわっと!」
そしてまたもや気配を消しながら後ろから近づいてくる燕さん。あたらないように途中で止めたのだが、どうやら彼女はオーバーリアクションをする人間のようだ。
「それで、何か御用ですか?」
「次の対戦相手である"騎士様"とお話しようかなぁと思って──やっぱり、そうなんだね」
人物観察が得意であろう燕さんは、俺の反応を見て確信したのだろう。
「名前とその容姿を見てわかったよ。こんなところにも英雄様がいるなんてね。その槍もケルト神話の槍をモチーフにしたんでしょ」
「そういう燕さんも、計画はちゃんと進んでいますか?」
「……どういうことかな?」
正直、さぐられるようなことは俺は気にはしない。が、このように脅しをかけてくるのは、俺は一番嫌いなのだ。そういうことをしてくるのならば、こちらも同じように動くべきである。
「ヒューム・ヘルシングが言った、武神を負けさせるために来た松永燕さん」
「私がモモちゃんを? 無理だって。スワローちゃんには無理だよ」
「武神が戦うときの彼女への視線。定期的に行っている稽古時の視線。そして何より、タッグトーナメントにもかかわらず、彼女の弟分である直江大和との出場。どうみたって武神をゆする行為にしか見えませんよ」
最強である彼の言葉を聞いて、それとなくその人物の正体が気になった俺は、いろいろと動いていた。
そして出た答え。それが松永燕だったのだ。
最初は勘違いだと思っていた。だが、だらけ部で直江が彼女といろいろなところへ行ったり、川神院で稽古を始めたりということを聞き、燕さんに的を絞ったのだ。
その結果は黒。彼女は、武神という獲物を狩る獣だったのだ。
「まぁ、そんなことはどうでもいい話。弁慶から頼まれましたから。源義経の敵を一人でも多く倒すって」
「譲ってくれるってのは?」
「しませんよ。なんたって俺は"騎士様"ですからね。不正はどうかと思います」
「あらま、こういうときだけ格好付けちゃって! いつもどおりだらけちゃっていいよ?」
「騎士ですから。不正はどうかと思います」
「譲る気はない……か。楽に勝てると思ったのになぁ」
そう残念そうにしながら、直江のほうへと戻っていく燕さん。たぶん体力を温存したいのだろう。武神に勝つために。
しかし俺にも譲れないものがあるのだ。
「で、格好良かった?」
「おや、気づいてたのね」
「そりゃ、もうバレバレですよ。で、さっきの俺結構イカしてた?」
「ドヤ顔がイラつくから、イカしてないってことにしておくよ」
「えー……1年に1度あるかどうかだよ? だらけ部ではめったに見せない姿だよ?」
「殴っていい?」
今までだらけていた分、ちょっとだけ格好良くやってみたのだが、どうやら弁慶は気に入らなかったようだ。ちょっとその握りこぶしを上げるのはやめろ! 冗談じゃなくなってきてる!
「あ、ごめん。調子にのりました」
「次の戦いで本気を出したら許そう。さっきの先輩、相手するのだるそうだし」
「本気出してるって。バリバリに」
「やっぱり今殴っていい? 与一相手にして体があったまってるから、今まで以上の力が出るかも」
「嘘です。冗談です。やだなー本気出しちゃうよ?」
「ならよかった。大丈夫。気をためている間は私が守ってあげよう」
「あらやだカッコいい」
「ほれちゃった?」
そんな感じで、先ほどまでの空気とは逆な会話をしながら、俺達は準決勝へと向かうのであった。
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優勝争いの一歩手前の準決勝という舞台のためか、会場は今までにないほど活気に満ち溢れていた。
そこに追い討ちをかけるがごとく、アナウンスが場内を盛り上げるために煽りをいれる。
その会場の中心には、燕と大和、弁慶と鷹が立っていた。
「すまんな直江。できる限り急所ははずすからな」
鷹の投擲の標準は、最初から大和へ決まっていたのだろう。向かい合うと、鷹は大和へ警告した。
今まで鷹を見ていた大和だったのだが、これまでにない彼の雰囲気に圧されたのか、唾を飲み込む。
「大和くん大丈夫だよ。私がその前に決着をつけるから」
「そうはさせない。この試合、鷹は私が守る」
『それでは準決勝……はじめっ!』
審判の合図とともに、会場は静けさを取り戻す。
リング上にいる4人のうち最初に動いたのは、燕だ。地面を蹴り、進んでいく相手は、腰を落し槍へと気を送っている鷹である。
「その技を使われたら、大和くんでは避けられないからね。ちょいや!」
「そうはさせない」
「あぶない!」
稲妻のような鋭い攻撃を、間に入った弁慶が受け止める。そしてお返しといわんばかりに錫杖を薙ぐが、燕はそれを後ろに探すことで回避する。
しかし弁慶はそれを追い討ちすることなく、鷹の前に立つ。
「これはマズいなぁ」
燕は今までに見せたことのない苦い顔をしながら、鷹の槍を見る。気が目に見えて膨れ上がり、本体が見えないほどに大きくなった槍は、あと少しで投擲できる。
「これは、一回大和くんを守るべきかな」
鷹は、大和へと警告をだした。つまり標準は大和だ。遊び程度の百代に捕まる大和にとって、鷹が投擲する槍を避けられるはずはない。
つまり勝つためには、この一撃をとめる必要があるのだ。
「さて直江、準備はいいか?」
「どちらかというと、まだダメかな」
「お前がダメでも、俺はいける。大丈夫。危ないと判断したら学長が止めてくれるさ」
鷹は横目で鉄心に確認を取る。うむと首を縦に振った鉄心を見た鷹は、今までにない高さまで飛び上がる。
「いくぞ! 俺の秘技の一つ。その名は──魔槍……ゲイ・ボルグ!」
爆音とともに蹴り放たれた槍。
「そうはさせないよ!」
石田に放った速度よりも速い槍を止めるべく、燕はその射線へと入り槍は弾き返そうとする。
「例え間に人間が入ろうが」
ゲイ・ボルグは必ず対象を突き刺す。
そういわんばかりに、それを弾き飛ばそうとした燕の腕を逆に弾き飛ばした。それでも加速は止まることなく、大和に向かって飛んでいく槍。
「バーストファイア!」
「いけよ。リング!」
4人のうち2人マスタークラスである、ルーと釈迦堂の技が投擲された槍へと飛んでいく。
その攻撃に少し勢いを無くした槍を、さらにもう一人である鍋島が掴み、そして
「俺流、倍返し!」
気の込められた槍は、地震と勘違いするほどの爆音と振動とともにリングへと突き刺さった。
「ワシの権限により、勝者・だらけ部じゃ!」
川神鉄心の言葉によって、鷹と弁慶のだらけ部が決勝へと進出を決めた。
「武神に勝つために、力のない直江と組んだのが間違いだったな」
鷹は誰にも聞こえないように呟いた。
もし燕が自分と同じくらいの力を持っている人物と組んでいたのならば、勝敗はわからなかった。だが、それは仮定での話であり、現実とは違う。
地面に突き刺さった槍を見ながら、悔しそうにしている燕をよそに、鷹は控え室に戻るのであった。
さてさて、こういう風に執筆してみましたが、どうでしょうか。
アドバイスなどお待ちしております。