摩怨の身
いつも決まった夢を見る。巨大な嵐が目の前に立ちふさがる。激しい風が吹きあがり立っているのも困難のはずなのに、なぜか俺には心地よい風に感じて肌を通る風が気持ちいい。それほど悪い夢じゃないが、一つだけ不気味に感じることがある。それは、巨大な竜巻中から何かがこちらを覗いている。それが何かがわからないが、その正体を確かめようとすると、俺はその正体を見る前に夢から目覚めてしまう。
彼の名前は藤田 士郎。第四次聖杯戦争でマリーの加入により聖杯が暴走せずに止まられて、災害が起きなかったかつ衛宮 切嗣に養子に取られず。実の親と生きている世界線だ。
「おはよう母さん」
「あら、なにしてるのよ士郎」
「何って、朝の弁当を作ってるんだよ。母さんこそ今日はいつもより遅いじゃないか」
彼女の名前は藤田 紗香。彼女はこの藤田弁当屋の店長である。うまくて安い。なおかつボリューム満点と三拍子そろった地元の冬木市で育ち盛りの学生から働き手の社会人に人気のお店だ。
「あ~あ、こんなに作っちゃって、今日は朝の分だけでいいんだよ」
「なんでだよ。365日朝昼晩やっているのがうちの店の理念だろ」
「そんな理念はうちにはないよ。今日はあんたの入学式でしょうが」
「でしょうがって、見に来るつもりか?」
「当たり前でしょうがお父さんと一緒に見に行くわよ」
「うちはエスカレータ式だから別にわざわざ見に来なくてもいいだっいで!?」
頭をひっぱたけられる士郎。痛そうに頭をさする。穂群原学園。会長がオルガ―マリーに代わってから学園を都市化となり同時に小中高大一貫校の超巨大な学び舎である。
「バカな事言ってるんじゃないよ」
「何だ?また朝から何かしたのか士郎」
「親父。別に何にもねえよ」
二人でさわいでいると父親の藤田 直也。車の修理屋を生業にしてるが、他にもいろいろしてる。エアコンの設置や水道修理や本当にいろいろとしている。街の便利屋になっている。
「おっ、反抗期か?このやろう~」
「ちょっ、やめろよ」
今日は士郎が高校生になる入学式だった。士郎の両親も息子の晴れ姿を見ようと、毎日やっているお店をお休みして息子の入学式を見に行った。入学式は滞りなく進んだ。今日は入学式で学校もお昼前に終わる。生徒達は各々両親たちと一緒に帰っていく。
しかし、そんな中で一人だけ2階の窓からその様子を眺めてる一人の黒髪のハーフツインの美少女がいた。彼女の名前は遠坂 凛。この世界の彼女は、遠坂家と言うより父の遠坂 時臣を酷く嫌っている。幼い頃は凛にとって父時臣は敬愛すべき偉大な魔術師であったが、成長に伴って父親の冷酷さを理解し反発して忌避するようになあり。なりより父を嫌う一番の理由は妹の桜を養子に出したのが決定的だった。
大事な妹を養子に出して非人道的にひどい目に合わせるきっかけになった父を恨み。何より何も知らないでのうのうと生きていた自分が許せなかった。凛は自然と桜から避けるようになって、家からも出ていき一人暮らしをするようになった。そして人と避けるようになっていつの日か孤高の女王なんてあだ名をつけられるほどだ。
「遠坂」
「…何よ」
「いや、その、帰らないのか?」
「はぁ?何でそんなことアンタにいちいち教えないといけないのよ」
たそがれたる凛に話しかけてきたのは士郎だった。士郎は問いかけられて回答に戸惑っていた。そんな姿を見た凛はあきれた様子に溜息を吐く。
「あの子の姉だからって、私まで気にする必要はないわよ。じゃあね」
「あ、おい!待てよ遠坂!」
「苗字で呼ばないで」
「ッ…じゃあ、凛でよぶよ。それならいいだろ?」
凛は実は苗字で呼ばれるのを嫌っている。何度も苗字で呼ぶ士郎に嫌気が指して額に指鉄砲を突き付けられて思わず士郎は両手をあげる。ただの指鉄砲なのになぜが恐怖を感じる士郎。一般人の士郎にはわからいはずのガンドの魔術だが、士郎は何となく本能で嫌な予感をしていた。
「…勝手にすれば」
「お、おい!待てよ」
「ついてこないで」
はたから見たらナンパとかに見えるかもしれないが、別にそういうわけではない。士郎は桜と凛の仲違いをさせようとしていたが上手くいかない。その後も凛に話しかけるが街で撒かれてしまい見失ってしまった。
「凛のヤツどこに行ったんだ?」
凛を探している道中で裏路地に入った士郎。そこでとんでもない現場に遭遇してしまった。
「な、なぁ!?」
そこには無惨にも何箇所も剣が突き刺された女と神父の男がいた。士郎はとんでもない状況にパニクっていた。殺人鬼神父出会ってしまった士郎はとにかく逃げないと、警察に言わないと、色々考えて頭がパンクしそうになっていた。それなのに動き出せずにいた。恐怖による極度の緊張で筋肉が硬直したのか、あるは…
「うぉおおお!!」
血まみれの彼女と顔を合わせた瞬間に、悪に立ち向かうための正義の心が士郎をここに立ち止まれせ彼女を助ける。士郎は殺人鬼に向かって体当たりをしようと走り出した。
「チッ!お前仲間か!?」
しかし、士郎の勇姿は虚しくも散ってしまった。士郎は神父に切り伏せられた。一般人である士郎は何一つ出来ることはない。何一つ出来もしない自分の無力さを悔やむだけだった。胴体を真っ二つにされた士郎は動けなくなりゆるりと死にゆくだけだった。
「再生しない!?まさか一般人!?」
「…はぁ〜、しょうがないか」
「ガッ!?」
その瞬間剣に突き刺された女の人が立ち上がり動揺する神父の隙をついて首を鷲掴みにして持ち上げる。女は片手で神父を持ち上げる。とても華奢な女の身体からは説明つかないような筋力だった。神父は苦しそうにもがきながらも剣を振り回して女を殺そうとするが、女の傷口から黄金に輝く歪な棘の刃が神父を突き刺す。
「……綺麗だ…」
「…大丈夫?」
「…は、はは…」
士郎は光り輝く異様な光景の女性を見る。今までに見たことない神秘的な姿に目が離せなくなったが、意識がどんどんと遠くなってしまう。いつまでも見ていたいのに…。
「少年?お〜い。少年…?しょうがないわね…」
女はスマホを手に取るとどこかに電話をした。
「もしもし?突然で悪いんだけど、ちょっと遺体の処理を頼みたいんだけど」
どこかに連絡し終わると女は士郎をじっと見つめる。
「はぁ~、どうしようかしら?」
「うぁあああ!?はぁ、はぁ…生きてる?」
士郎は悲鳴をあげて目覚める。先ほどの出来事が悪夢に出てきて、恐怖で目覚めた。士郎は斬られた胴体を見て触ったりしたが、綺麗な状態だった。士郎は不思議な感覚に混乱していた。
「…アレは夢だったのか?」
「目覚めたかしら少年」
「えっ、あ、貴方は…」
目覚めた士郎を待っていたのは、自分を助けてくれた女の人だった。白衣の女の人だった。
「悪いけど、元気になったなら出て行ってくれないかしら?そこは患者のためのベットだから」
「えっ?あ、はい」
士郎は訳もわからず。とりあえず言われた通りにベットから立ち上がった。
「あ、あの俺さっきまで、その、さっきまで死んでませんでした?」
「さあ、どうだろ?私の当院の前で倒れてたから運んだだけよ。店の前で倒れてたら営業の邪魔だからね」
「えっ、そ、それはすみませんでした」
「わかったから、家に帰りな。出ないと警察に引き取ってもらうよ」
「わ、わかりましたから警察はやめてください」
そして、士郎は早々と個人院を追い出された。士郎は不思議に思い思い返す。あの時確かに斬られて真っ二つにされたはず。だけど胴体は綺麗に繋がってるし切られた後のようなものもなければ衣服も元通りの物だ。だとしたらアレはやっぱり夢だったのだろうか?でも、そしたら自分はなぜここで倒れていたんだと疑問に思う。色々と考えてもやっぱりわからないだけだ。とりあえず家に帰った士郎であったが、あまりにも遅い帰宅に両親に怒られた士郎であった。
その後はいつもと変わらない日常を送っていたが、一つだけ変わっ事がある。士郎はあの時の出来事を頭から離れなくなっていた。それはまるでトラウマのように聡明に覚えていた。忘れようとしても頭のどこかでアレは本当に夢だったのだろうかと考えてしまう。考えないようにすればするほど、逆に考えてしまう。沼のようになって、私生活で支障をきたすほどにだ。
「いたっ…!?」
「先輩大丈夫ですか!?」
部活の弓道をしてた時だった弓を引いた弦が顔面に当たった。特に唇に痛烈な衝撃が走り手で抑える。
「先輩大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫。ちょっと弦が当たっただけだ」
「見せてください」
そう言われて士郎はあまりにも心配する桜の圧に負けて見せてみるが、どうやら本当に大丈夫なようで怪我やアザなどはできていなかった。どうやら本当に大丈夫なようだ。
「どうやら本当に大丈夫なようですけど、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと考え事をしててな」
「もしかして姉さんのことですか?」
「あ、いや、それは違うんだけど…。悪いな。連れてくるって約束したのに」
「あ、いえいえ気にしないでください。私が余計なことを言ったばかりに。先輩にご迷惑をおかけしちゃって…」
「気にするなよ。詳しいことはわからないが、きっとお姉さんと仲直りできるはずだ。なんだって姉妹なんだから」
「はい。ありがとうございます」
桜と談笑した後に再び的を射ろうとやを持った時だった。ゆがけ。弓道をする時につける手袋みたいな物に血がついていたのだ。士郎はもう一度顔に触れるが血はついてなかった。そしたらこの血は何だと考える。部活前に装着した時にはついてなかった。もし可能性があるとしたら、弦が顔に当たっ時だ。でも今もこうして血もついてないし桜にも確認してもらった。そして、士郎はある考えをした。士郎はあの夢か現実かわからないが、確かに自分は殺された記憶がある。殺されて死んだと思ったら、普通に目覚めて傷跡は何もなかった。そして、士郎は確かめるために自分の指先を少し切る。そしてその傷口を見ると、目にわかるように塞がっていく。明らか的に人の自然治癒力を遥かに超えている。
「先輩?どうしかしました?」
「……いや、何でもない」
士郎は笑顔で応えた。
「……いつの日かの坊やじゃないか?何かよう?」
「やっぱり俺はここで死んで、貴女に助けられた」
「はぁ…。また変なこと言って、精神科の病院でも紹介しようか?それか警察に突き出されたくなかったら帰りなさい」
彼女は士郎の話に全く耳を傾けなかった。あくまでしらを切る彼女に痺れを切らした士郎は自分の手のひらを切って見せつけて来た。そして、その傷口はまたみるみるうちに塞がってしまった。
「ここで殺されたあの日からこんな調子だ。アンタも俺も確かにあの日剣で斬られたはずだ。なのに何にもなかったように傷跡すらなかった。今のように…」
「……」
「アンタが助けてくれたんじゃないか?」
「…はぁ〜。ついて来て」
そう言って彼女は自分の個人院に入って行った。士郎も恐る恐るも彼女の後について行った。そして、そんな彼女は医務室に士郎を招いてエナジードリンクでもてなした。
「…あの」
「ちゃんと焦らなくても説明するから。安心しなさい」
そ言われて士郎は黙って話を聞いた。女は一口でエナジードリンクを飲み終えると改めて口を開き説明した。
「まず貴方の身体に異変が起きたのは、確かに私のせいよ。私のせいで貴方が死にそうになってたから、傷を治療した」
「治療ってそんな簡単に言うけど、俺は胴体を真っ二つにされましたけど?」
「もちろん。医療科学じゃあ無理だから豊穣の加護の力を使ったのよ」
「豊穣の加護…。何ですかそれ?」
「とある異星人が授けたおせっかいな力よ」
「宇宙人ってことか?まさか本当にそんなSFな物があったのか、それじゃあ次にあの神父は何者だったんだ?それに何で敵対してるんだ?」
「アレは聖堂教会の戦闘要員で、教義に存在しない「異端」を力ずくで排除する連中よ」
「異端?」
「魔術師、吸血種、魔獣。彼らはそう言う奴らを排除するのが仕事で、まあ、もっとも魔術師達とは吸血鬼を狩るために協戦中らしいけど」
「ちょっと待ってくれ。それじゃあ狙われていたアンタは吸血鬼だって事か?」
「まぁ、似たような物ね。私たちは「摩怨の身」って言うのよ」
「摩怨の身?」