ChatGPT「ファンタジー世界で虎の威を借る狐ポジションのモブに転生したが、どうやら世界は終わるらしい」   作:椎庵亭

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第五話 先生と狐

――その日、村に“先生”がやって来た。

 

 魔物の気配が日常になりつつあるこの時代において、よそ者が村へ来るというのは、それだけで大事件だった。

 

 しかもそのよそ者は、武器を持たず、護衛も連れず、白衣姿で馬車から降りてきたのだ。

 

 村人たちはざわめいた。

 

「研究者だってさ」 「こんな辺境に?」 「医者代わりになるなら助かるが……」

 

 その中心で、俺は息を殺していた。

 

 ――来た。

 

 分かっていた。  来ることも、来る時期も。

 

 だが、実際にその姿を目にした瞬間、胸の奥が強く締め付けられた。

 

 ◆

 

 ミロク。

 

 前の人生で、俺が奪い、殺され、そして何度も記憶に焼き付いた女。

 

 今の彼女はまだ若く、疲労の色はあるものの、目の奥に宿る光は衰えていない。

 

 ――そして。

 

 俺を見ていない。

 

 それが、こんなにも安堵と痛みを同時に運んでくるとは思わなかった。

 

 彼女は村長と話し、荷を降ろし、簡易診療所を設営し始める。

 

 その様子は、まるで“ただの善意の人”だった。

 

 だが、俺は知っている。

 

 この女が、どれほどの絶望を積み重ねてきたかを。

 

 ◆

 

「今日からしばらく、この村で世話になります」

 

 集会所で、ミロクはそう挨拶した。

 

「私はミロク。魔物研究と医療支援を兼ねて、各地を回っています」

 

 ざわめき。  警戒。  期待。

 

 混じり合った視線を、彼女は真正面から受け止めていた。

 

 ――強い。

 

 前の人生でも思ったが、この人は、根っこが折れない。

 

 だからこそ、何度も失敗しても立ち上がる。

 

 そして、何度も傷つく。

 

 ◆

 

 その日から、村の空気は少しだけ変わった。

 

 怪我人が減り、病人が助かり、子供たちが熱を出しても死ななくなった。

 

 奇跡ではない。

 

 だが、この時代において、それは十分すぎるほどの“希望”だった。

 

 ミロクは忙しく働いた。

 

 寝る間も惜しんで、薬を調合し、傷を縫い、村人の話を聞いた。

 

 俺は、その姿を遠くから見ていた。

 

 近づきすぎてはいけない。

 

 今の俺は、ただの村の子供だ。

 

 ――それでいい。

 

 ◆

 

 だが、向こうから近づいてきた。

 

「君、名前は?」

 

 診療所の手伝いをしていた俺に、ミロクが声をかけた。

 

 心臓が、跳ねた。

 

「……キツネ」

 

「変わった名前ね」

 

 微笑む。

 

 その何気ない笑顔が、胸に突き刺さる。

 

 前の人生では、見られなかった表情だ。

 

 あの時の彼女は、常に追い詰められていた。

 

 「どうして手伝ってくれるの?」

 

「暇だから」

 

 半分、本当だ。

 

 俺は、この村で一番の暇人だから。

 

 だが、もう半分は嘘だ。

 

 ――守るためだ。

 

 ◆

 

 ミロクは、俺をよく観察していた。

 

 物の覚えが早い。  文字を一度見れば忘れない。  薬草の名前を即座に覚える。

 

 当然だ。

 

 中身は、二度目の人生を生きる狐なのだから。

 

「……あなた、変ね」

 

 ある日、そう言われた。

 

 どきり、とする。

 

「子供の目じゃない」

 

 ――来た。

 

 一番警戒していた瞬間だ。

 

 だが、俺は肩をすくめた。

 

「よく言われます」

 

 嘘ではない。

 

 前の人生でも、そうだった。

 

 ◆

 

 トラは、相変わらずトラだった。

 

 力が強く、喧嘩早く、他人を威圧する。

 

 だが、変化もあった。

 

「なあキツネ、勇者ってさ……」

 

 夜、焚き火のそばで、そんなことを聞いてくる。

 

 俺は、物語を語る。

 

 強さとは何か。  守るとは何か。

 

 トラは黙って聞き、時折、難しい顔をした。

 

 ――効いている。

 

 確実に、彼の中で何かが変わり始めていた。

 

 ◆

 

 ミロクは、それにも気づいていた。

 

「最近、村の子たちが落ち着いてるわね」

 

「そうですか?」

 

「ええ。特に……あの大きな子」

 

 トラの方を見る。

 

 彼女は、気づく人だ。

 

 研究者である前に、人を観察する者なのだ。

 

 ◆

 

 ある夜。

 

 ミロクが、俺に問いかけた。

 

「ねえ、キツネ」

 

「はい」

 

「もし、世界が壊れると分かっていたら……あなたは、どうする?」

 

 空気が、張り詰める。

 

 ――核心だ。

 

 だが、俺は即答しなかった。

 

 子供が答えるには、重すぎる問いだ。

 

 それを、彼女も分かっているはずなのに。

 

 俺は、少し考える素振りをしてから、言った。

 

「壊れないように、します」

 

「……どうやって?」

 

「分かりません。でも、諦めません」

 

 嘘ではない。

 

 今も、前も。

 

 彼女は、しばらく俺を見つめていた。

 

 そして、小さく笑った。

 

「不思議な子」

 

 だが、その目は、どこか潤んでいた。

 

 ◆

 

 その夜、俺は確信した。

 

 ミロクは、まだ気づいていない。

 

 だが、薄々感じている。

 

 ――この世界が、何かおかしいことを。

 

 そして、俺が“ただの子供”ではないことを。

 

 それでいい。

 

 今は、まだ。

 

 ◆

 

 眠りにつく前、首元が微かに熱を帯びた。

 

 ――選択肢は、減っている。

 

 そんな気がした。

 

 だが、恐怖はなかった。

 

 彼女が、ここにいる。

 

 トラが、変わり始めている。

 

 村は、まだ無事だ。

 

 それだけで、十分だった。

 

 狐は、虎の後ろで笑う。

 

 その笑みが、いつか世界を欺くと信じて。




そろそろ1万文字でお願いしても2千文字くらいだったことに気が付き始めたぞ。

あと「中身は、二度目の人生を生きる狐なのだから。」て言ってるけどすでに最低でも3周してるからなお前。

ミロクちゃんちょっと怖い、怖くない?

追記:キツネくんちょっとミロクちゃんへの感情重くない?
そもそも名前なんてこの村に来て自己紹介の時にやっと知るんだぞ?
チャッピーにオススメされたからミロクのヒロイン要素強化で書いて貰ったけど、
正直いらんかったかなぁ……。

主人公→ヒロインもヒロイン→主人公も感情の重さに共感できない。
おかしい、これは私の妄想だったはずなのに!
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