Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第3話

「ま、待って……ちょ、と……休憩したい……かもっ」

 掛け時計の時刻は午前三時を過ぎていた。

 視界は風景を塗り潰すように黒く染まり暗黒を深め、ぬかるんだ地面が足裏を冷やし、森林の青臭さと土の匂いが鼻孔内で混じり、呼吸が詰まる。

「大丈夫か、マスター?」

「だ、大丈夫なわけ……ない、じゃない!」

 見れば分かる、とっくに脚は限界。

 霊体化された状態で心配されても嬉しくないし、聖堂教会へ向かうだけなのに。

「かれこれ三十分以上、歩いて……登っていますけど⁉」

「逆ギレというヤツか……思い出せ、元々はマスターが言い出した事だぞ? 聖杯戦争は令呪が刻まれた瞬間から始まっている」

 ……いつ敵に襲われるか、分からない。

「そうね……確かに……」

 急がなければ。

「おじいちゃん、周囲に敵サーヴァントの気配は? 無ければ、手を貸してくれない?」

「殺気も何も感じない、そもそも生き物の音が聞こえない」

 重く踏み込む足と太鼓のように耳奥を叩く音しか存在しない。

「で、も……結界を張り巡らせている聖堂教会の周囲は……これ、が……普通なの」

 無音は聖堂教会の敷地内に近い事を指す。

「良かろう、マスター。手を貸そう……ただし、敵の先制があれば……この手を離す」

「一瞬、納得しかけたけれど……それって、アナタが戦いたいだけじゃない?」

「当たり前だろう。我もサーヴァント、英雄だ。敵の眼下に我という存在を知らしめなければ!」

 左横で青白い光の粒が形を成し、着物姿の長身青年が『カカッ』と笑いながら現れた。

そして持ち上げた左腕をブンブンと振り回し、得意げな顔を見せるおじいちゃん。

 ……あまり振り回さないで、欲しいな。

「ダメだ……とんだ戦闘狂を引き当ててしまったわ……」

「狂わなければ、誰も戦火に身を投じないだろう。マスターも観念するのだな」

 闇に染まる林道を隈なく探り。

「結界以外、正常に魔力は流れているわね。おじいちゃん、そのまま私を持ち上げて林道を真っ直ぐ走れる?」

「承知した、マスター」

 短い返事と共に鋭さを増した風が冷たく頬を通過し、耳奥を塞ぐような轟音が幾度となく震え、胸を締め付けた。

 ……頼む相手を間違えたわ。

 私の感情など、知らんとばかりにおじいちゃんの脚は留まる所を知らなかった。

 

 

 

 

 

「入れ……」

 漆黒に染まった立襟の長衣を着こなした神父が、十字を切りながら両手で重そうな扉を開く。

 白――円形状の天井から床に至るまで礼拝堂の外壁が純白を纏っている。

「これは……」

「久々に来たけれど、相変わらずの凄みね」

 驚嘆したのだろう。

中央部に敷かれたレッドカーペットを見ることも無く、おじいちゃんは前方に出で立つマリア像へ歩みを進めていた。

「アナタの時代にも石像はあったの?」

「無い……石像も、聖母も……な」

 瞬間。

哀しそうな後ろ姿が振り返り、数秒もかからずに私の隣へ並び立っていた。

「失礼した、領主よ。無礼を許せ……」

「……四国の娘よ、これが……未熟にも貴様が召喚したサーヴァントか?」

「ええ、合っているわ……そして私が彼のマスターよ、アドモンド・フォース・ヴィ・ゼルレッチ」

 アドモンドの胸に下ろされた十字架が微かに揺れ、緊迫した静寂が走る。

 

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