Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第31話

「そうデースか! 私も、杏サーンに負けないように、頑張りマースヨ!」

目指すべき指標が跳ねるような声で耳元を叩く。

「はい……それと……」

 短く言葉を返しながら窓ガラスを触り、外側の話題に切り替える。

「エマさんが知り得るアサシンの情報と他サーヴァントの情報が欲しいです」

「ホウホウ」

「もちろん、私も情報を提示します。開示が終わり次第、作戦と決行日を立てましょう」

 差し込んだオレンジが闇に溶ける暗殺者を照らしているようで――

「いいデースよ? アイボウも、同意デースか?」

「ふん、実に! 燃える展開じゃないか! 死闘を繰り返していた敵同士が和解し、認め合い巨悪に立ち向かう……最高だ!」

「すばらしいデース! さすが、サイコーの相棒デース!」

 ――私もテンションが上がっていた。

 絵本の赤白囚人服を探せ、みたいな雰囲気が速くなる心臓の鼓動を宥め、鼻先を掠めたコーヒーの香ばしさが、朝の和やかさを思い出させる。

 ……暫くは一人で聖杯戦争を、殺し合いを抱え込まなくてもいいのか。

 誰かと会話をしながら過ごす朝は久しぶりだ、死がチラつく期間を長く笑いながら過ごせた事は無かった。

 ふと。窓越しに映ったおじいちゃんの緩んだ表情が、私の心臓に刺さる。

 ……親戚だからこそ、見せたくない弱さがあったのかもしれないわ。

 結局、大切な人を傷つけてしまうのなら秘匿性を優先する――私との関係性を開示しない理由が正しくソレだった。

 ほのかに広がる苦味が舌先を締め付け、沈黙が冷たく首筋に絡みつく。

「モシモーシ? デンパ、悪いデースか?」

「あ、ああ……な、何ですか?」

 甲高い現実が思考を戻し、自然と聞き返した。

「もう一度、話した方がいいデースか?」

「お願いします……すみません」

「気にしてないデース。私がアサシンを見た事は残念ながら。デスガ、他のサーヴァントは見ましたデース。金髪のオトコノコと戦っていたオンナのヒト……そして……そして」

 珍しく口籠るエマの声質は、ハッキリせず、迷っているように聞こえた。

 ……どうしたのだろう、口に出せないとサーヴァントとか?

 一通り渋った声色がリビングへ響き渡り、静寂が反響する。

「異様にクライ女性? デシタネ……遠目なので、ワカリマセンが……多分、デスネ」

 咀嚼して確かめるような言葉が吐き出されていた。

「そ、そう……私は見た事が無いわね……え……」

 フックのような引っ掛かりが舌先をキュッと引き締め、トーストのざらつきが停滞していた思考を捲らせる。

「女?」

「はい、そうデース」

 指で追った文字が想像を否定し、歪みが鼻先を冷たく駆け抜ければ、視界が止まる。

「見間違えたとかじゃなくて、本当にアサシンとは別物ですか? エマさんは、ソレは女性だと言っていましたが予想に至った要素は、どこですか?」

 アサシンと対峙した際、私に向かって放った一言が変態男そのものであったように。

……確信的なモノが有れば、証明できるのだけど。

 飲み込んだ緊張が耳奥を埋め――

「ハイ、ソーデスネ……ピンクのハートの首飾りが見えてイマシタ! そして、何よりも女のカンというヤツが働いた感じデース!」

「ああ……わ、かりました」

 ――空返事をするしか無かった。

 また面倒な敵が増えたと思えば、吐いた息が視界を半透明に染めていく。

 ……同盟関係成立後に、アサシンのような会話不可能な敵が現れるのね。

 少し前後しただけで、現状は変わっていないような気もする訳で。

「ちなみに、ソレと遭遇した場所って覚えていますか?」

「確か……隣町のカンラクガイ……だったと思いマースヨ? 相棒!」

 一瞬、賑やかな声音が離れ。

「それは土佐市で見たな! ふん。そう言えば、俺の美しく派手な一刀と伊達男な一面に、奴は尻尾を巻いて逃げて行ったな!」

 豪快な笑いが場を盛り上げた。

 

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