Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第33話

「ハアハア……」

 息を切らしながら教室のドアを開ける。

 時間にして、八時五十分――大幅な遅刻のはずだった。

「なあー、最近さ、ココの治安やばくねーか?」

「マジそれ。てか、今日の神吉市の事件って、規模的にテロじゃねぇーの?」

 歩くたび耳元のざわつきが舌先を乾かし、視界が曇っていく。

「あーそれな。百人だって? ネットじゃあさぁ、集団自殺って書いてあるけれど、国家レベルの人体実験かもしれないってさー」

「それって陰謀論だろ? ナイナイ。信じる奴って基本的にバカだけだぜ。信用ならないって」

 胸騒ぎが心臓を叩き、緊張が背中を冷たく伝う。

 ……また事件、なの?

 スマホを走らせ、SNSを物色し、発見する。

「高知県神吉市……百名越え大規模自殺……って……隣町じゃない」

 呼吸が止まりかける。

血の匂いが鼻孔内に充満し、錆び鉄の味が賑やかな空気を殺伐としたモノに変えた。

 ……また、サーヴァントなの?

 黒々とした予測が這いまわり、光が狭まる。

「午前四時半頃……騒音で起こされた住人の通報で事件が明らかになった、話によれば……現場では、叫び声や絶叫が数時間に渡り起こっていた、と……」

 舌先に残った紅茶の渋みが忘れかけていた死を連想させ、心臓の唸りが耳奥に纏わり付く。

 ……自殺を指揮した犯人は、腰まである長髪黒に中肉中背の女性。

 鳥肌が指先まで伝う、上手くスクロールできない。

 エマさんが遭遇した謎サーヴァントの見た目と一致している部分――

「未だに逃亡を続けている。情報をお持ちの方は高地警察署まで連絡を……」

 写真は無いようだけど、被害に遭った住人の証言や恐怖で潰れそうな女性の顔が、唇を噛み締めさせ、コーヒーの香ばしさが鼻先を柔らかく通った。

 ……同じ女として見過ごせないし、正義の味方になれるように努力するって。

 今さっき決意した訳だし。

 ――起こった時間帯と大規模被害から、サーヴァントの仕業だと頷けてしまう。

時計の秒針が胸をざわつかせる。

「どうして……立て続けに……」

 机に突っ伏して見えた闇が唇を震わせ、安易な予測に赤信号を提示した。

 ……いや、変態サーヴァントが犯人だって可能性もあるわ。

 神父と手を組んで、私達に嫌がらせ――

 鼻孔を滑らかに抜ける果実の匂いが喉元を熱くさせ、黒い体躯が顔を出す。

 十字架が揺れる金属音と冷静沈着な声音が耳奥を叩く。

 ……クソ神父じゃないかも、しれない。

 ――散らばった思考を止める。

 握った右手が形を確かに伝え、飛び起きる。

「そもそも、被害の規模で言えば、対峙した変態サーヴァントの言動には無理があるかもしれないわ」

 スクロールする指が上下していく。

 ……エマさんが出会った例のサーヴァント、ソイツが掛けていたピンクハートのネックレスの証言があれば、ビンゴよ。

 

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