液晶画面を舐め回すように肉眼が動いていく。
時々目に留まる無差別という単語が心臓の唸りを強め、自然と頷いてしまう。
……精神的干渉を得意とするクラスはキャスターと訊いているし、有り得なくはないわ。
人間を殺す事で得られる微細な魔力が、魔術を十八番とするキャスタークラスでは大量に必要となっていく。
コメント欄でも『洗脳や陰謀論』等の精神的原因を挙げる声が多い。
……マスター一人では魔力を賄いきれない可能性も大いにある訳だし。
指先が重くなり――
冷たい風が足先を抜け、全身が震えた。
「あった……証言が、あったわ……」
飲み込んだ唾が緊張を呼び起こし、心臓の高鳴りが耳奥を塞ぎ、掌が湿っていく。
巡った血液が純白の理想を錆びさせ、サーヴァントという現実が舌先をざらつかせた。
――視界が広がる。
暗がりの中で撮影されたピンクは、荒い画質を確かな恐怖に変えていた。
……ピンクハートのネックレスを付けた何かが、集団を扇動し、静かに蠢いていたと。
「その後、例の発狂が数時間にわたり響いていた……か……」
掌に通う熱量が口元を乾かす。
……サーヴァントが原因って事には、間違いが無さそうだわ。
しかも、今回はエマさんが一度対峙した敵。
「どうしたものか……」
おじいちゃん不在の今、私に大事件を起こしたサーヴァントを相手に、どれだけ持つだろうか。
……まあ、無理でしょうね。
奇襲された場合は対峙する他ないが、基本的にはアサシンの討伐が最優先事項だ。
……権限は、伊達政宗を擁するエマさんが持っている訳だし。
静かに重ねた左甲の温もりが硬直した全身を弛緩させる。
おじいちゃんなら、この現状を――
生温い風が右頬を流れ、ドアのスライド音が耳奥を掠めた。
「お前ら―遅くなって申し訳ねぇーなー。だるい案件だが、転校生……連れて来たぞー」
一気に静まり返った教室中に靴音がコンコンと響き、右端に金髪が揺らめく。
「座れよーお前らの為に、時間を割くなんて嫌だからなー」
心電図のように上下する空気の中、その顔は深々と、お辞儀していた。
「よろしくお願いシマース。名前は桐枝エマ……日本とイギリスのハーフで、昨年までイギリスにいましたデース!」
聞き慣れた片言が心臓を掴み、電気が走ったように舌先が震え、甘い薔薇の香りが鼻孔内を幾度も刺してくる。
周囲から歓声と拍手が上がり、転校生の凛々しい顔が姿を見せた。
「えー。桐枝……そうだな、まあ……好きな席に椅子を持ってテキトーに座っておけ……」
思考が固まる中、少女――協力者が近づいてくる。
「今日はココでいいデースよ? せんせー」
指で示された席、隣に見知った顔が椅子をくっ付けてきた。