Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第36話

「ところで、杏サーン!」

「え、な、何ですか?」

 右肩に柔らかな感触と薔薇の香りが鼻孔を甘く抜け、緊張が駆け巡る。

「もしかして……キンチョウしてマースカ? もしかして、ソレはメールの内容に関係してマースカ?」

「ち、違う!」

 左肩を掴まれ、逃げ場が無くなる。

「嘘デースよ? 顔、赤くなってイマス!」

 メール画面が視界を赤く染め、熱が喉元を燃やしていく。

「最悪だわ……もう、言えばいいのでしょう?」

 途端に妖艶さが消え、満面の笑みで頷くエマ。

 人通りが多くお昼過ぎというのもあって、四方八方に注がれる視線が通るたびに心拍数を上げ、恥ずかしさが全身に熱を通わせる。

「そ、その……なんて言うか、百名規模の自殺って人間一人で管理するモノじゃないし。ピンクハートのネックレスを着用したサーヴァント見たって情報も上がっている訳で……」

 詰まりかけた言葉を呑み込み、熱を吐き出す。

「なので、三桁規模の人災を引き起こすサーヴァントは危険だと判断し、エマさんと調査協力をできないかと思いまして……連絡しました」

「つまりは……私と一緒にセイギノミカタをやりたいと!」

 俯いた視界の暗さが恥ずかしい感情を薄めていく。

「そ、そうなりますね……」

「いいデースよ、モチロン! その代わり……」

 沈黙が耳奥を冷たく満たし、舌先が乾く。

「ワタシを呼ぶときの名前の最後……エマさんのサーンをヤメテくれればいいデースよ?」

「つ、つまりはさんづけをやめれば良いって事ですか?」

「ハイ! その通りデース!」

 恐る恐る上げた視線がエマさんで満たされる。

……それも屈託のない笑みで。

「わ、分かりましたよ。エマ……」

 視線を左に外し、震えながら単語を絞る。

 どうせ言わされるなら予め腹を括るしかないと思う、恥ずかしいけれど。

「ふーん、杏サーン。セイチョーしましたネー」

 ニヤリと上がった唇と足元に染み付くタイルのざらつきが、眉根を歪ませた。

「私だって人間なのよ? この面倒臭いエマの扱いも分かってきたし!」

 前方へ軽く飛び――

「そっちこそ。片言の敬語、いつになったら終わるのかしら?」

 振り返りながら微笑んでみた。

 甘酸っぱい花々の香りが鼻孔を掠め、高揚感が喉元を熱く満たしていく。

「オー! イッポン取られてしまいマシタネー」

「言い出しっぺとして、先行させてもらうわね」

 ――事件現場に早足で向かう。

 首筋に張り付く冷たい風が鳥肌を立たせ、心臓を軽く撫でた。

「それにしても暑くなったわね……本当に四月?」

「今日の最高気温は二十度デース。サマーバケーションですー」

 後ろで聞こえた声色の弱さが、この気温の異常さを伝えている。

 見上げた視界が赤く染まり、頬に滲んだ汗の流れが不快感を増幅させた。

 

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