「あ、そうだわ……すっかり忘れていた!」
全身の熱は沸騰し、肩に力が入る。
「杏サーン、どうしましたか?」
「あれるぎぃか? あの面倒な!」
鼓膜を揺るがす心配と警戒の渦巻きが混沌を呼び――
「先程の事件現場で呟いていたセイバーの『毒』発言を思い出したからよ」
「アレか……そう言えば、話していなかったな! すっかり忘れていたぞ!」
「そうデースね! 私も気になりマシタ、ビリビリとしたカンカクが」
――疑問が余念を吸い込んでいく。
広がり始めた沈黙が全身に鳥肌を立たせていく。
「ランサーのマスターさんよぉ……知ったら後悔するが、それでもいいか?」
独眼竜の冷酷な口調が、浅い呼吸を更に潰した。
足元を抜けた冷風が緊張を呼び込み、独眼竜の影が視界を薄暗く染め、握った拳の湿り気が決断を揺るがしていく。
「私は……」
引っ掛かった緊張が胸を軋ませ、乾いた喉元が低く唸る。
「後悔する事になっても……知りたいわ、真実を」
「いい眼だ。伊達男である、俺には及ばない派手さだが、な!」
陰った静寂が縮み、叩かれた机が胸にこびり付いた恐怖を跳ねのけ――
「教えよう。あの場所で、何があったか!」
「ワタシも知りたいデースよ! 興味がありマースヨ!」
――反射した太陽の光が素肌を温めていく。
「まず前提として、だが……相棒達は、事件現場に向かって歩いていた」
確かめるように独眼竜の隻眼が私を捉える。
「合ってイマスよ!」
「いい返事だ、さすがは我がベストパートナーだ……そして途中、我がいない事に気が付いた相棒は、我と連絡を取り……」
詰まった言葉が、ゆっくりと吐き出される。
「……応答がなく、体調面で明らかな不調が目立った」
気体状の違和感が、凄い速さで脳内を回っていく。
……サーヴァントに気が付かない事も、体調不良が急に現れる事も。
「セイバー、それって……前触れもなく起きるには、予兆がなきゃ成立しないわよね?」
原因があって結果がある――その中間には過程がある筈だ。
「派手に鋭いな、ランサーのマスター。俺も後から勘付いた事だが」
独眼竜の口元が、確信めいたように開く。
「極端に予兆が無かった事から、この毒は一種の因果を歪める性質を持つと言えるな」
「セイバー、アナタの言う毒の詳細は?」
腹部を触るが、吐血や痛みも起こらない。
「外傷を与える一般的な派手毒じゃないな! 言えるとしたら魔力の出力不足、伝達障害に……発狂だな」
息が吸えない、心臓の震えが止まらない。
「魔力をエンジンとする俺にとって、この類は苦戦させられる……許せ、相棒達よ」
「ジンジンしたウデの理由はワカリマシター。デモ、発狂していません」
繋がり始める真実が、頭を叩いていく。
「魔力量が一定以上あれば、発狂は免れるな!」
鼻腔内に残った線香の匂いが、今朝の事件を想起させ、喉元が熱くせり上る。
「せ、セイバー。実行者……は?」