「順当に考えれば……百名規模の犠牲者を出した犯人……俺と同じ立場の」
……サーヴァントしか有り得ない。
「ああ、更に頭が痛くなって来るわ」
テーブルに肘を付き、髪を乱雑に乱す。
……この頃、問題ばかりが更新されていくせいで、気が休まらないわ。
「ダイジョブデースよ! 力を合わせれば、タオセマース!」
「そうは言っても、肝心な姿とクラスが分からないと……対策のしようが無いわよ」
勢いで物事を進めるエマを制止させ、独眼竜に視線を向ける。
「……それに。セイバーの真名とクラスは特定されている、というか自らバラした訳だし……」
「ふん! その方が伊達男である俺を相手にする英霊達に……失礼だと思って、な!」
むしろ、鼻で笑って現状の不利に対していた。
「そうデース! 私もサーヴァントになったら、同じ事をシマース!」
「そうか! 流石は、我が見込んだ相棒!」
覆っていた不安が太陽の光で焦げ付く。
……日陰で休み続けるのも身体が冷えるだけだし、ね。
深く吐いた息が心臓の震えを少しだけ和らげてくれた。
「ええ、私が間違っていたかもね。エマやセイバーが居るのだから、出来ない事は無いわね……取り敢えず、今は」
紅茶の渋みをアップルパイの糖分で流し、やるべき内容を整える。
「荷物を家から取りに行きたいわ。当分、お世話になるのだから……足手纏いにはなりたくないの」
肩に差し込む夕立が、ぬるま湯に浸かった世界を沸騰させていく。
「だったら、アイボウが送り……」
「それは遠慮しておきます! 今から外へ出て行けば、ちょうど夜には帰って来られると思っています」
「デスガ……」
俯く小さな身体が目の前で揺れ動く。
「行きも帰りもタクシーを使うから。丸腰で出入りするなんて、私でもやらないわよ」
「わかりました……しょうがないデース」
ため息が背後から聞こえ、扉に手を掛ける。
「セイバー」
「なんだ、ランサーのマスター」
「この辺り一帯で、いちばん高い建物を探して欲しいのだけど、頼める?」
着物の擦れと甲高い声が耳元を鳴らし、握ったドアノブの冷たさが意識を引き締めた。
「凄いデース。高いデースよ。アイボウ!」
「ああ! 現状、ココが一番、俺的には派手な場所だな!」
吹き付ける風が素肌を鋭く削る。
「そうね、確かに……見晴らしは流石ね」
一瞥した視界がネオンで満たされ、遠くで聳え立つ山々の全体像が伺える。
足元に広がるコンクリートの硬さが思考を留め――
「それで。何か伊達な作戦でも思い付いたか! ランサーのマスターよ!」
「ええ」
微かに聞こえる車の流れが、顎に宛がった指を手放していく。
――空中で散布する闇が、右隣の金髪を揺らめかせた。
「コレは一か八かだけど、私を囮に百名規模の人災を起こしたサーヴァントを倒すのは?」
「どうしてデースか? 杏サーンが望むコトデスカ? なら、アサシンを倒してから作戦を決めた方が良いデースよ!」
ほのかに鼻孔内を満たす薔薇が視界をグラつかせる。
「い、いや……しゃ、喋り……にく、い……って」
振動が首筋を覆う。