……凄い自信だわ。
「ねぇ、セイバッ……えっ?」
「早速だが。派手に調査開始だ! 相棒達は、安全地帯で周囲の状況に伊達女らしく、派手に観察しておくといい!」
飛び立つ後ろ姿が闇下に消え、金属の匂いが鼻孔を掠めた。
「いや、ちょっと……まだ話し合いは終わっていない訳だし……」
取り残された静寂が唇を冷やしていく。
……気まずい、それ以前に。
「本当に任せても良いのかしら? 勢いだけ、なんてやめてもらいたいけれど」
「いつものことデースよ。ソレよりも、アイボウが言っていた事をやりマショウ?」
エマの後ろ髪が揺れ、コンクリートのざらつきが踏み出した足元を刺激する。
「そうね」
高層ビルより一軒家が立ち並ぶせいか、肉眼で捉えるには薄暗さが目立つ。
「ココは杏サーンが住んでいた場所よりも自然が多いデースね……空気が汚いデースケド」
咳払いが聞こえ、エマの表情が曇る。
「まあ、上は高速道路が走っているし。良くも悪くも共存しようと頑張っている訳だから……ね?」
「そうデースね。星はキレイなのが救いデースが!」
「住宅街にしては、珍しいかも……本当に美しいわね」
黒のベールに貼り付けられた星々の輝きが、心臓の鳴りを鎮めてくれる。
……落ち着く時間も無かったから、本当に助かったわ。
「杏サーン、ワタシ……この景色を守りたいデース。いま、カクシンしました!」
「なら……」
肩の力が抜け、ほころんだ視界が高層ビルへ向く。
「……後世に、この景色を残してあげたいのなら、エマがやるべき事は一つね」
吸い込まれそうな瞳が、熱した喉元をせり上げ――
「一緒に……まもっ……」
破裂音が鼓膜を叩き、風圧が素肌を掠めた。
――舌先が錆びた鉄で満たされていく。
「サーヴァントデース! アイボウ、サーヴァントの攻撃デース!」
縮こまった視界が、ひしゃげた右のビルを捉える。
「杏サーン、大丈夫デースか? 立てますか?」
「え……ええ!」
差し出された手が混乱した現状を整理していく。
……奇襲、では無さそう。
焦げ臭さが頭痛を誘発させ、微かに聞こえる楽器の音色が胸をざわつかせた。
「エマ。セイバーが来たら、一旦……避難しましょう」
「ハイ……また、矢が降ってキマス!」
刹那。
ビルが音を立てながら再度爆発し、ガラス片が飛び散る。
「くっ……このままじゃ」
正面の月明りを、黒い何かが左へ通り抜けた。
「さっきの黒いサーヴァントを狙ってイマス……矢を……」
鋭い爆発音が会話を呑み込んでいく。
「そろそろ……笑えない状況かも、ね」
視界を覆った火の粉が風圧に押し出され――
「そうですか……マスター、それも両方とも女性だとは。黒い影を追っていたはずが……思わぬ成果にありつけたようで……ありがたい」
――腰を折った赤髪が月夜に浮かぶ。