鳥肌が立ち――
「アイボウ! ワタシを連れて行ってクダサーイ!」
「オンナ、ニガサナイ、ニガサナイ……オカス!」
――火花の焦げ臭さが鼻孔を掠めた。
「アサシンだな……悪いが、派手じゃない奴は討伐対象だ!」
「ソウカ、ソウカ。キサマ、ラが……例の、シンプを邪魔するヤツ……」
振るわれた刃へ飛び、セイバーの蹴りを躱す。
「コロス! コロスコロスコロスコロス」
フェンス上に片足を置きながらケタケタと嗤うアサシン。
「同じことを何回もペラペラと……全くもって、伊達男じゃねぇーな、あんた」
刀を空振りし、セイバーは構える。
……私がやるべきことは、きっと。
ポケットの中へ手を忍ばせ、魔力を流す。
「どちらも美学を感じませんね……」
ポリ袋の擦れ音が静寂を破き、心臓が引き締めた。
「死ぬ時くらいは、仲良く生を終えて下さい」
前から吹き付ける風が喉元を乾かしていく。
「ギャクサツ!」
「ストーンブレイク!」
爆発音が耳奥を裂き、砂煙が舞う。
「ナイスタイミングだ、ランサーのマスターよ! 相棒の代わりに礼を言う!」
「ケホッケホッ。前が見えないデース……」
しゃがみ込むエマの肩を掴み、後ろへ走りを加速させる。
「アーチャーの次の攻撃が来る前に、エマを相棒の元へ届けるわ!」
「杏サーン……やっぱり」
美しい旋律と金切り声が足元の筋肉を強張らせていく。
……全敵のヘイトが私達に向かっている状態で、固まるのは逆効果。
脚を止め、少量の砂を握る――
「私はいいから、相棒の元へ行きなさい!」
「デスガ……」
月光が雲に隠れ、薄暗い視界に赤が揺らめいた。
「ギャクサツ……スル」
「ストーンブレイク!」
――一直線に引かれた死線へ砂柱を合わせ、飛ばす。
「オマエカラ……コロス」
砂塵から現れた赤が爪を立てている。
「エマ! もたつく暇があったら、この土地に居る人々を救いなさい。私には縁が無いけれど、アナタにはあるでしょう?」
「そう……デスネ。杏サーン、ワタシ……」
鉄臭い血の匂いが鼻孔に貼り付く。
「ホウグ――クリム・サン・トラス」
目の前からアサシンが消えた。
「行くぞ、相棒よ! この雷鳴と共に、派手になぁ!」
轟いた雷が耳奥を甲高く鳴らし、後ろ髪が逆立つ。
……私、生きている?
点滅した視界が徐々にぼやけ、心臓を不安定に叩く。
「ギャァァァァ! イタイイタイイタイイタイ……ナニガ、オキタ」
転げ回るアサシンから湯気が立ち込め――
「セイバーの置きミヤゲデース! 杏サーン、なるべく早くタオシマース!」
頭上を通り過ぎた青龍は、うねりながらアーチャーの元へ向かっている。
「ランサーのマスターよ、コレで先払いは済んだはずだ。勇ましく、そして派手に耐えておけ!」
鼻孔を抜けた死臭が眉根を歪ませ、握った砂袋が震えた。
――雨音が絶叫を掻き消していく。