Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第46話

「アンタ、これでも英雄の端くれ? 人間に本気を出して恥ずかしくないのかしら?」

 赤い外套がフラフラと立ち上る。

「コロス……モットコロス……ニカイメ」

 片腕を庇いながら、ジリリと後方へ距離を取り始めた。

 ……一対一の状況で何をしてくる?

 砂のざらつきを感じながら、再び魔力を流し込んでいく。

「二度目の正直にならない事を祈るばかりだわ」

 薄暗い雰囲気が頬を冷たく掠める。

「ニガサナイ」

 湿ったコンクリートを踏み抜いたアサシンの足元が軋む。

「キャッ⁉」

 強い衝撃が腹部を襲い、砂粒が飛び散る。

「カンショク……」

「で、しょ……う、ね……」

見下げた赤い瞳が瞬き、擦りむいた右頬の痛みが疼く。

 ……アサシンとは思えないパワーだわ、油断していたら気絶していたかも。

 轟く稲妻がアサシンの全容を浮かび上がらせる。

「誰よ……アンタ……」

 言葉が震える。

 まるで深海に飛び込んだように呼吸が陰り、光が消えていく。

「ミ、タナ」

 歩くたびに爛れた顔が水溜りへ滴り落ち、蒸気が視界を半透明に染める。

 ……ちょいと、マズいかもね。

 懐にしまった砂も一握り程度――防ぐか攻撃するか。

「コノ……オレヲ!」

 選んでいる余裕なんて。

「こ、の……」

「コロス」

 砂盾で攻撃を防ぎ、左方向へ吹っ飛ぶ。

「……さすが、英霊って。感じ……」

 右腕を回しながら近づいて来る英霊。

 ……陰で暗躍するってより、脳筋って感じだわ。

「コンドコソ」

「アサシンにしては、力が強いわね。もしかして、コレがアンタのセカンドクラス?」

 立ち止まるアサシン。

「どうしたの? まさか当たっていた……感じとか?」

 焦げ臭さが鼻孔を劈き、雷鳴と音色が耳奥で重なる。

「ボクサツスル」

 吹き付ける冷風が手元に広がる泥を振動させた。

 ……一か八か、成功例は指を折れるくらいだけど、やるわよ。

「杏!」

 染みた泥水が手の可動域を狭めていく、感覚が鈍る。

「シネ」

 ブレ始めた視界が赤く染まり――

 腕に巡った熱量が口内を血液で満たす。

「ストーン・プラント!」

 振るわれた衝撃がアサシンを叩く。

「ギィィィィ!」

 ――後退した影が、その場で甲高く呻き声を上げた。

 滲んだ額の汗が頬骨を伝い、手が震える。

「ナニヲ……シ、タ?」

「ふ、ん」

 圧迫する心臓の鳴りが代償を吐き出させる。

「ソウカ」

 雨の降りが強まっていく。

 ……魔法陣なしで魔術を打てた、でも。

 流れた錆び鉄の香りが鼻孔内を濡らしていく。

「ゲンカイ。ダナ」

 置かれた一拍が歪曲し、両腕の軋みが敗北を連想させる。

 ……もう、ダメかもしれない。

 

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