Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

47 / 54
第47話

 頭上の瞬きが思考に落下する。

「諦めてたまるか! エマ達が戦っている……簡単に捨てられない!」

 握り締めた泥が指先をざらつかせる。

焼き付く喉元の熱が固まりかけた決断を溶かした。

「イキノネヲ、トメル」

 溶けだした異物が空を切る――右へ駆けだした足元が滑る。

「……ハシッテモ」

「ストーン……」

 コンクリートを貫通しつつ八方を囲む砂鞭。

「プラント!」

「ムダダ!」

 爆発と共に冷風が首筋を鋭く削った。

「くっ!」

 噛み締めた唇の圧迫感が悪寒を消し去っていく。

 ……寒さに負けるには、早いわよ、私。

「コンドコソ。オワリダ」

 右から左へ瞬間移動のように、幾度も降り立つ炎。

 ……月が後ろにあるから、余計に見えにくい。

「コロス……」

「消えた⁉」

 屈んだ視線からソレは消える。

「カクジツニ!」

 空気の震えが沈黙を引き裂き、体内の熱さが素肌に触れる。

 瞬間。

「ギャァァァァ!」

 痛みと熱さが強引に引き抜かれ、全身が震え上がった。

 ……肩が、重い。

 流れ出た液体が足下へ落ち、雫が泥水を濁らせる。

「アァァァァ! クソっ……」

 下がった右肩に力が入らない、砂が掴めない。

「ヒヒヒヒ……アハハハハ」

 悪夢が闇夜の中でひしめき、焦げ臭さが鼻孔内を満たしていく。

「わたし、は……」

「シネ……コンドコソ……タノシイ、タノシイ!」

 心臓の唸りがアサシンの言葉を震わせ、呼吸が遠くなる。

 振り下ろされた指先が、睨んだ瞳に入る――

「我が全て……産み落とそう……この輪廻をもって、世の全て……解き放とう」

 曇った視界が白渦を巻いて歪み、全身が中央へ引き寄せられる。

「ナニガ……クソガァァァァ! ジャマガ、ハイッタ!」

 ――片腕が白渦の中へ引っ張られていく。

「お、落ち。落ちる!」

 脚で踏ん張ろうと力を入れるが、湿ったコンクリートが一人勝ちを許してくれない。

 ……何が、前で起こっているの?

 窓ガラスが割れる音とコンクリートの歪みが視界を落としていく。

 ……建物自体が傾き始めている?

 額に触れた冷たい風と背中に当たる振動が身体の自由を奪う。

「クソガ。ヤラレタ……ニゲ、グァァァァ!」

 半透明になったアサシンの身体が渦中へ引き寄せられ、見えなくなる。

「どういう……キャッ!」

 ズルズルと滑り込んだ全身が柵に激突――足場と化した柵が不安定に上下していく。

「コレって……」

 差し込む光景が痛みを忘れさせる。

「この場に集いし魂達よ……」

 澄み渡った声の主が上空を制し、一面を埋めていた星空が青空に変わっていた。

「エマ!」

 咄嗟に出た言葉が舌先を乾かす。

 主を失った犬のように選択肢がグルグルと円を描き、道が無くなっていく。

 ……音色も聞こえないし。

 後悔が渦を巻き、ゆっくりと背中を伝う雨粒が右拳を握らせた。

「ワタシが、もっと早く異変に気付いて……おじいちゃんを呼べていたなら」

 微かに左甲がざわつく。

「杏サーン、大変デース!」

「派手に攻撃されている、この場から早く離れるぞ!」

 渦巻いた視界に見知った蒼さが空気を切り裂いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。