「うそ、生きて……」
「ワタシとアイボウは無敵デース! さあ、乗ってクダサーイ」
目元に溜まる熱さを引っ込めながら、差し出された手を受け取る。
「ありがとう。エマ」
風に巻かれる金髪と薔薇の香りが、弱った心に花を咲かせた。
跨った青龍の跳ねが心臓を叩き、疑問と不安が口を滑らせる。
「セイバー、コレはどういう状況なの? この事象はサーヴァントが引き起こしたのよね?」
「そうだな! 初日に相まみえた例の女が仕掛けてきたようだな!」
渦上には長髪の女が杖を構えている。
「確かに、そうかもね……どうりで魔力がバカみたいに集まっていたわけね」
引き寄せられたアサシンと、生死不明のアーチャーが居るならば。
「考えてみたけれど、私もセイバーの意見に賛成する。逃げた方が良いわ」
敵同士の潰し合いも理由だが、一番は見下す女の実力が未知数なところだ。
後ろ髪が引っ張られ、徐々に青龍の進みが遅くなる。
「やはり……オンナサーヴァント、強いデースね」
「それだけじゃない、あの英霊……なぜ、攻撃を加えようとしないのかしら?」
「確かに……派手な割には、伊達じゃねぇーな!」
砕かれ飲み込まれていく周囲の建物が、舌先に残った錆び鉄の味を思い出せる。
「そもそもの目的が、殲滅以外だとすれば?」
確信はない――だけど膨大な魔力を振るう彼女なら、この場に居る全員を瞬殺できると思う。
「なら……どうシマース?」
振り向くエマの顔が決断を待っている。
「私は」
重苦しい沈黙を呑み込み。
「あのサーヴァントの方へ行くべきだと思う」
真っ直ぐ見据えながら覚悟を決める。
「ワカリました……アイボウ、あのサーヴァントの元へ行きマースヨ!」
「了解したぜ、相棒! 派手に、飛ばす!」
指先で示された渦中へ、もみくちゃにされながら青い空間を目指して風を切る。
……呼吸をするたびに、瓦礫が舌に入って気持ち悪いわ。
ガラス片やコンクリート、鉄骨までグルグルと渦の中で回り、視界を濁らせていた。
……前に進めない。
「相棒よ、俺は今から派手に細かく、向かってくる瓦礫を切る。青龍の手綱は相棒が操れ……派手に、頼むぞ!」
金属の擦れが耳元で弾け、赤銀の残像が薄茶色の視界に彩を与える。
「行こう……エマ!」
「ハイ。やりマースヨ!」
手綱の鳴りが、掴んだ腰を強く握らせた。
雲一つない澄んだ青は、嵐の前の静けさを含み――
「……英霊の座に就いた者達……それを従えるマスター。アナタ方は、何故聖杯を求めるのか。理由を聞いてから続きを致しましょう」
降り立つ長髪女、その杖が空中を緑に変える。
――目の前で艶めいた笑みを浮かべた。