Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第49話

「座っていいデースか?」

「ええ」

「ふん、派手に邪魔するぜ!」

 ピョンピョンと跳ねるエマの後ろ姿が、熱くなった頭を冷やしてくれる。

 ……文脈的に、私達の返答の有無によって見逃してくれる、訳でも無いわよね。

 燻った足元の影が思考を加速させていく。

「込み合った話をするのです――心地よく座れた方がいいでしょう……魔術師よ」

 緑の青臭さが鼻孔を掠め、全身に鳥肌が立つ。

 ……あのサーヴァント、おじいちゃんを出せない事を知っている?

 揺らめいた長髪が不安を誘い、煮え切らないまま緑を踏む。

「では……」

「俺が聖杯を取る目的は、聖杯そのものが派手に、そして伊達に見えたからだ!」

 静寂が跳ね、緊張が足元を冷たく抜ける。

 ……余計な事を。

 背中を伝う汗――

 下手に刺激を加えれば、何をしてくるのか分からない。

――立ち上がり天を指さすセイバーを殴りたい気分だ。

「なら……仕方が無い、ですね。聖杯とは魅力あるモノ……故に、壊すべき対象でもあるのです」

「派手じゃねぇーなー。女英霊さんよぉ。太陽、派手に浴びた方が、頭がよく回るぞ?」

「ムジュンじゃないデースか、ソレは?」

 小さく含み笑いを零す女サーヴァントの赤着物が揺らめく。

「い、いえ……それが私の願望。聖杯の破壊こそが、私の目的……です」

 視線だけがコチラを射抜き、陰った瞳孔が喉元を唸らせた。

「アナタは? 聖杯にかける願い……あるのでしょう?」

「私が、聖杯に……」

 確かめるように咀嚼した質問が、意識の縁をいやらしくなぞる。

 ……願いなんて、もうとっくに叶っているわ、無いのよ。

 左甲に刻まれた赤い輝きが思考を眩しく照らす。

 善と悪の中間を知らない子供みたいに、今の私は流れに身を任せ過ぎた。

「掛ける願いは、無いわ」

 照らされ過ぎた事で、前が見えなくなっている。

「そう。アナタを……」

 吐き出された沈黙が心臓を震わせていく。

「最初に殺さないとマズいようですね」

 ドス黒い声に被さる形で、エマが片腕を出して庇った。

「なぜそうなるデースか! 杏サーンには、ガンボウガないデースよ?」

「そう、です……アナタの認識は正しい。ですが……」

 妖艶な黒い瞳が一瞬だけ閉じ――

「もし彼女が聖杯を手にした時、アナタ方は彼女が善となる行いをすると『確実に』保証できますか?」

 ――ぼやけた視界を、更に揺らしていく。

「そ、ソレは……」

 押し黙るエマの唇は震えていた。

 ……実際、私自身も善に転ぶか悪に転ぶか、分かっていない。

「意地悪だな、女子よ。全くもって派手じゃねぇーな。俺だったら、善になる可能性にベットして話を進めるぜ?」

「ふふっ。何かあったからでは遅いのですよ? 私も英霊の一人……ユエに、半端モノは花になる前に摘み取った方が、良い柿が実るでしょう」

「アンタ……本気、か?」

 鋭い切っ先が長髪女の鼻筋まで伸び、荒々しくセイバーは前髪を掻き上げる。

「フェアじゃねぇー。この展開、派手に俺は嫌いだ。ソレに……アンタの評価基準で善し悪しを判断されるのは、伊達男として、相棒の友人の危機としても見過ごせねぇーのさぁー」

「不敬……です」

 互いの沈黙が睨み合う。

 鼻筋を冷たく通る風が喉元を軽く唸らせる。

 ……あの女からもロックオンされて、セイバーは先に刀を抜いてしまった訳だし。

「もう、話し合いは充分でしょう……後は私が審判致しましょう……彼に代わって」

「結局……派手な力こそが、最速で物事を決められるモノだな!」

上昇を続ける黒髪女――和解、落としどころは完全に埋められてしまった。

 

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