「奴自体に魔力は感じられなかった……しかし、周囲の魔力は渦のように奴を中心に巡り回っていた。霊体化解除に数十秒かかったのも、それが原因だと。我は踏んでいる」
能力や特性に近しいモノかも。
「情報提供ありがとう。おじいちゃん……」
刹那、電気のように鋭い空気が頭上を掠めた。
魔力の流れ――ソレも水爆のように強大で、山々のように巨大な。
「マスター!」
「行きましょう、おじいちゃん!」
林道を抜けた先。その要因は住宅街に集中しているのが肌で伝わる、鳥肌が止まらない。
……嫌な、ニオイがした。
オレンジの街灯に染まった高速道路が、煌めく住宅街を包むように伸び、漏れ出た七色の光は闇を薄め、冷たい夜風を呼び込んでいた。
静寂は、日常というベールを纏いながら――
「マスター!」
「うん、分かっているわ。見える……アレね……」
――確かに不穏な空気を漂わせている。
林道を抜け、身を隠すように木々の上に立ち隠れながら。
遠方の上空を取り巻き浮く強大な二つの影、その圧力はコチラにまで伝わる。
「サーヴァント。それも、かなり強大な類……」
「待機していた方が得策だろう、最悪二対一になればコチラの圧倒的不利だ。しかしながら、あの街に何らかの実害が及ぶ場合は……」
「その時は、出るわよ」
「うむ」
結末を見届ける選択肢を霊体化状態のおじいちゃんと共有したところで。
「動き始めたようだな」
二つの影が中心部へ近付き、月明りがスポットライトのように注がれる。
……まるで自然が、歓迎しているようだわ。
右に陣取るサーヴァントは白銀の外套を纏う金髪美少年で、対をなすサーヴァントは紅を基調とした着物を身に付け黒髪をなびかせていた。
「どこかで……」
その黒髪に覚えがあった。
「やはり……先程の娘か……」
不敵に言葉を零すおじいちゃん。
やはり、というか素の人間の能力だと把握に限界がある、か。
「感覚共有魔術を使うわ。おじいちゃん、霊体化を解除できる? 私にも、おじいちゃんが眺める景色を体験させて」
視界がジェットコースターのように風を受けながら真っ直ぐ目的地へ向かう、乗り物酔いに近い苦しさを味わいつつ舞台へ立つ。
満天の星空が頭上には咲き、赤黒い現実が地を這う。どうやらおじいちゃんの言う通り、黒髪ロングは先程絡んできた――
「……随分と、星々に愛されているのですね。羨ましい限りです……」
「ボクとしては、そんなつもりなんて無いのさ。たまたまだよ」
「無意識だからこそ……」
「そんな怖い顔しないでよ、お姉さん。今は僕、争いたい訳じゃないし、さ」
「アナタは……悪い人……ですね……」