「エマ! 本当にこれで……アナタは納得できているの?」
良いか悪いじゃない、その選択に対して納得できているのかが重要。
「セイバーを私は信じます。納得じゃないデースが、ダテ男らしく、ハデにかましてくれれば……勝機はアリますよ!」
震えた両拳と真剣な眼差しが、エマの本気度合いを教えてくれた。
「そう、分かったわ。私も……その覚悟に恥じないような、行動をするわ!」
「ど、何処へ行くデースか?」
「閉じ込めている領域の端を調べてくるわ。もしかすれば、ヒントか何かがあると思うの」
魔術師が閉じ込められ、令呪が使えないとすれば――渦中が、外部の瓦礫を巻き込んでいく意味が分からない。
頬に付いた砂粒が視界を前に向かせる。
「エマは来ない方が良いわ。土魔術を扱える私なら、多分……嵐に混じった瓦礫を取りながら進めると思うの」
「ワタシもやりたいデース! トッパコウを一緒に探したいデース!」
宙へ伸ばした左甲が淡い光を放ち、降り注ぐ金属音が喉元を唸らせた。
「エマはセイバーのマスターでしょう? 相棒なのだから、最後まで傍に居てあげなきゃ……派手に見届けるのが、正しい選択だと思うわよ」
焦げ臭さが鼻孔に焼き付き、爆発が白々とした上空を歪ませていく。
「ワカリ……マシタ! マスターとして、アイボウとして。現実を見届けるデース!」
背中に掛かった回答が、覚悟を踏ませる。
「ストーン・プラント! 取り敢えず、避けながら一歩ずつ進むわ……」
渦を巻いて迫り来るガラス片やコンクリートを、鞭状の砂塵で相殺する。
……魔術は、使えるわよね。
確かめた現実が、足元を抜ける冷風を呼び寄せ――
「では、なぜ……私は浮かんでいる? なぜセイバーは生きている?」
――当たり前だった事象が疑問へ切り替わっていく。
触れた地面が水のように波紋を広げ、左甲に電気が走る。
「令呪に反応している、聖杯戦争参加者に対しての結界……単独行動を選んで正解だったかもね」
見上げた空は赤く染まり、令呪の輝きが消えていく。
……答え合わせをしているようなモノね、魔術と令呪を同時には制限できない。
走りつつ吐く息が視界を半透明に染め――金属同士の擦れが聞こえなくなる。
……セイバーの一撃と同時に、反対方向から魔術を込めれば。
「見極めはココまで。では、魔術師諸共……」
「ふん、派手じゃねぇーなー。自らの弱点を暴かれた挙句、最初の言葉が開き直りとは……派手にダサいな、女子よ!」
向けられた杖先の赤が、周囲の色を上書きしていく。
「消滅しなさい」
「おっと、ムキになっちまったか女子? まあいいだろう……ランサーのマスターよ……俺は一分間、派手にかましていくぞ!」
赤銀の残像が上空へ消え、歪曲し始めた赤に接近。
「オトシガミ」
「宝具――鳳凰・龍演武!」
赤と赤がぶつかり、衝撃波が全身を後ろへ叩きつけた。
……た、立てない。
向かい風がサーヴァントと人間の差をありありと痛感させてくる。
「くっ……」
放出される熱量が素肌を焼き、鼻孔に張り付く金属の焦げ臭さがセイバーの言葉を想起させた。
……ココでいい、穴を開ける!
軽く宛がった両手が沈んでいく。
「セイバーのお陰で、領域が薄まっている。コレなら……」
爆発音と共に視界端が青々と染まり、静電気のように空気がヒリつく。
「アイボウ! ゼンシンに血が!」
「派手に心配するな、相棒よ。俺は……まだ伊達に動けるからなぁ!」
振動が手元を伝い、増していく鉄臭さが心臓を唸らせる。
……グズグズなんて出来ないわ、セイバーが持たなくなるわよ、杏。
「いつの間に、弱々しく? ふふ。コレでは、派手どころか……みすぼらしさすら覚えてしまいますね」
「なぁに、安心しろ。貴様を倒す時は、派手に打ち上げてやるさ……花火を!」
冷風が前髪を捲りあげ、鈍い衝突音が耳奥を貫いた。