「くっ……魔術解析。魔力制御……魔力追跡……キャッ⁉」
ぶちり――血管が弾ける感覚と共に熱さが鼻腔へ広がり、弾かれた腕が痺れを覚える。
「杏サーン、鼻血……」
「やられた……短時間で、何千にも魔術を重ねられるなんて!」
唇に付着した血が全滅を予感させる。
「まだデース! ワタシの魔力を。イッショニ……デスヨ!」
重ねられた手がグラついた視界を支えてくれた。
「還りなさい――冥府へ」
「三途の川など飲み干して。再び、貴様に派手な結末を下してやろう! 我こそ伊達政宗なり。貴様の首を討ち取る者の名だ……最後の一撃を。再び……受け取るがよい!」
耳奥を劈く雷鳴が視界を点滅させ――
「ワタシの魔力……ガンバってクダサーイ、オネガイ……デース!」
「あと。もう少し!」
束を解き、糸を裂き、繊維を掴み。
「コレで最後よ!」
「世界ヨ変化セヨ」
――余りある白さが、全てを呑み込んでいく。
「なん、だと⁉」
「セイバー! アァァァ!」
重なり合う絶叫が、後退する現実を突き付けてくる。
「一体、なぜ……失敗を」
領域の紐は九割ほど解除できていた、なのに唐突に弾かれた。
「世界に、アナタ方は嫌われた……それだけです……大人しく死になさい」
頭上から降り注ぐ純白は、吹き荒れる風の冷たさすら呑み込んでいく。
……防ぎようが無いわよ、こんなの。
呼吸をするように、選択肢が固定されていく。
立ち尽くす足元が恐怖に震え、ただ己の死因を見つめる事しか出来なかった。
瞬間――
「ガァァァァ! 派手に散らせてもらうぞ、英霊よ!」
「何も守れなかった英霊として、消えなさい」
――黒髪が視界に入る。
再び火花が激しく散り、セイバーの全身が溶け出す。
「いけません、これ以上は……アイボウが、キエテしまいます! ヤメテクダサイ!」
粒子状の魔力が零れ、青白い光を放つ。
「ハァァァァァァ!」
後退する赤銀がガラスのようにひび割れ、血の匂いが鼻孔を満たす。
「アイボウ、アイボウ!」
「俺、こそが! 天下……統一を成す者、ナリ!」
放たれた白を、セイバーの全身が――
「セイバー!」
「グァァァァァァ!」
――赤銀鎧が、白に呑み込まれながら落ちていく。
「アイボウ……アイボウ、アイボウ! 嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
絶望が耳奥を掻き乱し、心臓の震えが目の前の現実を睨ませる。
「ふふ、セイバーは消えた。後はあなた達の番よ? 東北の英雄は、所詮は田舎者……主すら守れずに、永遠に歴史の汚点として刻まれるのよ? 最高ね……」
「下衆野郎が」
頬を紅潮させながら、女は見下しているようだった。
「楽しみだわ、あなた達が死ぬところ」
……ど、どうすれば。
迫り来る白が呼吸のリズムを奪い、頭痛が脳天を貫いていく。