「もう、時間がない」
「抗わないと、アイボウに失礼デース……」
立ち上がったエマの表情が熱を帯び、金髪が前に出る。
「ふふ、降参でもしますか?」
「ファイヤーアロー!」
赤い軌跡が白に吸い込まれ、涙が地に落ちた。
「勘違いしていました……人の子である以上、無謀は付きモノだと。ならば、終わらせましょう」
「お、重い」
油圧機でプレスされるように、全身が硬直――視界端まで死が近づく。
「アキラメテ……ヤルカ、デース!」
「セイバーと共に」
のしかかった重みが口内を鉄臭さで溢れさせ、内側から熱が広がっていく。
「っぐ……」
赤くなった視界。
「敗北しなさい」
「令呪をもって……命じる、顕現せよ……」
左甲が汗で滲み、淡い光が放たれる。
「おじい、ちゃ……」
「宝具――白装・転生」
視界が青く色付き、目の前で黒髪が踊る。
差し込む太陽の光が全身の震えを止め、時計が瞬間を刻むように動き出した。
「久しいなマスター。よく耐えてくれた……後は、任せて欲しい」
「おじい……ちゃん、ありが、と」
刹那。
「エマサーン。大丈夫デースか?」
全身の力が抜け、膝が地面に着く。
「す、少し……力が抜けただけだから。心配は……」
肩に宛がわれた手の温もりが、判断の正しさを教えてくれる。
「これで相まみえるのも二度目、ですか……」
「ふん、マスター達には一本たりとも触れさせん。覚悟しておけ、サーヴァントよ。我がマスターを苦しませた事……冥府で悔やませてやる」
高らかに響き渡る宣言。
「いいでしょう……と、言いたい所ですが……」
言葉が区切られ、視線が左へ注がれる。
「時間です。全く。運がいい人達……次は、殺します。確実に」
淡い光が青空に消え、鳥の鳴き声が耳元を突いた。
「やっ、た……キャッ⁉」
崩した膝――透明な地面が裂け、視界が反転する。
「ペシャンコに! タイヘンデース!」
「マスター、そしてセイバーのマスターよ! 少々手荒だが、許して欲しい」
接近する道路、周囲の
……お、落ちる!
強張った全身が跳ね、柔らかさに包まれる。
「コレは……」
「羽毛だ。我が能力には、物体を転送させる術が備わっているらしい……」
芯の外れた声が上から降り立ち、全身に緊張が走る。
……そうだった、孫の私が魔術師って事は、おじいちゃんのセカンドクラスはキャスターになるわよね。
一歩深く考えれば、辿り着ける答えだった。
「そうね……そ、それよりも……エマ、体調は? どこか怪我は……」
「マリョクを大量にツカイマシタ……手がアツクテ、シビレて……イタイデース」
「ふむ……二人共、致命傷が無くて幸いだ……」
……取り敢えず、話題に乗ってくれたから問題はないわね。
冷たい風が前髪を捲り上げていく。