Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第1巻分、キリが良いところです。


第54話

「それにしても……戦終わりの悲惨さは、過去も今も変わらないか……負の感情しか残らない……」

 舗装されていたはずの道路に自動車や鉄骨が食い込み、散らばったガラス片が太陽の光を反射していた。

「本当に……酷いわよ、全く」

 舌先にざらついた砂が、視界を広げていく。

「周りも。ビルがドミノみたいに、倒れてイマス……ヒドイ有様デース」

「それだけじゃない。電線や水道等のインフラも」

 至るところに電線が火花を散らし、歩く度に抜け落ちた電柱が見つかり、漏水音が耳を打つ。

 ……私が防げなかったから、こうなったのね。

 振り向いたおじいちゃんの視線が、動揺する私には恐ろしく見えた。

「我が早く……顕現すれば。英霊ともあろう者の戯言、言い訳かもしれない……」

「違う、私の判断が」

「だが、そう思わせてくれマスター。我の責任だと認識させてくれ。この過酷な運命から逃げない為に……だ」

 空気が停止する。

 ……なぜ、いつも。

「おじいちゃんは凄いわよね。どんな状況であっても、前を向いて……責任から、現実から真正面で向き合えるのが。私には、どうも難しいみたい」

 後ろを歩くエマを視界に入れる。

「私の判断が遅れたせいで、エマは……セイバーを……」

 吞み込んだ現実が上手く吐き出せない。

 泳ぎ方を忘れた魚のように、抱くべき感情が沈んでいく。

「セイバーのマスターよ。申し訳なかった、我が出なかった事で大切な英霊を奪う事になってしまい……言葉では償えない事は百も承知。今は謝罪という形、誠意でしか表せない。全ては我の力不足……」

 目の前で腰を折るおじいちゃん。

「ハイ」

 冷たい沈黙が頬を通り抜ける。

 ……相棒と呼び合うほど、セイバーとエマは心から繋がっていた相棒だったし。

 俯くエマの金髪が風に巻かれ、太陽が注がれる。

「エマ。私も、セイバーを消滅させちゃった責任はあるわ……ど、どういう形で償うかは、まだハッキリしないけれど」

 差し出しかけた右手を引っ込める――

「ワタシは……」

 ほのかに香る薔薇が舌先を乾かす。

 ――エマの目線があったはずの令呪へ向けられる。

「私はエマの為に、アナタが望む形で、責任を償うつもりです。たとえ、聖杯戦争を……」

「ウァァァァァァ!」

 全身が跳ね上がり、思わず心臓を抑えた。

「マスターよ、あまりの絶望で発狂した人間は、どう接するのが正解なのだ?」

「私にも分からないわよ。専門家でも無いし……」

 グルグルと走り回り満面の笑みを湛えるエマ。

 ……素人目線からしても、感情のブレーキが壊れた状態と言えるかも。

 隣で見守るおじいちゃんへ目配せしたが、頭を傾げるのみ。

 ……私から声を掛けた方が、そもそも自分から動かさないと話が進まないように思える訳だし。

 サイレンの音が、出かかった言葉を遮った。

「マスター達よ。一旦、現場から離れた方が良い。余計な横やりがあっては、神秘の秘匿性も落ちてしまう」

 頷いたタイミング――お尻から地面へぶつかる。

「い、痛っ! も、もう少し……キャスターなら優しく魔力をコントロールして欲しいわね」

「まだ、キャスタークラスの要領を掴みきれていないようだ。すまない、マスター。セイバーのマスターにも」

 閉め切られた空間に現れた赤い光が、胸を熱くさせる。

「アイボウは……生きてイマス……レイジュガ、濃くなりマシタ!」

 右手が熱く燃え上がっていた。

「よ、良かったわよ……本当に、本当に!」

 溢れかけた言葉が喉元を震わせる。

 体温で溶けた氷のように、思いが胸に溶け込んでいく。

「これで、また聖杯戦争を続けられるって事か……ひと安心だわ」

「デスガ……」

 言葉が途切れる。

「ですが?」

「アイボウが言うには。カイフクするまでに、相当なジカンがかかるらしいデース」

 力を失うエマの余韻が耳奥を突き、拳を握らせた。

「取り敢えず、想像できる最悪は逃れた事には変わりない。そして安心して欲しい、セイバーのマスターよ」

「何デースか?」

「当然、受けた恩は返す……我のマスターを守護してくれたように、我らもセイバーが完全復活するまでの間、マスターを守護しよう」

 開かれた窓から朝日が昇り、頬を温めていく。

「私も、おじいちゃんの意見に異論はないわ。エマは、どう思う?」

「モチロン……アリガタイ提案デース。デスガ……」

 目線を落としたエマに、ゆっくりと近づく。

「足手纏いだなんて思っていないわ。エマが私にそうしてくれたように、私も同じ事をしたいのよ」

「杏サーン……」

 右手を差し伸べ、言いたかった言葉を並べる。

「だから。またよろしく、ね……エマ」

「ハイ、ヨロシクお願いシマース!」

 重ねられた手の温もりがじんわりと胸に染み込んでいく。

「では。マスター達よ。早速ではあるが、アサシンの情報整理から行うとしようか」

 踏み出す一歩――

「了解」

「行きマースネ!」

 ――その重みが、今は四人分だと気づく。

 ……たとえ、どんな結末が待っていようと、私は抗う事をやめない。

 

 おじいちゃんの子孫として。

 

 一人の人間として。

 




ここまで読んで下さり、本当にありがとうざいます!
練習用として書いていましたので、ここまでとなります。落ち着いた頃合い、または反響があれば書きたいと思っております。
感想等あれば受け付けています。
そしてここまで長宗我部杏と長宗我部元親の物語にお付き合い頂きまして、ありがとうざいました。

では、またどこかで!
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