Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第6話

空気が重くなる、既に金髪美少年は黒髪ロングから距離を取り、その美しい顔を引き締めている。

「お姉さんって、想像以上に凶暴だよねぇー」

「死になさい……」

 瞬間、光が闇夜を横に引き裂いていた。いや、金髪美少年を突き刺そうと走り出した白槍の残像だった。

「おっと……これは危ないねぇー。当たったらひとたまりもないよ、お姉さん」

 野球ボールをキャッチするくらい軽く、金髪美少年の右手には白槍が自然に添えられ。

 返すよ、と言わんばかりに金髪美少年が軽く投げ返す。しかしそれは、余りの速さに残像が途切れることなく繋がれ、一本の白線を生み出し、下のビル街がドミノの如く振動で揺れ動くほど。

「……不敬な……子」

 だが、黒髪ロングに迫り来るはずの槍は、いつの間にか彼女の手に握られ、残像も消滅。

「お姉さんも、中々強いね」

「死なないのね……では……冥府側から来れば……」

 残る黒髪ロングが不敵に嗤った。

 暗黒よりも暗く、そして深淵よりも深く、ビル群を倒壊させながら張り巡らされた巨大魔法陣は、生物とも言い難い何かを放出しながら。

「お姉さん、もしかして怒った?」

 赤黒い魔法陣は渦を巻き、窓ガラスやコンクリート、空気など障害を吸い込み美少年へ迫っていた。

……まるで掃除機のように。

「ようこそ……アナタが……愛されない世界へ……」

 破壊音を奏でながら魔法陣は、美少年の足元を覆っていた。

 夜闇に浮かぶ赤い瞳、無数の黒い腕が美少年を囲み、魔法陣の中へ引きずり降ろそうと純白の足元にへばりつく。

「陰湿な女性は嫌われるから気を付けた方がいいよ、お姉さん」

 美少年の一言で台風のように荒立っていた魔法陣は足元から吹き飛び、細かい粒子状へ姿を変え――

「魔除けの加護……アナタ……愛されてばかり、ですね」

「無意識なのさ。許してね、お姉さん」

 ――再び、月光が地上の闇夜を薄めていた。

「マスター……」

「ええ、言うとしている事は理解に及ぶところね」

 染みつく目の渇きを覚え、視線を隣の枝葉に映す。

「どうした、マスター? 私に何かついているか?」

「目が疲れただけよ、如何せん……動きが速くって。後追いはしない方が良いわね、それと早めに撤収した方が良さそうかも」

「うむ、マスターの姿勢には完全同意だ」

 理由は二つある。

 この戦い自体が黒髪ロングと金髪美少年の争いという点。二つ目は両サーヴァントの力量が想像以上なところ。

「他にも黒魔術や魔除けや謎の加護、など分からない点が多過ぎる。それに、私とおじいちゃんの噛み合わせも充分じゃないだろうし……」

 今回は偵察。

 わざわざ表立って勝負に出る必要は無いだろうし、黒髪ロングの破壊行為に至っては金髪少年が止めてくれているし。

「撤収だな……マスター」

「ええ、その方が……」

 瞬間。

 鋭い空気の震えが頬の輪郭を引っ掻き、遠くで唸る雷鳴と大声が耳奥を叩き、それは飾って現れた。

「ええい! 我こそは、天下統一! 神明雷光、龍王なるぞ! 道を開けぇぇぇぇいぃ!」

 青白く細長い何かが、黒髪ロングと金髪美少年の間をするりと抜け――

「独眼竜政宗……これにて、鮮やかに顕現した!」

――腕を組みながら隻眼の男が叫んでいた。

青龍の頭上に乗る男の黒髪が風になびき、黒の眼帯が揺れる。

「不敬です……アナタも……悪い人のよう……ですね」

「我が華麗なるマスターよ、とくと見るが良い……伊達男とは……正にこの事よ!」

 見上げた黒髪ロングの指先が微かに揺れ、刀身が首元を射抜き、雷が遠くで激しく唸る。

「その目……」

「イケてる男の前では全てがお見通しよ!」

「お兄さん……瞬間移動? カッコイイ!」

「我が生涯に一片の悔いなし!」

 ……風圧がこっちにまで届いてきた、口だけじゃなくて実力も凄まじい。

「ならば……」

「主を守るのも我の仕事だ……イケてる男とは、姫を守り抜いてこそ、だろう」

 スピードが速すぎて結末のみ残っていた。

独眼竜が青龍に乗っていた人影の前に立ち、虚空を一閃していた。

「よ、伊達男! 素晴らしいデース! さすが私のセイバー、オシャレでカッコイイ!」

「不愉快な……人達……」

 黒髪ロングの足元が赤黒く波打つ――

「作戦変更かな……お兄さんよりも、先にお姉さんをやった方がいいよねー。危ないのは嫌だし」

 ――が、それは鎮まる。

 一対二の状況下、黒髪ロング対金髪美少年と独眼竜。

「今日の所は……ひとまず、挨拶という事で手を打ちましょう」

「お姉さん帰っちゃうのかー」

「ああ……憎いほど……幸運な人達……」

「ダサいなアンタ。我ならコイツラを瞬殺してから去るが、な」

 伊達政宗の視線が黒髪ロングではなく、正面――私と目が合う。

 雷雲は過ぎ夜闇に青が混じり、ぬるい風が頬を撫でれば、視界端の黒は捲られオレンジ色の空が煌めき出す。

 ……朝が、来た。

 

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