Fateセカンドクラス   作:佐藤夜空

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第7話

第二章 暗殺者

 

「あーダメだ、眠い……歩きながら寝ちゃいそう……かも」

(マスター。勉学は大事だが、今は休憩するべきだ。睡眠不足は人間の機能そのものを鈍感にさせる)

「しょうが……ない、でしょう。他人に、私が……マスターって事、知られちゃマズいじゃ……ない? そ、れに……」

 あくびをしつつ、隣に居るであろう霊体化サーヴァントへ向けて言葉を返す。

 背後から鳴り響く小鳥のさえずりが耳奥を突き刺し、涙に滲んだ視界を朝日が強引にねじ込むたび、深い呼吸が乱れ、心臓の鼓動が速くなる。

「まだ、学生だし。勉強は……大事だし」

(聖杯戦争に一般人を巻き込む行為はタブーとされている。マスターを信用していない訳ではない、ただ一つだけ。目立つ場所は我が関与できない)

「分かっているわ。慎重に行動する……なるべく単独行動は控えて、多人数で行動するようには意識するつもりだけれど……」

 昨日の一連の流れを見た感じ、一般人を巻き込もうとするサーヴァントや真名やクラスまでオープンにする輩もいたし。

「イレギュラーが起こる可能性もあり得るわけだし。私がやられそうになれば、その時は……頼んだわよ、おじいちゃん」

(善処しよう)

「ところで……」

 赤レンガ調に舗装された歩道を踏みつつ周囲を見回す。

 街路樹を跨いだ右手の道路には自動車が絶え間なく走っているが、歩道側には私以外の人間の歩みが見当たらない。

「人影が無いから質問するけれど。昨日の一戦を、おじいちゃんはどう整理しているのかしら?」

 桜の花びらが視線を通り、ひらひらと地面に落ち――

(コレは所感になるが。あの三人組の中に我々が入れば、今頃は……死んでいただろう。特に黒髪女は別格。美少年の知れぬ力も警戒するべきだろう、独眼竜は……一騎打ちを挑めば。現状としては、誰であれ一筋縄ではいかぬ難敵ばかり)

 ――現実という壁をノックした。

「予想はしていたけれど、こうも素直に言われちゃ……自信が無くなっていきそうだわ」

 おじいちゃんの意見は理解できる。

 昨夜の黒髪ロングの膨大な魔力や金髪美少年の謎加護、独眼竜に至っては聖杯戦争における真名とクラス露出という致命的な弱点を自ら晒したにも関わらず、他サーヴァントを圧倒していた訳で。

 ……この聖杯戦争、困難よりも複雑に入り組んでいるかもしれない。

(細かい作戦を練る必要がありそうだな、マスター)

「そうね、今夜……話し合いましょう」

 左から聞こえる波音が耳奥を撫で、歩くたび制服のスカートはふわりと舞い、塩気が唇に残る。

「今日は随分と大人しいわね……」

 コンクリートの堤防に落ち着くカモメの群れが見え隠れし、迷惑そうにコチラを凝視――

「おじいちゃん、走るわよ!」

(どうした、マスター?)

「話はあとで! これは乙女の命に関わるわ!」

 ――奴らが飛び立つ前に、ダッシュでその場を切り抜ける。

 気が付けば、校門の全体像がハッキリ掴める距離まで進んでいた。

(ただのカモメだろう、マスター。走り出すまでもないだろう?)

「都会のカモメって、人間に対しての敬意が微塵もないの。あそこでフンを落とされたって被害報告が鳴り止まないのよ、学校側が注意喚起する程だし」

(なるほど。現代の子供は難しい立場に置かれているな、人間だけではなく自然までも敵に……)

 左手に巻いた腕時計の針は午前六時に入りかけていた。

「あーそうそう。昨夜の聖杯戦争で、少なからず私達は誰かにマークされている可能性が高いと思うの」

(付けられている前提で、敢えて敵陣を誘い込むという事か)

「そう。私達から赴いてやろうって話」

(罠を張るつもりか?)

 不動明王のようにそそり立つ白の校舎を見つめ、門扉を跨ぐ。

「それもあるけれど、まずは……私達の現状を理解する部分から。始めちゃいましょう」

 やはり、というか予想通り。

(マスター)

「ええ、感じたわ。微量な、だけど学校には無いはずの……魔力の残滓、微細な流れが」

 早朝から来て正解ね。

 上から見下ろせれば、詳細な出処が分かるのだけれど。

「屋上に上がるわ、おじいちゃん……警戒、よろしくね」

(うむ、心得ている)

 中庭を抜け、グラウンドの左側に備え付けられた非常用階段を登り、屋上へ。

 

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