バンザイナイツ〈明日突撃〉   作:匿名のカタリナ飛行艇

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ドーントレス……ふふ、ドーントレス。
お前を呪い⚪︎す。


第三話 航空支援を要請した(過去形)

1087/◾︎◾︎/◾︎◾︎

天気:晴朗

カズデル

 

 

 

 

荒野で戦っている集団がいる。

銃ではなく、剣やクロスボウ…あるいは奇怪な術を操り、戦闘を繰り広げている。

 

サングラスやスカーフで顔を隠し、同じ防弾チョッキで固める集団。

それぞれチグハグな防具を身につけ、一方を包囲する集団。

 

その戦力は拮抗しているように思われたが、実際には少しずつではあるが前者が押されていた。

 

 

 

「Aceさん!!援軍はまだか!?」

「通信が繋がらねぇ。こんなことなら、もっと予備のを持ってくるんだった。」

「くそっ*サルカズスラング*」

 

輸送トラックを守っていた集団のうち、1人が悪態をつく。

切っても切っても、湧いてくる敵。

永久にも思える時間は、よく訓練された兵士の心すらもすり減らしていく。

 

数が少ない上に、こっちはスタックしたトラックの積荷を守らなくちゃならない。

不利な要素が重なり動くに動けない状況に、負傷者は増えていくばかり。

包囲された集団の指揮を任されている男は、部隊が継戦能力を喪失しつつあることに危機感を感じていた。

 

 

「さっきの!…クッ……さっきの飛行ユニットは、結局なんだったんですかね!!」

「しらねぇよ!!はぁッ!!」

「敵襲かと身構えちゃいました…よっと!!」

 

「奴さんは、まだ上を飛んでいるみたいだけどな。」

 

 

そう言って、隊長はチラッと上を見上げる。

 

 

そこには、戦っている自分たちを囲むように、円状に飛行機雲を伸ばしながら周る、古めかしい大型の飛行ユニットがいた。

 

 

(輸送機にしては小さいが、ドローンにしては大きすぎる…低空で突っ込んできた時は腰を抜かしそうになったが、羽には見たことない赤い⚪︎のマークが描かれていた…ヴィクトリアやリターニアの物では無さそうだが……)

 

 

考えを巡らすも、答えは出てこない。

結局、敵じゃないなら放置しておいて問題ないかと、視線を戻した。

が、その一瞬のよそ見が、僅かな隙となった。

 

 

「!?」

 

 

敵のうちの1人が、盾を躱して剣を捩じ込んでくる。

咄嗟に握っていたハンマーを離して、盾で薙ぎ払う。

 

ねじ込んできた敵に盾がめり込み、鈍い音を鳴らす。

そのまま吹き飛ばすも、直後その横から別の敵がクロスボウを撃ち込む。

大きな動をしたせいで咄嗟の反応できない。

 

 

「ッ!!」

 

 

矢が、肩に刺さった。

 

 

 

「Aceさん!?」

「こっちには構わなくていい!」

 

 

前衛を受け持つ1人が自分に振り返りそうになるも、すぐにそれを止める。

だが、隊で一番の戦力に攻撃が通ったことに、敵側の勢いが強まった。

 

 

「1人落ちたぞ」

「今だ押し返せ!!」

「バベルの裏切り者に死を!!」

「異族に死を!!」

 

 

敵はそれぞれ絶叫しながら、突っ込んでくる。

肩に刺さった矢を引き抜き、包帯を歯で噛みちぎって簡単に止血する。

出血が止まったのを確認してから武器を持ち直し戦線に復帰するも、状況は芳しくない。

 

(これは………ちょっとダメかもしれねぇな……ドクター……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トトツートト トトト……トトツートト トトト……」

『……………暗号電文を受信。誘導を開始する。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空2000m

眼下では、彩雲の報告にあった通り未知の軍隊が盗賊の襲撃に遭っているようだった。

彩雲と偵察機の誘導を頼りに、第一次航空攻撃隊は戦域付近へと到達していた。

艦攻や艦爆がそれぞれ編隊を組んで飛行し、その後ろには少ないながら陸上攻撃機や飛行艇、中にはスヌーカやガンシップもいる。

 

 

 

『敵機発見!』

 

『Q. よーし、作戦は理解してるな?』

 

『A. 籠城でござりますr『違ァう!!!』

 

『総員……持ち場を離れるなよ』

 

Dance with our angels !!(天使とダンスだ)

 

 

 

最初に仕掛けたのは、爆装した彗星と流星、疾風の戦爆連合だ。

中には、灰緑色と日の丸に塗り直されたJu 87 スツーカやSBDドーントレスも混じってる。*1

エアブレーキを展開した彗星が、爆弾装が閉まらずむき出しになった五〇番通常爆弾二型(500kg爆弾)を吊り下げて急降下していく。

 

本来であれば対空砲火などで少なくない被害を出しながら行う急降下爆撃だが、どうやら相手は対空兵器を持っていないらしい。

 

攻撃体制に移った戦爆連合を阻む物は——無い。

 

編隊は、水平から約50度の急角度で戦域に突入した。

急降下の負荷で、機体が軋む嫌な音がコックピットに響く。

 

 

 

『そのまま♂…そのまま♂…』

 

 

 

彗星のコックピット前方に取り付けられた九八式射爆照準器二型のレティクルの中央に、目標を合わせる。

グルグルと回転する高度計が、600を指し示す。爆弾投下の適正高度だ。

 

 

 

 

 

『———今だ!!』

 

『『『『『『 着 ☆ 剣 』』』』』』

『ダーン』

 

 

 

 

爆弾投下装置のレバーを、思い切り引く。

 

ガチャ

 

 

『ぶつかるぞおお!!あぶなああいいい!!!』

『高度を上げろおおおおおお!!!』

『とオォりかァアじイィィ!!』

『『『バンザアアアアアアアアアイイ!!!!』』』

 

 

彗星や流星に、自動急降下引き起こし装置なんていう御大層なものは搭載されていない。

日本兵達は逆Gに耐えながら、死に物喰らいで操縦桿を引く。

急降下爆撃からの機首引き起こしは、最悪逆Gに耐えきれず操縦手が気絶して地面とダイレクトキッスすることがある。

が、もちろん大日本帝国の生え抜きの攻撃機乗りに、そんな軟弱者は居ない。

 

 

直後、機首を引き上げた攻撃隊の背後で衝撃と共に火の手が上がる。

地上爆弾が、敵のど真ん中で起爆した音だ。

 

 

『朝飯前だぜェ』

『いっちょあがり』

『敵戦車を、殺っちまったぞ』

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆撃が終わり、再び空へ上がっていく飛行ユニットを眺め、生き残ったバベルのオペレーター達は呆然としていた。

 

 

数分前…

部隊で最高戦力のAceが被弾し、その他の先頭オペレーターたちも無視できない被害を受け、戦況は目に見えて劣勢となっていた。襲撃でイカれてしまった無線は、技術オペレーターたちの努力虚しく未だ繋がらず、援軍は望めない。バベルのオペレーター達は、ここが自らの骨を埋める場所だと覚悟した。

 

敵軍の隊長格らしきサルカズが、バベルの前に出てくる。

 

 

 

「随分と手こずらせたな、バベルの裏切り者供に、異族供。だが、それもコレで終いだ。」

 

「ッ…」

 

「死にたい奴から前に出ろ。」

 

 

 

大剣を引き抜いたサルカズが、その剣先をオペレーター達の方に向ける。

数人のオペレーターたちが息を飲み、後ずさる。

このままでは空気に呑まれると思ったAceが、前衛オペレーター達の前に立つ。

 

 

「俺たちは、テレジア殿下の掲げる理想に共感し、ここに立っている。覚悟はとうの昔にできているし、俺たちの終着地点もここじゃない。」

 

 

「貴様ッ……異族風情がァ、あの御方の名を口にするなァ!!!」

 

 

 

サルカズの男が、激昂する。

崇拝するサルカズの魔王の名を、目の前の異族が口にすることが、男の逆鱗に触れた。

 

 

 

「貴様から殺してやる!!」

 

「ああ…決着をつけるとしよう。」

 

 

 

Aceは、先ほどの戦闘で消耗していた。

万全であれば目の前の男にも難なく勝てるが、加えて後ろのオペレーター達も守りながら戦わなければならないAceは、行動も制限されている。

 

(せめてコイツらだけでも、逃がせられないか……)

 

Aceは、自らと引き換えに部下達を逃す算段を練り始めた———

 

 

 

———その時だった。

 

 

 

どこからともなく、低音の不快な音が響き始める。

ロドスの機関室で聞こえるソレとは違う、ハチの群れが舞うような機械音。

 

 

(エンジン音…?)

 

 

「*サルカズスラング*!!なんだ、この耳障りな音は!?」

 

 

バベルのオペレーター達に、襲撃者の傭兵達に、困惑が広がる。

徐々に大きくなるこの音がまるで、避けられぬ惨劇が迫ってきていることを、教えているのではないだろうか。

 

右や左を見渡しても、その音源が掴めない。

辺りは、圧迫感や緊張感に押しつぶされる。

 

 

 

(近づいてくる音………まさか、上かッ!?)

 

「ッ!?」

 

 

 

Aceとサルカズの男…2人が空から迫り来る脅威(急降下爆撃)に気づいたのは、ほとんど同時だった。

それは、先ほど自分らの真上を飛んでいった飛行ユニットと瓜二つのもの。

常識的な飛行ユニットとは明らかに見た目が違い、機体を持ち上げるだけの回転翼を持たず、左右に動かない長大な翼を生やす、なんで飛んでるのかも分からない機体。

 

それが、今や数十の群れを成して、墜落するような角度で、我々へ猛禽類の狩のごとく飛びかかろうとしていた。

 

 

ガコン…

 

という音が聞こえたかは、定かではない。なぜなら、その黒い塊が飛行ユニットから切り離される瞬間を、誰も見ていなかったから。

ある者は頭を押さえてその場に伏せ、ある者は人は味方を掻き分けて逃げだし、ある者は状況が飲み込めず呆然と立ち尽くした。

 

誰かが、矢継ぎ早に号令を出そうとしているのが聞こえる。

 

 

刹那

 

 

眩い光と衝撃、身を焦がすような熱が辺りを覆い尽くした。

鼓膜を劈く轟音が、後を追って鳴り響く。

 

ここで初めてこの場にいる全員が、これが爆撃だと気づいた。

 

どちら側への、だとか、何を目的とした、だとか、何もかも分からない。

だが両者とも、あの飛行ユニットがここに居る全ての命を刈り取らんとする、死神の影に見えた。

 

 

 

咄嗟の判断で部下達を岩陰に放り込み、自らも滑り込んだAceは、空を見上げてサングラスの奥の目を大きく開かせる。

 

(有人飛行ユニットで爆撃など…正気の沙汰ではないッ)

 

ドローンでのターゲットを絞った小規模攻撃は、そこまで珍しいものではない。

隠密性が高く、奇襲などに用いられやすい。それはバベルでも同じだ。

だが大規模な———いわゆる爆撃となれば———話は別だ。

 

無人飛行ユニット(ドローン)には明確な弱点がある。

 

耐久が低い点、電波妨害で簡単に無力化されてしまう点だ。

大型化すれば耐久も多少は改善されるだろうが、それだと攻撃を察知されやすくなってしまう。

爆撃ともなればドローンもある程度の数が必要になってくるが、そんな大所帯で移動しようものなら、すぐに発見・察知され、HPMを展開されるのがオチだ。

対策されてしまえば、ドローンは脅威ではなくなる。

だからドローン戦略の基本は、奇襲にあるのだ。

 

一方、有人飛行ユニット(ヘリコプター)は全く性質が異なる。

 

有人飛行ユニットは速度が出ず、戦闘には不向だ。

だから空輸や、兵員輸送などの後方支援に使われる。

もちろん有人飛行ユニットで爆撃など、考えるべきではない。

低速で敵中をホバリングするなど、的にしてくださいと言っているようなものだ。

……一部の国では、回転砲身をもつ銃が乗せられた飛行ユニットも存在するらしいのだが……

そもそも、有人飛行ユニットはかなり希少なもので、そう気安く最前線に出せる代物ではない。

 

今のテラでは、有/無人飛行ユニットを用いた『爆撃』は主流ではない。

だから諸国の正規軍にも、HPMや対ドローンマニュアルは存在すれど、ほとんど墜落するような角度で、超高速で突っ込んでくる飛行ユニットへの対処法など存在しない。

 

 

(奴ら、相当にブッ飛んでいるらしいな…ッ)

 

 

次から次へと、高高度から突っ込んでくる飛行ユニット。

それだけに留まらず、ずんぐりむっくりとした別の機種と思しき飛行ユニットが、黒い爆弾を雨霰のように降り注がしている。

続く謎の勢力の、どちらを目標としたかも分からない『爆撃』攻撃。

鳴り止まない爆発の中で、Aceはそう1人ごちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好き放題してくれて、まぁ……」

 

 

体感、数十分が経った頃…

やっと爆発の音がしなくなり、鳴り響いていた飛行ユニットのエンジン音も遠ざかっていった頃。

舞い上がった砂塵が晴れ、バベルのオペレーター達は周囲を確認した。

 

 

 

「何か残ってるか?」

 

「いいえ、死体だけです。」

 

「敵とはいえ、流石に同情するな…」

 

 

 

生き残っていたのは、バベルのオペレーターだけだった。

部隊を包囲していた傭兵達は最早見る影もなく、あのサルカズの男が立っていた場所も、巨大なクレーターとなっていた。

 

あの飛行ユニットたちはバベルを味方していたらしい。

連絡のつかない我々を不安に思い、あのドクターが手配したのだろうか?

ご丁寧にさっきの爆撃で、バベル側の負傷者はゼロだ。その上、輸送車も無事だ。

どういう練度してんだ。

 

 

「負傷者の収容を急げ。すぐにロドス本艦へ戻るぞ。」

 

 

こっちは、訳も分からず意味不明な飛び方をする謎の飛行ユニット集団に殺されそうになったのだ。

助かったとはいえ、これがドクターの手配なら流石にAceも少しキレる。

Aceは先ほどの戦闘で矢が刺さり、まだジクジクと痛む肩を摩りながら、悲鳴をあげるトラック整備オペレーターの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

「どうしたドクター?」

 

「いや……なんでも無い、少し寒気が。」

 

「………。*2

 

「そんな目で見ないでくれ。」

*1
レンドリース法壊れる

*2
「その厚着で?」という目




作者の予想テラ世界。

『飛行ユニット』と『ドローン』はあるけど、『飛行機』は登場してないっぽい?
おそらくだけど、固定翼の飛行機が無いんじゃなかろうか。
なんの脈略もなく、ヘリコプターが発明されたんだと思う。
作中で『爆撃』の描写も無かったはず……無かったよね?

作者はストーリーが雪兎死んだところで止まってるので、その後のストーリー読んで無いんですよね。(つまりパトリオットと戦ってない)歴戦のドクターの皆様方、「爆撃機とか普通に登場してたよ(笑)」と矛盾点がありましたら教えてください。

今後の方針(原作準拠、エーギル編、魔王生存ルート、アリーナ生存ルート)

  • 本土決戦こそ、我が陸軍の本望なり
  • 艦隊決戦こそ、我が海軍の本望なり
  • 朕自ら近衛師団を率いこれが鎮定に当たらん
  • コシチェイ侯爵爆殺事件
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