バンザイナイツ〈明日突撃〉   作:匿名のカタリナ飛行艇

7 / 10
やぁドクター。君のよき戦友、レユニオン遊撃部隊のボジョラスティだ。
積もる話はあるが、さっそく本題に入ろう――――――ドクター、悪いが金を貸して欲しい。

(♪壮大で偉大なウルサスのテーマ)

このボジョラスティの金は長くは持たないと思ってくれ。この大地に混乱と争いを齎した源石の創造者の片割れの力、是非とも貸して欲しい。

聞こえるか?ドクター、君の金を是非とも貸して欲しい。助け合いの精神で行くとしよう。
このボジョラスティに金を貸してくれる人間は一人しか知らない.....このままではこの私と遊撃部隊の大尉も、それからレユニオン・ムーブメントのパトリオットも共倒れだろう。
ドクター...君はどうだ...?

――――――っ!!背負ったようだな、ドクター。
それとも、娘婿(きみ)は金になると呼ぶべきか?


第五話 決死!二〇三高地二起ツ。<上>

「攻め込め―!!」

 

「槍隊は前に出ろ!術師は絶え間なく弾幕を張れ!」

 

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

「感染者共を一人も入れるなよ!!!」

 

 

 

 

ウルサス北東雪原の森林に位置するこの場所には、かつてウルサス帝国によって建造されたものの天災に巻き込まれ、そのまま放棄された古い移動都市がある。

 

その都市を巡り、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

レユニオン・ムーブメントの先遣隊を率いるタルラはフロストノヴァとの決闘に勝利し、スノーデビル小隊の協力を取り付けた。

だが遊撃隊の背骨であるフロストノヴァの父、英雄パトリオットの説得には至らず、レユニオンと騎兵支隊は一週間の間この地に足止めを食らっていた。

 

幸いにもレユニオンの非戦闘員や子供たちは南部の開拓地に置いてきているため、急いで南部に帰る必要はない。

だが一向に耳を貸そうとしないパトリオットの意志の固さに、レユニオンメンバーは日に日に諦めと焦りが浮かび始めていた。

 

タルラは負けじと、連日連夜パトリオットを見かけては交渉を試みた。

日本兵たちも張り切って、毎朝早朝から起床喇叭と感謝の正拳突きを実施した。

交渉するなら外堀を埋めろということでアリーナも毎日食堂に立ち、盾兵部隊の胃袋を掴んだ。

 

 

そしてついにその努力が実った*1のか、パトリオットからタルラにひとつの提案をした。

 

『日本軍の力を借りずに移動都市を落としてみせろ』

 

 

 

 

 

実のところ粘り強いタルラの提案に、パトリオットは早くから心を動かされていた。

 

現在の遊撃隊は、補給を監視隊からの略奪によって賄っている。タルラも指摘していたが、ジリ貧のこの手段に未来はない。レユニオンの傘下に入れば、必然的に日本軍の援助を受けられるようになるということ。温かい拠点を持ち、いつなくなるか分らない備蓄に怯えず、救った人々を医薬品の不足で治療できずにみすみす見殺しにする必要もなくなる。未だ多く残っている感染者たちを置いて南方に下ることは本意ではないが、日本軍の人海戦術でここまで兵站を伸ばせばいいだけのこと。*2

 

それに何より、あの娘が飢えずにすむのなら......

 

一方で懸念もある。

パトリオットからして、日本軍というのはどうにも怪しい組織であった。

 

見た事のない種族、聞いた事のない国家。

死んだ筈の兵士が数刻と経てば、まるで何事も無かったかのように生き返っている。

最初はそういうアーツかと考えていたパトリオットだったが、すぐにそうではないと気づいた。

 

レユニオンは遊撃部隊から見ればまったくもって甘ちゃんだ。

”感染者の希望レユニオン・ムーブメント”

確かにその志は気高く、だがしかしその道筋は細く危うい。

タルラは南方にレユニオンの大きな拠点があると豪語していたが、それを維持していられているのは、先に述べた出所不明の日本軍の援助ありきだ。

 

日本軍という強力なスポンサーの存在は、魅力的であると同時に危険因子である。

スポンサーの意向によって、組織の行動が制限されてしまうこと。

レユニオンがただのお飾りとなり、理想をただ垂れ流しているだけの実行力の無い組織になること。

パトリオットはそのことを一番危惧していた。

 

 

「(故に、見定める。この移動都市攻めで、レユニオンがどれほど強固な組織なのか)」

 

 

 

部下たちを後ろに控えさせて、丘の上から戦況を見守る。

赤い炎に交じって青白い光が時折見えるのは、フロストノヴァとスノーデビル小隊がレユニオンと一緒に参戦したからだ。

この戦いに限り日本軍の救援は禁じたが、他の組織に助けを求めることを禁じた訳ではない。

戦いにおいて、どれほど多くの仲間を引き入れられるのかということも、どの組織と指導者の実力のうちである。

 

 

 

 

 

棄てられた移動都市内部

 

私はレユニオンの皆に先立ち、敵をかく乱するため囮厄を買って出ていた。

我々の目標は、私が囮として敵戦力を分散・かく乱させている間にフロストノヴァとレユニオン本隊が都市制御室と監視隊拠点を落とし、早期に決着をつける電撃作戦だ。

 

 

「次から次へと感染者...よくもまぁ飽きない事だ。この装備は遊撃隊のものではない...?なるほど、南部の騒々しい軍隊気取りどもか。貧弱種族(アジアの猿共)斜陽国家(大日本帝国)め....まとめて源石鉱山にぶち込んでやれば、皇帝陛下もお喜びになられるだろう。」

 

 

私のアーツは加害範囲が大きくて普段は味方を巻き揉まないように出力を絞っている。

が、今この場には敵と私しかいないので全力を出すことができる。

 

 

「おい貴様、持ち場を離れるな。襲撃者ならこの私が___!?なっ、何者だ!?」

 

「はぁッ!!」

 

 

私は剣に炎のアーツを纏わせ、先ずは手始めに一番前に立っていた監視隊を叩き切った。

 

 

「監視隊を装って近づくとは...薄汚い感染者め!なんという卑劣...」

 

「こちら区画32、侵入した感染者共の頭目を発見。増援を求む。」

 

 

襲撃に気づいた他の兵士たちが武器を構える。

この私相手に襲撃されてから増援とは、随分と舐められてものだが____

だがその愚かな判断こそ我々の目的だ

こちらに注目がいくほど、味方部隊への圧力が減る。

自分のアーツが派手でよかったと、今更ながらシミジミ思う。

 

 

「どうした?正義を騙る監視隊様はこの程度か?」

 

 

「腕は立つようだが、人格に難ありか。

狙撃手!この*ウルサススラング*畜生を撃ち殺せ!指導だ!指導!!」

 

 

私が少し煽ってみれば、敵部隊のリーダーらしい体格のいい兵士は顔を真っ赤にして激昂する。

逃げずに立ち向かってくるとは、弱いもの虐めの監視隊にしては勇ましいと称賛するべきか

それとも、ナチュラルに自分たちが感染者に負ける筈が無いと思っているのか。

 

「......ふっ」

 

 

私は笑みを浮かべ、剣を横に構えなおす。

まもなく矢とアーツの雨が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「この揺れは、爆発か?」

 

「きっとタルラさんの全開アーツだ、この都市全体が揺れるほどとは」

 

「今日は喇叭屋(にほんへ)たちがいないから、いつになく大暴れなんだろう」

 

「そうか.......私も負けていられないな」

 

 

 

タルラが陽動として派手に暴れているその頃、都市の反対側ではフロストノヴァ率いる突入部隊が指揮所を制圧するべく息を潜めていた。

タルラが暴れ始めてから10分で、中枢に突入する手筈だ.

それまでは、こうして作戦の意図が悟られないようにしていなければならない...筈なののだが。

 

 

「.....なんか、おまえらちょっとウズウズしてるのか?」

 

 

防寒フードを目深に被ったスノーデビルの隊員の一人が、隣のレユニオン兵に声をかける。

その声に、フロストノヴァが様子のおかしいレユニオン達に気づいた。

 

 

「どうしたお前達、落ち着きがない」

 

「いやちょっと......」

「ははは」

「なんでもないっす、はい」

 

 

妙に他所他所しい生返事に、フロストノヴァはスノーデビル隊員と顔を見合わせた。

 

 

「体調が悪いのなら、足手まといだから作戦から外すが__「お気遣いなく!!」そ、そうか」

 

 

 

レユニオン兵に落ち着きがないのには、理由があった。

それは、まだ開拓地ができていなかった頃の話になる。

 

当初、タルラが考えていたレユニオンの戦い方は、ゲリラ戦であった。

隠れ忍び、機会を伺い、ここぞというときに行動を起こし、敵が対応する前に退く。

戦力で劣っているレユニオンが正規軍や監視隊相手に勝つには、正面戦闘はなるべく避ける必要があった。

 

____”あった”のだが。

 

 『お前らいいか、このまま敵に悟られず接近r『『突撃ィィィィぃ!!!!』』

 

 『敵はこちらに気づいていない.....このまま慎重に『『天皇陛下ばんざあああああいい』』

 

 『さっきも伝えたがこの奇襲作戦は敵に察知されn『『<突撃喇叭>』』

 

 

 

日本兵は大抵隠密行動というものができない。

攻撃方法がディフォルトで突貫だし、話を聞かないし、敵から誰何されれば「レユニオンと大日本帝国の軍人だ(キリッ)」と自信満々に応えてしまう。

これでは奇襲もへたっくれもない。

 

当然、タルラの立てた作戦は失敗____すると思いきや、以外にもこれが成功してしまうのである。ある日誰が言ったか、全員消せばステレスなんだとか。

ループスのアサシンは頭を抱えていたが、実際成功してしまっているので情けない。

 

そんな悪弊が、いつしかレユニオンに深く浸透してしまった。大和魂の普及とも言う。

今やレユニオンに感染者として自らを下にし卑屈になる陰鬱な人は誰も居ないが、隠密行動ができる奴もいない。

 

隠密より火力!どうせ察知されるなら最初から諦めろ!

我らが理性的な指導者タルラもまた若干の脳筋であったため、この流れを止めうる者は長らくレユニオンにはいなかったのだ。

 

 

「.....っと、そろそろ時間だな。お前ら、なるべく気取られない様に__」

 

「ピィィィィィィィ<ホイッスル>」

「「「「Ураааaaaaaaaaaaaaaaaaaaааааа(と つ げ き)!!!!!!!!!」」」」

 

「っ?!な、お前たち何を!!」

 

 

廃棄された移動都市に、甲高いホイッスルと突撃の怒号が響き渡る。

 

フロストノヴァの静止と困惑の声は届かず、クソでかレユニオン旗を持ったレユニオン一般兵を先頭に、大声をあげながら都市中枢の管制室へ突入していった。

*1
決して早朝5時からの騒音被害に音をあげた訳ではない

*2
牟田口「正気か?」




【登場人物】

・タルラ
レユニオンムーブメントの若きリーダー。ドラコの女。
鍛錬を怠けていた訳ではないが、原作より緩めだったのは否めない。

・パトリオット
北方の感染者と遊撃隊を率いるウルサスの英雄。
たぶん人類で一番強いんじゃないかな(適当)

・フロストノヴァ
ドクターの嫁である。後悔は無い。

・にほんへ
今回登場無いってマ?

・一般通過レユニオン兵たち
大和魂が芽吹き始めている。
汚辱に耐え忍ぶ人生とはもうサヨナラだ。

・一般通過先任監視隊
いいか、私はこの地域の監視隊…つまり一帯の村々の支配者でもあるということだ。
住人共の金品については、我々に徴収権がある。
見逃してくれれば悪いようにはしない、分かるな?

今後の方針(原作準拠、エーギル編、魔王生存ルート、アリーナ生存ルート)

  • 本土決戦こそ、我が陸軍の本望なり
  • 艦隊決戦こそ、我が海軍の本望なり
  • 朕自ら近衛師団を率いこれが鎮定に当たらん
  • コシチェイ侯爵爆殺事件
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。