10秒時間を巻き戻す能力を引いた私が、デスゲームを生き残るためにやったこと   作:しまもん(ハーメルン)

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手に入れたのは「10秒時間を巻き戻す能力」

白い床を、誰かが強く蹴った。

それを合図にしたみたいに、人々が一斉に動き出す。

 

「どけーーーーー!」

「俺が先だ!」

「くそ! 邪魔をするな!」

 

ざわめきが、叫びに変わる。

 

光る板へ。

全員が、同じ方向へ走り出していた。

私も、反射的に足を動かす。

 

――吟味する時間なんて、ない。

 

能力の一覧は、あまりにも多い。

文字を追う余裕も、条件を考える余裕もない。

 

――考えてる間に、いい能力を取られてしまう。

 

押される。

肩がぶつかる。

前に進めない。

 

体格のいい人たちが、先に前へ出ていく。

 

――まずい。

 

私は背伸びするように、必死に腕を伸ばした。

 

指先が、光に触れる。

 

その瞬間――

頭の中に、何かが流れ込んできた。

 

理解。

知識。

説明。

 

まるで、最初から知っていたみたいに。

 

《能力:時間逆行》

《効果:10秒前に時間を巻き戻す》

《クールタイム:10秒》

 

……え。

 

思わず、息が止まる。

 

――10秒?

――短すぎない……?

 

愕然とする。

 

攻撃でも、防御でもない。

派手さもない。

 

だが、私は必死に思考を巡らせる。

この能力でどうやって勝利すればいいのか?

 

――……待って。

 

私は、口元に指を当てる。

 

――10秒、戻る。

――クールタイムも、10秒。

――つまり……。

 

心臓の音が、少しだけ遠のく。

 

――使った後、10秒経てば、また使える。

――時間は……戻る。

 

周囲を見る。

 

人々は手に入れた能力に興奮している。

誰も、私を見ていない。

 

――10秒前なら……。

 

愕然としたまま、でも、思考だけは止まらなかった。

 

――試すしか、ない。

 

私は、能力を使うことを選んだ。

 

次の瞬間――

世界が10秒巻き戻り、景色が跳ねた。

 

音も、感触も、まとめて後ろに引き戻される。

 

――戻った。

 

私の手は、まだ光る板に触れていない。

指先が、あと数センチで届く位置。

 

周囲の人々も、さっきと同じ動きをしている。

誰かが走り、誰かが叫び、誰かが押されている。

 

――本当に……10秒前だ。

 

心臓が、どくんと強く鳴った。

指先が、光る板に触れる。

 

その瞬間――

また、理解が流れ込んでくる。

 

《能力:時間逆行》

《効果:10秒前に時間を巻き戻す》

《クールタイム:10秒》

 

……同じ。

 

一瞬、頭が真っ白になる。

 

――また?

 

でも、違った。

 

脳内に、表示されるものが変わった。

さっきまで一つだった能力表示が、今度は二つ並んでいる。

 

《時間逆行(10秒)》

《時間逆行(10秒)》

 

――二つ……?

 

思考が追いつく前に、ある考えが浮かぶ。

 

――つまり。

――これって……20秒、戻れるってこと?

 

そう考えた直後、もう一つのことにも気づいた。

 

――待って。

 

最初に使った能力の感覚が、まだ、はっきり残っている。

 

――クールタイム。

 

頭の中で、感覚的に理解できる。

 

――最初の能力は……まだ使えない。

――あと……6秒くらい、残ってる。

 

でも。

視線を落とすような感覚で、脳内の能力一覧を見る。

 

――新しく手に入れた方は……。

――使える。

――能力ごとに、クールタイムは別。

 

息を、ゆっくり吐いた。

 

――……じゃあ。

 

確かめない理由は、なかった。

私は、新しく手に入れた能力を使った。

世界が、また巻き戻る。

 

 

今度は――

光る板より、一歩手前。

 

一瞬、息が詰まる。

 

――……あれ? さっきより、少し遠い。

――戻り幅が、増えた?

 

そう思いかけて、すぐに首を振る。

 

――違う。

 

私は、思い当たった。

 

――さっきは能力を得て9秒くらい経ってから能力を使った。

――今度は能力を得てからすぐに発動した。

 

つまり。

 

――能力の性能が変わったわけじゃない。

――私の、使ったタイミングの問題。

 

10秒きっちり戻る能力は、発動した瞬間から、きっちり10秒前に戻る能力なのだから、早く使えば、その分、手前に戻る。

 

胸の奥が、少しだけ落ち着く。

 

――ちゃんと、仕様通り。

 

私は、改めて前に出て、光る板へと手を伸ばした。

触れる。

 

理解が、また流れ込む。

 

《能力:時間逆行》

《効果:10秒前に時間を巻き戻す》

《クールタイム:10秒》

 

脳内の一覧が、更新される。

 

三つ。

 

《時間逆行(10秒)》

《時間逆行(10秒)》

《時間逆行(10秒)》

 

……三つ。

 

心臓の音が、うるさい。

 

――これ……。

――もしかして……。

 

恐怖が、消えたわけじゃない。

でも、それを押しのけるように、別の感情が胸の奥から湧き上がってくる。

 

――勝てる。

 

はっきりと、そう思った。

 

――これなら。

――このゲームで……。

 

私はもう一度、能力を使った。

そして、また取る。

 

戻って、取る。

戻って、取る。

 

何度も。

何度も。

 

光る板に、触れ続ける。

10秒を、積み重ねる。

心臓の高鳴りは、止まらなかった。

 

 

恐怖のせいなのか、それとも――

見えてしまった道のせいなのか。

その区別は、もうつかなかった。

 

私は、ただ繰り返していた。

勝つための、その一歩を。

 

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