異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
無事に決着がついて、私は灼熱の世界を解除する。
結界の中ならともかく、外にいる子たちはこんな熱波浴びたら死んじゃうよ。
というわけで周囲の気温が急速に元へ戻る中、クソデカゴーレムから這い出てきたマグナがヘロヘロと言った様子でその場に倒れ込む。
「死ぬかと思ったぞ……!」
「あはは、このくらいじゃ死なないよ、マグナは頑丈だからね」
私が覗き込むと、ガチャリとマグナの鎧が揺れた。
視線を逸らした?
「今度こそ勝ったと思ったのだが……」
「方向性は悪くなかったねえ。温めてた虎の子の戦術だったのかな」
「……ああ、この時のために相当準備をしている」
子供たちの前で格好をつけたかったんだろう。
実際、反則負けは私にとっては一番現実的な負け筋だ。
反則負けで勝つことで格好がつくのかって疑問はさておき、私に初めて勝ったという事実は残る。
「しかしこれでは、ギガンティックゴーレムはもう使えんな」
「そう? 気温対策さえすれば相当いい線行くと思うけど」
「そんなことを言って、もう対策はいくつか考えついているのだろう?」
「……まあ」
どれだけ炎に耐性があっても、防御力が高くても、関節ってどうしても人型ゴーレムの弱点になると思うんだよねえ。
あとは一箇所だけを集中的に攻撃して不具合を誘発したり、とかかな。
まあこれは向こうも想像ができる対策だろうから、対策に対策も取られそうだけどね。
「君のその発想力が脅威なのだ。何せカレーから攻略法を生み出すのだからな」
「あはは……それはたまたまピンポイントで思い出しただけで……」
逆に言えば、カレーを思い出さなくてもなんかしら思いついてただろうなあ。
なんて考えていると、
「うおー、たいちょー惜しかったー!」
「ミツキ様ー! 握手してください!」
子供達がはしゃぎながら寄ってくる。
私はそちらに視線を向けた。
「というわけでどうだったかな、これがトップクラスの冒険者同士の決闘さあ」
「すごかったー!」
純粋無垢な子供達の顔。
キラキラと輝いてて眩しすぎる!
私みたいなくたびれた冒険者には眩しすぎる光景だよ!
「ほら、マグナも起きた起きた。マグナがこの班のたいちょーなんだから!」
「むう……皆、情けないところを見せた。次こそは必ず勝ってみせる」
「たいちょーだってすごかったぜ! あのゴーレムすげえカッコよかった!」
うん、それは解る。
ゴーレムのデザイン、普通に良かったからな。
ちょっと渋めだけど、ロボットモノのデザインとして十分通じると思う。
なにはともあれ、戦闘は終わりだ。
この後、子供達は今から昼食を食べることになる。
私が食べるのが少し早かった感じなので、むしろ子供達のほうが食べる時間としては自然だ。
「竜姫のカレーの匂いがうまそうだし、カレー食べたくなるよなぁ」
「でもカレー粉って高いわよ? うちじゃお祝いの時にしか食べられないし」
なんて話をしながら、彼らが作るのはスープである。
野菜と出汁用の塩漬けした肉の欠片などを使った、塩気たっぷりのスープ。
うーん美味しそう、コンソメがあれば完璧なんだけどなぁ、と思っていると一杯子供達が分けてくれた。
パンは流石に食べ過ぎなので辞退して、スープだけで楽しむ。
あー、とろっとした野菜の食感と塩の効いたスープがいい感じに舌の上で絡み合うーーーー。
「うまい!」
「へへへ、どうだ! カレーにだって負けてないぜ!」
子供達は、私が美味しそうにしていると、なんだか嬉しそうだった。
何人かちょっと見惚れてる子がいるのは御愛嬌。
罪な女だねぇ(※全員見惚れてることにこのときの私は気付いていない)。
「では、午後は午前中で使用した薪、及び今日から明日にかけて使う薪の調達を行う。森の中の安全は事前に確認しておいた。とはいえ、迷ってしまえばここまで戻ってくるのは難しい。常に周囲を確認し、森の奥に入り込み過ぎないよう気をつけること」
「まぁ、万が一のことがあっても問題ないように、ちゃんとマグナが見張ってくれるけどねぇ」
食事が終わると、マグナが今回の講習に関するあれこれを説明していた。
どうやら、森の中での散策を行う一種のレクリエーションみたいなことをするらしい。
集められた新人冒険者の年齢は十二歳前後、まだまだ幼い子どもであることから、こういうイベントみたいな講習もあるんだねえ。
わたしゃ十歳になる前くらいから冒険者になって、十二歳になるころにはもう一級冒険者だったけど。
彼らは未来をこれから描く、ピカピカな新人くんたちなのである。
そんな彼らを、私は持ち込んだ寝そべることができる椅子に寝そべって、適当にマグナの言葉に茶々を入れつつ見守っていた。
「もし何かあったら、休憩所に戻ってきたら私がいるからね。本を読んでるか寝てると思うけど、緊急だったら起こしていいから」
「き、緊急じゃなかったら……?」
「ちょっと意地悪しちゃおうかなー?」
「!!?!?!!?!?!?!?」
「おいまて、君の意地悪は洒落にならん」
えー、ちょっと背中から驚かせたりするだけなんだけどなあ。
一体マグナは何を警戒しているのやら。
「だいたい、だな。別に私はそこまで君に助けを求めては居ない。もとはと言えば我々が後からやってきた形になるわけだし、君に出せる報酬は食事くらいだ」
「だからその食事のために、頑張らない範囲でお手伝いしようってだけだよ? 別に子供達のために森を巡回したりはしないし……まぁ、気が向いたらするけど」
「決闘してくれただけでも十分だ。……というか森の中で子供達と二人きりになるのは本当にやめてくれ。別の意味で子供達が迷子になってしまう」
いや別の意味で迷子になるって何さ。
子供達もなんでそんなうんうんと本気で頷いてるの!?
まるで私が犯罪者みたいな対応だ。
これは抗議しなくてはならない。
「それはちょっと納得が行かないぞ! 私はごくごく一般的な一級冒険者だ。それ以上でもそれ以下でもない!」
「特級への昇格を断る一級冒険者が、ごくごく一般的なものか! これまで君がやってきた破天荒な所業をここで一から列挙したほうがいいか!?」
「別にそれで何か困るってわけじゃないですしー! いいですよ、この後の予定が逼迫するくらい話しちゃってくださいヨ!」
「こいつ……!」
まったくまったく、マグナくんったらムキになっちゃって。
でもまぁ、最近のマグナはどこに行っても恥ずかしくない清廉潔白な騎士様って感じだったから、こんな素で会話するのは久しぶりだ。
フォッサルだとこれくらい緩いのがデフォルトなんだろうか。
シャロネからマグナのはずかしエピソードを聞くついでに、今度確認してみよう。
「……なんというか、さぁ」
「……そうねぇ」
そんな私とマグナのやり取りを見て、子供達が何やらヒソヒソと話をしている。
聞こえているんだぞ、私にもマグナにも!
とか思っていると、子供達の一人が――
「――二人って、やっぱ付き合ってるのかな……」
爆弾発言を投下した。
子供達はいやいやまさかそんなぁ、という感じだが、それに一番反応するのはマグナだ。
「――――」
停止してしまった。
ショックだから? いや、違う。
「たいちょー! 大丈夫か!?」
「あー、これはあれだね」
私は一つあくびをしながら、どうしてマグナが停止してしまったのかを語る。
「マグナって故郷に将来を誓った幼馴染がいるんだけど、それなのに他の女性と親しく会話してしまったことを恥じてこうなってるんだよね」
「え――マ、マグナ隊長に……いいな、づけ……?」
あっ、なんかマグナのことを憧れてるっぽい女の子に被弾した!
ごめんよ、でもいずれどっかで知ることだから、早めに知っておいたほうが傷は浅いから!
……え、君は私のことが好き?
ごめんねぇ、今のところ男の人と付き合うつもりはないんだ、君が大人になったら素敵な人がきっとみつかるよ、頑張れ。
――なんて。
なんかいつの間にか、新人講習はカオスな状況へと突っ走っていく。
停止したマグナ、混乱する子供達。
うーん、どうしたものかなぁ、これ。
結局、復帰したマグナがなんとか子供達を纏め直し、新人講習は恙無く……? 進行するのだった。
カオス。