異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
なんとしてでも私のポールダンスを阻止せんとするシャロネとの戦いを、「そういうシャロネだって普段からおヘソ全開じゃん」の一言で斬り伏せ。
後日、私はポールダンスをすることになった。
当然ながら、正体は隠すことに。
一級冒険者で不死の竜姫がこんなところでポールダンスしていいわけねぇだろ!
とのこと、ご尤もで。
まぁ私としても、ちょっと雰囲気を楽しみたいだけだからね、自分を全部さらけ出したいわけじゃない。
ルクスラちゃんだって、自分がルクスラだって一番大事なところはさらけ出してないのに、私だけあけっぴろげってのもちょっとねぇ。
「じゃーん、どうかな」
「お、おお……おおお……」
「ルクスラちゃんが何も言えなくなってる……シャロネは……」
「――――」
「死んでる……」
シャロネはいい子だったよ、このままここで眠らせて上げよう。
というわけで、現在私は踊子衣装の合わせをしている。
口元にはベール、お腹は全開で、下のスカートはスリット開けまくってて殆ど見えてる。
こりゃ……やばいね。
「髪の色は変えなくて大丈夫ですか?」
「このベールの隠蔽効果はルクスラちゃんのそれの比じゃないから、バレることはないよ」
「今はちゃんと認識できてますけど……」
「それは私がルクスラちゃんを効果対象外にしてるから。試しに効果対象にしてみようか?」
「一応お願いします」
りょーかい、というわけでちょっと魔道具に魔力を流す。
すると、一瞬にしてルクスラちゃんは瞬きすらしてないにも関わらず、私を私と認識できなくなるはずだ。
結果――
「ぶほぁっ!」
「ああ、死人が増えた!」
鼻血をぷしゃー、としながらルクスラちゃんは倒れた。
なんでぇ!?
「ルクスラちゃん、大丈夫!?」
「か、神……? そこにいるのは……女神……?」
「どういう認識してるの!?」
あっれぇ、おかしいなぁ。
自分で言うのも何だけど、私が後輩や年下から人気が高いのって、普段の親しみやすさが多少はあると思うんだよね。
いや別に、そこまで大きな要因ではないとは思うけどさ(※多少どころでは在りません)。
容姿だって、シャロネやルクスラちゃんも負けてない。
私を私と認識できなくなるだけで、そんな神々しさを感じたりしないでしょ、普通。
「おーい、大丈夫ー、ルクスラちゃーん」
「はっ……ミ、ミツキさん……」
「あ、戻った」
「……やっぱりやめませんか……ポールダンス……」
「えっ、いやでも、もうやるってオーナーさん達には言っちゃったじゃん?」
流石に今更なしってのも、まずいと思うけどなぁ。
向こうにも色々予定があるだろうし。
「説明したら解ってくれますって。これ見れば絶対解ってくれますって!」
「そ、そうかなぁ……」
「シャロネさんみたいな犠牲者を増やしていいんですか!?」
「……その犠牲者、さっきから定期的にルクスラちゃんに踏まれてるけど」
「えっ!? あ、ごめんなさい!?」
まぁ、幸せそうだしいいんじゃないかなぁ……
おいこら、下からこっちのスカートの中身を見ようとしてくるんじゃない。
幸せそうな死に顔のシャロネを部屋の隅まで足でどけつつ、私は提案する。
「じゃあ、実際に見てもらって判断しよっか」
「それが手っ取り早いですね」
――結局。
認識阻害モードを使った私を見たスタッフさん達は、死ぬほど悩んだ素振りを見せた後、小一時間ほど唸った後――全会一致で”やろう”と決断した。
これで世界が滅びても、それは一つの本望だから、とのこと。
そこまで!?
「ふふふ、私も覚悟を決めました、お姉様。この魔導映写機で……お姉様の肢体を余す所なく……バシッと撮影してみせますの!」
「うお、めっちゃレアな魔道具じゃん。よく持ってたね……」
「マグナから借りてきました」
魔導映写機は、魔力を使って映像を記録する機械。
魔力をそのまま記録できるから、指紋みたいに犯罪捜査の証拠として使えるんだよね。
そんな魔道具をマグナは持っていたりするらしい、あいつ魔道具マニアだからなぁ。
私に勝つため、魔道具を買い漁ってたらいつの間にかマニアになっていたのである。
まぁ何にしても、やると決まったからには全力だ。
ここ数年、錆びつかせまくっていたダンススキルを再活性させる。
燃え尽きた私に、再び薪をくべる時が来たのだー。
■
その日、世界が一つの変革を迎えることを、人々は知らなかった。
プロミアの地方都市サンフラは、芸術の街として知られるものの、そこまで規模の大きな街ではない。
そこでポールダンスを初めとしたセクシーなショーを行う一座も、決してメジャーと言える規模ではなかった。
ルクスラ――芸名アルナラ――というエースを抱えてはいるものの、将来が絶対安泰とは言えない立場に在る。
そもそもルクスラが、周囲に内緒でこっそり働いているうら若き女子なのが原因なのだが。
そんな一座に、特別ゲストが参加するという宣伝がされた。
この世に二つとない、絶世の美貌。
今日を逃せば二度と見ることのできない、一夜限りの楽園。
この日、世界は変革する。
そんな謳い文句とともに、ビラが配られた。
対する民衆の反応は「何いってんだこいつ?」くらいのものである。
あまりにも誇大広告。
場末の小さなショークラブに、そんなやべぇゲストが参加するわけ無いだろう、と。
誰もが思った。
思ったからこそ、足を運んだ。
まぁそこまで言うならちょっくら見てやろうじゃないか、と。
あまりにも大博打としかいいようのない宣伝である。
成功すればともかく、失敗すればショーの評判は地に落ちるのだ。
加えて向こうは、ハードルを上げに上げまくっている。
むしろ、上げたハードルを超えられない状況に期待しているとも言えた。
やっぱりたいしたことないじゃないか、と笑いものにするべく、そこにいるものが大半なのだ。
――まぁ、そんな連中の手のひらは、一瞬にして引きちぎられることとなるのだが。
現れたのは、一瞬で彼らを釘付けにする人物だった。
美しい銀と朱の髪。
ベールで覆われた口元はその奥に潜む神秘を懸想させ、大胆に開けられた胸元は自然と目を引く。
その一挙手一投足は、まるで世界をその手の中に収めているかのような大胆さ。
それが、尋常ならざる者の踊りであることを、誰もが知ることになる。
ただ一人、なんかめちゃくちゃ受けてるな……と思いながら踊るミツキ本人を除いては。
そもそも、ミツキの疑問はある種尤もだ。
容姿に関して、ミツキとルクスラの美しさにそう違いはない。
ダンスの実力を考えれば、普通はルクスラの方が評判はいいはず。
けれども、違うのだ。
原因は三つ、一つはミツキが隠蔽に使った口元のベール。
アレはミツキ自身そこまでとんでもないものとは自覚していないが、ミツキの持っている魔道具の中でも普段着ているローブに次いでとんでもない代物だ。
基本的に、隠蔽系の魔術で完全に正体を隠すことは難しい。
少なくともルクスラは、そのボディラインから
だがミツキのそれは、完全に正体を隠す――どころか、そこにいる人間を全く別の人間に見せるほど強力なもの。
とはいえ、それだけならミツキが別人として認識されるだけで済んでいただろう。
しかしミツキには、前世の記憶がある。
それはまるで、人の中に全く別の人間がいるかのようだ。
つまり、正体を隠すベールによって別の人間になる人間が、ミツキの中には二人いる。
結果、ベールは通常の倍以上に効果を発揮し――ようするにバグった。
ここにミツキという絶世の美貌が合わされば、もはやそれは彼女を人間以外の何かである、と見せるには十分だったのだ。
何よりやばいのは――目だ。
ミツキの目は、努力しまくっている時はガンギマリになる。
限界ギリギリの、その更にギリギリの状態でなんとか正気を保っている
ファンタジー世界で、そこまで限界ギリギリで頑張る人間はそういないから、彼らにブラック社畜の目つきは劇薬過ぎた。
今でこそ燃え尽きたことで、穏やかな目つきになったミツキだが、それでもこうして老体(?)にムチを打って努力すると――当時に少しだけ雰囲気が戻るのだ。
結果、やばい目つきがやばい魔道具のバグで更にやばくなる。
人は、そのやばい雰囲気を直に浴びて――脳が粉微塵となる。
そして、ミツキはこの一夜限りをもって消えるのだ。
それはこの世界に新たな伝説と変革を齎す一夜。
もうどうにでもなれ、という覚悟を持って一座が住人を巻き込んだ世紀のショー。
この日、世界にはミツキのポールダンスショーを”見た”人間と”見ていない”人間が生まれることとなる――――
なお、そもそもシェリブロの取材という名目でやってきていたミツキだが、結局シェリブロの最新話は後輩の魔術師と森の中でキャンプする内容になった。
こんなものシェリブロでやれるか、とはミツキの談。
マグナの魔導映写機はミツキの魔力に耐えきれず爆発して、その後何とかミツキが修復しました。